給与所得控除の改正で年収178万円の壁へ|令和7年・8年改正をわかりやすく解説

給与所得控除の改正で年収178万円の壁へ|令和7年・8年改正をわかりやすく解説
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給与所得控除の改正で年収178万円の壁へ|令和7年・8年改正をわかりやすく解説|税理士法人松野茂税理士事務所

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投稿日:2026年6月7日  税理士法人松野茂税理士事務所

「年収103万円の壁」という言葉をご存知の方は多いと思いますが、令和7年・8年の税制改正でこの壁が大幅に見直されました。その核心にあるのが「給与所得控除」の引き上げです。今回は、改正の全体像から具体的な計算方法まで、スタッフとの対話形式でわかりやすく解説します。


目次

1.給与所得控除とは?

そもそも「給与所得控除」って何ですか?

給与所得控除とは、給与収入から差し引くことができる概算必要経費のことです。

個人事業主は実際の経費を必要経費として差し引けますが、会社員は通勤費や仕事に必要な物品の費用がかかっても、原則として実費で経費計上できません。そこで、給与所得者に認められた「みなし経費」として、収入額に応じた一定額を控除できる仕組みが給与所得控除です。

計算式で表すと次のとおりです。

給与収入 - 給与所得控除額 = 給与所得

2.今回の改正の全体像

今回の改正は何が変わったのですか?

今回の改正のポイントは大きく2点です。

  1. 令和7年分から:給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました(恒久措置)。
  2. 令和8年分以後:給与所得控除の最低保障額が65万円から69万円に引き上げられます。さらに、令和8年分・令和9年分については5万円の特例加算が設けられるため、最低保障額は合計74万円(本則69万円+特例5万円)となります。

また、この改正は基礎控除の引き上げとセットで行われており、令和8年分・令和9年分については、一定の所得以下の給与所得者について、所得税の課税最低限が178万円まで引き上げられる仕組みになっています。

「恒久措置」と「時限措置」の二層構造とはどういう意味ですか?

少しわかりにくい構造になっていますが、整理すると次のとおりです。

  • 恒久措置:物価上昇に連動した恒久的な引き上げ。令和7年分以降ずっと適用。
  • 時限措置:「年収の壁」を178万円にするための上乗せ。令和8年・9年分のみ適用。令和10年以降は改めて検討される見込み。

つまり、令和10年以降は178万円の水準が維持されるかどうかは現時点では未定ですので、引き続き注目が必要です。

3.給与所得控除の速算表(改正前後の比較)

具体的に控除額はどう変わったのですか?

給与収入が190万円以下の場合に最低保障額の引き上げの影響を受けます。190万円超の区分については変更はありません。

◆ 令和7年分(恒久措置後)の速算表

給与収入金額 給与所得控除額
162万5,000円以下 65万円(最低保障額・改正前は55万円)
162万5,001円 ~ 180万円 収入金額 × 40% - 10万円
180万1円 ~ 360万円 収入金額 × 30% + 8万円
360万1円 ~ 660万円 収入金額 × 20% + 44万円
660万1円 ~ 850万円 収入金額 × 10% + 110万円
850万1円以上 195万円(上限)
📌 ポイント
給与収入が162万5,000円以下の方は、改正前(55万円)より10万円多く控除されます。これにより課税所得が10万円圧縮されます。

◆ 令和8・9年分(時限措置も含めた速算表)

給与収入金額 給与所得控除額 備考
162万5,000円以下 74万円 本則69万円+特例5万円=74万円
162万5,001円 ~ 180万円 収入金額 × 40% - 10万円
※最低74万円
180万1円 ~ 360万円 収入金額 × 30% + 8万円 変更なし
360万1円 ~ 660万円 収入金額 × 20% + 44万円 変更なし
660万1円 ~ 850万円 収入金額 × 10% + 110万円 変更なし
850万1円以上 195万円(上限) 変更なし

4.年収の壁(課税最低限)の変化

「年収103万円の壁」はどう変わったのですか?

給与所得控除の引き上げと基礎控除の引き上げが組み合わさることで、所得税がかかり始める年収(課税最低限)は次のように変化しました。

適用年分 給与所得控除
(最低保障額)
基礎控除 課税最低限
(目安)
令和6年以前 55万円 48万円 103万円
令和7年 65万円 95万円 160万円
令和8・9年 74万円 104万円 178万円

※住民税の基礎控除は43万円のままで引き上げはありません。住民税の課税最低限は所得税とは異なりますのでご注意ください。
※令和7年分の基礎控除95万円は、合計所得金額132万円以下の場合の金額です。所得金額により基礎控除額は段階的に変わります。
※令和8・9年分の基礎控除104万円は、合計所得金額489万円以下の場合の金額です(本則62万円+特例42万円)。

📌 計算イメージ(令和8・9年分)

年収178万円の給与所得者の場合:

  • 給与所得控除:74万円(最低保障額)
  • 給与所得:178万円 - 74万円 = 104万円
  • 基礎控除(特例含む):104万円
  • 課税所得:104万円 - 104万円 = 0円 → 所得税なし

5.実務上の注意点

給与計算や源泉徴収の実務では何に気をつければよいですか?

主に以下の4点に注意が必要です。

① 令和8年分は年末調整での反映に注意

令和8年分の給与所得控除・基礎控除の改正効果は、毎月の源泉徴収では直ちに反映されず、年末調整で精算される予定です。

給与所得の源泉徴収税額表(月額表・日額表)や賞与に対する源泉徴収税額の算出率表の改正は、令和9年1月1日以後に支払う給与等から適用されます。そのため、令和8年11月までの毎月の源泉徴収事務には変更はありませんが、令和8年12月の年末調整から改正内容を反映する必要があります。年末調整での精算漏れに注意が必要です。従業員から「なぜ還付が増えたのか」と質問される場面も想定されます。改正内容を整理し、わかりやすく説明できるよう準備しておきましょう。

② 扶養・配偶者控除の所得要件も変更

基礎控除の引き上げに連動して、配偶者控除・扶養控除・勤労学生控除・障害者控除などの所得要件も改正されています。パート収入のある配偶者や扶養親族の取り扱いを再確認する必要があります。

③ 令和10年以降は未定

令和8・9年分の時限措置(74万円・178万円の水準)が令和10年以降も継続されるかは現時点では未定です。今後の税制改正動向を引き続き注視してください。

⚠ 住民税は別途確認を

今回の給与所得控除・基礎控除の引き上げは所得税の話です。住民税については基礎控除(43万円)の引き上げはなく、課税最低限も所得税と異なります。住民税の計算では別途ご確認ください。

6.よくある質問

収入が850万円を超えている場合、控除額に変化はありますか?
給与所得控除の上限額(195万円)については変更ありません。今回の改正による恩恵は、主に給与収入が190万円以下の方(最低保障額の引き上げ対象)に集中しています。高収入の方は基礎控除の引き上げ部分のみ恩恵を受ける形です。
年収160万円のパート従業員は令和8年から所得税がかからなくなりますか?

令和8・9年分については、年収178万円以下であれば所得税はかかりません。年収160万円の場合は次のように計算されます。

  • 給与所得控除:74万円(最低保障額)
  • 給与所得:160万円 - 74万円 = 86万円
  • 基礎控除:104万円(特例含む)
  • 課税所得:86万円 - 104万円 = 0円以下 → 所得税ゼロ

ただし、社会保険料(106万円・130万円の壁)は別問題ですのでご注意ください。

給与所得控除の「最低保障額」の適用対象はどんな収入範囲ですか?
給与所得控除の速算式を適用した結果が最低保障額を下回る場合に、最低保障額が適用されます。具体的には給与収入が約190万円以下の場合が最低保障額の適用対象です。190万円を超えると速算式の計算結果の方が大きくなるため、最低保障額は関係ありません。

📋 今回のまとめ
  • 給与所得控除の最低保障額が令和7年分から65万円(改正前55万円)に引き上げ(恒久措置)
  • 令和8・9年分はさらに本則69万円+特例5万円=74万円に引き上げ(令和8・9年限りの時限措置)
  • 基礎控除の引き上げと合わせると、課税最低限は令和8・9年分で178万円に拡大(所得制限あり)
  • 190万円超の給与収入には最低保障額の引き上げは影響なし。住民税は別計算
  • 令和8年分の改正効果は年末調整で精算。源泉徴収税額表(月額表等)の改正は令和9年1月1日以後の給与から適用
  • 令和10年以降の時限措置の行方は今後の税制改正を要注視
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