2026年10月29日、自民党の日本成長戦略本部は、国税庁が検討している非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法の見直しについて、緊急決議を取りまとめました。
決議では、国税庁の現行案を容認できないとし、現行案を前提とせず、白地から議論するよう求めています。
今回の見直しは、もともと会計検査院による「類似業種比準価額が純資産価額に比べて著しく低い」という指摘が出発点でした。
さらに、国税庁の有識者会議では、現行制度を利用して非上場株式の評価額を意図的に引き下げる租税回避スキームも問題となりました。
2026年4月から検討が始まり、8月には「残余利益方式」を原則とする抜本的な見直し案が示されました。
しかし、その後、日本商工会議所、全国建設業協会、経済同友会などから、中小企業の事業承継を困難にするとの懸念が相次ぎました。
経済産業省・中小企業庁からも慎重な検討を求める意見が示され、10月29日には自民党が緊急決議を行うに至りました。
重要なのは、国税庁の見直し案が正式に撤回されたわけではなく、令和9年から新しい評価方式が適用されると決まったわけでもないということです。
この記事では、会計検査院の指摘から国税庁の有識者会議、経済団体の反対、10月29日の緊急決議までの経緯を整理します。
最後に、仮に評価見直しが白紙撤回された場合でも、従来の株価引下げスキームにどのような税務上の問題が残るのか、税理士としての私見を述べます。
1.見直しの出発点は会計検査院の指摘――類似業種比準価額は低すぎるのか
今回の評価方法見直しの大きなきっかけは、2024年11月6日に公表された会計検査院の令和5年度決算検査報告です。
会計検査院は、非上場株式について、類似業種比準方式による評価額と純資産価額方式による評価額に大きな差があることを問題視しました。
類似業種比準価額は純資産価額の27.2%
会計検査院の検査では、次の結果が示されています。
| 評価方法 | 1株当たり評価額の中央値 |
|---|---|
| 類似業種比準価額 | 11,622円 |
| 純資産価額 | 42,648円 |
| 両者の比率 | 27.2% |
つまり、類似業種比準価額の中央値は、純資産価額の中央値の約4分の1だったのです。
また、会計検査院は、会社規模が大きい区分ほど、純資産価額に比べて申告評価額が低くなる傾向も指摘しました。
現行制度では、同族株主等が取得した株式について、大会社は原則として類似業種比準方式、中会社は両方式の併用、小会社は原則として純資産価額方式で評価します。
そのため、会社規模の区分によって評価額に大きな違いが生じることがあります。
会計検査院は、こうした状況について評価の公平性が十分確保されていない可能性を指摘し、国税庁に検討を求めました。
ただし、ここで注意したいのは、純資産価額が常に適正な時価であり、類似業種比準価額だけが不当に低いと証明されたわけではないということです。
非上場株式は市場で自由に売却できる株式ではありません。
純資産価額が高額であっても、その金額で株式を買い取ってくれる相手が存在するとは限りません。
「類似業種比準価額が低すぎるのか、それとも純資産価額が高すぎるのか」
この問題は、今回の見直しを考えるうえで重要です。
2.もう一つの問題――国税庁が懸念する株価圧縮スキーム
会計検査院の指摘を受け、国税庁は2026年4月20日から有識者会議を開催しました。
その第1回会議では、もう一つの重要な問題が議論されています。
それは、現行評価方式の違いを利用した租税回避スキームです。
国税庁の資料では、会社規模の変更、利益操作、資本移転、株主構成の操作などによって株式評価額を引き下げる手法が問題として取り上げられています。
例えば、類似業種比準価額が純資産価額より大幅に低い場合、会社規模の判定を変更して類似業種比準方式の適用割合を高めれば、株式評価額が下がることがあります。
もちろん、通常の事業活動や合理的な組織再編によって評価額が変動すること自体が問題なのではありません。
問題となるのは、実態を伴わない取引や、税負担の軽減を主な目的とした一連の行為により、通常の評価との間に著しい差を生じさせるような場合です。
国税庁の有識者会議では、こうした評価額圧縮スキームへの対応も重要な論点となりました。
有識者会議では逆の問題提起も
一方、第1回有識者会議の議事要旨には、興味深い意見も記載されています。
租税回避スキームは問題であるものの、そもそも現行の純資産価額が高すぎることが、スキームが利用される根本的な原因ではないかという指摘です。
非上場会社が所有する土地、建物、機械設備などは、事業を継続するために必要な資産であり、自由に処分できるとは限りません。
租税回避への対応は必要ですが、それによって通常の事業承継まで過大な税負担を生じさせないかという問題もあります。

3.2026年4月から9月――国税庁が残余利益方式を検討
国税庁の有識者会議は、2026年4月20日から9月16日までに6回開催されました。
| 開催日 | 会議 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 4月20日 | 第1回 | 現行評価方式の問題点を検討 |
| 5月11日 | 第2回 | 新たな評価方式について検討 |
| 6月4日 | 第3回 | 評価の公平性などを議論 |
| 7月3日 | 第4回 | 見直しの方向性を検討 |
| 8月20日 | 第5回 | 残余利益方式への原則一本化の方向性を提示 |
| 9月16日 | 第6回 | 新方式の具体的な論点と評価額の試算 |
特に重要なのは、8月20日の第5回会議です。
従来の会社規模区分に応じた類似業種比準方式と純資産価額方式の使い分けを見直し、原則として残余利益方式に一本化する方向性が示されました。
残余利益方式とは
残余利益方式は、会社の純資産を基礎として、その会社が生み出す超過収益力を評価額に反映する考え方です。
国税庁の検討案では、簿価純資産を基礎に、過去の利益などから算出した超過収益を加減する方法が示されています。
この方式では、収益力の高い会社の株式評価額が大きく上昇する可能性があります。
一方、利益水準や資産構成によっては、現行制度よりも評価額が下がる会社も考えられます。
9月16日の第6回会議では、具体的な計算方法や実際の申告データを用いた試算が示されました。
ただし、還元率や斟酌率など、評価額に大きく影響する条件は確定していません。
したがって、現時点で新方式による株価を確定的に計算することはできません。
参考:国税庁・有識者会議資料
4.日本商工会議所――中小企業の事業承継への影響を懸念
国税庁の検討が進む一方で、商工会議所からは、中小企業の事業承継への影響を懸念する意見が示されました。
日本商工会議所は2026年9月18日に公表した令和9年度税制改正に関する意見で、残余利益方式への見直しについて強い懸念を表明しています。
非上場株式は、上場株式と異なり、自由に市場で売却できません。
会社が成長し、利益が増加して株式評価額が上がっても、オーナー個人にその評価額に見合う現金があるとは限りません。
相続が発生した際、後継者が多額の相続税を納付できなければ、事業承継そのものが困難になる場合があります。
企業が成長するほど後継者の相続税負担が増加する仕組みは、中小企業の成長を阻害するのではないか。
これが商工会議所側の重要な問題意識です。
5.建設業界――全国建設業協会が見直し凍結を要求
特に強い懸念を示したのが建設業界です。
全国建設業協会は2026年9月18日の理事会で、令和9年度税制改正要望に非上場株式の評価方法の見直し凍結を追加しました。
さらに10月9日には、国土交通省に対して要望書を提出しました。
なぜ建設業界が強く反対するのか
地域の建設会社は、重機や車両、資機材、事業用不動産など、多くの資産を保有している場合があります。
これらは単なる余剰資産ではありません。
災害が発生した際の復旧作業や、地域の道路・橋梁などの維持管理に必要な設備です。
また、地域の雇用や災害対応体制を維持するためには、安定した収益力や内部留保も必要になります。
全国建設業協会は、残余利益方式への見直しによって地域の中核的な建設会社の株式評価額が上昇し、事業承継が困難になることを懸念しています。
そのため、適切な方式が確立するまでは、現行方式を維持するよう求めています。
10月9日の要望に対し、国土交通省側も事業承継への大きな影響について問題意識を示したと報じられています。
地域の建設会社が事業承継できなくなれば、地域経済、雇用、災害対応にも影響する可能性があります。
6.経済産業省・中小企業庁も事業承継への影響を問題提起
2026年9月16日の第6回有識者会議では、経済産業省・中小企業庁側からも、事業承継や成長政策との整合性について問題提起が行われました。
国税庁は、相続税評価の公平性を確保するという立場から見直しを進めています。
一方、経済産業省・中小企業庁は、中小企業の成長投資や事業承継を促進する立場にあります。
企業が利益を増やして成長するほど後継者の相続税負担が増加するのであれば、政府の成長政策との整合性が問題になります。
また、中小企業の収益構造や資産構成は業種によって大きく異なります。
建設業、製造業、不動産業、サービス業などに対して、一つの方式を適用した場合、評価額や税負担にどのような違いが生じるのか、慎重に検証する必要があります。
このように、非上場株式の評価見直しは、単なる相続税評価の問題ではなく、中小企業政策全体に関わる問題となってきました。
7.経済同友会――10月14日に政府・与党での包括的議論を要求
経済同友会は2026年5月12日に続き、10月14日にも非上場株式の評価見直しについて意見を公表しました。
経済同友会は、非上場株式の適正な評価を確保する必要性を認めています。
しかし、残余利益方式への見直しが中堅・中小企業の成長、円滑な事業承継、地域経済に悪影響を及ぼすことを懸念しています。
特に注目したいのは、財産評価基本通達の改正だけで対応するのではなく、政府・与党において中小企業政策との整合性も含めた包括的な議論を行うよう求めたことです。
つまり、国税庁の有識者会議で評価算式を検討するだけではなく、相続税制度や経済政策全体との関係を整理する必要があるという主張です。
この問題意識は、その後の自民党の緊急決議とも共通しています。
8.10月22日、自民党の合同会議で懸念が相次ぐ
2026年10月22日、自民党の日本成長戦略本部と中小企業・小規模事業者政策調査会の合同会議が開催されました。
自民党の公式発表によると、国税庁の評価見直し案について、政府の成長戦略に逆行するのではないかとの懸念が相次ぎました。
特に、収益力が高い企業や資産規模が大きい企業ほど、評価額が大幅に増加し、円滑な事業承継に支障を来す可能性が問題視されました。
相続税の納付のために、株式や事業資産を第三者へ売却せざるを得なくなるとの懸念も示されています。
それまで税務技術上の問題として検討されてきた非上場株式の評価見直しが、自民党の成長戦略や中小企業政策の問題として本格的に取り上げられるようになりました。
9.10月29日、自民党が緊急決議――国税庁の現行案を容認せず
そして2026年10月29日、自民党の日本成長戦略本部(本部長・岸田文雄元首相)は、非上場株式の評価見直しについて緊急決議を取りまとめました。
① 国税庁の現行案は容認できない
決議では、国税庁が示している現行案を容認できないとの立場を明確にしています。
これは、残余利益方式の還元率や計算期間など、個別の条件の修正を求めるだけではありません。
見直しの方向性そのものを再検討するよう求めるものです。
② 現行案を前提とせず、白地から議論する
決議では、現行案を検討の前提とせず、白地から議論するよう求めています。
つまり、残余利益方式を採用することを前提に計算条件だけを調整するのではなく、評価制度の在り方から改めて検討するという趣旨です。
③ 期限・結論ありきではなく総合的に検討する
さらに、成長志向型の相続税制度について、期限や結論を先に決めることなく、総合的に検討するよう求めています。
この点は、令和9年からの適用が決定していないことを理解するうえで特に重要です。
④ 事業承継税制の特例措置は切り分けて検討する
令和9年度末に期限を迎える法人版事業承継税制の特例措置については、非上場株式の評価見直しとは切り分けて検討するよう求めています。
中小企業の円滑な事業承継を促進するために必要な措置については、別途適切に対応するという考え方です。
今回の緊急決議により、国税庁の見直し案に対する慎重論が、自民党の政策組織による正式な決議として示されました。
ただし、これは政府による制度改正の中止決定ではありません。国税庁が現行案を正式に撤回したことを意味するものでもありません。
10.会計検査院の指摘から緊急決議までの時系列
| 日付 | 主体 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2024年11月6日 | 会計検査院 | 類似業種比準価額と純資産価額の大きな差を指摘 |
| 2026年4月20日 | 国税庁 | 第1回有識者会議。租税回避スキームへの対応も議論 |
| 5月12日 | 経済同友会 | 非上場株式の評価見直しについて意見を公表 |
| 5月~7月 | 国税庁 | 第2回~第4回有識者会議 |
| 8月20日 | 国税庁 | 第5回会議で残余利益方式への原則一本化案を提示 |
| 9月16日 | 国税庁 | 第6回会議で具体案と評価額の試算 |
| 9月18日 | 日本商工会議所 | 事業承継への重大な影響を懸念 |
| 9月18日 | 全国建設業協会 | 評価方法の見直し凍結を税制改正要望に追加 |
| 9月~10月 | 経済産業省・中小企業庁 | 事業承継や成長政策との整合性を問題提起 |
| 10月9日 | 全国建設業協会 | 国土交通省に見直し凍結を要望 |
| 10月14日 | 経済同友会 | 政府・与党での包括的議論を要求 |
| 10月22日 | 自民党 | 合同会議で国税庁案への懸念が相次ぐ |
| 10月29日 | 自民党・日本成長戦略本部 | 現行案を容認せず、白地からの再検討を求める緊急決議 |
今回の経緯を整理すると、次のような流れになります。
会計検査院による評価の公平性への問題提起
↓
国税庁による租税回避スキームへの対応を含む検討
↓
残余利益方式への抜本的な見直し案
↓
商工会議所・建設業界・経済同友会などから懸念が表明
↓
経済産業省・中小企業庁からも慎重な検討を求める意見
↓
2026年10月29日、自民党が国税庁の現行案を容認しないと緊急決議
11.令和9年からの非上場株式評価はどうなるのか
2026年10月31日現在、新しい評価方法や適用開始時期は決定していません。
国税庁の公式サイトには、9月16日の第6回有識者会議までの資料が掲載されていますが、第7回の開催予定は公表されていません。
また、第6回会議の議事要旨も作成中とされています。
ただし、会議日程が公表されていないことだけで、見直しが中止されたと判断することはできません。
10月29日の自民党の緊急決議を受け、今後の検討がどのように進むかについても、現時点では見通しが立っていません。
令和8年中に駆け込み贈与をした方がよいのか
新しい評価方式によって株価が上昇する可能性があるからといって、令和8年中の贈与が必ず有利になるわけではありません。
そもそも新しい評価方式が採用されるかどうかも、採用される場合の計算方法や適用開始時期も確定していません。
また、残余利益方式が採用された場合でも、すべての会社の株価が上昇するとは限りません。
会社の利益水準、資産構成、現行方式による評価額などによって、結果は異なります。
非上場株式の贈与や事業承継では、贈与税・相続税だけでなく、経営権の移転、後継者の状況、他の相続人との関係なども考慮する必要があります。
したがって、制度改正が決まったかのような説明を受けて、慌てて自社株式を贈与することは避けるべきでしょう。
現時点では、現行の財産評価基本通達に基づいて評価を行い、今後の正式な制度改正の動向を確認することが重要です。
12.税理士としての私見――評価見直しが白紙撤回されても、節税スキームが認められたわけではない
今回、自民党が国税庁の現行案を容認しないとする緊急決議を行いました。
仮に今後、残余利益方式への見直しが白紙撤回されたとしても、それによって従来の非上場株式の評価引下げスキームが税務上認められたことにはなりません。
この点は、特に注意が必要だと考えています。
財産評価基本通達6項は引き続き適用される
現行の財産評価基本通達には、総則6項があります。
総則6項では、通達に定める評価方法によることが著しく不適当と認められる財産については、国税庁長官の指示を受けて評価することとされています。
つまり、形式的には財産評価基本通達に従って株価を計算していても、その評価方法を適用することが著しく不適当と認められる場合には、通達による評価額がそのまま認められるとは限りません。
今回、国税庁が有識者会議で問題視してきた株価圧縮スキームについても、評価方式の見直しが中止されれば税務上の問題がなくなるというわけではありません。
ただし、節税目的だけで総則6項が適用されるわけではない
一方、節税を目的とした取引であれば、直ちに総則6項が適用されるというものでもありません。
最高裁令和4年4月19日判決は、財産評価基本通達による画一的な評価を行うことが、実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、通達評価額によらない評価が許されるという判断を示しました。
この判決は不動産の評価に関する事案ですが、総則6項の適用を検討するうえで重要な判断です。
通達による評価額と他の評価方法による価額に大きな差があることや、税負担を軽減する意図が存在することだけで、機械的に総則6項を適用できるわけではありません。
取引の経緯、経済的合理性、税負担への影響、他の納税者との公平性など、具体的な事実関係に基づく判断が必要となります。
株価引下げスキームには慎重な対応が必要
非上場株式についても、会社規模の変更、組織再編、株主構成の変更などを利用して、株式評価額を大幅に引き下げる対策には、個別の税務リスクが残ります。
もちろん、事業上の合理的な理由によって組織再編などを行い、その結果として株式評価額が変動することまで否定されるものではありません。
しかし、税負担の軽減を主な目的とした形式的な取引については、慎重な検討が必要です。
特に、今回の国税庁の有識者会議では、評価額圧縮スキームへの対応自体が問題として取り上げられていました。
評価方法の改正が実現しなかったとしても、国税庁の問題意識まで消えるわけではないと考えています。
評価制度の見直しが中止されることと、従来の株価引下げスキームが税務上容認されることは、まったく別の問題です。
税理士としては、制度改正の行方にかかわらず、取引の経済的合理性、事業上の必要性、実際の運営状況などを十分に確認する必要があります。
私自身、非上場株式の評価引下げを目的としたスキームについては、今後も慎重な対応が必要だと考えています。
国税庁案が白紙撤回されたとしても、租税回避スキームにお墨付きが与えられたわけではない。
これが、今回の一連の議論についての私の見解です。
まとめ――評価方法の見直しと租税回避への対応は別問題
今回の非上場株式評価見直しは、会計検査院による類似業種比準価額と純資産価額の大きな差への指摘がきっかけでした。
国税庁は、評価方式間の公平性や株価圧縮スキームへの対応を課題として、有識者会議で残余利益方式への抜本的な見直しを検討してきました。
しかし、検討が具体化するにつれ、中小企業の成長や事業承継に重大な影響が生じるとの懸念が広がりました。
商工会議所、全国建設業協会、経済同友会などから意見が表明され、経済産業省・中小企業庁からも慎重な検討を求める声が出ています。
そして10月29日、自民党の日本成長戦略本部は、国税庁の現行案を容認せず、白地から議論するよう求める緊急決議を取りまとめました。
今回の問題の本質は、相続税評価の公平性と、中小企業の成長・事業承継をどのように両立させるかという点にあります。
令和9年から残余利益方式による評価が始まると決まったわけではありません。
一方、仮に見直しが白紙撤回されたとしても、従来の株価引下げスキームが税務上認められたことにはなりません。
財産評価基本通達6項による個別の評価上の問題は、引き続き検討する必要があります。
制度改正が決定していないから駆け込み贈与を急ぐべきではなく、見直しが中止される可能性があるからといって安易な節税スキームに取り組むべきでもありません。
非上場株式の贈与や事業承継については、現行制度に基づく適正な評価を基本とし、会社の実態と事業承継の必要性を踏まえて判断することが重要だと考えています。
参考資料
- 会計検査院・令和5年度決算検査報告「取引相場のない株式の評価について」
- 国税庁・取引相場のない株式の評価に関する有識者会議
- 日本商工会議所・令和9年度税制改正に関する意見
- 日本工業経済新聞・全国建設業協会の見直し凍結要望
- 経済同友会・2026年10月14日の意見書
- 自民党・2026年10月22日の合同会議
- 自民党・2026年10月29日の緊急決議
- 最高裁令和4年4月19日判決(財産評価基本通達総則6項に関する判決)
※本記事は2026年10月31日現在の公表資料に基づいています。国税庁の検討案は確定した評価制度ではありません。また、第12節は筆者個人の税務実務上の見解です。








