非上場株式の評価方法を完全解説|財産評価基本通達178〜189-7の全体構造と実務のポイント

非上場株式の評価方法を完全解説|財産評価基本通達178〜189-7の全体構造と実務のポイント

非上場株式(取引相場のない株式)の相続税・贈与税における評価は、財産評価基本通達(以下「財基通」)第178条から第189条の7までの規定によって体系的に定められています。

本記事では、財基通178から189-7までの全規定を体系的に解説します。非上場株式の評価に携わる方の実務の参考としてご活用ください。

目次

全体の構造

財基通178〜189-7は、次の3つの層から構成されています。

  1. 株主の態様による振り分け(財基通178・188)
     → 誰が株主か(同族株主か否か)で評価方式を決定
  2. 評価会社の類型による振り分け(財基通189)
     → どのような会社か(通常の会社か特定評価会社か)で評価規定を選択
  3. 評価方式ごとの計算規定(財基通180〜188-2・189-2〜189-7)
     → 各評価方式の具体的な計算方法

財基通178 取引相場のない株式の評価上の区分

財基通178は、取引相場のない株式の評価方式を決定するための入口規定です。株主の会社に対する支配力の程度に応じて、評価方式を二つに大別します。

株主の区分適用評価方式
同族株主等(原則的評価方式対象者)原則的評価方式 → 財基通179へ
同族株主以外の株主等特例的評価方式(配当還元方式)→ 財基通188-2へ

判定の基準時は課税時期(相続開始日または贈与日)現在の株主構成です。「同族株主」の具体的な判定基準は財基通188が定めています。

財基通179 取引相場のない株式の評価方式

原則的評価方式の対象者については、財基通179によって会社の規模に応じた評価方式が決定されます。

会社規模評価方式選択肢
大会社類似業種比準方式純資産価額方式も可
中会社の大(L=0.90)折衷方式小会社方式も可
中会社の中(L=0.75)折衷方式小会社方式も可
中会社の小(L=0.60)折衷方式小会社方式も可
小会社純資産価額方式折衷方式(L=0.50)も可

会社規模は、従業員数(70人以上は無条件で大会社)・業種区分・総資産価額・取引金額(売上高)で判定します。総資産価額基準と取引金額基準はいずれか大きい方(納税者有利)を採用します。

財基通180 類似業種比準方式

類似業種比準方式は、評価会社と事業内容が類似する上場会社の株価を基準として、配当・利益・純資産の3要素を比較して評価額を算定する方式です。

類似業種比準価額 = A × {(b/B + c/C + d/D)÷ 3} × 斟酌率

記号内容
A類似業種の株価(課税時期の属する月等のうち最も低いものを選択可)
b / B評価会社 / 類似業種の1株当たり配当金額
c / C評価会社 / 類似業種の1株当たり利益金額
d / D評価会社 / 類似業種の1株当たり純資産価額(帳簿価額)

斟酌率は大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5です。

財基通181 評価会社の1株当たりの配当金額等の計算

類似業種比準計算における評価会社側の数値(b・c・d)の算定方法を定めます。

要素計算方法
1株当たり配当金額(b)直前期末以前2年間の配当金額の平均 ÷ 直前期末の株式数
(非経常的な配当・資本の払い戻し配当は除外)
1株当たり利益金額(c)直前期末の法人税申告書の所得金額等をベースに計算
1株当たり純資産価額(d)直前期末の帳簿価額による純資産 ÷ 株式数

財基通182 1株当たりの配当金額等の比準

評価会社と類似業種の1株当たりの資本金の額が異なる場合の修正計算を規定します。評価会社の資本金等の額を50円に換算したうえで比準要素(b・c・d)を計算します。

財基通183 帳簿価額による純資産価額

類似業種比準計算の比準要素d(1株当たり純資産価額)を帳簿価額ベースで計算することを定める規定です。財基通185の純資産価額方式(時価ベース)とは明確に区別されます。

財基通184 同族株主以外の株主等が取得した株式(上限規定)

配当還元価額が原則的評価方式による価額を超える場合には、原則的評価方式による価額を採用します。業績不振・無配会社では配当還元価額が高くなる場合があるため、この上限規定が意味を持ちます。

財基通185 純資産価額

評価会社の資産・負債を相続税評価額(時価)で評価し直した純資産額に基づいて1株当たりの評価額を算定します。

純資産価額 =(相続税評価額による純資産額 ― 評価差額に対する法人税等相当額)÷ 発行済株式数

なお、課税時期前3年以内に取得した土地・建物等については、路線価等の相続税評価額ではなく課税時期における通常の取引価額で評価します(相続直前の不動産取得による評価圧縮の防止)。

財基通186 利益積立金額および繰越利益剰余金等

純資産価額計算における利益積立金額の範囲と計算方法を規定します。直前期末から課税時期までの間の損益を反映させる中間修正の根拠規定です。

財基通186-2 評価差額に対する法人税額等に相当する金額

純資産価額計算における37%控除の算式を規定します。

控除額 =(相続税評価額による純資産 ― 帳簿価額による純資産)× 37%

評価差額がマイナス(含み損超過)の場合は控除しません(ゼロ)。37%は法人税・地方法人税・事業税等の合計を考慮した概算率です。

財基通187 1株当たりの純資産価額の計算の基礎となる事項

純資産価額計算上の発行済株式数の取扱いを規定します。課税時期現在の発行済株式数から自己株式を控除した数を分母とします。

財基通188 同族株主以外の株主等が取得した株式(判定基準)

財基通178の「同族株主」判定の具体的基準を定める規定です。財基通178と一体で機能します。

①同族株主のいる会社

株主の1人およびその同族関係者の議決権割合の合計が30%以上のグループが存在する会社(ただし50%超のグループがある場合はそのグループのみが同族株主)において、そのグループに属する株主が「同族株主」です。

同族株主であっても、中心的な同族株主がいる場合において、役員でなく・かつ課税時期後の議決権割合が5%未満の株主は配当還元方式が適用されます。

②同族株主のいない会社

議決権割合の合計が15%以上のグループに属する株主が原則的評価方式の対象です。ただし、そのグループに中心的な株主がいる場合において、役員でなく・かつ議決権割合が5%未満の株主は配当還元方式が適用されます。

「中心的な同族株主」の定義

同族株主の1人およびその配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族の議決権割合の合計が25%以上の株主です。

財基通188-2 配当還元方式

同族株主以外の株主に適用される特例的評価方式です。

配当還元価額 =(年配当金額 ÷ 10%)×(1株当たりの資本金等の額 ÷ 50円)

年配当金額は直前期末以前2年間の平均額(非経常的配当を除く)とし、2円50銭未満または無配の場合は2円50銭とします(下限設定)。

財基通189 特定の評価会社の株式

通常の財基通179による評価が適切でない特殊な会社類型を列挙し、別規定に振り分けます。財基通189に該当する会社は、通常の原則的評価方式に代えて以下の規定が適用されます。

特定評価会社の類型適用規定評価方式
①比準要素数1の会社財基通189-2純資産価額方式または折衷(0.75)
②株式等保有特定会社財基通189-3S1+S2方式または純資産価額方式
③土地保有特定会社財基通189-4純資産価額方式のみ
④開業後3年未満・比準要素数0の会社財基通189-5純資産価額方式のみ
⑤開業前・休業中の会社財基通189-6純資産価額方式のみ
⑥清算中の会社財基通189-7清算分配見込額の現価

財基通189-2 比準要素数1の会社

「比準要素数1の会社」の定義

類似業種比準の3要素(配当・利益・純資産)のうち、直前期末と直前々期末のいずれもゼロとなる要素が2つ以上ある会社です。

評価方式

純資産価額方式、または次の折衷方式のいずれか低い方を選択します。

評価額 = 純資産価額 × 0.75 + 類似業種比準価額 × 0.25

実務上の注意点:繰越欠損がある場合や無配会社では該当しやすいため、類似業種比準方式を適用する前に必ずチェックが必要です。

財基通189-3 株式等保有特定会社

「株式等保有特定会社」の定義

課税時期における評価会社の株式等の価額が総資産価額(相続税評価額)の50%以上を占める会社です。

評価方式

純資産価額方式、またはS1+S2方式のいずれか低い方を選択します。

区分内容
S1株式等以外の資産について、通常の財基通179の方式(類似業種比準・折衷等)で評価した価額
S2株式等について純資産価額方式で評価した価額

S1部分に通常の評価方式(類似業種比準等)を適用できるため、S1+S2方式の方が純資産価額単独より低くなる場合があります。持株会社・ホールディングスの評価で特に重要な規定です。

財基通189-4 土地保有特定会社

「土地保有特定会社」の定義

評価会社の土地等の価額が総資産価額(相続税評価額)に占める割合が、会社規模・業種に応じた一定割合以上の会社です。大会社・中会社は70%以上、小会社は一定の割合以上(業種により異なります)が目安です。

評価方式

純資産価額方式のみ。類似業種比準方式・折衷方式の選択はできません。

実務上の注意点:不動産賃貸業・建設業・土地開発業等では該当リスクが高いため、相続対策の前段階から土地等の割合をモニタリングしておくことが重要です。

財基通189-5 開業後3年未満の会社等

対象会社

  • 課税時期において開業後3年未満の会社
  • 比準要素数0の会社(3要素すべてがゼロ)

評価方式

純資産価額方式のみ。

実務上の注意点:節税目的で新設した持株会社・不動産管理会社が開業後3年以内に相続が発生すると本条に該当します。対策スキームの実行タイミングに注意が必要です。

財基通189-6 開業前または休業中の会社

対象会社

  • 設立後、いまだ事業を開始していない会社(開業前)
  • 事業活動を停止し、将来再開の見込みがない状態の会社(休業中)

評価方式

純資産価額方式のみ。

実務上の注意点:休眠会社に含み資産がある場合、純資産価額が高くなることがあります。相続対策の観点から休眠会社の整理・清算を検討するケースもあります。

財基通189-7 清算中の会社

対象会社

課税時期において清算手続き中の会社。

評価方式

清算の結果、株主に分配されると見込まれる金額を、課税時期から分配見込み時期までの期間に応じて複利現価で割り引いた額とします。

評価額 = 清算により分配を受けると見込まれる金額 × 複利現価率

清算期間が長期になるほど評価額は低下します。債務超過清算の場合は評価額ゼロとなります。

財基通178〜189-7 全体フロー

以上の規定全体を整理すると、次のフローで非上場株式の評価が行われます。

  1. 財基通178・188 株主の態様判定(同族株主か否か)
  2. 同族株主以外 → 財基通188-2(配当還元方式)で評価終了
  3. 同族株主等 → 財基通189(特定評価会社の確認)へ
  4. 特定評価会社に該当 → 財基通189-2〜189-7の各規定を適用
  5. 通常の評価会社 → 財基通179(会社規模の判定)へ
  6. 大会社 → 財基通180(類似業種比準方式)を適用
  7. 中会社 → 財基通180+財基通185(折衷方式)を適用
  8. 小会社 → 財基通185(純資産価額方式)を適用

まとめ

財基通178から189-7は、取引相場のない株式の評価に関する体系的な規定群です。各規定は相互に連動しており、評価の入口(株主の態様判定)から出口(具体的な計算)まで一貫したルールで構成されています。

非上場株式の評価においては、

  • 株主区分の正確な判定(財基通178・188)
  • 特定評価会社への該当チェック(財基通189)
  • 会社規模の判定と評価方式の選択(財基通179)
  • 納税者有利な計算方法の選択(株価・斟酌率・折衷方式等)

これらを総合的に検討することが重要です。相続・事業承継の場面では、これらの評価規定を踏まえた事前の対策設計が評価額の最適化につながります。

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