令和8年分の年末調整では、基礎控除の引き上げ(合計所得489万円以下は104万円)、給与所得控除の最低保障額の引き上げ(74万円)、扶養親族等の所得要件の引き上げ(給与収入のみの場合は136万円以下)が、令和8年12月1日の施行で一度に適用されます。令和8年11月までの源泉徴収には改正前の税額表が適用されるため、改正による税負担の軽減は、原則として12月の年末調整で精算されます。この記事では、従業員や経理担当者からよく寄せられる質問を、38問にまとめました。
令和8年分の主な改正ポイント
令和8年分は、基礎控除・給与所得控除・扶養親族等の所得要件が引き上げられ、令和8年12月1日に施行されます。令和8年11月までの源泉徴収には改正前の税額表が適用されるため、改正による税負担の軽減は、原則として12月の年末調整で精算されます。
| 項目 | 令和7年分 | 令和8年分 |
|---|---|---|
| 基礎控除(本則) | 58万円 | 62万円(合計所得489万円以下は特例加算で104万円) |
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 74万円(本則69万円+令和8・9年分の特例5万円) |
| 扶養親族等の所得要件 | 合計所得58万円以下(給与収入123万円以下) | 合計所得62万円以下(給与収入136万円以下) |
| 特定親族特別控除の対象 | 合計所得58万円超123万円以下 | 合計所得62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下) |
| 一般生命保険料控除の限度額(23歳未満の扶養親族がいる場合) | 4万円 | 6万円(令和8・9年分。三つの生命保険料控除の合計限度は12万円のまま) |
基本・対象者
Q1. 年末調整とは何ですか。
A. 毎月の給与から天引きした源泉所得税を、1年分の正しい税額と照らして精算する手続きです。会社が行い、多くの場合、従業員は確定申告をしなくて済みます。
Q2. 令和8年分で、一番大きく変わった点は何ですか。
A. 基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられ、扶養親族等の所得要件も改正されました。令和8年11月までの源泉徴収には改正前の税額表が適用されるため、改正による税負担の軽減は、原則として12月の年末調整で精算されます。
Q3. 年末調整を受けられない人はいますか。
A. 給与収入が2,000万円を超える人、年の途中で退職した人(一定の場合を除く)などは、年末調整の対象外です。給与収入が2,000万円を超える人は、原則として確定申告が必要です。中途退職者は、確定申告をすると、源泉所得税の還付を受けられる場合があります。年の途中で退職しても対象になるのは、Q25の場合です。「乙欄」の人(扶養控除等申告書を出していない人)も原則対象外です。
Q4. 年の途中で入社しました。前の会社の分はどうなりますか。
A. 前職の源泉徴収票を会社に提出すれば、通算して年末調整してもらえます。提出がないと税額が合わず、自分で確定申告することになります。
Q5. 副業の給与や、パートの掛け持ちの場合はどうなりますか。
A. 年末調整は、扶養控除等申告書を出している1社分だけです。副業分は、別に確定申告が必要になる場合があります(副業の所得が20万円超など)。
基礎控除・給与所得控除
Q6. 基礎控除はいくらになりましたか。
A. 合計所得金額によって異なります。合計所得489万円以下(給与収入のみで約665万円以下)の人は、一律104万円です。
| 合計所得金額 | 給与収入のみの場合の目安 | 令和8・9年分(改正後) | 令和8年分(改正前の制度) |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 206万円以下 | 104万円 | 95万円 |
| 132万円超336万円以下 | 206万円超約475万円以下 | 104万円 | 88万円 |
| 336万円超489万円以下 | 約475万円超約665万円以下 | 104万円 | 68万円 |
| 489万円超655万円以下 | 約665万円超850万円以下 | 67万円 | 63万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 850万円超2,545万円以下 | 62万円 | 58万円 |
合計所得が2,350万円を超える人の基礎控除額は改正されていません。2,350万円超2,400万円以下は48万円、2,400万円超2,450万円以下は32万円、2,450万円超2,500万円以下は16万円で、2,500万円超は0円です。
Q7. 給与所得控除はどう変わりましたか。
A. 最低保障額が65万円から69万円に引き上げられ、令和8・9年分は特例の5万円が加わって74万円になりました。給与収入が220万円未満の場合は、給与所得を求める特例の計算が定められており、219万1,000円以上220万円未満には端数調整もあります。年末調整では、改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使います。
Q8. 還付額は去年より増えますか。
A. 基礎控除と給与所得控除の引き上げで、還付額が増える場合があります。ただし、年収200万円以下の人は天引きされた所得税が少ないため、還付額の上限は天引き額です。
扶養・配偶者・特定親族特別控除
Q9. 配偶者や子を扶養に入れられる収入の「壁」は、いくらになりましたか。
A. 扶養親族等の所得要件が、合計所得58万円以下から62万円以下に上がりました。給与収入だけの場合の目安は136万円以下です。令和7年分の「123万円」は、令和8年分には当てはまりません。
Q10. 大学生の子のアルバイトは、いくらまでなら親の控除を受けられますか。
A. 子が19歳以上23歳未満(12月31日現在)で、給与収入のみの場合は、次のとおり控除が切り替わります。
| 子の合計所得 | 給与収入のみの場合(令和8・9年分) | 親が受けられる控除 |
|---|---|---|
| 62万円以下 | 136万円以下 | 扶養控除(特定扶養親族)63万円 |
| 62万円超123万円以下 | 136万円超197万円以下 | 特定親族特別控除 3万〜63万円 |
| 123万円超 | 197万円超 | 控除なし |
136万円を超えても、すぐに控除がなくなるわけではありません。197万円までは、段階的に控除が受けられます。
Q11. 特定親族特別控除の金額を教えてください。
A. 子の合計所得に応じて、次の9段階です(給与収入のみの場合)。給与収入159万円以下なら、扶養控除と同じ満額63万円です。
| 子の合計所得 | 給与収入の目安 | 控除額(所得税) |
|---|---|---|
| 62万円超85万円以下 | 136万円超159万円以下 | 63万円 |
| 85万円超90万円以下 | 159万円超164万円以下 | 61万円 |
| 90万円超95万円以下 | 164万円超169万円以下 | 51万円 |
| 95万円超100万円以下 | 169万円超174万円以下 | 41万円 |
| 100万円超105万円以下 | 174万円超179万円以下 | 31万円 |
| 105万円超110万円以下 | 179万円超184万円以下 | 21万円 |
| 110万円超115万円以下 | 184万円超189万円以下 | 11万円 |
| 115万円超120万円以下 | 189万円超194万円以下 | 6万円 |
| 120万円超123万円以下 | 194万円超197万円以下 | 3万円 |
住民税は控除額が異なります。
Q12. 特定親族特別控除を受けるには、何を提出しますか。
A. 親(控除を受ける人)が、「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書」の特定親族特別控除の欄に、子の所得見積額などを記入して提出します。子が自分のアルバイト先で年末調整を受けていても、親側の申告書が出ていなければ控除は受けられません。
Q13. 配偶者の収入が増えたら、配偶者控除はどうなりますか。
A. 配偶者の合計所得が62万円以下(給与収入136万円以下)なら配偶者控除、62万円を超えて133万円以下なら配偶者特別控除の対象になることがあります。控除額は、配偶者の所得と本人の所得で決まります。本人の合計所得が900万円以下の場合、配偶者の合計所得が95万円以下(給与収入169万円以下)なら38万円です。本人の合計所得が1,000万円を超えると、配偶者控除・配偶者特別控除とも受けられません。
Q14. 収入は見込みで書いてよいですか。
A. 年間の見込額で書きます。年の途中で見込みが変わったら、年末調整までに訂正してください。扶養に該当するかどうかは、12月31日の現況で判定します。
保険料控除・住宅ローン控除・確定申告が必要な控除
Q15. 生命保険料控除で、今年から変わった点はありますか。
A. 23歳未満の扶養親族がいる人は、令和8・9年分に限り、新生命保険料の一般生命保険料控除の限度額が4万円から6万円になります。三つの生命保険料控除の合計限度額は12万円のままです。
Q16. 控除証明書を紛失しました。
A. 生命保険料・地震保険料・iDeCo(小規模企業共済等掛金)などの証明書は再発行できます。保険会社や掛金の窓口に早めに連絡してください。年末調整に間に合わなければ、確定申告で精算できます。
Q17. 医療費控除やふるさと納税の寄附金控除は、年末調整でできますか。
A. できません。確定申告が必要です(ふるさと納税のワンストップ特例を使う場合を除きます)。
Q18. 住宅ローン控除は年末調整でできますか。
A. 初年度は確定申告が必要です。2年目以降は、「住宅借入金等特別控除申告書」と金融機関の残高証明書を提出すれば、年末調整で受けられます。
提出書類・実務・スケジュール
Q19. どんな書類を提出しますか。
A. 主に次の3種類です。様式が変更されているので、昨年の様式は使わず、令和8年分を配布してください。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
Q20. 令和8年中に死亡退職した人や海外転勤した人の年末調整はどうなりますか。
A. 令和8年中に死亡退職した人や、海外転勤により非居住者となった人などで、11月30日以前に最後の給与の支払を受けた場合は、改正前の基礎控除額や給与所得控除額などを使って年末調整を行います。
令和8年度税制改正は12月1日から施行されるため、11月30日以前に行う年末調整には改正後の控除額が適用されません。
改正後の控除額を適用するには、死亡退職の場合は相続人による準確定申告や更正の請求、海外転勤の場合は本人の申告など、それぞれの事情に応じた手続が必要になる場合があります。
Q21. 書類を出し忘れた、記入を間違えたときは。
A. 年末調整が終わった後でも、会社が翌年1月に源泉徴収票を交付するまでなら、申告書の提出を受けて年末調整をやり直せます(Q30)。それに間に合わなければ、翌年の確定申告(還付申告)で取り戻せます。還付申告は、翌年1月1日から5年間できます。
Q22. 会社側の提出期限はいつですか。
A. 給与支払報告書を市区町村に提出する期限は、翌年1月31日です。令和9年1月31日は日曜日のため、令和8年分の期限は令和9年2月1日(月)です。令和9年1月1日以後に提出する源泉徴収票は、給与支払報告書を市区町村に提出すれば税務署に提出したものとみなされ(みなし提出の特例)、税務署への提出は不要です。従業員への源泉徴収票の交付は、引き続き必要です。
法定調書合計表も、退職所得の源泉徴収票など給与所得の源泉徴収票以外の法定調書を税務署に提出する場合を除き、不要です。
給与支払報告書は、書面・光ディスク等・eLTAXのどれで提出しても、みなし提出の対象です。前々年に税務署に提出すべきであった源泉徴収票が30枚以上の場合は、eLTAXまたは光ディスク等による提出が必要です。eLTAXで提出すると、従業員が確定申告をするときに、マイナポータル連携の対象になります。書類の回収は、11月中に終えておくと安心です。
Q23. 源泉徴収票は、何のために使いますか。
A. 年末調整後に交付されます。転職時の提出、住宅ローンの申込み、確定申告で必要になるので、大切に保管してください。
実務上の注意点
国税庁の「令和8年分 年末調整Q&A」などをもとにした、質問の多い事項です。
Q24. 大学生のアルバイトで、本人が受けられる控除はありますか。
A. 勤労学生控除(27万円)があります。合計所得89万円以下(給与のみなら給与収入163万円以下)で、給与以外の所得が10万円以下の学生が対象です。給与収入140万円のアルバイトなら対象になります。勤労学生に該当する旨を、扶養控除等(異動)申告書に記載して提出します。
Q25. 年の途中でも年末調整を行うのは、どんな場合ですか。
A. 次の5つの場合です。
- 死亡により退職した人
- 著しい心身障害のために退職し、本年中の再就職が不可能と認められる人
- 12月に支給期の到来する給与を受けた後に退職した人
- パートタイマーなどで、本年中の給与の総額が136万円以下の人(退職後に他の勤務先から給与を受ける見込みの人を除く)
- 年の途中で、海外転勤などにより非居住者となった人(出国時に年末調整を行う)
たとえば、10月末に定年退職した人で、本年中の給与の総額が136万円を超え、ほかの要件にも当てはまらない場合は、在職中の給与について年末調整はできません。退職後に雇用保険の失業等給付を受けるかどうかは、年末調整の対象者を判断する要件ではなく、上記のいずれかに該当するかどうかで判断します。
雇用保険の失業等給付(基本手当など)は非課税所得です。そのため、所得税の計算や、配偶者控除・扶養控除の判定に用いる合計所得金額には含まれません。
なお、税法上の扶養判定と健康保険の被扶養者認定は別です。健康保険では、失業給付が収入に含まれる場合があるため、混同しないようにしてください。
Q26. 所得金額調整控除とは何ですか。
A. 給与収入が850万円を超える人で、本人が特別障害者である場合、または年齢23歳未満の扶養親族や、特別障害者である同一生計配偶者・扶養親族がいる場合に受けられる控除です。850万円を超えるかどうか分からない場合でも、受けたいときは「所得金額調整控除申告書」を提出します。850万円を超えなければ、適用されません。共働きの夫婦は、23歳未満の子について、夫婦の双方で適用を受けられます。生命保険料控除の特例(Q15)も同様です。年末に子が生まれた場合も、要件を満たします。
Q27. 扶養している母親に遺族年金があります。扶養の判定に含めますか。
A. 含めません。遺族年金は非課税所得なので、合計所得金額には含まれません。たとえば、パート収入124万円と遺族年金80万円の場合は、パート収入だけで判定します。給与所得控除74万円を引くと合計所得は50万円で、扶養親族に該当します。
Q28. 別居している親を扶養に入れられますか。
A. 生計を一にしていれば可能です。生活費や療養費を常に送金しているなどの事実が必要なので、振込票や書留の写しで確認することをおすすめします。国外に住む親族は、親族関係書類や送金関係書類が必要です。
Q29. 妻や子が契約者の生命保険料も、生命保険料控除の対象になりますか。
A. 給与の支払を受ける人が保険料を支払ったことが明らかなら、対象になります。ただし、保険金の受取人が全員、本人または配偶者その他の親族である必要があります。
なお、保険料を負担していない人が、満期や解約、被保険者の死亡により保険金を受け取った場合は、贈与税や相続税の対象になることがあります。たとえば、夫が保険料を負担している契約で、契約者が妻の場合、妻が満期保険金を受け取ると、贈与税の対象になることがあります。
Q30. 年末調整を終えた後に、家族が増えた、申告書の出し忘れに気づいた場合は。
A. 扶養親族に該当するかどうかは、12月31日の現況で判定します。翌年1月に源泉徴収票を交付するときまでなら、従業員から申告書(扶養控除等異動申告書、配偶者控除等申告書、保険料控除申告書など)の提出を受けて、年末調整を再計算できます。従業員が確定申告で還付を受けることもできます。
Q31. 12月分の給与を翌年1月に支払う場合、今年の年末調整に含めますか。
A. 含めません。年末調整は、本年中に支払が確定した給与で行います。支給日が定められている給与は、その支給日が収入の確定する日です。
Q32. 年末調整の結果、1月に納付する税額がない場合、納付書は提出しますか。
A. 提出します。1月10日(納期の特例の承認を受けている場合は1月20日。休日の場合は休日明け)までに、所轄の税務署に提出してください。納付税額のない納付書は、金融機関では取り扱いません。令和9年1月は、10日が日曜日、11日が成人の日のため、通常の納期限は1月12日です。
配偶者控除の判定で間違えやすいケース
Q33. 妻に上場株式の譲渡益がある場合、夫は配偶者控除を受けられますか。
A. 妻が特定口座(源泉徴収あり)で上場株式を売却し、譲渡益を確定申告しない場合、その譲渡益は配偶者控除・配偶者特別控除の判定に用いる合計所得金額に含まれません。
一方、源泉徴収ありの特定口座でも確定申告した場合や、源泉徴収なしの特定口座・一般口座で譲渡益が生じた場合は、原則として合計所得金額に含まれます。NISA口座の譲渡益は非課税のため、含まれません。
例として、妻の給与収入が120万円、上場株式の譲渡益が200万円の場合を考えます。給与所得は、給与所得控除74万円を引いた46万円です。
- 源泉徴収あり・申告しない:給与所得46万円のみで判定するため、夫は配偶者控除の対象になります。
- 譲渡益を確定申告する:合計所得は246万円となり、夫は配偶者控除も配偶者特別控除も受けられません。
令和8年分は、妻の合計所得が62万円以下なら配偶者控除、62万円超133万円以下なら配偶者特別控除の対象になる場合があります(夫本人の所得要件もあります)。
株式の譲渡損失について損益通算や繰越控除を受けるために確定申告すると、配偶者控除の判定に影響することがあります。還付を受けようとして確定申告した結果、夫の控除が使えなくなる場合もあるため、確定申告するかどうかは、世帯全体の税負担を考えて判断してください。
Q34. 妻が生命保険の満期保険金を受け取った場合、夫は配偶者控除を受けられますか。
A. 妻が自分で保険料を負担し、満期保険金を一時金で受け取った場合は、原則として一時所得になります。一時所得は、満期保険金から払込保険料を差し引き、さらに最高50万円の特別控除を差し引いて計算します。配偶者控除の判定では、その2分の1を合計所得金額に算入します。
例として、次の場合を考えます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 満期保険金 | 500万円 |
| 払込保険料 | 350万円 |
| 差益 | 150万円 |
| 一時所得の特別控除 | △50万円 |
| 一時所得 | 100万円 |
| 合計所得金額に算入する額(2分の1) | 50万円 |
妻にほかの所得がなければ、令和8年分の配偶者控除の所得要件である62万円以下を満たします。ただし、妻に給与所得などがある場合は、それらを合算して判定します。
夫が保険料を負担し、妻が満期保険金を受け取った場合は、原則として贈与税の対象になるため、妻の合計所得金額には含まれません(Q29)。
なお、満期保険金を年金で受け取る場合は、原則として公的年金等以外の雑所得になります。また、一時払養老保険などで保険期間が5年以下のものは、源泉分離課税が適用され、源泉徴収だけで課税関係が終了します。
Q35. 妻が失業保険や出産育児一時金、育児休業給付金を受け取った場合、夫の配偶者控除に影響しますか。
A. これらの給付金自体は非課税のため、配偶者控除の判定には影響しません。雇用保険の失業等給付、健康保険から支給される出産育児一時金・出産手当金、雇用保険の育児休業給付金などは非課税所得で、配偶者控除・配偶者特別控除の判定に用いる合計所得金額に含まれないためです。ただし、妻に給与所得などがある場合は、その所得を合算して判定します。
| 給付金などの種類 | 所得税の取扱い |
|---|---|
| 失業保険(雇用保険の基本手当) | 非課税 |
| 出産育児一時金 | 非課税 |
| 出産手当金 | 非課税 |
| 育児休業給付金 | 非課税 |
| 出生時育児休業給付金 | 非課税 |
| 会社から支給される通常の給与・賞与 | 課税対象 |
例として、妻が産休前に給与100万円を受け取り、出産手当金80万円と育児休業給付金100万円を受け取った場合を考えます。非課税の給付金180万円は、合計所得金額に含まれません。給与100万円から令和8年分の給与所得控除74万円を差し引いた26万円が合計所得金額となり、夫は配偶者控除の対象になります(夫本人の所得要件もあります)。
なお、税法上の配偶者控除と健康保険の被扶養者認定は、別の制度です。健康保険では、失業給付などが収入に含まれる場合があります。
Q36. 妻が入院給付金や手術給付金を受け取った場合、夫の配偶者控除に影響しますか。
A. 影響しません。生命保険契約に基づいて、けがや病気により受け取る入院給付金、手術給付金、がん診断給付金などは、原則として非課税です。そのため、配偶者控除・配偶者特別控除の判定に用いる合計所得金額には含まれません。
ただし、医療費控除を受ける場合は、入院給付金など医療費の補填を目的とする給付金を、その給付の対象となった医療費から差し引く必要があります。がん診断給付金などは、給付の名前だけでは決まらず、約款上の支払事由が医療費の補填にあたるかどうかで判断します。
例として、入院費20万円に対して入院給付金30万円を受け取った場合を考えます。入院費20万円は、医療費控除の対象になりません。超えた10万円は、他の医療費から差し引く必要はなく、合計所得金額にも含まれません。
なお、生命保険の満期保険金や解約返戻金は取扱いが異なり、一時所得として課税対象になる場合があります(Q34)。
家族の社会保険料の控除
Q37. 妻や子、親の国民年金保険料・国民健康保険料を支払った場合、年末調整で控除できますか。
A. 本人が、生計を一にする配偶者や子、親などの国民年金保険料・国民健康保険料を支払った場合は、その年に実際に支払った全額を、社会保険料控除として差し引けます。親族が扶養控除の対象になっている必要はありません。
例として、大学生の子の国民年金保険料を親が支払った場合は、その保険料を親の社会保険料控除にできます。妻や親の国民健康保険料を本人が支払った場合も、同じです。
誰が実際に保険料を支払ったかで、控除を受けられる人が決まります。
| 支払いの状況 | 社会保険料控除を受けられる人 |
|---|---|
| 子の国民年金保険料を父が支払った | 父 |
| 妻の国民年金保険料を夫が支払った | 夫 |
| 親の国民健康保険料を子が支払った | 子 |
| 親の年金から国民健康保険料が天引きされた | 親本人 |
| 親の後期高齢者医療保険料を子が口座振替で支払った | 子 |
親の公的年金から天引きされた国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料は、親本人の社会保険料控除になり、子の控除にはできません。
年末調整で国民年金保険料の控除を受けるには、控除証明書または領収証書が必要です。国民健康保険料は、原則として証明書の添付は必要ありません。
社会保険料控除には、生命保険料控除のような限度額はありません。実際に支払った保険料の全額が対象です。
障害者控除
Q38. 寝たきりの親は、障害者手帳がなくても、年末調整で障害者控除を受けられますか。
A. 一定の要件を満たせば、障害者手帳がなくても、障害者控除(特別障害者控除)を受けられます。次の2つの場合があります。
- 市区町村の認定を受けた場合:65歳以上で、精神または身体に障害があり、障害者または特別障害者に準ずるものとして市区町村長等の認定を受けた人です。市区町村に申請して「障害者控除対象者認定書」の交付を受けます。認定された程度によって、障害者または特別障害者になります。
- 寝たきりの状態にある場合:その年の12月31日現在で、引き続き6か月以上、身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護(介護を受けなければ排便等ができない程度)を必要とする人は、特別障害者に該当します。
この2つは、別の要件です。ただし、状態を客観的に確認できるように、医師の診断書や介護の状況が分かる資料を保管しておきましょう。該当するかどうか判断が難しい場合は、市区町村に認定書を申請すると安心です。認定の基準は、自治体によって異なります。
所得税の障害者控除額は、次のとおりです。
| 区分 | 所得税の控除額 |
|---|---|
| 障害者 | 27万円 |
| 特別障害者 | 40万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 |
同居特別障害者とは、扶養親族または同一生計配偶者が特別障害者で、本人・配偶者・生計を一にする親族のいずれかと同居を常としている場合です。たとえば、寝たきりの親が特別障害者に該当し、子と同居している場合は、子が75万円の障害者控除を受けられます。親が控除対象扶養親族であれば、扶養控除(同居老親等は58万円)も、あわせて受けられます。
親が扶養親族になるには、合計所得が62万円以下である必要があります。年金収入だけの65歳以上の親なら、年金収入172万円以下が目安です。
年末調整では、会社に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の障害者欄に、必要事項を記入して申し出ます。
なお、介護保険の要介護認定を受けているだけでは、自動的に税法上の障害者や特別障害者になるわけではありません。
出典
- 令和8年分年末調整のしかた(国税庁)
- 令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A(国税庁)
- 基礎控除(タックスアンサーNo.1199、国税庁)
- 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の提出手続(国税庁)
- 源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A(令和8年4月、国税庁)
- 給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合(タックスアンサーNo.1903、国税庁)
- 生命保険に係る満期保険金を受け取ったとき(タックスアンサーNo.1755、国税庁)
- 出産育児一時金・出産手当金・育児休業等給付の非課税(厚生労働省)
- 医療費を支払ったとき(医療費控除)(タックスアンサーNo.1120、国税庁)
- 社会保険料控除(タックスアンサーNo.1130、国税庁)
- 扶養家族に寝たきりの人がいるときの控除額(タックスアンサーNo.1184、国税庁)
- 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について(タックスアンサーNo.1185、国税庁)
- 障害者控除(タックスアンサーNo.1160、国税庁)
- 令和8年分 年末調整Q&A(国税庁)
本記事は令和8年11月2日現在の法令および国税庁公表資料に基づいて作成しています。
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