【スタッフ向け】居住用家屋の取得費はどう計算する?「標準的な建築価額表」と「減価の額」の実務

タイトル【スタッフ向け】居住用家屋の取得費はどう計算する?──「標準的な建築価額表」と「減価の額」の実務
居住用家屋の取得費はどう計算する?──「標準的な建築価額表」と「減価の額」の実務
目次

はじめに

相続した実家や、古くから所有する自宅を譲渡する場面で必ずといっていいほど直面するのが「建物の取得価額が分からない」という問題です。契約書類が残っていない、土地と建物の価額が契約上区分されていない――このようなケースでも、国税庁が公表している統計データを使えば、合理的に取得費を算定することができます。

今回は、この一連の計算方法を、実務で使う2つの計算シートとあわせて整理します。下の計算シートはこのページ内でそのままお使いいただけます。

STEP1:建物の取得価額を求める──「建物の標準的な建築価額表」

どんな場面で使うか

土地と建物を一括取得しており、契約上それぞれの価額が区分されていない場合等、建物の取得価額が不明なときに、土地と建物の価額を按分するための代替手段として使用します。

以下の場合は使用しません(実額が優先されます)。

  • 契約書等で土地と建物の価額が区分して記載されている場合
  • 建物にかかる消費税額が判明しており、そこから建物価額を逆算できる場合

計算方法

登記事項証明書で建築年月日・構造・床面積(マンション等は専有部分の面積でも可)を確認し、

建築単価(円/㎡)× 床面積(㎡)= 建物の取得価額

国税庁「建物の標準的な建築価額表」(昭和34年〜令和5年分収録)の単価を用います。構造区分は次の4種類のみで、鉄骨造は軽量・重量の区別なく1区分です。これは表の元データである国交省「建築着工統計」自体が軽量・重量を区分していないためで、税務署が精度を落として扱っているわけではありません。

  • 木造・木骨モルタル造
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造
  • 鉄筋コンクリート造
  • 鉄骨造(軽量・重量問わず)

国税庁「建物の標準的な建築価額表」準拠

建物の取得価額 計算シート

㎡
円
建築単価 — 円/㎡
建物の取得価額 —

この表は、土地と建物を一括取得し契約上の価額区分がない場合等に、建物の取得価額を按分するための代替手法です。契約書等で建物価額が区分されている場合や、消費税額から建物価額が逆算できる場合は使用しません。

収録範囲は昭和34年(1959年)〜令和5年(2023年)分。マンション等の床面積は専有部分の面積でも差し支えありません。

「鉄骨造」は軽量・重量の別を問わず1区分です。

出典:国税庁「建物の標準的な建築価額表」
nta.go.jp(PDF)

中古取得の場合は要注意

表の単価は「建築年」ごとに定められていますが、実際に確認すべきは登記事項証明書上の建築年月日です。新築時から所有している自宅であれば、その建築年に対応する単価を使います。

しかし、すでに建築済みの中古建物を購入したケース(相続不動産の前所有者がそうだった、というケースも含みます)では、標準的な建築価額表の単価はあくまで「新築時点の価額」であるため、そのまま本人の取得価額とすることはできません。国税庁の取扱いでは、建築年月日から購入日までの期間について、STEP2と同じ非業務用建物の償却率を使って減価額を計算し、これを標準的な建築価額から差し引いた金額を、購入者本人の取得価額とします。

標準的な建築価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数(建築年月日〜購入日) = 建築時から購入時までの減価額
標準的な建築価額 − 上記の減価額 = 購入者本人の建物の取得価額

この調整後の金額が、STEP2で使う「取得価額」になります。下の計算シートは、①新築時から所有しているケース、②取得価額が既に判明しているケース、の2パターンを想定した作りになっているため、中古取得で建築年月日と購入日がずれている場合は、上記の算式で一度手計算による調整を挟んでからSTEP2のシートに入力してください。

STEP2:減価の額を控除して「取得費」を求める

STEP1で求めた金額は、あくまで建物の”取得価額”です。建物は使用や期間の経過で価値が減少するため、そこから償却費相当額(減価の額)を差し引いたものが、譲渡所得の計算で使う「取得費」になります。

事業用と非業務用で計算方法が異なる

  • 事業用建物:取得から譲渡までの各年の減価償却費の合計額を控除
  • 非業務用建物(自己居住用等):法定耐用年数の1.5倍に相当する年数に対応する旧定額法の償却率を用いて計算

今回対象とするのは、相続不動産や自宅の売却で最も多い後者のケースです。

計算式

建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 償却費相当額(減価の額)
建物の取得価額 − 償却費相当額 = 建物の取得費

  • 償却率は、法定耐用年数の1.5倍(1年未満切捨て)に対応する旧定額法の償却率
  • 経過年数は、6か月以上の端数は1年、6か月未満は切捨て
  • 償却費相当額は取得価額の95%が上限

構造別の償却率一覧(非業務用・住宅用)

構造法定耐用年数×1.5後(切捨て)旧定額法の償却率
木造22年33年0.031
木骨モルタル造20年30年0.034
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造47年70年0.015
金属造(骨格材肉厚4mm超)34年51年0.020
金属造(骨格材肉厚3mm超4mm以下)27年40年0.025
金属造(骨格材肉厚3mm以下)19年28年0.036

STEP1の建築価額表は構造を4区分(鉄骨造は1つ)で扱っていましたが、こちらの償却率表では金属造が肉厚によって3区分に分かれる点に注意してください。登記事項証明書や建築確認資料で肉厚を確認できない場合は、依頼者への聞き取りが必要になることもあります。

国税庁「償却費相当額の計算方法(非業務用建物)」準拠

建物の取得費 計算シート(減価償却後)

円
経過年数 —
償却率 —
償却費相当額(減価の額) —
建物の取得費 —

算式:取得価額 × 0.9 × 償却率(法定耐用年数の1.5倍・旧定額法) × 経過年数 = 償却費相当額。取得価額 - 償却費相当額 = 建物の取得費。

経過年数は6か月以上の端数を1年、6か月未満は切り捨てて計算しています(日付ベースの簡易計算のため、端境期は登記事項証明書等の実日数で最終確認してください)。償却費相当額は取得価額の95%が上限です。

これは非業務用(自己居住用等)建物の場合の方法です。事業用建物は実際の減価償却費の累計額を控除します。

出典:国税庁
償却費相当額の計算方法(非業務用建物)

計算例(鉄筋コンクリート造マンション・昭和60年築)

新築時に取得し、そのまま居住していたケースを想定します(建築年月日=取得日)。

  1. STEP1:昭和60年(1985年)3月4日築・鉄筋コンクリート造・床面積80㎡ → 建築単価144,500円/㎡ × 80㎡ = 建物の取得価額 11,560,000円
  2. STEP2:取得日1985年3月4日、譲渡日2024年3月3日 → 経過年数39年、鉄筋コンクリート造の償却率0.015 → 11,560,000円 × 0.9 × 0.015 × 39年 = 償却費相当額 6,086,340円
  3. 建物の取得費 = 11,560,000円 − 6,086,340円 = 5,473,660円

実務上の留意点

  • 実額優先の原則:契約書や請求書など実額の資料が残っている場合は、そちらが優先されます。標準表・償却率表はあくまで「実額が不明なとき」の代替手段です。
  • 合理的な方法として認められている:この方式は国税庁自身が「譲渡所得の申告のしかた」等で公表している公式な算定方法であり、実額資料がない場合の推計方法として、国税不服審判所の裁決等でも合理性が認められています。
  • 概算取得費(5%)との比較を忘れずに:取得費が全く分からない場合の最終手段である概算取得費(譲渡価額の5%)よりも、この方法の方が有利になるケースが多くあります。特に相続案件では試算の比較を必ず行いましょう。

以上が、居住用家屋の取得価額・取得費算定の一連の流れです。申告実務の検算に、ぜひ2種類の自動計算シートをご活用ください。ご不明点があれば遠慮なく質問してください。

※国税庁の確定申告書等作成コーナーの簡易表には金属造4mm超の記載がありませんが、国税庁公表の「非業務用資産の償却率」では、4mm超は耐用年数51年、償却率0.020とされています。

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