小規模宅地等の特例は、相続税の計算において土地の評価額を大きく減額できる重要な制度です。その中でも、店舗・事務所・工場・賃貸不動産・同族会社への貸付土地・社宅用地など、事業用宅地に関する特例は、土地の利用状況によって適用区分が大きく変わります。
事業用宅地に関する小規模宅地等の特例には、主に特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等の3つがあります。どの区分に該当するかによって、80%評価減となるのか、50%評価減にとどまるのか、限度面積が400㎡なのか200㎡なのかが変わります。
この記事では、小規模宅地等の特例シリーズ第23回から第26回までをまとめ、貸付事業用宅地等の3年縛り、特定同族会社事業用宅地等の役員要件・地代・事業内容、特定事業用宅地等の事業承継・事業継続、社宅用地の取扱いについて、尼崎の税理士が実務目線でわかりやすく解説します。。
当事務所では、この「事業用宅地」に関するテーマを4回にわたって解説しています。本記事では、各回の内容を要約しながら、どの記事がどのような場面で役立つかをご案内します。
相続税申告において「亡くなった方が事業に使っていた土地がある」「同族会社に土地を貸していた」「社宅として使っていた」といったケースでは、ぜひこのシリーズをご参照ください。
事業用宅地に関する3つの区分と基本比較
まず、事業用宅地等の特例には次の3つの区分があります。
| 区分 | 対象となる土地 | 減額割合 | 限度面積 |
|---|---|---|---|
| 特定事業用宅地等 | 被相続人が個人事業に使っていた土地(店舗・事務所・工場など) | 80% | 400㎡ |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 被相続人が同族会社に貸していた土地 | 80% | 400㎡ |
| 貸付事業用宅地等 | 不動産賃貸業などに使っていた土地 | 50% | 200㎡ |
同じ「事業に使っていた土地」でも、個人事業か・法人か・不動産賃貸かによって区分が変わり、税額への影響は大きく異なります。どの区分に該当するかの判定が、相続税申告における重要なポイントです。
特に、同じ「会社に貸している土地」であっても、会社の事業内容、貸付契約の有無、地代の支払状況、相続人の役員就任状況によって、特定同族会社事業用宅地等になる場合もあれば、貸付事業用宅地等にとどまる場合もあります。
第23回:貸付事業用宅地等の「3年縛り」を完全理解! Q&Aで学ぶ小規模宅地等の特例
この記事のポイント
平成30年度税制改正で導入された「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された土地は特例の対象外」という規制(いわゆる3年縛り)を、Q&A形式で8問にわたって解説しています。
主なテーマは以下のとおりです。
- 特定貸付事業(事業的規模:5棟10室基準)を満たす場合は3年縛りの例外が認められる
- 共有持分の場合、事業的規模の判定は全体(持分考慮なし)で行う
- 先代から事業を承継した場合、保有期間の通算が認められる(通達69の4-24の4)
- 建て替えは「新たに貸付事業を開始した」には該当せず、引き続き特例が適用できる
- 特定貸付事業を廃止・譲渡した場合や、生計一親族が新たに開始した場合は対象外
相続対策として賃貸不動産の購入を検討されている方は、購入から相続開始までの期間と事業的規模の要件を必ず事前に確認することが重要です。
第24回:特定同族会社事業用宅地等の特例Q&A|同族会社に貸している土地の相続税評価
➡ 記事を読む:第24回 特定同族会社事業用宅地等の特例Q&A
この記事のポイント
会社経営者の方が「自分の会社に土地を貸している」場合の取り扱いを、よくある8つのケースをQ&A形式で解説しています。
主な論点は次のとおりです。
- 無償貸付(使用貸借)では特例適用不可。賃貸借契約と適正地代の収受が必須
- 土地を相続する人が会社の株主でなくてもよいが、申告期限までに役員に就任していることが必要
- 役員要件を満たさない場合でも、貸付事業用宅地等(200㎡・50%)として適用を検討できる場合がある
- 会社の事業が不動産貸付業の場合は特例対象外(不動産管理業は対象)
- 複数の土地がある場合は、宅地ごとに事業内容を個別判定する
- 5階建てビルの一部を第三者に貸している場合は床面積で按分して判定
同族会社への土地の貸付は、相続税対策として有効な手段ですが、契約形態・役員体制・事業内容の確認を怠ると特例が使えなくなるリスクがあります。
第25回:特定事業用宅地等とは|個人事業の土地に使える小規模宅地等の特例(設問11問)
➡ 記事を読む:第25回 特定事業用宅地等(設問で理解する11のポイント)
この記事のポイント
被相続人が個人事業に使っていた土地(店舗・診療所・工場など)への特例適用を、設問形式で11問にわたって丁寧に解説しています。
主な論点は以下のとおりです。
- 相続開始前3年以内に取得した土地は原則対象外。ただし事業用資産の15%以上を占める場合は例外(特定事業用宅地等独自の救済措置)
- 土地の所有者と事業の主体が一致していることが大前提。親族が事業を行っていても土地所有者が被相続人でなければ不可
- 事業承継者と宅地取得者を一致させることが遺産分割の鉄則
- 申告期限前に法人成りした場合、特定事業用宅地等は不可だが、特定同族会社事業用宅地等として適用できる可能性がある
- 事業の転業(業種変更)は「廃止」に当たらず、特例は継続適用可
- 二次相続が申告期限前に発生した場合は、二次相続人の事業継続の有無で一次相続の特例適用が決まる
「特定事業用宅地等」と「特定同族会社事業用宅地等」の比較表も掲載しており、個人事業から法人への移行タイミングを検討される方に特に参考になる内容です。
第26回:社宅と小規模宅地等の特例|特定同族会社事業用宅地等・貸付事業用宅地等の違い
この記事のポイント
同族会社が従業員向け社宅を建築する場合について、消費税の仕入税額控除と相続税の小規模宅地等の特例(80%減額)を両方受けることが可能かを、条文・通達ベースで検証した実務研究的な内容です。
主な論点は以下のとおりです。
- 従業員用社宅の土地は、通達69の4-6(使用人の寄宿舎等の敷地)・69の4-24により、貸付事業用宅地等ではなく特定同族会社事業用宅地等として取り扱われる(80%・400㎡)
- 役員社宅・被相続人の親族のみが使用する社宅は対象外。従業員(使用人)が実際に居住していることが前提
- 特定同族会社事業用宅地等には「3年縛り」がない。相続開始直前の建築でも要件を満たせば適用可能
- 消費税については、社宅を現物給与として提供する場合、「居住用賃貸建物」に該当しないため仕入税額控除が可能
- 無償返還届出を提出している場合には、土地の相続税評価や小規模宅地等の特例の適用関係をあわせて確認する必要があります。一定の前提では大きな評価減となる場合がありますが、借地権割合、契約内容、土地の利用状況により結論は変わります。一定の前提に基づく試算例として、無償返還届出を提出している場合の土地評価は「自用地×80%×(1-80%)=自用地の16%」。最終的に84%減の評価となる
- 土地の評価方法と同族会社の株式純資産価額評価(借地権20%加算)との関係にも言及
この記事は、同族会社を活用した社宅整備について、相続税評価と消費税の取扱いをあわせて検討する実務的な考察記事です。
まとめ:事業用宅地の特例で押さえるべき実務チェックポイント
4回のシリーズを通じて、事業用宅地に関する小規模宅地等の特例の主要論点をQ&A・設問形式で解説してきました。
実務上の判断軸を整理すると、以下のとおりです。
| 確認事項 | 参照記事 |
|---|---|
| 賃貸不動産に3年縛りが適用されないか確認したい | 第23回 |
| 同族会社に土地を貸している場合の役員要件・地代・事業内容を確認したい | 第24回 |
| 個人事業用の土地の承継・継続・法人成りへの影響を確認したい | 第25回 |
| 社宅用地の特例区分(80%か50%か)と消費税の取り扱いを確認したい | 第26回 |
小規模宅地等の特例は、相続税額に直結する重要な制度です。土地の利用状況・賃貸借契約・事業の実態・相続人の役員就任状況・申告期限までの継続要件など、確認すべき事項が多岐にわたります。遺産分割の内容によっても適用の可否が変わるため、分割協議の前に専門家への相談をお勧めします。
ご相談・お問い合わせ
税理士法人松野茂税理士事務所では、相続税申告において小規模宅地等の特例の適用検討を申告業務の中核に位置づけ、30年の実務経験をもとにお客様ごとの状況に応じたご提案をしております。
個人事業の相続、同族会社への土地貸付、社宅、法人成りのタイミングなど、複合的な論点がある場合も、申告前に早めにご相談ください。
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【免責事項】本記事は公開日時点の法令等に基づいて作成しております。実際の税務判断については、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございますので、必ず税理士等の専門家にご相談ください。








