社長にもボーナスを出したい!役員賞与を経費にするための手続きと注意点

社長にもボーナスを出したい!役員賞与を経費にするための手続きと注意点

会社の業績が良かったので、社長にもボーナスを支給したい。従業員と同じように、夏や冬に役員賞与を支給できないだろうか。

中小企業の経営者から、このような相談を受けることがあります。

役員に賞与を支給すること自体は可能です。しかし、従業員の賞与と異なり、役員賞与は原則として自由に経費にできるわけではありません。

役員賞与を法人税の計算上、損金に算入するためには、原則として「事前確定届出給与」という制度を利用し、支給日と支給金額をあらかじめ決めて、期限までに税務署へ届け出る必要があります。

しかも、届出書を提出すれば終わりではありません。実際の支給日や支給額が届出内容と異なると、損金算入が認められなくなるおそれがあります。

今回は、一般的な中小同族会社が社長に現金賞与を支給する場合を中心に、必要な手続きと注意点を解説します。

目次

1.社長の毎月の給料とボーナスは取扱いが違う

法人税法では、役員給与について損金算入できるものを限定しています。

代表的なものが「定期同額給与」と「事前確定届出給与」です。

項目定期同額給与事前確定届出給与
主な対象毎月の役員報酬役員賞与など
支給方法原則として毎月同額あらかじめ決めた日に確定額
税務署への届出通常不要原則必要
金額の変更一定の改定事由などに限定原則として届出どおり
注意点期中の安易な変更支給日・支給額の不一致

例えば、社長の月額報酬が80万円であれば、年間960万円の役員報酬を支給することができます。

さらに、12月に200万円のボーナスを支給したい場合は、月額報酬とは別に、事前確定届出給与の手続きを検討します。

ただし、決算で利益が出たことを確認してから、社長に200万円の賞与を支給することを決めても、通常は損金算入できません。

事前確定届出給与は、あくまで業績が確定する前に支給日と支給額を決めておく制度だからです。

2.事前確定届出給与とは?

事前確定届出給与とは、役員の職務について、所定の時期に確定した金額を支給することをあらかじめ定め、必要な届出を行った給与です。

例えば、次のように決めます。

役員賞与の決定例

項目内容
対象役員代表取締役社長
決議日令和8年6月25日
支給日令和8年12月10日
支給額200万円
届出法定期限までに提出

この内容を株主総会等で適切に決定し、税務署に届け出たうえで、令和8年12月10日に200万円を支給します。

ここで重要なのは、賞与額を「利益が出たら200万円」「資金繰りが良ければ100万円から200万円」といった条件付きの金額にしないことです。

支給金額は、事前に確定している必要があります。

3.事前確定届出給与の届出期限はいつまで?

ここが実務で最も間違えやすいところです。

一般的な既存法人の場合、届出期限は、原則として次の2つのうちいずれか早い日です。

  1. 株主総会等の決議日から1か月を経過する日。ただし、決議日が職務執行開始日より後である場合には、職務執行開始日から1か月を経過する日
  2. 会計期間開始の日から4か月を経過する日

なお、申告期限の延長について一定の指定を受けている法人には、別の取扱いがあります。また、新設法人が設立時に開始する役員の職務について定めた場合は、原則として設立日から2か月を経過する日が期限となります。国税庁

具体例:3月決算法人の場合

3月決算の会社が、令和8年6月25日に定時株主総会を開催し、社長の賞与を決めたとします。

  1. 令和8年4月1日:会計期間開始4か月経過日は7月31日
  2. 令和8年6月25日:定時株主総会この日に職務執行を開始し、賞与200万円を決議したと仮定
  3. 令和8年7月25日:届出期限決議日から1か月と、会計期間開始から4か月を比較し、早い7月25日が期限
  4. 令和8年12月10日:賞与支給届出どおり200万円を支給

この例では、7月31日まで届出ができるわけではありません。

また、6月25日の決議であっても、対象役員の職務執行開始日がそれより前であれば、期限が早くなる場合があります。

したがって、届出期限は単に「決算から4か月」や「総会から1か月」で判断せず、職務執行開始日も含めて確認する必要があります。

4.届出額と実際の支給額が違うとどうなる?

事前確定届出給与では、金額の一致が非常に重要です。

例えば、12月10日に200万円を支給する旨を届け出たとします。

実際の支給額税務上の取扱い
200万円原則として損金算入可能
250万円原則として250万円全額が損金不算入
150万円原則として150万円全額が損金不算入

届出額より多く支給した場合、超過した50万円だけが損金不算入となるわけではありません。

少なく支給した場合も同様です。

法人税基本通達9-2-14では、届出金額と実際の支給額が異なる場合、原則として実際に支給した給与の全額が損金不算入となる考え方が示されています。国税庁

また、同一の職務執行期間について夏と冬の2回の賞与を届け出た場合、一方だけが届出どおりであっても、原則として両方の支給が損金不算入となることがあります。

役員賞与は、金額を決めることよりも、決めた内容を最後まで守ることが重要です。

5.支給日がずれた場合にも注意が必要

金額が一致していても、支給日が届出内容と異なれば問題になります。

例えば、12月10日に200万円を支給する予定だったところ、資金繰りの都合で12月25日に変更した場合です。

単に支給月が同じだから問題ない、というわけではありません。

事前確定届出給与は、所定の時期に確定額を支給することが要件だからです。

また、資金繰りが厳しいからといって、届出した賞与を支給しないことも慎重に判断する必要があります。

特に、同じ職務執行期間について複数回の賞与を予定している場合には、他の賞与にも影響する可能性があります。

6.一度決めた役員賞与は変更できない?

事前確定届出給与は、原則として届出どおりに支給する必要があります。

ただし、一定の例外があります。

例えば、役員の職務内容の重大な変更などによる「臨時改定事由」や、経営状況の著しい悪化などによる「業績悪化改定事由」が生じた場合には、変更届出によって取扱いが認められる場合があります。

もっとも、業績悪化改定事由による変更は、原則として減額する場合に限られます。

単に利益が予想より少なかった、あるいは資金繰りが一時的に悪くなったという理由だけでは認められません。

変更届出にも期限がありますので、当初の届出とは別に確認が必要です。国税庁

7.実務では決議・届出・支給の3段階で管理する

役員賞与の損金算入で重要なのは、事前の手続きだけではありません。

実際の支給まで一貫して管理することです。

役員賞与の実務チェックリスト

0 / 7 項目確認済みリセット株主総会等で支給日・支給金額を決議する議事録を作成し、職務執行開始日を確認する届出期限を計算し、届出書と付表を提出する届出控え・受付記録を保存する支給予定日を給与管理表に登録する支給額・振込日を届出内容と照合する給与の源泉徴収・社会保険料等も適切に処理する

特に注意したいのは、届出書を作成した人と、実際に給与を振り込む人が異なる場合です。

経理担当者が、通常の従業員賞与と同じ感覚で支給日や支給金額を変更してしまうと、税務上の問題が生じかねません。

届出内容を給与計算担当者と共有し、支給前に確認する仕組みを作っておくことが重要です。

8.役員賞与は節税になるのか?

事前確定届出給与を利用すれば、役員賞与を損金に算入できる場合があります。

しかし、賞与を支給すれば必ず会社と社長の合計税負担が少なくなるとは限りません。

会社では法人税の負担が減る一方、社長個人には所得税や住民税が課税されます。また、社会保険料への影響も検討する必要があります。

加えて、届出どおりに支給できなかった場合には、法人税の計算上、損金算入が否認されるリスクがあります。

そのため、単に会社の利益を減らすことだけを目的として役員賞与を設定するのではなく、年間の役員報酬総額、会社の資金繰り、個人の税負担などを総合的に検討することが重要です。

まとめ

社長にもボーナスを支給することはできます。

ただし、一般的な中小同族会社では、従業員賞与と違い、支給する時期や金額を自由に決められるわけではありません。

事前確定届出給与を利用する場合には、支給日と支給金額をあらかじめ決め、期限内に届出を行い、その内容どおりに支給することが原則です。

特に、**「届出を提出したから安心」ではなく、「届出どおりに支給して初めて損金算入が認められる」**という点を理解しておく必要があります。

役員賞与を検討する場合は、決算直前になってからではなく、定時株主総会の時期に合わせて、年間の役員報酬とともに計画しておくことをお勧めします。

参考資料

目次