都市計画道路予定地にある土地の相続税評価
「将来、道路として買い取ってもらえるなら、評価は下がらないのでは?」
相続税の申告で、こう感じる方は少なくありません。ところが、都市計画道路の予定地にかかっている土地は、一定の補正をして評価額を減額することが認められています。補正率表では、条件によって補正率が0.50となる場合があり、通常の自用地評価額から最大50%減額されるケースもあります。
1 都市計画道路予定地とは
都市計画道路は、市町村の都市計画課等にある「都市計画図」に明示されています。既存の道路を広げるものと、新しく道路をつくるものがあります。
注意が必要なのは、現地を見ただけでは分からないことです。今は宅地・畑・山林になっている場所に、将来の道路として指定されているケースもあります。評価の前に、都市計画課等で必ず調べてください。
2 なぜ評価が下がるのか
都市計画道路予定地に指定されると、そこでは建築物に制限がかかります。通常は、都市計画に適合した建築物や、階数が2階以下で地階がなく、容易に移転・除却できる建築物しか建てられません。
いずれ時価で買収されるとしても、買収されるまでの期間は相当長く、その間は土地の利用が制限されます。土地の用途(商業地・住宅地など)や容積率、予定地の面積割合によって、価額への影響は大きく変わります。
評価減の理由は「将来の買収」ではなく「現在の利用制限」です。
3 評価方法|3つの要素で補正率が決まる
評価は次の算式で行います(評価基本通達24-7)。
都市計画道路予定地の区域内にある宅地の価額 = 自用地の価額 × 都市計画道路予定地補正率
「自用地の価額」とは、その宅地が予定地の区域内にないものとした場合(利用制限がない場合)の通常の評価額です。
補正率は、次の3つで決まります。
- 地区区分(ビル街地区、普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区など)
- 容積率
- 地積割合(宅地全体の面積に占める、予定地部分の面積の割合)
容積率は、都市計画法による指定容積率と、建築基準法による基準容積率のうち、低いほう(厳しいほう)を使います。
これは、実際にその土地で利用できる容積率は、都市計画上の指定だけでなく、前面道路の幅員などによる建築基準法上の制限も受けるためです。したがって、指定容積率が高くても、前面道路の幅員による制限で基準容積率が低くなる場合には、その低い方を使って補正率を判定します。
たとえば、指定容積率が300%でも、前面道路の幅員による制限で基準容積率が240%となる場合は、補正率の判定には240%を使います。
補正率表(財産評価基本通達24-7)
ビル街地区・高度商業地区
| 地積割合/容積率 | 700%未満 | 700%以上 |
|---|---|---|
| 30%未満 | 0.88 | 0.85 |
| 30%以上60%未満 | 0.76 | 0.70 |
| 60%以上 | 0.60 | 0.50 |
繁華街地区・普通商業・併用住宅地区
| 地積割合/容積率 | 300%未満 | 300%以上400%未満 | 400%以上500%未満 | 500%以上 |
|---|---|---|---|---|
| 30%未満 | 0.97 | 0.94 | 0.91 | 0.88 |
| 30%以上60%未満 | 0.94 | 0.88 | 0.82 | 0.76 |
| 60%以上 | 0.90 | 0.80 | 0.70 | 0.60 |
普通住宅地区・中小工場地区・大工場地区
| 地積割合/容積率 | 200%未満 | 200%以上300%未満 | 300%以上 |
|---|---|---|---|
| 30%未満 | 0.99 | 0.97 | 0.94 |
| 30%以上60%未満 | 0.98 | 0.94 | 0.88 |
| 60%以上 | 0.97 | 0.90 | 0.80 |
(注)地積割合とは、その宅地の総地積に対する都市計画道路予定地の部分の地積の割合をいいます。
4 計算例
- 土地の総面積:500㎡
- うち都市計画道路予定地:100㎡(地積割合 100㎡÷500㎡=20%)
- 地区区分:普通商業・併用住宅地区
- 容積率:300%
- 路線価:25万円(奥行価格補正率1.00)
上の表(繁華街地区・普通商業・併用住宅地区、容積率300%以上400%未満、地積割合30%未満)から、補正率は0.94です。

- 自用地の価額:250,000円 × 1.00 × 500㎡ = 125,000,000円
- 評価額:125,000,000円 × 0.94 = 117,500,000円
この例では、750万円の評価減になります。
5 容積率の異なる地域にまたがる場合
宅地が容積率の異なる2以上の地域にまたがり、その一部が予定地になっていることがあります。国税庁の質疑応答事例では、補正率表の「容積率」は、予定地部分の容積率ではなく、宅地全体について各容積率を加重平均した容積率で判定するとされています(建築基準法52条7項)。
たとえば、容積率80%の部分150㎡と200%の部分450㎡がある宅地なら、加重平均は約170%です。予定地部分だけの200%で判定すると、補正率が変わる場合があります。
6 事業認可が出ていても、減額できるのか
都市計画事業の事業認可等がされると、早晩、買収が見込まれ、買取請求も可能になります。しかし、買収時期までは利用の制約が厳しくなるのも事実です。このため、課税時期において買収時期や対価の額が明らかであるなど特段の事情がある場合を除き、予定地の取扱いを適用して差し支えないとされています。
また、都市高速鉄道、都市計画公園、緑地などの予定地についても、計画決定の公告後、長期にわたって事業認可等がされていない場合には、都市計画道路予定地の取扱いを準用できる場合があります。
7 道路以外の都市計画施設にも準用される場合がある
都市計画施設は、道路だけではありません。都市高速鉄道、都市計画公園、緑地なども都市計画施設に含まれます。
これらの予定地についても、都市計画道路予定地と同じように利用制限が生じることがあります。
ただし、都市計画決定から事業認可までの期間が短く、早期に用地買収されることが見込まれる場合には、買収までの利用制限期間も短いため、特に大きな減価は生じにくいと考えられます。
一方で、都市高速鉄道や都市計画公園、緑地などの予定地で、計画決定の公告後、長期間にわたって事業認可等がされていない場合には、都市計画道路予定地の評価方法を準用できる場合があります。
つまり、道路以外の都市計画施設でも、「どの施設か」だけでなく、「計画決定からどれくらい長期間、利用制限が続いているか」が重要になります。※この取扱いについては、平成14年6月17日付「資産評価企画官情報第1号」および『財産評価基本通達逐条解説』(大蔵財務協会)評基通24-7の解説が参考になります。
8 倍率地域では「二重減額」に注意
倍率地域では、固定資産税評価額そのものに、都市計画道路予定地であることによる価格低下がすでに反映されている場合があります。評価倍率が、予定地であることを考慮して定められている場合もあります。
この場合に、さらに相続税評価で都市計画道路予定地の補正を行うと、同じ事情を二重に考慮することになります。したがって、固定資産税評価額や評価倍率にすでに予定地の影響が反映されている場合には、重ねて補正しないよう注意が必要です。
倍率地域で補正を検討するときは、「普通住宅地区」にあるものとした場合の容積率と地積割合で補正率を判定します。そのうえで、申告の前に、市町村役場の固定資産税課で、固定資産税評価額への反映状況を必ず確認してください。
9 実務のチェックポイント
- 市町村の都市計画課等で、都市計画図により予定地の範囲を確認する
- 土地全体の面積に対する予定地の面積(地積割合)を求める
- 地区区分と容積率(指定と基準のいずれか低いほう)を確認する
- 容積率が複数ある場合は、加重平均を計算する
- 倍率地域では、固定資産税課で二重減額にならないか確認する
- 事業認可後でも、買収時期や対価が明らかな特段の事情がないかを確認する
10 都市計画道路予定地の調べ方
都市計画道路予定地に該当するかどうかは、現地を見ただけでは分からないことがあります。現在は普通の宅地や駐車場、畑などとして利用されていても、都市計画道路の予定地に指定されている場合があります。
まず、市町村の都市計画課等で「都市計画図」を確認します。都市計画道路が指定されている場合は、道路の位置や計画幅員などが図面に表示されています。
相続税評価では、単に「都市計画道路にかかっている」ことが分かるだけでは足りません。土地全体のうち、どの部分が予定地に入っているのか、その面積を確認する必要があります。
実務では、次の順序で確認すると分かりやすいです。
- 市町村の都市計画課等で都市計画図を確認する
- 対象地が都市計画道路予定地にかかっているか確認する
- 予定道路の位置・幅員・対象地との重なりを確認する
- 土地全体に対する予定地部分の面積を求め、地積割合を計算する
- 地区区分と容積率を確認し、補正率を判定する
- 倍率地域の場合は、固定資産税課で予定地による減価がすでに固定資産税評価額に反映されていないか確認する
特に重要なのは、都市計画図を見ただけで概算しないことです。補正率は、予定地部分が土地全体の30%未満なのか、30%以上60%未満なのか、60%以上なのかで変わります。そのため、境界付近の土地では予定地部分の面積を正確に把握する必要があります。
都市計画道路予定地は、登記簿や現地確認だけでは見落とす可能性があります。土地の相続税評価を行う際には、役所での都市計画調査も確認項目の一つにしておくことが大切です。
まとめ
- 都市計画道路予定地は、現地を見ても分からないことがあるため、役所での調査が不可欠です。
- 評価減の根拠は、将来の買収ではなく、買収までの間の建築制限です。
- 補正率は、地区区分・容積率・地積割合で決まり、条件によっては最大50%の減額となります。
- 倍率地域では、固定資産税評価額への反映状況を確認し、二重減額を避けます。
土地の相続税評価は、登記簿や現地を見るだけでは分からない減額要素があります。都市計画道路予定地もその一つです。特に、予定地の範囲、容積率、地積割合、倍率地域での固定資産税評価への反映状況は、申告前に確認しておきたい項目です。
参考:国税庁の通達・質疑応答事例
都市計画道路にかかる土地の相続税評価でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
なお、道路に関係する土地の評価減には、都市計画道路予定地とは別に「セットバックを必要とする宅地」(評価基本通達24-6)の評価があります。こちらは考え方も評価方法も異なります。
相続税申告で土地評価が必要な方は、当事務所の相続税申告サポートをご覧ください。
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