会社を解散・清算するとき、税金はどうなる?解散事業年度と清算中の申告を税理士が解説

会社を解散・清算するとき、税金はどうなる?解散事業年度と清算中の申告を税理士が解説

会社を閉じるときも、法人税の申告は終わりません。解散してから清算が終わるまでの間、会社は「解散事業年度」と「清算中の各事業年度」について、通常の会社と同じように申告と納税を続けます。

平成22年度の税制改正で、以前の「清算所得課税」は廃止されました。現在は、継続している会社と同じ「益金から損金を引く」損益法で所得を計算します。そのため、会社の資産を売って利益が出たり、役員からの借入金を免除してもらって債務免除益が生じたりすると、思わぬ課税が発生することがあります。

この記事では、解散・清算の手続の流れと、解散事業年度・清算中の事業年度・最後の事業年度それぞれの税務上の注意点を、経営者の方向けに整理します。

目次

解散・清算の手続は「解散事業年度」と「清算中」の2段階で進みます

株主総会の決議で解散する場合の流れは、次のとおりです。

  1. 取締役会で解散の議案を決める(取締役会設置会社の場合)
  2. 株主総会の特別決議で、解散、清算人の選任、役員退職金の支給を決議する(法定清算人となる場合は選任の決議は不要)
  3. 解散と清算人の登記を行う(本店所在地で2週間以内)。あわせて税務署に異動届出書(いわゆる解散届)を提出する
  4. 解散後、遅滞なく官報公告を行い、知れている債権者には個別に催告する(債権の申出期間は2か月以上。この期間中は、債権者への弁済が原則として制限される)
  5. 解散時点の財産目録と貸借対照表を清算人が作り、株主総会の承認を受ける
  6. 解散事業年度の確定申告書を出す
  7. 清算中の事業年度ごとに決算を行い、申告する
  8. 残余財産が確定したら、最後の事業年度の確定申告書を出す(残余財産確定の翌日から1か月以内。ただし、その間に最終分配を行う場合は、分配の日の前日まで)
  9. 残余財産を分配し、清算事務が終わったら決算報告を作って株主総会の承認を受ける。その後、承認の日から2週間以内に清算結了の登記を行い、税務署へ「清算結了届」を提出する
  10. 帳簿や重要書類は、清算結了の登記の時から10年間、清算人が保存する(会社法508条)

税務の面では、上の6番が「解散事業年度」、7番が「清算中の事業年度」、8番が「最後の事業年度」の申告にあたります。次の章から順に見ていきましょう。

解散事業年度は、期首から解散日までを1事業年度として申告します

解散すると、その事業年度は期首から解散の日までで区切られます。たとえば3月決算の会社が9月30日に解散した場合、4月1日から9月30日までが解散事業年度です。確定申告書は、原則として解散の日の翌日から2か月以内に提出します。

この期間は、解散前の最後の事業年度(営業継続中の事業年度)として扱われ、通常の事業年度と同じ方法で課税所得を計算します。ただし、次の点に注意が必要です。

  • 月割り計算が必要になります。 解散事業年度が12か月に満たないときは、減価償却の償却率の調整のほか、繰延資産の償却額、交際費の損金不算入の定額控除、寄附金の損金算入限度額を月割りで計算します。税額の面でも、中小法人の軽減税率が適用される金額や、法人住民税の均等割額が月割りになります。
  • 貸倒引当金は計上できます。 ただし、対象は中小法人等や銀行・保険会社などに限られます。
  • 繰越欠損金の控除は使えます。 ただし、解散事業年度では、期限切れ欠損金を損金に入れる特例は使えません。
  • 欠損金の繰戻し還付の特例があります。 通常、繰戻し還付は資本金が大きい会社などには認められませんが、解散事業年度は資本金の大小にかかわらず使えます(法人税法80条4項)。

欠損金の繰戻し還付が使える場合

前期以前に納めた法人税を、赤字(欠損金)と相殺して還付してもらう制度です。解散の場合は、解散の日前1年以内に終了した事業年度、または解散の日の属する事業年度に生じた欠損金が対象になります。典型的には、次のようなケースです。

  1. 前々期が黒字で、前期が赤字(前期が解散の日前1年以内に終了している場合。当期が黒字か赤字かは問わない)
  2. 前期が黒字で、当期が赤字

還付を受けるには、還付の対象となる事業年度から欠損の事業年度まで、連続して青色申告書を提出している必要があります。また、「欠損金の繰戻しによる還付請求書」は、通常は欠損が生じた事業年度の確定申告書と同時に出しますが、解散の場合は、解散の日から1年以内であれば提出できる特例があります。請求の漏れがないよう、早めに税理士へ相談してください。

清算中は1年ごとに申告し、期限切れ欠損金を使える可能性があります

解散の日の翌日から1年ごとに、清算中の事業年度が始まります(株式会社の場合)。それぞれの事業年度が終わってから2か月以内に、確定申告書を提出します。所得は、解散していない会社と同じ損益法で計算し、減価償却や貸倒引当金の計上も通常どおりできます。

清算中の事業年度で特に重要なのが、期限切れ欠損金です。「残余財産がないと見込まれる」場合には、青色欠損金を使ってもなお残る所得に対して、過去の欠損金の累積額(別表五(一)の利益積立金額のマイナス)のうち、青色欠損金として控除される部分を除いた金額(いわゆる期限切れ欠損金)を損金に入れられます(法人税法59条4項)。役員借入金の債務免除益が出るような場合に、課税所得をゼロにできる可能性があるため、中小企業の清算では非常に大切な制度です。

使える条件は「事業年度末の時点で、残余財産がないと見込まれること」で、これは事業年度ごとに判断します。一般には、資産を処分価格で評価した「実態貸借対照表」を作り、債務超過であることを示します。なお、青色欠損金が先に使われ、期限切れ欠損金はその後の所得に対して使います。

解散事業年度と清算中の事業年度の違い

項目解散事業年度清算中の事業年度
期間期首から解散日まで解散日の翌日から1年ごと
申告期限原則として解散日の翌日から2か月以内事業年度終了後2か月以内
期限切れ欠損金使えない残余財産がないと見込まれる場合は使える
欠損金の繰戻し還付資本金の大小を問わず使える使える(最後の事業年度を含む)
特別償却中小企業者等の機械等取得の特別償却などは使えない同左(使えない)
租税特別措置法上の準備金設定できず、前期からの残高は全額取り崩す設定できない
圧縮記帳使える(ただし特別勘定は不可)使えない
税額控除所得税額控除・外国税額控除は使える。試験研究費などの特別控除は使えない同左

なお、清算中の事業年度の欠損金について繰戻し還付を受ける場合は、原則として、その事業年度の確定申告書と同時に還付請求書を提出する必要があります。

解散事業年度に特別勘定が残っている場合は、その全額を取り崩して益金に入れる必要があります。また、清算中の事業年度では、特定同族会社の留保金課税の特別税率や、収用換地等の場合の所得の特別控除も適用されません。

債務超過の場合は、特別清算にも注意が必要です

株式会社の清算で債務超過の疑いがあるときは、清算人に特別清算の開始を申し立てる義務があります(会社法511条2項)。税務上、期限切れ欠損金の損金算入が認められる場合でも、通常の清算手続をそのまま進められるとは限りません。中小企業では、役員借入金の免除などで債務の整理がつく見通しのもとに通常の清算が行われることも多いのですが、債務超過が見込まれる会社では、税務と会社法上の手続をあわせて検討する必要があります。

残余財産が確定した最後の事業年度には、特有のルールがあります

残余財産が確定した日を含む事業年度が、最後の事業年度です。申告期限は、残余財産確定の日の翌日から1か月以内です。ただし、その期間内に残余財産の最終的な分配を行う場合は、分配を行う日の前日までに申告します。通常より期限が短い点に注意してください。

最後の事業年度には、通常の事業年度とは異なる取扱いがあります。

  • 事業税を同じ事業年度の損金に入れます。 事業税は本来、納付額が確定する翌事業年度の損金になりますが、最後の事業年度には翌年度がありません。そこで、その事業年度に係る事業税と特別法人事業税を、別表四で減算して損金に算入します(法人税法62条の5第5項)。
  • 貸倒引当金は計上できません。 引当金を戻し入れる機会がないため、繰入れは認められません。
  • 一括償却資産と繰延消費税額等は、全額を損金に入れます。 残余財産確定の日の事業年度末に残っている金額が対象です。

役員借入金の免除で債務超過が解消すると、期限切れ欠損金が使えないことも

期限切れ欠損金を使うには、その事業年度の末に「残余財産がない」と見込まれる必要があります。最後の事業年度に役員借入金の免除を受けた結果、実態貸借対照表の債務超過が解消すると、「残余財産がないと見込まれる」とはいえなくなります。その場合は期限切れ欠損金が使えず、多額の債務免除益に課税されるおそれがあります。問題は現預金が残っていること自体ではなく、資産が負債を上回るかどうかです。たとえば現預金が100万円残っていても、未払債務が300万円あれば、債務超過のままです。

免除を受ける前に、債務超過が解消しないかを確認することが大切です。手元資金で借入金の一部を返済する方法もありますが、清算中は債権者保護の手続(公告期間中の弁済制限など)や、他の債権者との公平も考える必要があります。一律に「返済すれば解決する」とは言えないため、免除の時期・金額・返済の順序は、事前に専門家と設計してください。この点は、別の記事で事例を使って詳しく解説します。

清算では、消費税と株主のみなし配当にも注意が必要です

ここまでは法人税が中心でしたが、次の2点も見落とせません。

  • 消費税:解散しただけでは申告義務はなくなりません。課税事業者であれば、清算中も消費税の申告が必要です。
  • 株主のみなし配当:残余財産を株主に分配すると、資本金等の額のうち分配した株式に対応する部分を超える金額は、みなし配当として扱われる場合があります。法人株主と個人株主で扱いが異なります。

みなし配当については、別の記事で詳しく解説します。

まとめ:解散を決める前に、税務の見通しを立てておきましょう

会社の解散・清算では、次の3つの段階で、それぞれ申告が必要です。

  1. 解散事業年度:期首から解散日まで。月割り計算や欠損金の繰戻し還付の特例に注意する
  2. 清算中の事業年度:1年ごとに申告する。条件を満たせば期限切れ欠損金を使える
  3. 最後の事業年度:残余財産確定の翌日から1か月以内に申告する。事業税の損金算入など、特有の扱いがある

損益法で課税される現在の制度では、資産を売る時期や、債務免除を受ける時期と順序によって、税負担が大きく変わります。解散の決議をしてから慌てるのではなく、決議の前に、税理士と一緒にスケジュールと財産の状態を確認しておくことをおすすめします。

税理士法人松野茂税理士事務所では、会社の解散・清算に伴う税務申告や、事業承継・組織再編を見据えたご相談をお受けしています。阪神尼崎駅から徒歩1分の事務所です。お気軽にお問い合わせください。

  • 所在地:〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F

※この記事は一般的な内容を解説したものです。実際の取扱いは、会社の個別の事情によって異なる場合があります。具体的な手続や申告については、必ず専門家にご相談ください。

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