無償返還届出書がある会社の株式評価|借地権20%を加算する場合・しない場合

無償返還届出書がある会社の株式評価|借地権20%を加算する場合・しない場合

同族会社が個人所有の土地を借り、「土地の無償返還に関する届出書」を提出している場合、非上場株式の純資産価額方式による評価では、土地の自用地価額の20%を借地権相当額として加算することがあります。

しかし、無償返還届出書が提出されていれば、必ず20%を加算するわけではありません。

原則として、借地会社の借地権の評価額は0円です。一定の同族関係にある場合に、株式評価上、特別に20%相当額を純資産価額に算入する取扱いがあります。

また、土地所有者と株式所有者が異なる場合、土地が共有の場合、借地会社が建物を第三者に賃貸している場合などでは、加算の適否や計算額が異なります。

さらに、地代を支払わない使用貸借の場合には、土地の評価方法そのものが異なります。

目次

1.無償返還届出書がある場合、借地権は原則0円

個人が所有する土地を同族会社に貸し付け、その会社が土地上に建物を所有している場合、借地権の評価が問題になります。

土地の無償返還に関する届出書が適正に提出されている場合、昭和60年の相当地代通達5及び8では、原則として次の取扱いが示されています。

評価対象評価方法
借地会社の借地権原則0円
土地所有者の貸宅地自用地価額の80%
一定の同族会社株式借地権相当額20%を純資産価額に算入

ここで重要なのは、借地権の評価額を原則0円とすることと、一定の同族会社株式の評価に20%相当額を加算することは、別の取扱いだという点です。

無償返還届出書があるという理由だけで、会社に自用地価額の20%相当の借地権が当然に存在するわけではありません。

2.貸宅地を80%で評価する理由

例えば、自用地価額1億円の土地を同族会社に貸し付けているとします。

無償返還届出書が提出されている場合、貸宅地の評価額は原則として次の金額になります。

1億円 × 80% = 8,000万円

では、会社の借地権評価額が0円であるのに、なぜ土地の評価額から20%を控除するのでしょうか。

これは、土地所有者の使用収益に制約があることによります。

土地を賃貸し、借地会社が建物を所有している以上、土地所有者はその土地を自用地と同じように自由に使用できません。

そこで、借地借家法上の利用制限などを考慮して、貸宅地を自用地価額の80%で評価する取扱いが設けられています。

土地を20%減額する理由と、同族会社の株式評価に20%を加算する理由は、区別して考える必要があります。

3.使用貸借の場合は土地を100%で評価する

ここで、賃貸借と使用貸借の違いも確認しておきましょう。

例えば、父親が所有する土地を、父親が株式100%を所有する同族会社に無償で使用させ、会社がその土地に建物を所有している場合です。

土地の無償返還に関する届出書が提出されていたとしても、実態が使用貸借であれば、通常の賃貸借とは評価方法が異なります。

使用貸借の場合、土地は原則として自用地価額の100%で評価します。

相続税評価上、使用貸借による土地の使用権の価額は原則0円です。

したがって、自用地価額1億円の土地であれば、土地の評価額も原則1億円となります。

また、使用貸借の場合には、相当地代通達8の賃貸借を前提とした20%加算の取扱いも、原則として適用しません。

賃貸借と使用貸借の比較

項目賃貸借(無償返還届出あり)使用貸借
地代有償原則無償
土地の相続税評価自用地価額の80%自用地価額の100%
借地人の権利評価原則0円原則0円
株式評価への20%加算一定の場合に必要原則対象外

なお、賃貸借か使用貸借かは、契約書の名称だけでなく、地代の支払状況や契約内容などから判断します。

公租公課相当額以下の負担で土地を利用している場合も、使用貸借として取り扱われることがあります。

また、会社と役員等との無償取引については、相続税評価とは別に、法人税上の課税関係を確認する必要があります。

4.同族会社の株式評価で20%を加算する理由

昭和43年10月28日付の通達では、一定の同族会社の株式評価において、借地権相当額20%を純資産価額に算入する取扱いが示されています。

その趣旨は、土地所有者と借地会社の同族関係を考慮し、土地と株式の評価を通じて土地の価額を100%反映させ、相続税の課税上の公平を図ることにあります。

例えば、父親が土地と同族会社の株式100%を所有している場合です。

土地の自用地価額が1億円であれば、

評価対象評価額
父親の貸宅地8,000万円
会社の純資産価額に加算する借地権相当額2,000万円
合計1億円

土地と株式を通じて、自用地価額の100%が反映されることになります。

ただし、株式の保有割合が100%でない場合には、土地と株式の評価額を合計しても必ずしも100%になるとは限りません。

平成27年3月25日裁決でも、この点について言及されています。

20%加算は、会社の借地権を一般的に20%で評価する取扱いではなく、一定の同族関係に着目した特別な評価上の取扱いと理解できます。

税務大学校論叢第112号から考える20%評価減と株式評価

この取扱いを理解するうえで参考になるのが、税務大学校論叢第112号(令和6年6月)に掲載された出田潤二氏の論文「権利の設定された土地の評価の在り方」です。

同論文では、無償返還届出書が提出されている場合について、明らかに経済的利益が移転しているという特別な事情がない限り、相当地代通達5及び8に従って評価することが原則であるとの見解が示されています。

ここで重要なのは、次の2つを区別することです。

  • 借地人の借地権評価が0円となる理由:無償返還の合意があり、借地権相当の経済的利益が移転していないことを前提としているためです。
  • 土地所有者の貸宅地評価が80%となる理由:借地人が現に土地を使用していることによる利用・処分上の制約を、土地所有者側の評価に反映するためです。

つまり、貸宅地の20%評価減は、借地人に20%相当の借地権が移転したことを意味するものではありません。

一方、借地人が同族会社である場合には、昭和43年10月28日付通達によって、一定の株式評価において自用地価額の20%相当額を純資産価額に算入する取扱いがあります。

これは、借地権そのものを20%で評価するという一般的な取扱いとは異なり、土地所有者と同族会社の株主との関係を考慮した、株式評価上の特別な取扱いです。

したがって、借地権を0円と評価すること、貸宅地を80%で評価すること、同族会社の株式評価で20%を加算することは、それぞれの評価目的と適用要件を区別して理解する必要があります。

なお、税務大学校論叢は研究論文であり、国税庁の公式見解を示すものではありません。

参考資料: 出田潤二「権利の設定された土地の評価の在り方」税務大学校論叢第112号(令和6年6月)

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/112/01/01.pdf

5.土地所有者と株式所有者が異なる場合

東京国税局の「資産税質疑事例集」(令和5年6月作成)には、土地所有者と株式の被相続人が異なる場合の取扱いが示されています。

事例① 土地は妻、株式は夫が所有

A社は、妻が所有する土地を借り、その土地に建物を所有しています。

無償返還届出書は提出済みです。

一方、A社株式100%を所有しているのは夫です。

夫が死亡し、妻がA社株式100%を相続しました。

この場合、夫の相続税申告においてA社株式を純資産価額方式で評価するとき、土地の自用地価額の20%を借地権相当額として加算する必要があるのでしょうか。

東京国税局の回答は、20%相当額を加算する必要はないというものです。

土地を所有していたのは妻であり、被相続人である夫は土地を所有していません。

夫の相続財産にはA社株式が含まれますが、貸宅地は含まれていません。

この事例では、土地所有者と株式の被相続人が異なることから、20%加算を行わない取扱いが示されています。

したがって、土地所有者が株式所有者の同族関係者であるという理由だけで、20%相当額を一律に加算するわけではありません。

6.土地と株式を所有する父が、株式だけを子に贈与した場合

次に、生前贈与の事例です。

事例② 株式の先行贈与

父親は土地を所有し、その土地を同族会社A社に貸し付けています。

A社は土地上に建物を所有し、無償返還届出書も提出しています。

父親はA社株式100%を所有していましたが、事業承継のため、その株式をすべて子に贈与しました。

贈与後は、土地を父親、株式を子が所有することになります。

この場合、子の贈与税申告における株式評価では、20%相当額を加算するのでしょうか。

東京国税局の回答は、20%相当額を加算するというものです。

ただし、この質疑応答では、贈与者が土地と株式の双方を所有している場合を対象とすることが明示されています。

父親が土地と株式を所有している段階で株式だけを先に贈与し、その後、土地を相続させる場合、贈与時に20%を加算しなければ、その相当額が相続税・贈与税の課税対象から抜け落ちる可能性があります。

この問題は、平成27年3月25日の国税不服審判所裁決でも争われています。

7.平成27年3月25日裁決では、生前贈与にも20%加算を認めた

平成27年3月25日裁決は、同族会社株式を父親から子に贈与した場合に、借地権相当額20%を純資産価額に算入すべきかが争われた事例です。

ただし、この裁決は無償返還届出書の事例ではなく、相当の地代を収受していた事例です。

納税者側の主張

納税者は、借地権相当額を加算せず、借地権の評価額を0円として株式を評価しました。

その理由として、20%加算の趣旨は相続時に土地と株式を通じて土地の価額を100%評価することにあり、贈与の場合には適用すべきではないと主張しました。

株式を贈与された子が、将来その土地まで相続するとは限りません。

したがって、贈与時に20%を加算するのは合理的ではないという考え方です。

審判所の判断

審判所は、土地所有者が同族会社の株式を子に贈与した場合について、借地権相当額を純資産価額に算入する取扱いを認めました。

株式を先に贈与し、その後、土地を贈与又は相続することで、借地権相当額が課税対象から抜け落ちる結果を防止するという考え方です。

また、審判所は、関係通達について、借地権相当額を算入すべき場合を必要十分に示しているものではないという趣旨の判断も示しています。

したがって、相続税の場合を前提とした通達の文言だけを理由として、贈与税では20%加算が不要になるとはいえません。

もっとも、この裁決によって、すべての同族会社株式の贈与に20%加算が必要となるわけではありません。

土地所有者、贈与者及び受贈者との関係を踏まえた検討が必要です。

参考:国税不服審判所・平成27年3月25日裁決

8.借地会社が建物を第三者に賃貸している場合

東京国税局の質疑応答事例には、借地会社が建物を第三者に賃貸している場合の取扱いもあります。

事例③ 貸家建付借地権の評価

父親は土地とA社株式100%を所有しています。

A社は父親から土地を借り、その土地に賃貸用建物を所有しています。

無償返還届出書も提出されています。

父親が死亡し、妻がA社株式100%を相続しました。

この場合、株式評価で加算する借地権相当額は、土地の自用地価額の20%でよいのでしょうか。

東京国税局は、貸家建付借地権として評価する取扱いを示しています。

建物を第三者に賃貸しているため、借家人の敷地利用権を考慮する必要があるからです。

計算式は次のとおりです。

自用地価額 × 20% ×(1-借家権割合 × 賃貸割合)

例えば、土地の自用地価額が1億円、借家権割合30%、賃貸割合100%の場合は、

1億円 × 20% ×(1-30% × 100%)

= 1,400万円

となります。

通常の20%加算であれば2,000万円ですが、貸家建付借地権として評価するため、1,400万円となります。

なお、これは20%加算の対象となる場合の計算です。20%加算自体が不要となる場合には、この計算は行いません。

9.土地が共有の場合は被相続人の持分に対応する金額を加算

土地が共有となっている場合にも注意が必要です。

東京国税局の「資産税審理研修資料」(平成16年12月作成)には、共有土地に関する事例があります。

事例④ 被相続人と相続人が土地を2分の1ずつ共有

被相続人と相続人が土地をそれぞれ2分の1ずつ所有しています。

その土地を、被相続人が株式100%を所有する同族会社A社に貸し付けています。

A社は土地上に建物を所有しており、無償返還届出書も提出されています。

被相続人が死亡し、相続人がA社株式100%を取得しました。

この場合、会社の純資産価額に加算する借地権相当額は、土地全体の20%でしょうか。

東京国税局の回答は、被相続人の土地持分に対応する借地権相当額だけを加算するというものです。

例えば、土地全体の自用地価額が1億円の場合、

1億円 × 20% × 1/2

= 1,000万円

となります。

土地全体に対応する2,000万円を加算するわけではありません。

これは、被相続人が所有していた土地が共有持分2分の1であることを考慮した取扱いと理解できます。

株式を100%所有している場合であっても、土地が共有であれば、被相続人の土地持分を確認する必要があります。

10.土地所有者が会社株式を所有していない場合

土地所有者が同族会社に土地を貸しているものの、その会社の株式を所有していない場合もあります。

無償返還届出書が提出された賃貸借であれば、貸宅地は原則として自用地価額の80%で評価します。

一方、借地会社の借地権評価額は原則0円です。

土地所有者が会社株式を保有していなければ、その土地所有者の相続財産には、借地権相当額20%を反映させるための株式はありません。

しかし、それだけで、別の株主の株式評価に当然に20%相当額を加算することにはなりません。

東京国税局の事例①でも、土地所有者と株式の被相続人が異なる場合には、20%加算不要という取扱いが示されています。ただし、株式の相続・贈与の関係者や土地所有者との関係によっては、個別の検討が必要です。

土地は妻乙が所有し、夫甲は土地を借りているX社の株式100%を所有。土地所有者と株式所有者が異なる場合の関係図。

図:土地所有者と株式所有者が異なる場合の例

土地は妻が所有し、夫は借地人である同族会社の株式を所有しています。TACTニュースでは、このような場合、夫の相続に係る株式評価で20%相当額を加算する必要はないとの見解が示されています。

※この取扱いは通達の文言等に基づく解釈であり、すべての事例について加算不要と確定しているものではありません。

11.実務で確認したい事項

今回の事例を整理すると、次のようになります。

事例株式評価の取扱い
土地は妻、株式は夫が所有し、夫が死亡20%加算不要
土地と株式を所有する父が株式だけを子に贈与20%加算
借地会社が建物を第三者に賃貸20%を基礎に借家人の権利分を減額
土地を被相続人と相続人が各2分の1共有被相続人の持分に対応する額を加算
土地が使用貸借で貸し付けられている相当地代通達8による20%加算は原則対象外

これらは、それぞれの事例の事実関係を前提とした取扱いです。

実務では、非上場株式の純資産価額方式による評価に当たり、次の点を確認する必要があります。

  1. 土地の貸付けは賃貸借か、使用貸借か。
  2. 土地の無償返還に関する届出書は提出されているか。
  3. 土地所有者と株式の被相続人・贈与者は誰か。
  4. 土地と株式を同じ人が所有しているか。
  5. 土地が共有となっていないか。
  6. 借地会社の建物を第三者に賃貸していないか。
  7. 株式の相続と贈与のどちらに該当するか。

無償返還届出書が提出されているという理由だけで、機械的に借地権相当額20%を純資産価額に加算することは避ける必要があります。

まとめ|借地権20%加算は一定の場合の特別な取扱い

土地の無償返還に関する届出書が提出されている場合、借地会社の借地権評価額は原則0円です。

土地所有者の貸宅地は原則として自用地価額の80%で評価されますが、これは土地の利用制限を考慮した取扱いです。

一方、同族会社の株式評価における20%加算は、一定の同族関係や課税上の公平を考慮した特別な取扱いです。

東京国税局の質疑応答事例からも、土地所有者と株式の被相続人が異なる場合には20%加算が不要とされる一方、土地と株式を所有する父が株式だけを子に贈与した場合には20%加算が必要とされるなど、所有関係によって取扱いが異なることが分かります。

また、共有土地では被相続人の土地持分、貸家建付借地権では借家人の敷地利用権を考慮する必要があります。

さらに、使用貸借の場合には、土地の評価額は原則として自用地価額の100%となり、賃貸借の場合とは取扱いが異なります。

「無償返還届出書があるから20%加算する」という単純な理解ではなく、土地の貸借関係と土地・株式の所有関係を確認することが重要です。

【参考】賃貸建物だけを贈与した場合、土地の使用貸借に係る権利の評価は0円

父親が所有する土地と賃貸アパートのうち、建物だけを子に贈与し、土地を無償で使用させる場合、その土地の使用関係は使用貸借となります。

使用貸借により土地を使用する権利の価額は、相続税及び贈与税の評価上、原則として0円とされます。

したがって、建物は贈与税の対象となりますが、土地の使用貸借に係る権利の評価額は0円です。

これは、同族会社の株式評価で土地の自用地価額の20%相当額を加算する取扱いとは異なります。

ただし、将来、父親に相続が発生した場合、土地は原則として自用地価額で評価されるため、注意が必要です。

参考資料

参考資料


参考資料

※東京国税局の各事例については、事実関係と結論を独自に要約したものであり、原資料の文章及び図表は転載していません。

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