年2回の役員賞与、1回だけ金額を変えたら両方経費にならない?決算をまたぐ場合も解説

年2回の役員賞与、1回だけ金額を変えたら両方経費にならない?決算をまたぐ場合も解説

役員賞与を年2回支給する会社では、事前確定届出給与の届出書に記載した金額と、実際に支給する金額を一致させる必要があります。

では、夏と冬の役員賞与をそれぞれ200万円と届け出ていたにもかかわらず、資金繰りの都合で一方を100万円に減額した場合、どうなるのでしょうか。

「減額した100万円だけが経費にならない」と考える方もいるかもしれません。

しかし、原則として、同じ職務執行期間に係る役員賞与は、支給ごとではなく、その期間全体で判定されます。

そのため、1回だけ届出額と異なる金額を支給した場合でも、届出どおりに支給した賞与まで損金不算入となることがあります。

一方、決算をまたいで支給する場合には、過年度に支給済みの賞与について、例外的な取扱いが認められる場合があります。

今回は、国税庁の法令解釈通達の解説をもとに、具体例で整理します。国税庁+1

目次

1.事前確定届出給与は、支給日と支給額を守る必要がある

役員賞与を法人税の計算上、損金に算入するためには、原則として事前確定届出給与の要件を満たす必要があります。

例えば、次のように届け出たとします。

支給日届出額
令和8年12月25日200万円
令和9年6月25日200万円
合計400万円

ところが、12月の賞与を100万円に減額して支給した場合、届出額と実際の支給額が一致しません。

この場合、差額の100万円だけでなく、実際に支給した100万円も、原則として損金に算入できません。

さらに、翌年6月の賞与にも影響する可能性があります。

2.判定の単位は「職務執行期間」

ここが今回の記事で最も重要なポイントです。

役員賞与の税務上の判定では、会社の事業年度と役員の職務執行期間を区別する必要があります。

一般的に、役員の職務執行期間は、定時株主総会から次の定時株主総会までの期間になります。

例えば、3月決算の会社で、毎年6月に定時株主総会を開催する場合を考えます。

12月と翌年6月は別の事業年度に属しますが、同一の職務執行期間に係る賞与です。

3月決算法人の職務執行期間と賞与支給日12月と翌年6月は別の事業年度に属しますが、同一の職務執行期間に係る賞与です。

このように、決算日をまたいでいても、2回の役員賞与が同じ職務執行期間の対価となる場合があります。

したがって、単純に事業年度だけで判定するわけではありません。

3.ケース①:1回目を減額し、2回目は届出どおりに支給した場合

3月決算の会社で、次のように役員賞与を支給したとします。

支給日届出額実際の支給額
令和8年12月200万円100万円
令和9年6月200万円200万円
合計400万円300万円

12月の賞与は、届出額より100万円少なく支給しています。

翌年6月の賞与は、届出どおり200万円を支給しました。

この場合、12月の100万円だけが損金不算入になるのでしょうか。

答えは、原則として、実際に支給した300万円全額が損金不算入となります。

同じ職務執行期間に係る2回の賞与について、定めどおりに支給されたかどうかを一体として判定するためです。

令和9年3月期の100万円と、令和10年3月期の200万円が、それぞれ損金不算入となることになります。

国税庁の解説でも、これと同様の事例が示されています。国税庁

4.ケース②:1回目は届出どおり、2回目だけ減額した場合

それでは、反対のケースを考えます。

支給日届出額実際の支給額
令和8年12月200万円200万円
令和9年6月200万円100万円
合計400万円300万円

この場合も、同じ職務執行期間に係る賞与の一部が届出どおりに支給されていません。

原則的な考え方からすれば、300万円全額が損金不算入となるように思えます。

しかし、国税庁の解説では、例外的な取扱いが示されています。

すでに終了した令和9年3月期に、届出どおり200万円を支給していた場合、翌事業年度の賞与を減額したことによって、前事業年度の課税所得に影響を与えるものではありません。

このため、翌事業年度に支給した100万円だけを損金不算入として取り扱っても差し支えないとされています。国税庁

翌事業年度に支給した100万円だけを損金不算入として取り扱っても差し支えない

いずれも同じ職務執行期間で、前後の支給が別事業年度に属する場合の例です。

つまり、決算をまたいでいる場合には、どちらの賞与を変更したかによって税務上の結果が異なることがあります。

ただし、これは事業年度をまたげば自由に金額を変更できるという意味ではありません。

5.同じ事業年度内で2回支給する場合

次に、同じ事業年度内に2回の賞与を支給する場合を考えます。

例えば、同一の職務執行期間に係る9月と12月の賞与を、それぞれ200万円と届け出たとします。

支給月届出額実際の支給額
9月200万円200万円
12月200万円100万円
合計400万円300万円

この場合は、届出額と異なる支給が同じ職務執行期間内に生じており、前述した過年度支給分についての例外的な取扱いは問題になりません。

したがって、実際に支給した300万円全額が損金不算入となるのが原則です。

なお、同じ事業年度内に支給した賞与であっても、異なる職務執行期間に係るものであれば、今回の例とは区別して検討する必要があります。

重要なのは、支給が同じ年度かどうかだけではなく、どの職務執行期間に対応する賞与であるかという点です。

6.役員賞与を減額するときに確認したいこと

事前確定届出給与は、単に税務署へ届出書を提出すればよい制度ではありません。

届出書の内容と実際の支給内容が一致していることが重要です。

特に次の点を確認しておく必要があります。

  • 同じ職務執行期間に何回の賞与を予定しているか。
  • 各賞与の届出額と支給日が一致しているか。
  • 支給日が事業年度をまたいでいないか。
  • 支給額を変更した場合、ほかの支給分にも影響がないか。
  • 振込前に、届出書・決議書・振込予定額を照合しているか。

資金繰りが悪化したからといって、届出済みの役員賞与を安易に減額すると、想定外の法人税負担につながる場合があります。

なお、役員賞与の未払計上についても、単に会計上の未払金を計上すれば届出どおりに支給したことになるわけではありません。実際の債務確定や支給の実態などを踏まえた個別の判断が必要です。国税庁

7.まとめ

年2回の役員賞与のうち、1回だけ届出額と異なる金額を支給した場合、変更した賞与だけが損金不算入になるとは限りません。

原則として、同じ職務執行期間に係る複数回の賞与は、一体として判定されます。

ただし、決算をまたぐ場合において、前事業年度の賞与が届出どおりに支給され、翌事業年度の賞与だけが届出どおりに支給されなかったケースでは、翌事業年度の支給分だけを損金不算入とする取扱いが認められています。

役員賞与は、届出書を提出する段階だけでなく、実際の支給が完了するまで管理することが大切です。

参考資料

国税庁の一次資料を掲載します。

※本記事は一般的な事前確定届出給与の金銭支給を前提としています。個別の事実関係や法定の変更届出の要否等については別途確認が必要です。

目次