はじめに:「減資したのに、均等割が下がらない」
資本金を減らしても、法人住民税の均等割が下がらない場合があります。平成27年度の税制改正で、均等割の基準額に「資本金と資本準備金の合計額」という下限が設けられたからです。
結論を先に書くと、次のとおりです。
- 資本金を減らしただけでは、均等割は下がらないことが多い
- 減らした資本金を欠損てん補に充てると、基準額から減算でき、下がる場合がある
- 資本金等の額が、資本金と資本準備金の合計額を下回っている会社では、資本金を減らすと下限が下がり、均等割が下がる場合がある
今回は、シリーズ第5回(無償増資)、第7回(減資の基本)、第8回(欠損てん補)で出てきた均等割の取扱いを、「下限ルール」を軸に整理します。
均等割の基準額は、3つのステップで決まる
均等割の税率区分の基準となる額は、次の順に計算します。
- 法人税法上の資本金等の額を出す(別表五(一)Ⅱの期末の合計額)
- 次の調整をする。
- 加算:平成22年4月1日以後に、利益準備金またはその他利益剰余金を資本金に組み入れた額
- 減算:資本金または資本準備金の減少で生じたその他資本剰余金を、欠損てん補に充てた額(1年以内に充てた額に限る)
- 調整後の額と、資本金と資本準備金の合計額を比べ、大きいほうを基準額とする
3つ目が、平成27年度改正で設けられた下限ルールです(地方税法52条4項)。
基準額 = 次のいずれか大きい額
(a) 法人税法上の資本金等の額 ± 上記の加減算
(b) 資本金の額 + 資本準備金の額
出資金形態の法人は、「資本金と資本準備金の合計額」を「出資金の額」と読み替えます。この取扱いは、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。
法人税法上の資本金等の額と、均等割の基準額は、一致するとは限りません。
| 項目 | 法人税法上の資本金等の額 | 均等割の基準額 |
|---|---|---|
| 無償増資 | 変わらない | 加算される |
| 欠損てん補(減資による) | 変わらない | 減算される |
| 下限(資本金+資本準備金) | 関係しない | 下回れば、その合計額になる |
ケース別に見る:どんなとき均等割が下がるのか
これまでの記事の事例を、3つのステップに当てはめます(単位:万円)。
| ケース | 資本金等の額 | 加減算 | 調整後 | 下限(資本金+準備金) | 基準額 | 均等割 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 事例2:資本金800を減少しただけ | 1,300 | 0 | 1,300 | 500 | 1,300 | 変わらない |
| 事例3:資本金700を減少し欠損てん補 | 1,200 | △700 | 500 | 500 | 500 | 下がる |
| 自己株式の取得(事例4):資本金等が1,200から950に減少 | 950 | 0 | 950 | 1,200 | 1,200 | 変わらない |
| 第7回の設例:減資後に800を払戻し | 928.2 | 0 | 928.2 | 500 | 928.2 | 下がる可能性 |
事例2は、資本金を減らしても、法人税法上の資本金等の額が変わらず、欠損てん補もしていないので、基準額はそのままです。事例3は、欠損てん補の額を減算できるので、基準額が1,200万円から500万円に下がります。
自己株式の取得(事例4)は、法人税法上の資本金等の額が950万円に減りますが、資本金(1,000万円)と資本準備金(200万円)の合計額が1,200万円なので、下限の1,200万円が基準額になります。改正前は950万円で、均等割が下がるケースがありましたが、改正後は直ちには下がりません。
第7回の設例は、払戻しで資本金等の額が928.2万円に減り、下限の500万円を上回るため、928.2万円が基準額です。1,000万円以下の区分に入るので、均等割は軽くなる可能性があります。
下限が効く設例:減資で下限が下がり、均等割が下がるケース
過去の欠損てん補や自己株式の取得などにより、法人税法上の資本金等の額が、資本金と資本準備金の合計額を下回っている会社を考えます。
- 資本金等の額(調整後):800万円
- 資本金:1,200万円、資本準備金:なし
- 基準額:800万円と1,200万円のうち大きいほうの1,200万円(下限が効いている)
この会社が、資本金を400万円減少し、その他資本剰余金にしました(欠損てん補はしない)。
- 資本金等の額(調整後):800万円のまま
- 資本金:800万円、資本準備金:なし
- 基準額:800万円と800万円のうち大きいほうの800万円

基準額が、1,200万円から800万円に下がり、1,000万円超の区分から1,000万円以下の区分に変わります。道府県民税の標準税率では、年5万円が年2万円になり、年3万円の減少です。市町村民税の均等割は、従業者数に応じて異なります。
つまり、資本金を減らしただけでも、事前に下限が効いている会社では、均等割が下がる場合があります。逆に、資本金と資本準備金の合計額による下限が適用されていない会社では、欠損てん補や株主への払戻しを伴わず、資本金を減少させるだけでは、原則として均等割の基準額は下がりません。減資を検討するときは、まず自社の基準額が、資本金等の額と下限のどちらで決まっているかを確認してください。
毎期のチェックとまとめ
平成27年度の改正で、法人税法上の資本金等の額と、均等割の基準額が、一致するとは限らなくなりました。法人税の申告書だけを見ていても、均等割の基準額は分かりません。そのため、毎期のチェックが必要です。
決算のたびに、次の順に確認します。
- 別表五(一)Ⅱの、期末の資本金等の額を確認する
- 過去の無償増資の額(平成22年4月1日以後)を加算する
- 過去の欠損てん補の額(その他資本剰余金として計上してから1年以内に充てた額)を減算する
- 資本金と資本準備金(出資金)の合計額と比べ、大きいほうを基準額にする
- 基準額が属する税率区分と、従業者数で、均等割の税額を確認する
特に、無償増資や欠損てん補をした会社、自己株式を取得した会社は、基準額の推移を管理表などで残しておくと、翌期以降の確認が楽になります。
まとめ
- 均等割の基準額は、法人税法上の資本金等の額に、無償増資の加算と欠損てん補の減算をして、資本金と資本準備金の合計額と比べ、大きいほうとする(地方税法52条4項)
- 資本金を減少しただけでは、法人税法上の資本金等の額は変わらない。ただし、資本金と資本準備金の合計額が均等割の下限として適用されている場合には、減資によって均等割が下がることがある
- 欠損てん補に充てれば、その額(1年以内)を減算でき、均等割が下がる場合がある
- 自己株式を取得して資本金等の額が減っても、下限のため均等割は直ちには下がらない
- 資本金等の額が、資本金と資本準備金の合計額を下回る会社では、資本金の減少で下限が下がり、均等割が下がる場合がある
- 基準額は毎期チェックし、推移を管理する
減資や増資、自己株式の取得をお考えの方は、均等割への影響も含めて、実行前に当事務所へご相談ください。
出典
税理士法人松野茂税理士事務所(阪神尼崎駅徒歩1分)








