道路より高い・低い土地は相続税評価が10%下がる?騒音・日照阻害も解説

道路より高い・低い土地は相続税評価が10%下がる?騒音・日照阻害も解説

相続した土地が、道路よりかなり低い位置にある。線路のそばで揺れや音がひどい。隣にマンションが建って一日中日が当たらない。こうした土地は、相続税や贈与税の評価額を10%下げられる場合があります。

根拠は、国税庁のタックスアンサーNo.4617「利用価値が著しく低下している宅地の評価」です。ただし、高低差や騒音があれば必ず使えるわけではありません。使える場面と使えない場面を、順に説明します。

この記事のポイント

  • 利用価値が著しく低下している部分について、評価額を10%減額できる
  • 対象は、高低差、地盤の凹凸、震動、騒音、日照阻害、臭気、忌みなど
  • 道路より「低い」土地は認められやすく、「高い」土地は眺望や日当たりの利点があるため慎重に判断する
  • 路線価や固定資産税評価額がすでにその事情を織り込んでいる場合は使えない
  • 減額は10%が上限。それを超える価値の低下は不動産鑑定評価を検討する
目次

国税庁タックスアンサーNo.4617とは

付近の宅地と比べて利用価値が著しく低下している宅地は、その部分の評価額を10%下げて評価できる、という取扱いです。対象は相続税と贈与税です。

タックスアンサーNo.4617(令和8年4月1日現在法令等)は、次の4つを挙げています。

  1. 道路より高い位置または低い位置にある宅地で、付近の宅地に比べて著しく高低差のあるもの
  2. 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
  3. 震動の甚だしい宅地
  4. 上の1〜3以外で、騒音、日照阻害、臭気、忌み等により、取引金額に影響を受けると認められるもの

読むときの注意点が4つあります。

  • 比べる相手は「付近の宅地」です。 周りの土地も同じように道路より高い、同じように騒がしい、という場合は対象になりません。
  • 「著しく」「甚だしい」という程度が求められます。 少し低い、少しうるさい、という程度では足りません。
  • 日照阻害には基準があります。 建築基準法第56条の2が定める日影時間を超える日照阻害に限られます。
  • 「評価することができます」という書き方です。 自動的に適用されるものではなく、納税者の側で事情を示して適用します。

宅地だけでなく、宅地並みに評価する農地や山林(宅地比準方式)も対象です。造成費用をかけてもなお利用価値が著しく低い部分があれば、同じように減額できます。

最後に、重要なただし書きがあります。路線価、固定資産税評価額、評価倍率が、すでにその事情を考慮して付けられている場合は、減額できません。二重に引くことになるからです。この点は後の章で説明します。

どんな土地が対象になるのか

タックスアンサーの4項目は例示であり、これ以外の事情でも対象になり得ると解されています。書き出しが「次のように」、4番目が「忌み等」という表現になっているためです。

減額の要因具体例
高低差道路より著しく低い宅地、擁壁の上にあり階段でしか出入りできない宅地
地盤の凹凸敷地内に大きな段差やくぼみがあり、そのままでは建物を建てにくい宅地
震動鉄道や幹線道路に接し、列車や大型車が通るたびに揺れる宅地
騒音線路沿い、工場の隣など
日照阻害隣の中高層マンションにより、法定の日影時間を超えて日が当たらない宅地
臭気下水処理場、廃棄物処理場などの近く
忌み墓地、火葬場などの隣

嫌悪施設・危険施設も検討の対象になる

一般に嫌悪施設・危険施設と呼ばれるものも、検討の対象になります。多くの人が嫌悪感、不快感、危険を感じる施設や建物のことです。次のような例があります。

分類例
公害を発生させる施設騒音、震動、大気汚染、土壌汚染、悪臭などを出す施設
不快感や危険を感じる施設原子力関連施設、廃棄物処理場、下水処理場、軍事基地、刑務所、ガスタンク、火薬類の貯蔵施設
忌み施設と畜場、火葬場、墓地
住環境を損なう施設住宅地にある風俗店、大型車両の出入りが極めて多い施設
いわゆる事故物件物理的な害はないが、住むことに心理的な抵抗がある物件。自殺、殺人事件、事故死のほか、自然死でも発見が大きく遅れた場合など
反社会的な団体の施設抗争事件を繰り返す指定暴力団の事務所、法律に基づく観察処分の対象となった団体の施設

事故物件に関する裁判例は、不動産適正取引推進機構(RETIO)の判例検索システムで調べることができます。

ただし、これらは一律に減額できるものではありません。施設との距離、影響の程度、その地域での受け止め方によって結論が変わります。「近くに墓地がある」というだけでは足りず、取引価格に影響していることを説明できる必要があります。

いくら下がるのか(計算例)

減額されるのは、利用価値が低下している部分の面積に対応する価額の10%です。土地全体が10%下がるとは限りません。

前提は、路線価20万円/㎡、面積200㎡の宅地です。奥行などの補正はないものとします。通常の評価額は 20万円 × 200㎡ = 4,000万円です。

ケース減額の計算評価額
土地全体が道路より著しく低い4,000万円 × 10% = 400万円3,600万円
200㎡のうち50㎡だけ利用価値が低下4,000万円 × 50㎡/200㎡ × 10% = 100万円3,900万円

一部だけが該当する場合は、どの範囲が該当するのかを図面や写真で示せるようにしておきます。

高低差は「高い土地」と「低い土地」で考え方が違う

高低差の相談で多いのは、丘陵地や山麓の住宅地です。ここで注意したいのは、道路より高い土地と低い土地では、評価の方向が逆になり得ることです。

土地の位置利用価値への影響10%減額
住宅地で道路より高い眺望、日当たり、風通し、湿気の面で有利。ある程度の高さまではむしろプラス原則として使えない。高すぎる場合や下記の事情がある場合に検討
住宅地で道路より低い道路から室内が見える。眺望、日当たり、風通し、湿気のすべてで不利使える可能性が高い
工業地で道路と段差がある高くても低くても、車両の出入りや荷物の搬入出に支障段差が大きければ使える可能性がある

道路より高い土地

丘陵地の住宅地は、良い住環境を得るために、あえて擁壁と盛土で道路より高く造成しています。そのため、高いこと自体は減額の理由になりません。

専門家の解説では、一般的な住宅地なら道路面から3〜4m程度まではプラスに働き、それを超えるとプラスマイナスゼロ、さらに高くなるとマイナスに転じる、という目安が示されています。これは国税庁が定めた基準ではありません。土地の広さ、形、擁壁の状態、周辺の標準的な使われ方によって変わります。

プラスに働く範囲の高さであれば、10%減額は使えません。段差のある裏面や側方の道路についても、通常どおり路線価の加算(側方路線影響加算、二方路線影響加算)を行います。

一方、高い土地でも、次のような事情があれば減額を検討できます。

  • 建築後に条例が変わり、今の擁壁のままでは建て替えができない
  • 土地を分けて売ったり使ったりするには、擁壁と盛土を取り壊して造り直し、区画ごとに入口と階段を設ける必要がある

当事務所のある阪神間でも、山手の住宅地には擁壁の上に建つ家が多くあります。高齢になると階段の上り下りが負担になり、こうした土地が敬遠される傾向は今後強まると見込まれます。相続の時点での価値を、その時代の実情に合わせて確認することが大切です。

道路より低い土地

道路より1mほど低いだけでも、プライバシー、眺望、日当たり、風通し、湿気のいずれも不利になります。高い土地よりも優先して10%減額が認められるべき場面です。

工業地の場合

工場や倉庫の敷地では、眺望や日当たりは重視されません。求められるのは、道路と段差のない土地です。スロープで対応できる場合もありますが、段差が大きいと広いスペースが必要になり、作業場の配置も制約されます。

なお、この取扱いは、以前は「普通住宅地区にある宅地」に限るとされていました。現在のタックスアンサーにはこの限定がなく、工業地や商業地でも対象になります。

「路線価に織り込み済み」と言われたら

路線価がすでにその事情を反映している場合、10%減額は使えません。問題は、本当に織り込まれているかどうかです。税務署に相談すると「その要因は路線価に織り込んであるので減額できない」と回答されることがあります。

見極めの手がかりは、路線価の仕組みにあります。路線価は道路ごとに1つの単価を付けるものです。そのため、道路沿いの土地に共通する事情は反映できますが、特定の土地だけの事情は反映できません。

この考え方は、固定資産税の評価について旧自治省が出した通達(昭和50年10月15日付 自治固第98号)にも表れています。

要因路線価への反映理由
新幹線・高速道路などによる騒音、振動反映できる影響が一定の広がりをもった地域に及ぶため、その地域の路線価を下げて対応できる
中高層の建物による日照阻害反映が難しい影響を受けるのが特定の土地に限られるため、個別の補正で対応する
都市計画施設の予定地による建築制限反映が難しい土地ごとに予定地にかかる割合が違うため、個別の補正で対応する

これを相続税の評価に当てはめると、次のように整理できます。

  • 沿線一帯に及ぶ騒音や振動は、路線価に織り込まれている可能性があります。周辺の路線価と比べて、その道路の路線価が低く付けられていないかを確認します。
  • 日照阻害は、路線価では反映が難しい要因です。法定の日影時間を超えていれば、10%減額を主張しやすい場面です。
  • 道路より低い土地も同様です。道路の両側で高さが違う場合、路線価を2つ付けない限り、低い側の事情だけを織り込むことはできません。
  • 都市計画道路の予定地は、相続税では別の規定(財産評価基本通達24-7)で減額します。

倍率地域では固定資産税の評価を確認する

路線価のない地域では、固定資産税評価額に倍率を掛けて評価します。固定資産税の評価の段階で、日照阻害などの補正がすでに適用されていることがあります。その場合、補正後の評価額に倍率を掛けるので、減額は相続税評価額にも反映済みです。重ねて10%を引くことはできません。

市町村で、その土地にどのような補正が適用されているかを確認します。

路線価地域でも、固定資産税の評価と比べて検証できる

路線価地域でも、固定資産税の評価は検証の材料になります。公的な土地評価は、土地基本法第17条(令和2年の改正前は第16条)により、相互の均衡と適正化を図ることとされているからです。これを受けて、公示価格を10とすると、相続税の路線価は8程度、固定資産税の評価は7程度とされています。

この関係を使うと、固定資産税評価額を8/7倍(約1.14倍)した金額と、路線価による評価額を比べることができます。

金額
路線価による評価額(減額前)4,000万円
固定資産税評価額3,150万円
固定資産税評価額 × 8/73,600万円

この例では、固定資産税評価額を8/7倍した金額が、路線価による評価額より10%低くなっています。この差だけで、市町村が個別に10%の減価を行っているとは判断できません。ただし、固定資産税評価の内容を詳しく確認するきっかけにはなります。8/7倍という数字は結論ではなく、差が生じている土地を見つけるための目印です。

ただし、この比較だけで結論を出すことはできません。

  • 評価の仕組みが違います。 路線価は毎年1月1日時点の評価です。固定資産税評価は3年ごとの評価替えを基本としており、価格調査の時点や時点修正の方法も異なります。地価が動いている地域では、減価がなくても比率がずれます。
  • 補正の方法が違います。 奥行や形による補正率は、固定資産税と相続税で同じではありません。差額のすべてが、問題の減価要因によるとは限りません。
  • 比べるのは評価額です。 課税標準額は、住宅用地の特例などで下がっているため使えません。
  • 補正がないことは、減価がないことを意味しません。 日照阻害などの補正を設けているかどうかは、市町村によって違います。
  • 7:8:10は目安です。 個々の土地で正確に成り立つわけではありません。

そこで、次の2段階で確認します。

  1. 道路の段階。 固定資産税の路線価と相続税の路線価を比べます。比率がおおむね7:8であれば、どちらか一方の路線価だけに特別な減価が織り込まれているとは考えにくくなります。さらに、どちらの路線価も周辺の道路と比べて特別に低くなければ、双方が同じ事情を織り込んでいる可能性も小さくなります。
  2. 土地の段階。 市町村が、その土地だけに個別の補正を行っているか、その理由は何かを確認します。ここが本当のポイントです。

固定資産税評価と相続税評価は、評価時点や補正方法が異なるため、単純な比率だけで10%減額の可否を判断することはできません。ただし、両者を比較することで「どこで評価差が生じているか」を探ることはできます。固定資産税評価で対象地だけに個別補正が行われており、その補正理由が高低差や日照阻害などであれば、相続税評価で10%減額を検討する際の有力な参考資料になります。

減額は10%まで。それ以上なら鑑定評価を検討

タックスアンサーNo.4617で引けるのは10%までです。実際の値下がりがもっと大きくても、10%を超えては引けません。

それ以上の減額には、不動産鑑定士の鑑定評価が必要です。ただし、次の2点に注意します。

  • 費用がかかります。 減る税額と鑑定費用を比べて決めます。
  • 鑑定が有利とは限りません。 路線価は時価の約8割です。10%減額を使うと、評価額は時価の約72%になります。鑑定評価には、この8割の調整がありません。値下がりが28%を超えていなければ、鑑定を使っても評価額は下がりません。

なぜ通達ではなくタックスアンサーなのか

この取扱いは、土地評価のルールブックである財産評価基本通達には載っていません。国税庁ホームページのタックスアンサーで公表されているだけです。これには経緯があります。

時期出来事
昭和55年6月東京国税局長が、個別事情のある土地の評価方法を示す通達を出す。利用価値が著しく低下している宅地は10%減、2つ以上の事情があれば20%減とされた
平成3年12月地価税の導入に合わせて通達が大幅に改正され、名称も「財産評価基本通達」となる。東京国税局の通達の多くがここに取り込まれた
平成6年2月東京国税局の通達にあった「著しく広大な宅地」が、広大地の評価(旧24-4)として通達に新設される
その後残った部分は通達に取り込まれず、内容を一部修正したうえでタックスアンサーNo.4617として公表される

もとの通達には、ほかにも減価要因があった

タックスアンサーのもとになった東京国税局の通達は、減価要因を7つ挙げていました。現在のタックスアンサーに残っているのは、そのうちの4つです。

東京国税局通達の項目現在の扱い
イ 著しく傾斜している宅地(がけ地として評価するものを除く)タックスアンサーに記載なし。がけ地に当たる部分は、財産評価基本通達20-5のがけ地補正で減額する
ロ 道路より高い、または低い位置にあり、著しく高低差のある宅地タックスアンサーNo.4617の1
ハ 地盤に甚だしい凹凸のある宅地タックスアンサーNo.4617の2
ニ 湿潤な宅地タックスアンサーに記載なし
ホ 著しく広大または狭あいで、通常の用途に使えない宅地広大な宅地は、財産評価基本通達で別に減額する(現在は20-2 地積規模の大きな宅地)。狭あいな宅地は記載なし
ヘ 震動の甚だしい宅地タックスアンサーNo.4617の3
ト 騒音、日照阻害、臭気、忌み等により取引金額に影響がある宅地タックスアンサーNo.4617の4

記載がなくなった「湿潤な宅地」や「著しく狭あいな宅地」も、減価要因でなくなったわけではありません。タックスアンサーの4項目は例示と解されるため、これらも10%減額の対象に含めて差し支えないと考えられています。

「著しく狭あいな宅地」について、もとの通達は目安を示していました。面積がその地域の標準的な宅地のおおむね5分の1以下で、かつ40㎡以下のものです。あわせて、その地域の宅地として通常の用途に使えないことが必要です。面積が小さいだけでは足りません。

昭和55年の東京国税局長通達では、「著しく広大な宅地」と「湿潤な宅地」など複数の減価要因が重なる場合には20%減とする取扱いがありました。その後、「著しく広大な宅地」は広大地評価として財産評価基本通達に独立して取り込まれるなど、土地評価の取扱いが整理されていきました。現在のタックスアンサーNo.4617には、複数の減価要因が重なった場合に20%減とする記載はありません。

まとめ:適用できるかを確認する5つの質問

10%減額は、現地を見なければ判断できません。図面や路線価図だけでは、高低差も騒音も日当たりもわからないからです。次の順に確認します。

  1. 付近の宅地と比べてどうか。 周りも同じ状況なら対象になりません。
  2. 程度は「著しい」と言えるか。 高低差は何mか、日影は何時間か。写真、測量図、日影図などで示せるようにします。
  3. 取引価格に影響しているか。 売るとしたら値段が下がる事情かどうかを考えます。
  4. 路線価や固定資産税評価額に織り込まれていないか。 周辺の路線価との比較、市町村での補正の確認を行います。
  5. 該当するのは土地の全部か一部か。 一部であれば、その面積を特定します。

この取扱いは、申告の時点で見落とされやすいものです。相続した土地に気になる事情がある場合は、申告前にご相談ください。

相続税申告で土地評価が必要な方は、当事務所の相続税申告サポートをご覧ください。


税理士法人松野茂税理士事務所 〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F(阪神尼崎駅 徒歩1分)

参考

  • 国税庁 タックスアンサーNo.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価(令和8年4月1日現在法令等)
  • 「個別事情のある財産の評価等の具体的な取扱いについて」(昭和55年6月24日付 東京国税局長通達)
  • 「都市計画施設の予定地に定められた宅地等の評価上の取扱いについて」(昭和50年10月15日付 自治固第98号)
  • 財産評価基本通達14(路線価)、24-7(都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価)
  • 建築基準法第56条の2(日影による中高層の建築物の高さの制限)
  • 「土地評価の心得 第6回」
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