小規模宅地等の特例(居住用)完全ガイド|要件・同居・家なき子を尼崎の税理士が解説【第1回〜第4回まとめ】

【まとめ記事】小規模宅地等の特例

居住用宅地の完全ガイド|第1回〜第4回

尼崎の税理士法人が解説

小規模宅地等の特例は、最大80%の評価減が可能な非常に強力な制度です。

ただし、

  • 誰が取得するか
  • 同居か別居か
  • 老人ホーム入居の有無

によって適用可否が大きく変わります。

本記事では、特定居住用宅地等を中心に、「使えるかどうか」を判断できるように解説します。

目次

📋 連載記事一覧(第1回〜第4回)

第1回 小規模宅地等の特例とは?基本の仕組み 制度の全体像を解説。特定居住用・特定事業用・貸付事業用の3区分と減額割合、限度面積の計算方法を整理しています。 → 詳細記事を読む
第2回 特定居住用宅地等の取得者別要件 配偶者・同居親族・家なき子・生計一親族の4区分ごとに、適用要件を詳しく解説。条文の正確な読み方も紹介しています。 → 詳細記事を読む
第3回 老人ホーム入居後も小規模宅地等の特例は使える? 被相続人が老人ホームに入居していた場合の「みなし居住用宅地」の取扱いをケース別に解説。入居直前の生計一判定が重要なポイントです。 → 詳細記事を読む
第4回 複数の居住用宅地がある場合の小規模宅地等の特例 別荘・セカンドハウス等を複数所有していた場合の取扱い。「主として居住」の判断基準と、複数種類の宅地を併用する場合の限度面積計算を解説しています。 → 詳細記事を読む

【小規模宅地等の特例】制度の全体像と区分・減額割合の基本

📎 元記事:第1 尼崎の税理士が解説【小規模宅地等の特例とは?基本の仕組み】

相続や遺贈により取得した宅地等について、一定の要件を満たす場合に評価額を大幅に減額できる制度です。居住や事業の継続を税制面から支援する趣旨があります。

区分と減額割合

区分限度面積減額割合
特定居住用宅地等330㎡80%減額
特定事業用宅地等400㎡80%減額
貸付事業用宅地等200㎡50%減額

宅地の対象:被相続人と生計一親族の宅地の両方が対象

被相続人が直接使用していた宅地だけでなく、被相続人と生計を一にしていた親族が使用していた宅地についても、同様の区分で特例の適用が可能です。ただし、生計一親族の判定は非常に難易度が高く、実務では慎重な検討が必要です。

複数区分を併用する場合の限度面積計算

【調整計算式】 特定居住用の面積 ÷ 330㎡ + 特定事業用の面積 ÷ 400㎡ + 貸付事業用の面積 ÷ 200㎡ ≦ 1

【小規模宅地等の特例】特定居住用宅地等の取得者別要件(同居・家なき子)

📎 元記事:第2 尼崎の税理士が解説【特定居住用宅地等の取得者別要件】

最も利用頻度が高い「特定居住用宅地等」(330㎡まで80%減額)は、誰が取得するかによって要件が大きく異なります。取得者ごとの要件を正確に把握しておくことが実務の要点です。

なお、条文上、取得者間に「優先順位」はありません。各要件を満たせば、それぞれ特例の適用を受けることができます。

①配偶者が取得する場合

要件:なし(無条件で適用可能) 居住継続要件も所有継続要件もありません。申告期限前に売却・転居しても適用可能です。配偶者の税額軽減との併用も可能ですが、二次相続を踏まえた総合的な判断が重要です。

②同居親族が取得する場合

以下の両方を満たすことが条件です。

  • 相続開始の直前から申告期限まで、引き続きその家屋に居住していること
  • 申告期限(10ヶ月)まで、その宅地等を所有していること

「同居」の判定は住民票の形式だけでなく、生活の実態が重視されます。単身赴任・入院・老人ホーム入所等は個別判断となります。申告期限前の売却・転居は特例適用不可となるため要注意です。

③家なき子が取得する場合(平成30年改正で要件厳格化)

以下のすべての要件を満たすことが必要です。

  • 被相続人に配偶者がいないこと
  • 被相続人と同居していた相続人がいないこと
  • 相続開始前3年以内に、自己・自己の配偶者・3親等内の親族・特別関係法人が所有する家屋に居住したことがないこと
  • 相続開始時に居住している家屋を過去に一度も所有したことがないこと(日本国籍を有すること)
  • 申告期限まで宅地等を所有していること(居住継続要件はなし)

賃貸住宅居住者でも、過去に持ち家があった場合や、親族の持ち家に3年以内に住んでいた場合は適用不可です。要件を一つ一つ丁寧に当てはめることが求められます。

④生計一親族が取得する場合

被相続人と生計を一にしていた親族が居住していた宅地を、その親族が取得する場合の要件は以下の両方です。

  • 申告期限まで、その家屋に居住していること
  • 申告期限まで、その宅地等を所有していること

「生計を一にする」の判定は税務の中でも難解な論点であり、最高裁判例を踏まえた個別判断が求められます。別居の場合は、生活費・学費等の送金状況等が判断材料となります。家なき子は生計一親族の宅地には適用されない点にも注意が必要です。

実務では、税務調査で否認されるケースも多く、特に「生計一」や「同居判定」は証拠資料の準備が重要です。

※要件判断は非常に難しいため、実際の適用可否は専門家への確認をおすすめします。 尼崎で相続税に強い税理士に相談する

【小規模宅地等の特例】老人ホーム入居中に相続が発生した場合の適用要件

📎 元記事:第3 尼崎の税理士が解説【老人ホーム入居後も小規模宅地等の特例は使える?】

被相続人が老人ホームに入居していた場合でも、一定の要件を満たせば「みなし居住用宅地」として特定居住用宅地等の特例が適用できます(租税特別措置法施行令第40条の2第2項第1号ロ)。

適用要件

  • 施設入居の事実:相続開始直前において要介護認定・要支援認定・障害者支援などにより施設に入居していたこと

 ※ 空き家特例と異なり、「入居直前」に要介護認定を受けている必要はありません(相続開始直前の判定で足ります)。

  • 家屋の使用状況:その建物を事業の用や被相続人等以外の者の居住の用に供していないこと

生計一の判定は「入居直前」が基準(重要)

老人ホーム入居後の生計一親族の判定については、相続開始直前ではなく「入居直前」の状況で判断するとされています。これは生活実態を考慮した救済措置と解されます。

ケース別判定早見表

ケース判定区分
入居直前に同居していた親族が別居後も居住(生計一)被相続人の居住用
入居直前に同居していた親族が別居後も居住(生計別)被相続人の居住用
同居親族が入居後にその家屋から転居(生計一)被相続人の居住用
同居親族が入居後にその家屋から転居(生計別)被相続人の居住用
一人暮らしの家に生計一親族が住みついた被相続人または生計一の居住用
一人暮らしの家に別生計親族が住みついた×入居直前基準で弾かれる
一人暮らしのため空き家となった被相続人の居住用を検討
一人暮らしのため賃貸に出した要検討貸付事業用宅地等の可能性

実務では複雑な事例も多く、通達の読み込みと事例集との照合が必要です。また、数年ごとに改正が入る制度ですので、常に最新の措置法・通達を確認することをお勧めします。

【小規模宅地等の特例】複数の居住用宅地がある場合の「主として居住」判定と限度面積

📎 元記事:第4 尼崎の税理士が解説【複数の居住用宅地がある場合の小規模宅地等の特例】

被相続人が別荘やセカンドハウスなど複数の住宅を所有していた場合、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の対象となるのは「主として居住の用に供していた1つの宅地のみ」と法令で明確に限定されています(措法69の4①一、同法施行令40の2⑪)。

被相続人の判断や相続人の選択で変えることはできず、生活の実態に基づいて客観的に判断されます。

「主として居住」の判断要素

  • 日常生活の状況、生活の拠点性(どちらに生活の基盤があったか)
  • 電気・ガス・水道などの公共料金の使用量
  • 住民票・運転免許証・確定申告書など各種届出の住所
  • 新聞・郵便物の配達先
  • 入居目的・建物の構造・設備の状態
  • 家財道具の配置状況

申告時には生活実態を証明できる資料(光熱費明細・郵便記録等)を揃えておくことが重要です。税務調査での説明を求められる可能性があります。

例外:生計一親族の居住用宅地がある場合

複数の宅地で特例適用できるケース 「被相続人自身の居住用宅地」と「被相続人と生計を一にしていた親族の居住用宅地」が別々に存在する場合は、それぞれが要件を満たせば両方の宅地で特例を適用できます。ただし、合計で330㎡の限度内での適用となります。

複数種類の宅地を組み合わせる場合の限度面積

組み合わせ限度面積の取扱い
特定居住用+特定事業用のみ合計730㎡まで(居住用330㎡+事業用400㎡)
貸付事業用を含む場合調整計算式:(事業×200/400)+(居住×200/330)+(貸付)≦200㎡

実務でよくある誤解・注意点

❌ よくある誤解✅ 正しい理解
取得者の間に優先順位がある条文上、優先順位は存在しない。各要件を満たせば適用可能
配偶者は申告期限後も居住継続が必要配偶者に居住継続要件・所有継続要件はなし
老人ホーム入居後は必ず特例が使えない「みなし居住用宅地」として適用できる要件がある
セカンドハウスでも選択で特例を受けられる主として居住の1つの宅地のみが対象(客観的判定)
住民票があれば同居・生計一と認められる生活の実態(実質主義)で判断される
家なき子は賃貸なら必ず適用できる3年以内の親族持ち家居住や過去の持ち家歴でも不可

連載の続き(第5回以降)について

本連載はさらに続きます。主な予定テーマは以下のとおりです。

  • 第5回以降:同居判定の実務論点、2世帯住宅の取扱い
  • 特定同族会社事業用宅地等の特例
  • 貸付事業用宅地等と3年縛りのQ&A
  • マンション(区分所有)への適用
  • 家なき子特例の親族経営会社の判定

引き続き当事務所のブログをご覧ください。

税理士法人松野茂税理士事務所 相続税・小規模宅地等の特例のご相談はお気軽に 〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F (阪神尼崎駅徒歩1分) TEL: 06-6419-5140 FAX: 06-6423-7500 📩 無料お問い合わせフォームはこちら
目次