農地の相続税評価|4区分の判定方法と計算例【スタッフ向け】

農地の相続税評価|4区分の判定方法と計算例【スタッフ向け】

相続税における農地の評価は、「純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地」の4区分のどれに当たるかで、評価方法が変わります。

同じ面積の農地でも、区分が違えば評価額が大きく異なることがあります。実務では、まず相続開始時の現況を確認し、次に国税庁の評価倍率表と、都市計画法・農地法上の区分を照合して判定します(国税庁タックスアンサー No.4623)。

この記事では、4区分の違い、区分の確認手順、間違えやすい点、計算方法を順に解説します。

目次

1.4区分と評価方法の一覧

農地の相続税評価における4区分(純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地)の判定フローチャート。都市計画法と農地法による区分を図解。

評価方法は、純農地・中間農地が「倍率方式」、市街地周辺農地・市街地農地が「宅地比準方式」(市街地周辺農地はさらに80%)が基本です。

相続税評価上の区分区分の基本的な考え方評価方法
純農地農用地区域内の農地、第1種農地・甲種農地など。宅地転用が強く制限されるもの固定資産税評価額 × 農地の評価倍率
中間農地原則として第2種農地、およびこれに準ずる農地固定資産税評価額 × 農地の評価倍率
市街地周辺農地原則として第3種農地、およびこれに準ずる農地市街地農地として評価した価額 × 80%
市街地農地市街化区域内の農地、転用許可を受けた農地など原則は宅地比準方式。農地の倍率が定められている地域では倍率方式

純農地・中間農地・市街地周辺農地に該当するように見えても、転用許可済みなど「市街地農地」の要件に当たる場合は、市街地農地として判定します(財産評価基本通達 第2章第1節 農地)。

2.区分判定の全体像

評価上の区分は、都市計画法による区分と、農地法等による区分を重ねて判定します。次の順に確認します。

農地の相続税評価の判定フローチャート。転用許可の有無、市街化区域、農用地区域、農地法上の区分から、純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地を判定する手順。

転用許可済みの農地と市街化区域内の農地は、農地法の区分に関係なく市街地農地です。農用地区域内の農地は純農地です。いずれにも当たらない農地は、農地法等の区分で判定します。甲種農地と第1種農地は純農地、第2種農地は中間農地、第3種農地は市街地周辺農地です。

なお、価格事情が第3種農地に準ずる第2種・第1種農地は市街地周辺農地に、価格事情が第2種農地に準ずる第3種・第1種農地は中間農地に含まれます。

3.区分の確認方法――実務上の手順

区分の確認は、次の3段階で進めると漏れがありません。

① 最初に「現況が農地か」を確認する

登記地目が「田」「畑」でも、相続開始時に駐車場や資材置場などとして使っている場合は、その現況に応じた地目で評価します。登記簿や固定資産税の課税明細に「田」とあるだけでは、農地評価とは決まりません。

確認資料は、登記事項証明書、公図、固定資産税課税明細、現地写真、航空写真などです。相続開始時の利用状況を整理しておきます。

② 相続開始年の評価倍率表の「田・畑」欄を見る

国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で、対象年分・都道府県・「評価倍率表(一般の土地等用)」・市区町村を選び、所在地の行の「田」または「畑」の欄を確認します(国税庁 評価倍率表の見方)。表示の意味は次のとおりです。

倍率表の表示区分・読み方
純 + 数値純農地。数値が固定資産税評価額に乗じる倍率
中 + 数値中間農地。数値が固定資産税評価額に乗じる倍率
周比準市街地周辺農地。宅地比準で評価した価額の80%
比準・市比準市街地農地。宅地比準方式で評価

「比準」「市比準」「周比準」は数値の倍率ではなく、付近の宅地の価額に比準して評価するという指定です。

同じ町内でも、倍率表の適用地域が「市街化区域」「農用地区域」「上記以外」などに分かれることがあります。町名だけでなく、その行の地域条件まで確認してください。

③ 役所で都市計画・農地区分・転用許可を確認する

区分判定の根拠は、次のように事項を分けて照会すると整理しやすくなります。

確認事項主な照会先
市街化区域・市街化調整区域・非線引き区域など都市計画担当課
農業振興地域内の「農用地区域」か農政担当課
甲種農地・第1種・第2種・第3種農地の該当関係農業委員会・農地転用担当窓口
農地法4条・5条の転用許可の有無、許可日農業委員会・許可担当窓口
生産緑地・特定生産緑地の指定状況生産緑地担当課など

照会するときは、「現在の状況」だけでなく「相続開始日時点の状況」を確認します。回答日・担当部署・担当者・回答内容を、評価資料として残しておくのが実務的です。

4.区分判定で間違えやすい点

市街化調整区域だから「純農地」とは限らない

市街化調整区域内でも、農地区分によって評価上の分類は変わります。転用許可済みなら市街地農地、第2種農地なら原則として中間農地、第3種農地なら原則として市街地周辺農地です。「調整区域=純農地」と一律に扱わないことが大切です。

「農業振興地域」と「農用地区域」は別

純農地の判定で確認すべきなのは、「農業振興地域内にある」ことではなく、その中の「農用地区域内にあるか」です。財産評価基本通達36は、農用地区域内の農地を純農地の範囲に掲げています。ただし、市街地農地に当たるものは除かれます。

第3種農地と市街地農地は同じではない

農地法上の「第3種農地」は、原則として相続税評価上の「市街地周辺農地」に対応します。一方、「市街化区域内の農地」や「転用許可済みの農地」は市街地農地です。農地法上の分類と、相続税評価上の分類は区別して考えます。

5.各区分の計算方法と計算例

純農地・中間農地(倍率方式)

評価額 = その農地の固定資産税評価額 × 評価倍率

例えば、固定資産税評価額が20万円、農地の評価倍率が15倍と仮定すると、評価額は300万円です。田・畑それぞれについて、該当地域の倍率を使います。

市街地農地(宅地比準方式)

評価額 =(宅地とした場合の1㎡当たりの価額 - 1㎡当たりの造成費)× 地積

「宅地とした場合の価額」は、路線価地域では路線価を基に、倍率地域では近接し、位置・形状等が類似する宅地の価額を基に求めます。路線価に面積を掛けるだけではなく、対象農地の位置・形状等を反映して計算します(国税庁タックスアンサー No.4623)。

造成費は、整地・土盛り・土止めなど、宅地転用に通常必要と認められるものについて、国税局長が定める金額を用います。要件に当たれば、「地積規模の大きな宅地の評価」の適用も検討します。

なお、市街化区域内の市街地農地で農地の倍率が定められている地域では、固定資産税評価額に指定倍率を乗じます。宅地比準方式と倍率方式を自由に選んで、有利な方を採用できるわけではありません。

市街地周辺農地

評価額 =(宅地とした場合の1㎡当たりの価額 - 1㎡当たりの造成費)× 地積 × 80%

80%を掛けるのは、造成費を控除して市街地農地としての価額を求めた後です。

計算例

次の条件を仮定します。

  • 宅地とした場合の補正後単価:10万円/㎡
  • 控除する造成費:5,000円/㎡
  • 地積:1,000㎡
区分計算評価額
市街地農地(10万円 - 5,000円)× 1,000㎡9,500万円
市街地周辺農地9,500万円 × 80%7,600万円

これは区分による差を示す仮定例です。実際の造成費は、対象年分・地域の基準と現地の造成の必要性を確認して算定します。

6.評価額を確定する前の追加確認

区分と計算方法が決まっても、次の4点を確認してから評価額を確定します。

項目確認する内容
評価単位純農地・中間農地および倍率方式で評価する市街地農地は、原則として耕作単位となる1枚の農地で評価する。市街地周辺農地、宅地比準方式で評価する市街地農地、生産緑地は、それぞれ利用の単位となっている一団の農地を評価単位とする(財産評価基本通達7-2)。必ずしも1筆ごとではない
生産緑地4区分とは別に、生産緑地としての評価減を検討する。買取申出が可能かどうかなどで控除割合が変わる
貸付農地自用地評価で終わらず、耕作権等の権利関係に応じた評価を検討する
納税猶予通常の農地評価とは別に、農地等の相続税納税猶予の適用要件・継続条件を検討する

まとめ

農地の相続税評価は、次の順で進めます。

  1. 相続開始時の現況が農地かどうかを確認する
  2. 相続開始年の評価倍率表で「田・畑」欄の表示(純・中・周比準・比準)を確認する
  3. 役所で、都市計画上の区域、農地区分、転用許可の有無を相続開始日時点で確認する
  4. 区分に応じて、倍率方式または宅地比準方式(市街地周辺農地は80%)で計算する
  5. 評価単位、生産緑地、貸付農地、納税猶予の適用を検討する

個別の農地を判定するには、所在地・地番、相続開始日、評価倍率表の該当箇所、市街化区域等の区分、転用許可の有無が分かると、区分と評価方法を具体的に絞れます。

農地を含む相続のご相談は、税理士法人松野茂税理士事務所(阪神尼崎駅徒歩1分、電話 06-6419-5140)までお気軽にどうぞ。相続税の詳しい情報は、相続税のご案内ページもご覧ください。

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