📋 この記事でわかること
- 同族会社に土地を貸している経営者が使える「特定同族会社事業用宅地等の特例」の3要件と実務上の注意点
- 被相続人と同居していなくても適用できる「家なき子特例」の厳格化された要件と判断Q&A
- 特例の種類を問わず間違いやすい共通論点11問(売買契約中・贈与・共有・選択替えなど)
- 申告期限に間に合わなかった場合・遺産分割が未了の場合の救済措置と手続きの流れ
相続税の節税効果が最も大きい制度の一つ、「小規模宅地等の特例」。当事務所では、この制度について実務で役立つ詳細な解説記事を継続的に公開しています。
今回は第9回〜第12回の4記事を振り返り、各テーマのポイントをまとめてご紹介します。相続税申告をお考えの経営者・ご相続人の方は、ぜひ各記事もあわせてお読みください。
第9回|特定同族会社事業用宅地等の特例 完全ガイド
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この特例とは
被相続人が自己の同族会社に賃貸していた土地について、相続税評価額を最大80%減額(限度面積400㎡)できる制度です。被相続人自身が事業を営んでいたわけではなく、同族会社がその土地上で事業を行っているケースが対象です。
3つの必須要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 法人要件 | 相続開始直前に被相続人・親族等が発行済株式の50%超を保有。不動産貸付業・駐車場業は不可 |
| 役員要件 | 宅地を取得した相続人が申告期限(10ヶ月)時点で役員であること(相続開始時点での就任は不要) |
| 保有継続要件 | 申告期限まで取得者が宅地を所有し、法人が事業を継続していること |
実務上の重要ポイント
- 土地は使用貸借ではなく、賃貸借契約により貸し付けていることが重要。地代については、固定資産税相当額のみの低額な負担ではなく、契約書・支払実績・地代水準を含めて実態を確認する必要があります。使用貸借では特例の適用不可
- 「無償返還の届出書」を提出している場合、土地の評価は自用地の80%(20%減額)
- 平成30年改正により、相続開始前3年以内に貸付を開始した土地は原則として対象外
- 他の特例(特定居住用330㎡)との完全併用が可能(最大730㎡)
- 貸付事業用宅地等を含める場合は調整計算式が必要で、有利不利選択のシミュレーションが不可欠
第10回|「家なき子」特例 完全解説 Q&A
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家なき子特例とは
被相続人と同居していなかった親族でも、一定要件を満たせば最大80%減額を受けられる制度です。平成30年改正により要件が大幅に厳格化されています。
主な適用要件(取得者側)
- 相続開始前3年以内に①自己名義②配偶者名義③三親等内の親族所有④特別関係法人所有の家屋に居住していないこと
- 申告期限まで取得した土地を継続保有すること
- 相続開始時に居住している家を過去に一度も所有したことがないこと
Q&A でわかる重要論点
| ケース | 結論 |
|---|---|
| 被相続人に配偶者がいた場合 | NG(配偶者の有無が第一の判定ポイント) |
| 相続後に空き家を賃貸に出した場合 | OK(申告期限まで保有していればよい) |
| 取り壊して更地にした場合 | OK(建物の有無は要件に含まれない。ただし土地の申告期限前の売却はNGのため、建物取壊し後も土地の保有継続に注意が必要) |
| 法定相続人でない弟と同居していた場合 | OK(「同居法定相続人」がいないかどうかが基準) |
| 養子が遺贈で取得した場合 | OK(養子は一親等の血族として親族に該当) |
実務上の最重要注意点
申告期限前に土地を売却するとNGになります。クライアントへの事前説明と「申告期限まで売却しない」旨の確認書取得を強くお勧めします。
また、被相続人が所有する家屋に長男と同居していたが会社都合で社宅住まいになったケースは、例外的に特例が認められる(単なる家なき子ではなく「自己の家を出た人」として扱われる)ことも要注意です。
第11回|間違いやすい!小規模宅地等の特例 共通 Q&A 集
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本記事の位置づけ
特定居住用・特定事業用・貸付事業用のすべての類型に共通する間違いやすい論点を11問のQ&A形式で解説しています。
重要Q&Aピックアップ
Q1 売買契約中の土地(売主側)は対象になるか?
→ 原則NG。相続開始時に引渡し前の土地は「売買代金を受け取る権利(未収債権)」として扱われ、宅地等の取得に該当しない。
Q3 相続時精算課税で取得した土地は対象になるか?
→ NG。特例は「相続または遺贈」による取得が要件。暦年課税・相続時精算課税による生前贈与は対象外。
Q6 共有で相続した場合の限度面積は?
→ 土地の面積に共有持分割合を乗じた面積で判定する。
Q8 税務調査で特例適用が否認された場合に別の土地で再選択できるか?
→ 認められる場合がある。当初の選択が要件を満たしていないと判明した場合、真に適用可能な宅地等への選択替えが認められることがある。
Q9 申告後に有利な選択方法が見つかった場合、更正の請求で変更できるか?
→ 原則NG。単に選択を誤ったという理由では更正の請求は認められない。申告前の十分なシミュレーションが絶対に必要。
Q10 遺留分侵害額請求で土地を代物弁済した場合は?
→ 特例はそのまま有効。ただし代物弁済は譲渡所得税の申告が必要になる場合がある。
Q11 災害による休業中に相続が発生した場合は?
→ 事業再開に向けた準備を進めていると認められる場合は特例が適用される可能性がある。
第12回|申告遅れと小規模宅地等の特例|期限後でも適用できる?
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結論:諦めるのはまだ早い
小規模宅地等の特例は原則として期限内申告が必須ですが、一定の救済措置が法律上設けられています。
ケース別の対応
ケース① 遺産分割は完了しているが、申告期限を過ぎてしまった
「やむを得ない事情」(災害、交通途絶、書類入手困難など)がある場合のみ、税務署長の承認を得ることで例外的に適用可能。単なる「失念」「多忙」「税理士への依頼遅れ」は認められない点に注意。
ケース② 遺産分割がまとまらず期限内に申告が困難
実務でよくあるケースです。以下の流れで特例適用の道が残ります。
- 未分割のまま期限内に申告(必須)
- 申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付(小規模宅地等の特例を受けようとする旨の記載欄あり)
- 申告期限から3年以内に遺産分割を完了
- 分割成立後4ヶ月以内に更正の請求を行い特例を適用・還付を受ける
ケース③ 3年を超えても遺産分割が完了しない
訴訟・調停・審判の係属など「やむを得ない事情」がある場合に限り、延長が認められる可能性があります。
- 3年経過日の翌日から2ヶ月以内に承認申請書を提出
- 事情が解消された日の翌日から4ヶ月以内に遺産分割を完了し、更正の請求を実施
まとめ表
| 状況 | 救済措置 | 条件 |
|---|---|---|
| 申告失念 | 極めて限定的 | やむを得ない事情+税務署長の承認 |
| 未分割・期限内申告済 | 3年間の猶予 | 分割見込書の添付が必須 |
| 3年超の未分割 | 延長申請可能 | 訴訟係属など特定事情のみ |
シリーズ全体を通じた実務上の教訓
小規模宅地等の特例は、適用の可否により相続税額が数千万円単位で変わる制度です。シリーズを通じて繰り返し登場する重要ポイントをまとめると、以下の3点に集約されます。
① 申告前のシミュレーションが最重要
どの土地でどの特例を選択するかは、申告後に変更できない(原則として更正の請求不可)。
② 賃貸借契約と地代の実態確認
特定同族会社への貸付では、使用貸借では特例が使えない。契約書と地代の実態が必須。
③ 期限管理の徹底
申告期限(10ヶ月)、分割見込書の添付、更正の請求の4ヶ月等、複数の期限が連動している。
小規模宅地等の特例シリーズ 一覧
小規模宅地等の特例(居住用)完全ガイド|要件・同居・家なき子を尼崎の税理士が解説【第1回〜第4回まとめ】
小規模宅地等の特例まとめ|二世帯住宅・貸付事業用・共有不動産・特定事業用宅地を尼崎の税理士が解説 第5回から第8回まとめ
| 回 | テーマ | リンク |
|---|---|---|
| 第9回 | 特定同族会社事業用宅地等の特例 完全ガイド | 記事を読む |
| 第10回 | 「家なき子」特例 完全解説 Q&A | 記事を読む |
| 第11回 | 間違いやすい!小規模宅地等の特例 共通Q&A集 | 記事を読む |
| 第12回 | 申告遅れと小規模宅地等の特例|期限後でも適用できる? | 記事を読む |
ご相談は税理士法人松野茂税理士事務所へ
小規模宅地等の特例は、要件の複雑さと選択肢の多さゆえに、専門家でなければ最適解を導くのが困難な制度です。
当事務所では30年の実務経験をもとに、相続税申告・小規模宅地等の特例の適用判断から、同族会社の事業承継・M&Aを一体的に考えた相続対策まで、幅広くサポートしております。
特に、同族会社に土地を貸している場合や、相続人が自宅を所有しているかどうかが問題になる場合、申告期限までに遺産分割がまとまらない場合は、事前判断を誤ると特例を受けられない可能性があります。
税理士法人松野茂税理士事務所
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