親の借地の底地を子が買い取り、その後に地代のやり取りをしなくなると、原則として「親から子へ借地権の贈与があった」と扱われます。ただし、「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」をすみやかに提出すれば、贈与として扱われません。
「親が借りている土地の地主さんから、子が底地を買い取りたい」というご相談は、尼崎・西宮など阪神間の古くからの住宅地では珍しくありません。底地を子が買うこと自体は問題がなくても、その後の地代の扱いによっては、思わぬ贈与税の問題が生じます。
この記事では、国税庁タックスアンサーNo.4560の内容をもとに、手続のポイントをわかりやすく整理します。
1.底地の購入と借地権の贈与は別の問題
子が底地を買い取ると、土地の権利は次のように分かれます。
| 権利 | 買取前 | 買取後 |
|---|---|---|
| 底地(土地の所有権) | 元の地主 | 子 |
| 借地権 | 親 | 親(そのまま) |
ここで問題になるのは、子が地主に支払った底地の購入代金ではありません。購入後に親子の間で地代をやり取りしなくなった場合の、親が持っている借地権の扱いです。国税庁は、この場合、底地を買い取った時点で親から子へ借地権の贈与があったものとして取り扱うとしています。
そのため、「子が自分のお金で底地を買ったのだから、贈与の問題は生じない」とは言い切れません。
2.贈与として扱わないための申出書
子が底地を取得した後も、借地権は引き続き親のものであることを、次の書類で税務署に申し出ます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書類名 | 借地権者の地位に変更がない旨の申出書 |
| 申出の内容 | 底地を取得した後も、借地権者は引き続き親であること |
| 署名 | 借地権者である親と、土地所有者である子の連署 |
| 提出先 | 子の住所地の所轄税務署長 |
| 提出時期 | すみやかに |
この申出書をすみやかに提出すれば、借地権の贈与としては取り扱われません。
提出時期について、タックスアンサーは「すみやかに」とだけ記載しています。「贈与税の申告期限まで」といった具体的な期限は書かれていないため、底地を取得したら、できるだけ早く提出する準備を進めることが大切です。
申出書の様式は、国税庁のホームページで公開されています(手続案内:借地権者の地位に変更がない旨の申出手続、様式(PDF))。
3.親の相続のときは借地権が相続財産になる
申出書を提出した場合、将来、親に相続が発生したときには、その借地権は親の相続財産として取り扱われます。
つまり、この手続は「借地権を無税で子に移すもの」ではありません。「借地権は親に残っていることを明確にするもの」です。土地の名義が子になっていても、親の相続税の申告では、借地権の評価を忘れないようにする必要があります。
4.実務上の注意点
底地を買い取る前後で、次の点を整理しておくと安心です。
- 底地を取得した日と、取得の前後で地代をやり取りしていたかどうか
- 「借地権は引き続き親のもの」という親子双方の意向
- 申出書の提出日と、税務署に提出した書類の控え
- 親の将来の相続税申告のための、借地権の引継ぎの記録
また、子の底地の購入資金を親が出した場合などは、借地権の問題とは別に、その資金について贈与税の問題が生じることがあります。購入資金の出どころも、あわせて確認しておきましょう。
まとめ
- 子が親の借地の底地を買い取り、地代をやり取りしなくなると、原則として借地権の贈与があったものとして扱われる
- 「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を、親と子の連署で、子の住所地の所轄税務署長にすみやかに提出すれば、贈与として扱われない
- 申出書を提出した場合、親の相続のときには、その借地権は親の相続財産になる
底地の買取りは、贈与税と将来の相続税の両方に関わります。実行する前に、ぜひ一度ご相談ください。税理士法人松野茂税理士事務所では、相続・事業承継を含む資産の承継について、ご事情に合わせたご提案をしています。(電話 06-6419-5140/阪神尼崎駅徒歩1分)
参考
- 国税庁 タックスアンサーNo.4560(令和8年4月1日現在の法令等に基づく。根拠通達:昭和48年直資2-189)








