区分した整形地を基とする不整形地の評価は、別紙で1㎡当たりの単価を求めてA欄に入力すれば、あとは評価ソフトが自動計算します。
評価ソフトの「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」は、正面路線価と奥行価格補正率を1つずつ入れる前提で作られています。そのため、土地を3つに区分してそれぞれに奥行価格補正を行う計算は、そのままでは入力できません。
この記事では、国税庁の質疑応答事例「不整形地の評価――区分した整形地を基として評価する場合」の数値を使い、ソフトへの入力手順を順番に確認します。
国税庁の事例の概要
事例の土地は、路線価100,000円の道路に間口9mで接する180㎡の不整形地で、評価額は16,708,500円です。地区区分は普通住宅地区です。
奥行が一様でないため、間口3mずつの3つの整形地(甲・乙・丙)に区分します。

| 区分 | 間口 | 奥行 | 地積 |
|---|---|---|---|
| 甲 | 3m | 25m | 75㎡ |
| 乙 | 3m | 15m | 45㎡ |
| 丙 | 3m | 20m | 60㎡ |
| 合計 | 9m | 180㎡ |
評価の流れは次の2段階です(財産評価基本通達20)。
- 甲・乙・丙それぞれに奥行価格補正を行い、価額を合計する。
- 合計額に不整形地補正率を乗じる。
なお、国税庁のページは令和7年8月1日現在の法令・通達に基づいており、奥行価格補正率・不整形地補正率とも現行の数値です。
手順1 エクセルなどの別紙で3区分を計算する
別紙で求めるのは、1㎡当たりの単価98,750円です。この数値をソフトのA欄に入力します。
区分ごとに「路線価 × 奥行価格補正率 × 地積」を計算します。奥行価格補正率は、普通住宅地区の表から奥行距離に応じて拾います。
| 区分 | 路線価 | 奥行距離 | 奥行価格補正率 | 地積 | 価額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 甲 | 100,000円 | 25m(24m以上28m未満) | 0.97 | 75㎡ | 7,275,000円 |
| 乙 | 100,000円 | 15m(14m以上16m未満) | 1.00 | 45㎡ | 4,500,000円 |
| 丙 | 100,000円 | 20m(20m以上24m未満) | 1.00 | 60㎡ | 6,000,000円 |
| 合計 | 180㎡ | 17,775,000円 |
合計額を地積で割り、1㎡当たりの単価に直します。
17,775,000円 ÷ 180㎡ = 98,750円
エクセルで作る場合は、上の表をそのまま列にして「価額 = 路線価 × 補正率 × 地積」「単価 = 価額の合計 ÷ 地積の合計」の2つの式を入れるだけです。区分図と一緒に印刷し、評価明細書の別紙として添付します。
別紙の計算例
評価明細書に添付する別紙は、次のような1枚の表で足ります。
不整形地の評価(区分した整形地を基とする計算)
所在地番:○○市○○町○番 / 地区区分:普通住宅地区 / 正面路線価:100,000円
| 区分 | 間口 | 奥行距離 | 地積 | 正面路線価 | 奥行価格補正率 | 1㎡当たりの価額 | 価額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 甲 | 3m | 25m | 75㎡ | 100,000円 | 0.97 | 97,000円 | 7,275,000円 |
| 乙 | 3m | 15m | 45㎡ | 100,000円 | 1.00 | 100,000円 | 4,500,000円 |
| 丙 | 3m | 20m | 60㎡ | 100,000円 | 1.00 | 100,000円 | 6,000,000円 |
| 合計 | 9m | 180㎡ | 17,775,000円 |
1㎡当たりの価額(評価明細書A欄へ):17,775,000円 ÷ 180㎡ = 98,750円
1㎡当たりの価額は、評価明細書の取扱いに合わせて円未満を切り捨てます。奥行価格補正率はソフトのチェックがかからない欄ですので、補正率表の地区区分と奥行距離の区分を目で確認してから記入します。
手順2 ソフトに入力する
入力するのは次の6項目で、正面路線価100,000円と奥行価格補正率は入力しません。
| 入力項目 | 入力する数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 地積 | 180㎡ | 不整形地全体の地積 |
| 間口距離 | 9.00m | 甲・乙・丙の間口の合計 |
| 奥行距離 | 20.00m | 計算上の奥行距離(180㎡ ÷ 9m) |
| A欄(1㎡当たりの価額) | 98,750円 | 手順1の別紙で求めた単価 |
| 想定整形地の間口距離 | 9.00m | F欄の計算用 |
| 想定整形地の奥行距離 | 25.00m | 最も深い甲の奥行 |
通常の評価では、A欄には正面路線価に奥行価格補正率を乗じた1㎡当たりの価額が入ります。区分した整形地による方法では、この計算を別紙で済ませているため、結果の98,750円を直接入力します。
ソフトによっては、A欄へ直接入力できず、正面路線価の欄に98,750円を入れて奥行価格補正率を1.00とするものもあります。いずれの場合も、A欄に98,750円が表示されていれば結果は同じです。
魔法陣などの相続税評価ソフトでは、A欄に別紙計算後の1㎡当たり単価を入力します。

国税庁や書籍では総額で示す例もありますが、本記事では評価ソフトへの入力を前提に1㎡当たり単価に直して説明しています。
手順3 F欄で不整形地補正率が自動計算される
想定整形地の間口と奥行を入れると、F欄(5-2 不整形地)は不整形地補正率0.94、1㎡当たり92,825円と自動計算されます。

ソフトが行っている計算は次のとおりです。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 想定整形地の地積 | 9m × 25m | 225㎡ |
| かげ地割合 | (225㎡ − 180㎡)÷ 225㎡ | 20% |
| 地積区分 | 普通住宅地区で500㎡未満 | A |
| 不整形地補正率表の補正率 | 普通住宅地区・A・かげ地割合20%以上 | 0.94 |
明細書では、不整形地補正率表の補正率に間口狭小補正率を乗じた率(①)と、奥行長大補正率に間口狭小補正率を乗じた率(②)を比較し、低い方を不整形地補正率とします。
| 算式 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 不整形地補正率表の補正率 × 間口狭小補正率 | 0.94 × 1.00 | 0.94 |
| ② 奥行長大補正率 × 間口狭小補正率 | 0.98 × 1.00 | 0.98 |
| 不整形地補正率(①②の低い方、0.6が下限) | 0.94 |
間口狭小補正率は、間口9mが普通住宅地区の「8m以上」に当たるため1.00です。奥行長大補正率は、奥行20m ÷ 間口9m = 2.22で「2以上3未満」に当たるため0.98です。
F欄の金額は、98,750円 × 0.94 = 92,825円となります。
手順4 M欄で評価額を確認する
M欄(自用地の評価額)は、92,825円 × 180㎡ = 16,708,500円と自動計算され、国税庁の回答と一致します。

| 欄 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| A | 別紙で求めた1㎡当たりの価額 | 98,750円 |
| F | A × 不整形地補正率0.94 | 92,825円 |
| M | F × 地積180㎡ | 16,708,500円 |
国税庁の計算例は「17,775,000円 × 0.94」と総額で計算していますが、1㎡当たりに直してから計算しても同じ金額になります。別紙の単価に円未満の端数が出る土地では、端数処理により総額計算とわずかな差が生じることがあります。
入力時の留意点
留意点は3つあり、評価額に直接響くのは2つ目の間口の判定です。
1 E欄(5-1 間口が狭小な宅地等)は使いません
明細書の注書きのとおり、5-1と5-2は重複して適用できません。不整形地としてF欄で評価する場合、E欄は空欄のままにします。
2 間口狭小補正率・奥行長大補正率は、F欄の中で判定します
E欄を使わないからといって、2つの補正率が不要になるわけではありません。F欄の①②の算式に織り込まれています。今回の事例は間口が9mあるため結果に影響しませんでしたが、間口が8m未満の土地では差が出ます。
たとえば甲・乙・丙の間口が各2m(合計6m)で奥行は同じという場合、かげ地割合は20%のままですが、間口狭小補正率が0.97となり、①は 0.94 × 0.97 = 0.91(小数点以下2位未満切捨て)に下がります。ソフトの間口距離・奥行距離の欄を空欄にしたり、補正率を一律1.00と手入力したりすると、この評価減を取りこぼします。
3 参考事項欄に注記し、別紙を添付します
A欄が路線価からの通常の計算ではなくなるため、計算過程が明細書だけでは読み取れません。地形図及び参考事項の欄に「正面路線価100,000円。A欄は区分した整形地(甲・乙・丙)による計算、別紙のとおり」と記載し、区分図と手順1の計算表を添付します。
まとめ
区分した整形地を基とする評価は、「別紙で単価を出す→A欄に入れる→想定整形地を入れる」の3ステップでソフトに載せられます。
- エクセルなどで甲・乙・丙を計算し、1㎡当たりの単価(98,750円)を求める。
- ソフトに地積・間口距離・奥行距離を入れ、A欄に単価を入力する。
- 想定整形地の間口と奥行を入れると、F欄・M欄が自動計算される。
実際の土地では、区分の仕方や想定整形地の取り方で評価額が変わります。また、不整形地の評価には、計算上の奥行距離による方法や近似整形地による方法などもあり、どの方法が合理的かは土地の形状ごとに検討が必要です。
相続税の土地評価でお困りの際は、税理士法人松野茂税理士事務所までご相談ください。
税理士法人松野茂税理士事務所 〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F(阪神尼崎駅徒歩1分)
出典
- 国税庁 質疑応答事例「不整形地の評価――区分した整形地を基として評価する場合」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)
- 国税庁「奥行価格補正率表・不整形地補正率表ほか(財産評価基本通達 付表)」
本記事は上記事例の数値を前提とした一般的な解説です。入力欄の名称や操作は評価ソフトによって異なります。








