類似業種比準方式の計算で迷う13の事例|国税庁の質疑応答を解説【スタッフ向け】

類似業種比準方式の計算で迷う13の事例|国税庁の質疑応答を解説【スタッフ向け】

非上場会社の株式(取引相場のない株式)を評価するとき、会社の規模によっては「類似業種比準方式」を使います。相続・贈与・事業承継・M&Aの場面でよく登場する評価方式ですが、実際に計算すると「この金額は入れるの? 除くの?」と迷う場面が少なくありません。

国税庁は、こうした迷いやすい点を「質疑応答事例(財産評価)」として公表しています。この記事では、そのうち類似業種比準方式に関する13問を、Q&A形式でわかりやすく整理しました。各Q&Aの末尾に国税庁の原文へのリンクを付けていますので、実務の際は必ず原文もご確認ください。

目次

まず押さえたい基本

類似業種比準方式は、評価する会社(評価会社)と、事業内容が似ている上場会社の平均(類似業種)を、次の3つの要素で比べて株価を求める方法です。

  • ⓑ 1株当たりの配当金額(配当)
  • ⓒ 1株当たりの利益金額(利益)
  • ⓓ 1株当たりの純資産価額(簿価純資産)

評価会社の比準要素の計算方法は、財産評価基本通達183に定められています。配当は183(1)、利益は183(2)、純資産は183(3)です。今回の13問は、この計算の「細かい判断」に答えるものです。

13問の早見表

Qテーマ結論(ひとことで)関係する要素
1直後期末の方が課税時期に近いそれでも直前期末の数値で評価する全般
2株主優待利用券等の経済的利益配当に加算しないⓑ 配当
3固定資産の譲渡が数回ある損益を通算し、利益なら除外するⓒ 利益
4種類の異なる非経常的な損益種類が違っても通算するⓒ 利益
5継続的な有価証券売却益個別に判定するⓒ 利益
6外国子会社からの剰余金の配当等益金不算入額を加算する(例外あり)ⓒ 利益
7譲渡損益調整資産の譲渡等繰延べ分は加算せず、戻入益は除外するⓒ 利益
8寄附修正による利益積立金額の変動調整しないⓓ 純資産
9自己株式取得によるみなし配当(発行会社側)配当金額に含めないⓑ 配当
10みなし配当(株式を譲渡した会社側)原則、加算しないⓒ 利益
11現物分配で資産を移転した配当が毎期継続するかで判断するⓑ 配当
12適格現物分配で資産の移転を受けた原則、加算しないⓒ 利益
13グループ通算制度の損益通算等他社分の通算額を加減算して計算するⓒ 利益

Q1 直後期末の方が課税時期に近い場合

Q. 課税時期(相続や贈与の日)が、直前期末よりも直後期末に近い場合でも、直前期末の数値で評価するのでしょうか。

A. 直前期末の数値で評価します。

理由 類似業種比準価額では、評価会社と比べる側(標本会社)の数値を、できるだけ同じ基準で算定することが適正な評価につながります。あわせて、課税時期より後に生じた影響を排除する意味もあります。そのため、直後期末のほうが課税時期に近くても、直前期末の数値を使います。

関係通達 財産評価基本通達183

国税庁の原文:直後期末の方が課税時期に近い場合

Q2 株主優待利用券等による経済的利益相当額がある場合(ⓑ 配当)

Q. 株主優待利用券などで株主が受ける経済的利益の相当額は、1株当たりの配当金額に加算する必要がありますか。

A. 加算する必要はありません。

理由 株主優待利用券等は、会社の利益の有無にかかわらず株主に提供されるものです。株式に対する剰余金の配当(利益の分配)とは認め難いため、配当金額に加えません。

関係通達 財産評価基本通達183(1)、所得税基本通達24-2

国税庁の原文:1株当たりの配当金額ⓑ――株主優待利用券等による経済的利益相当額がある場合

Q3 固定資産の譲渡が数回ある場合(ⓒ 利益)

Q. 利益金額の計算では、固定資産売却益などの非経常的な利益を除外します。期中に固定資産を何回か譲渡し、売却益と売却損が混在しているときは、どう処理しますか。

A. 個々の譲渡損益を通算し、利益が残る場合にその金額を除外します。

理由 非経常的な利益を除外するのは、会社に臨時・偶発的に生じた収益力を排除し、本業による経常的な収益力を株価に反映させるためです。この場合の非経常的な利益は、臨時・偶発的に生じた個々の利益を全体として見たものを指すため、損益を通算してから判断します。

関係通達 財産評価基本通達183(2)

国税庁の原文:1株当たりの利益金額ⓒ――固定資産の譲渡が数回ある場合

Q4 種類の異なる非経常的な損益がある場合(ⓒ 利益)

Q. たとえば固定資産売却損と保険差益のように、種類の異なる非経常的な損益があるときも、通算してから利益金額を計算しますか。

A. 種類が異なっていても通算します。

理由 除外する非経常的な利益は、課税時期の直前期末以前1年間における非経常的な利益の全体をいいます。そのため、種類が違っても通算し、利益が残る場合にその金額を除外します。

関係通達 財産評価基本通達183(2)

国税庁の原文:1株当たりの利益金額ⓒ――種類の異なる非経常的な損益がある場合

Q5 継続的に有価証券売却益がある場合(ⓒ 利益)

Q. 直前期以前の相当期間にわたり、毎期のように有価証券売却益が出ている会社では、その売却益は非経常的な利益に当たらないのでしょうか。

A. 経常的か非経常的かは、個別に判定します。

判定の視点 国税庁は、次の点を考慮して判断するとしています。

  • 評価会社の事業の内容
  • その利益の発生原因
  • 発生原因となった行為が、反復・継続しているのか、臨時・偶発的なのか

「毎期出ているから経常的」と一律に決まるわけではなく、会社の実態に即して判断する、という整理です。

関係通達 財産評価基本通達183(2)

国税庁の原文:1株当たりの利益金額ⓒ――継続的に有価証券売却益がある場合

Q6 外国子会社等から剰余金の配当等がある場合(ⓒ 利益)

Q. 評価会社が外国子会社などから剰余金の配当等を受けたとき、利益金額はどう計算しますか。

A. 法人税法23条の2の適用を受ける外国子会社からの配当等は、「受取配当等の益金不算入額」を加算して利益金額を計算します。

評価明細書の書き方 「第4表の1 類似業種比準価額等の計算明細書」で、次のとおり記載します。

  • ⑬「受取配当等の益金不算入額」欄に、その益金不算入額を加算する
  • 加算した配当等に係る外国源泉税等の支払いがある場合は、その金額を⑭「左の所得税額」に加算する

例外 租税特別措置法66条の8第1項・第2項に規定する外国法人(いわゆる外国子会社合算税制の対象)から受ける配当等のうち、その外国法人の特定課税対象金額に達するまでの金額は、すでに評価会社の課税所得に含まれています。そのため、この部分は利益金額に加算しません(同法66条の9の4第1項・第2項により益金に算入しない配当等も同様です)。

関係法令通達 財産評価基本通達183(2)、法人税法23条の2、租税特別措置法66条の8・66条の9の4

国税庁の原文:1株当たりの利益金額ⓒ-外国子会社等から剰余金の配当等がある場合

Q7 譲渡損益調整資産の譲渡等があった場合(ⓒ 利益)

Q. 評価会社が、完全支配関係のある法人に対して「譲渡損益調整資産」(法人税法61条の11)を譲渡し、その譲渡益が税務上は繰り延べられた場合、利益金額の計算で法人税の課税所得金額に加算する必要はありますか。また、その後に資産の再譲渡などがあり、繰り延べていた損益が戻し入れられたときは、どう扱いますか。

A.

  1. 繰り延べられた譲渡益は、利益金額の計算上、法人税の課税所得金額に加算する必要はありません。
  2. 繰り延べていた損益の戻入益は、原則として非経常的な利益として、課税所得金額から控除します。戻入益と戻入損の両方があるときは、他の非経常的な損益と合算して通算し、利益が残ればその金額を控除します。
  3. この場合、「第4表の1」の⑫「非経常的な利益金額」欄に、戻入益の金額を加算して計算します。

理由 譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地、有価証券(売買目的有価証券を除く)、金銭債権、繰延資産のうち一定のものをいいます。通常、これらの資産の譲渡益は非経常的な利益に当たると考えられるため、繰り延べられた分を加算する必要はありません。また、後に計上される戻入益・戻入損も、非経常的な損益と同様に扱います。

関係法令通達 財産評価基本通達183(2)、法人税法61条の11

国税庁の原文:1株当たりの利益金額ⓒ-譲渡損益調整資産の譲渡等があった場合

Q8 寄附修正により利益積立金額が変動する場合の調整(ⓓ 純資産)

Q. 完全支配関係のある親法人が子法人に寄附をした場合、親法人の利益積立金額は、税務上、寄附金に相当する金額だけ増加します(寄附修正)。評価会社である親法人の1株当たりの純資産価額ⓓを計算するとき、この利益積立金額の増加について調整する必要はありますか。

A. 利益積立金額の増減について調整する必要はありません。

理由 ⓓは、直前期末における法人税法上の資本金等の額と利益積立金額に相当する金額の合計額によります。この金額は、納税者の負担などの観点から、法人税法上の処理のとおりに取り扱うことが基本です。そのため、完全支配関係のある法人間の寄附に伴い税務上の利益積立金額が増加しても、ⓓの計算で追加の調整は不要です。

関係法令通達 財産評価基本通達183(3)、法人税法施行令9条1項7号

国税庁の原文:1株当たりの純資産価額ⓓ-寄附修正により利益積立金額が変動する場合の調整

Q9 自己株式の取得によるみなし配当の金額がある場合(ⓑ 配当)

Q. 会社が自己株式を取得した結果、株式を譲渡した法人にみなし配当(法人税法24条1項)が生じました。株式を取得した側の会社(株式発行法人)を評価するとき、そのみなし配当の金額を、1株当たりの配当金額ⓑに含める必要はありますか。

A. 含める必要はありません。

評価明細書の書き方 「第4表の1」の⑥「年配当金額」欄には、みなし配当の金額を控除した後の金額を記載します。

理由 みなし配当は会社法上の「剰余金の配当」には当たりません。また、通常は、剰余金の配当から除くこととされている「将来毎期継続することが予想できない金額」に該当すると考えられるためです。

関係法令通達 財産評価基本通達183(1)、法人税法24条

国税庁の原文:1株当たりの配当金額ⓑ-自己株式の取得によるみなし配当の金額がある場合

Q10 みなし配当の金額がある場合(ⓒ 利益)

Q. 評価会社が持っていた株式を、その株式の発行会社に譲渡してみなし配当が生じたとき、そのみなし配当の金額は、利益金額ⓒの計算で「益金に算入されなかった剰余金の配当等」として加算しますか。

A. 原則として、加算する必要はありません。

評価明細書の書き方 「第4表の1」の⑬「受取配当等の益金不算入額」欄には、みなし配当の金額を控除した後の金額を記載します。

理由 利益金額から非経常的な利益を除くのは、臨時・偶発的な収益力を排除するためです。みなし配当の原因となる合併や、発行会社への株式の譲渡などは、通常、臨時・偶発的なものと考えられます。そのため、非経常的な利益と同じように扱うのが相当で、原則として「益金に算入されなかった剰余金の配当等」には当たりません。

関係法令通達 財産評価基本通達183(2)、法人税法24条

国税庁の原文:1株当たりの利益金額ⓒ-みなし配当の金額がある場合

Q11 現物分配により資産の移転をした場合(ⓑ 配当)

Q. 評価会社が現物分配(金銭以外の資産による分配)で資産を移転した場合、その資産の価額を、1株当たりの配当金額ⓑの計算上、剰余金の配当金額に含めますか。

A. 現物分配のもとになった剰余金の配当が、将来毎期継続することが予想できるかどうかで判断します。

継続が予想できる場合は、移転した資産の価額として株主資本等変動計算書に記載された金額を、剰余金の配当金額に含めて計算します。

注意点 現物分配のうち、法人税法24条1項4号から7号に規定するみなし配当事由によるものは、会社法上の剰余金の配当には当たりません。そのため、通常は配当金額に含める必要はありません。

関係法令通達 財産評価基本通達183(1)、法人税法2条12号の5の2、24条1項4号〜7号

国税庁の原文:1株当たりの配当金額ⓑ-現物分配により資産の移転をした場合

Q12 適格現物分配により資産の移転を受けた場合(ⓒ 利益)

Q. 適格現物分配で資産の移転を受けたときの収益は、法人税法62条の5第4項により益金不算入です。これは、利益金額ⓒの計算で「益金に算入されなかった剰余金の配当等」として加算する必要がありますか。

A. 原則として、加算する必要はありません。

理由 形式上は剰余金の配当という形をとっていても、適格現物分配は組織再編成の一形態です。資産の移転は、通常、組織再編成を目的とした、グループ法人全体の臨時・偶発的な行為と考えられます。したがって、その収益は通常、非経常的な利益に当たるため、「益金に算入されなかった剰余金の配当等」として加算しません。なお、ある利益が経常的か非経常的かは、事業の内容、収益の発生原因、反復継続性か臨時偶発性かなどを考慮して個別に判断する、という点は変わりません。

関係法令通達 財産評価基本通達183(2)、法人税法2条12号の15、62条の5第4項

国税庁の原文:1株当たりの利益金額ⓒ-適格現物分配により資産の移転を受けた場合

Q13 グループ通算制度における損益通算等の適用がある場合(ⓒ 利益)

Q. 評価会社が、グループ通算制度の損益通算や欠損金の通算によって、同じ通算グループ内の他の会社の欠損金額を損金に算入している場合、利益金額ⓒの計算の基になる「法人税の課税所得金額」はどう計算しますか。

A. 評価会社の所得の金額に、他社分の通算額を加減算して「法人税の課税所得金額」を計算します。

  • 法人税法64条の5(損益通算)により、他の会社から配賦された通算対象欠損金額を損金に算入している場合
  • 同法64条の7(欠損金の通算)により、他の会社の非特定欠損金額を損金に算入している場合

これらに該当するときは、評価会社の所得の金額に、その損金算入額を加算して「法人税の課税所得金額」を計算します。なお、他の会社から配賦された通算対象所得金額を益金に算入している場合は、評価会社の所得の金額から、その益金算入額を減算して計算します。

計算のイメージ 国税庁の例では、次のように考えます。

  • P社の所得の金額:100
  • S社から配賦された通算対象欠損金額の損金算入額:300
  • S社の非特定欠損金額の損金算入額:100
  • P社の「法人税の課税所得金額」:100+300+100=500

理由 ⓒは、評価会社の経常的な収益力を表すものとして採用され、評価会社の直前期末以前1年間の「法人税の課税所得金額」を基に計算します。通算制度では、他の会社の損益が評価会社の所得の金額に反映されます。その金額はそのままでは評価会社自身の収益力を表さないため、他社分を調整した金額を基にする必要があります。

評価明細書の書き方 「第4表の1」の記載に当たっては、通算に関する調整額を区分して記載する方法のほか、区分することが困難な場合に合計額を一括して記載する方法も示されています。具体的な記載例は、原文をご確認ください。

関係法令通達 財産評価基本通達183(2)、法人税法64条の5、64条の7

国税庁の原文:1株当たりの利益金額ⓒ-グループ通算制度における損益通算等の適用がある場合

実務で迷ったときのポイント

13問を通して見ると、考え方は大きく次の3つに整理できます。

  1. ⓒ(利益)は「経常的な収益力」を見る 固定資産の譲渡益、保険差益、みなし配当、適格現物分配の収益、譲渡損益調整資産の戻入益など、臨時・偶発的なものは除外するのが基本です(Q3・Q4・Q7・Q10・Q12)。ただし、Q5のように、継続して生じている利益は実態に応じた個別判断になります。
  2. ⓑ(配当)は「毎期続く配当」を見る 将来毎期継続することが予想できない金額や、会社法上の配当に当たらないもの(優待、みなし配当)は含めません(Q2・Q9・Q11)。
  3. ⓓ(純資産)は法人税法上の数字をそのまま使う 寄附修正による利益積立金額の増減でも、追加調整はしません(Q8)。

評価会社の実態によって、個々の判断が変わることもあります。国税庁の各事例の注記にも、具体的な取引に当てはめる場合は、回答内容と異なる課税関係が生じることがある旨が記載されています。

ご相談はお気軽に

非上場株式の評価は、相続税・贈与税の申告、事業承継、M&A、組織再編のいずれの場面でも、金額に大きく影響します。類似業種比準方式の計算や、評価額を踏まえた対策についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

税理士法人松野茂税理士事務所

  • 所在地:〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F(阪神尼崎駅徒歩1分)
  • 電話:06-6419-5140

参考 国税庁 質疑応答事例(財産評価):https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/01.htm

※本記事は、国税庁が公表している質疑応答事例(各事例の注記により令和7年8月1日現在または令和8年7月1日現在の法令・通達等に基づくもの)を、一般向けに要約・解説したものです。具体的な事案への適用に当たっては、個別の事情により取扱いが異なる場合がありますので、専門家にご相談ください。

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