解散前に資本金を1億円以下に減資する理由|繰越欠損金の50%制限と欠損填補【スタッフ向け】

解散前に資本金を1億円以下に減資する理由|繰越欠損金の50%制限と欠損填補【スタッフ向け】
目次

はじめに

含み益のある不動産を持つ会社を解散・清算するとき、「繰越欠損金があるから売却益は相殺され、無税で清算できる」と考えるのは危険です。資本金が1億円を超えていると、欠損金を使い切れず、税金が出ることがあるからです。しかも解散後は、この問題を直す手段が実務上ほとんど残されていません。この記事では、解散前にやるべき手当てを、手続の順序とあわせて整理します。

1. 資本金1億円超は、欠損金の控除が所得の50%まで

繰越欠損金は、事業年度終了時に資本金が1億円以下の中小法人等であれば、所得の100%まで控除できます。これに対し、資本金が1億円を超える法人は控除前所得の50%が上限です(法人税法57条1項ただし書・11項)。

区分控除限度売却益1億円・欠損金1億円の場合の課税所得
資本金1億円以下(中小法人等)所得の100%0円
資本金1億円超所得の50%5,000万円

欠損金が十分にあっても、資本金が1億円を超えているだけで、半分には法人税が課されます。

2. 実務の盲点:解散後は減資ができない

解散すると、清算中の事業年度でも、資本金の額で中小法人等かどうかを判定します。含み益のある不動産を清算中に売却すれば、その売却益にも50%の制限がかかります。

気づいて資本金を減らそうとしても、清算株式会社には、資本金の額の減少を定める会社法447条が適用されません(会社法509条1項2号)。解散後の清算中に資本金を減少することはできず、減資は解散前に完了させる必要があります。解散してしまってからでは、資本金を1億円以下に減少することはできません。

解散を決める前に、資本金の額を必ず確認することが重要です。

3. 対策:解散前に無償減資と欠損填補を終わらせる

対策は単純で、解散の前に、資本金を1億円以下にしておくことです。

  1. 無償減資で、資本金をその他資本剰余金に振り替え、1億円以下にする。
  2. 資本準備金も同時に減少し、その他資本剰余金に振り替える(均等割の対策。次の項で説明します)。
  3. その他資本剰余金で、繰越利益剰余金のマイナス(会計上の欠損)を填補する。
  4. 減資の効力発生日を、解散日より前に設定する。

解散日で終わる事業年度の資本金で判定するため、効力発生日が解散日より後では間に合いません。無償減資なら株主への払戻しがなく、みなし配当も生じません。

4. 均等割も下げられる:欠損填補の例外規定

法人住民税の均等割は、資本金等の額と従業者数で税額が決まります。無償減資をしても、法人税法上の資本金等の額は変わりません。ところが地方税法には、資本金や資本準備金を減少して欠損の填補に充てた金額を、均等割の基準額から控除する調整があります。解散前に減資と欠損填補を同時に行う意味は、ここにもあります。なお、平成18年5月1日以後の無償減資等では、資本金または資本準備金の減少によって増加したその他資本剰余金を、原則としてその計上から1年以内に損失填補に充てることが必要です。控除の限度となる損失の額は、填補時のその他利益剰余金のマイナス額が基準で、繰越利益剰余金のマイナス額と一致するとは限りません。

ただし、均等割の基準額には下限があります。資本金等の額が「資本金+資本準備金」の合計額を下回る場合は、その合計額が基準になります。資本金だけを減らして資本準備金が残ると、均等割の区分が下がらないことがあるため、資本準備金の減少も同時に検討します。

清算が長引く場合は、毎期かかる均等割の負担が変わるため、軽視できません。

5. 手続とスケジュール:債権者保護手続に約1か月

項目内容
株主総会の決議資本金の減少は特別決議(会社法447条・309条2項9号)。定時株主総会で、減少額が欠損の額の範囲内なら普通決議で足りる
債権者保護手続資本金を減少する場合は必須。官報公告と知れている債権者への個別催告で、異議を述べる期間は1か月以上(会社法449条)
準備金のみを減少する場合の例外定時株主総会で決議し、減少額が欠損の額の範囲内なら、債権者保護手続は不要(会社法449条1項ただし書)
効力発生日解散日より前。資本金の減少は、債権者保護手続の終了後に効力が生じる

解散の時期を決めてから動くのでは遅く、解散予定日の1〜2か月前には、減資の手続に着手します。

欠損填補の例外が使えるのは、準備金だけを減らす場合です。資本金を1億円以下にする減資では、欠損填補が目的でも債権者保護手続が必要になる点に注意してください。

6. 注意点

  • 税務上の繰越欠損金は消えません。 会計上の欠損填補をしても、別表七で管理する青色欠損金はそのまま残り、清算中の所得と相殺できます。会計上の欠損と税務上の欠損金は別物です。
  • 完全支配関係に注意。 資本金5億円以上の法人による完全支配関係がある場合は、資本金が1億円以下でも中小法人等になりません。
  • 外形標準課税の見直し。 令和7年4月1日以後開始事業年度から、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人が減資して資本金1億円以下となっても、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるなど一定の要件を満たす場合は、引き続き対象になります。また、令和8年4月1日以後開始事業年度からは、一定の100%子法人等にも対象が拡大されています。無償減資は資本剰余金を増やすため、該当しないか確認してください。
  • 期限切れ欠損金の特例には頼れません。 解散時に残余財産がないと見込まれる場合の特例(法人税法59条4項)は、残余財産があると見込まれる会社には適用できません。含み益があっても債務超過の場合はあり得るため、資産と負債の状況で判定します。
  • 減資の目的と手続を整理する。 解散に先立つ無償減資や欠損填補については、資本政策上の目的、会社法上の手続、効力発生日を、議事録などで明確にしておきます。

まとめ

含み益のある会社の解散は、「解散日の前に減資を完了」が鉄則です。順序を誤ると、解散後に取り返すことはできません。

  1. 資本金が1億円を超えていないか、解散を決める前に確認する。
  2. 資本金と資本準備金を無償減資し、欠損を填補する(均等割の対策にもなる)。
  3. 債権者保護手続に約1か月かかるため、解散予定日から逆算して早めに着手する。

解散・清算や組織再編をお考えの方は、早めにご相談ください。

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