相続手続完全ガイド スケジュール| 期限・戸籍・財産調査・遺産分割・相続税申告まで

相続手続き完全ガイド期限・戸籍・財産調査・遺産分割・相続税申告まで

身近な方が亡くなられたとき、悲しみの中でも多くの手続きを進めなければなりません。相続には法律で定められた期限があるものも多く、手続きを誤ると大きな不利益を受けることがあります。

このガイドでは、相続が始まってから申告・納税が完了するまでの全体の流れを、スケジュール・財産の確認方法・戸籍の集め方・遺言書の確認・遺産分割・相続税申告・生前贈与・名義財産の注意点まで、網羅的に解説します。

目次

第1章 相続手続きのスケジュール

相続手続きは大きく3つのフェーズに分けられます。

フェーズ時期主な手続き
直後フェーズ死亡〜1か月死亡届・年金資格喪失・遺言書確認
調査・判断フェーズ1〜3か月相続人確定・財産調査・相続放棄の検討
申告・納税フェーズ3〜10か月準確定申告・遺産分割・相続税申告・納税

① 直後にやること(死亡〜1か月以内)

7日以内死亡届の提出

死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村役場へ提出します。葬儀社が代行するケースも多いですが、提出の確認は必ずご自身でしてください。

14日以内年金・健康保険の資格喪失

国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内に手続きが必要です。未支給年金がある場合は合わせて請求できます。

遺言書の確認

自筆証書遺言・公正証書遺言・法務局保管の遺言書がないかを確認します。自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要です。

② 相続の方針を決める(3か月以内)

3か月以内相続放棄・限定承認の申述

借金などマイナスの財産が多い場合は、死亡を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。何もしないと自動的に単純承認となります。

ポイント:3か月という期間は延長申請が可能です。財産の全容が把握できない場合は早めにご相談ください。

③ 申告・納税(4か月〜10か月)

4か月以内準確定申告

被相続人がその年に事業所得・不動産所得等を得ていた場合、相続人が代わりに確定申告(準確定申告)を行います。

10か月以内相続税の申告・納税(最重要)

相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税が必要です。期限を過ぎると無申告加算税・延滞税が課されます。

重要:配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例は、原則として申告期限までに遺産分割が確定していることが重要です。期限内に分割が間に合わない場合でも、一定の書類を添付することで後日適用できる余地があります。詳しくは第5章をご参照ください。

スケジュールまとめ

期限手続き内容
7日以内死亡届の提出
10〜14日以内年金・健康保険の資格喪失手続き
3か月以内相続放棄・限定承認の申述
4か月以内準確定申告・納税
10か月以内相続税の申告・納税(最重要)

相続登記の義務化(令和6年4月1日〜)

令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となります。

令和6年4月1日以前に発生した相続についても義務化の対象です。長年放置してきた不動産がある場合は、早急に対応することをお勧めします。

注意:相続登記の申請には、被相続人・相続人の戸籍一式・遺産分割協議書・印鑑証明書などが必要です。司法書士への依頼が一般的ですが、当事務所でも連携先をご紹介できます。


第2章 相続財産の確認方法と資料の集め方

相続が始まったら、まずプラスの財産とマイナスの財産(債務)の両方を網羅的に把握することが重要です。

種類主な例
プラスの財産現金・預貯金、不動産、有価証券、生命保険金(みなし)、退職金(みなし)、貸付金 など
マイナスの財産借入金(住宅ローン等)、未払い税金・医療費、保証債務 など

財産別の確認方法

① 現金・預貯金

通帳・キャッシュカード・銀行からの郵便物を手がかりに金融機関を特定し、死亡日時点の残高証明書を取得します。口座が不明な場合も金融機関窓口で開示請求ができます。

② 不動産

固定資産税の課税明細書(毎年4〜6月頃送付)や名寄帳(市区町村役場で取得)で所有不動産を把握します。名寄帳は市区町村ごとに管理されているため、複数の市区町村にまたがる場合は各役場での取得が必要です。

③ 有価証券

証券会社からの取引残高報告書を確認します。非上場株式がある場合は評価が複雑なため早めに税理士へご相談ください。近年はネット証券の利用者も多く書面が届かないケースがあります。

④ 生命保険・退職金

保険証券・保険会社からの郵便物を確認します。保険証券が見当たらない場合は生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を活用できます。

収集すべき主な資料

財産の種類収集する資料取得先
預貯金通帳・残高証明書・取引履歴各金融機関
不動産課税明細書・名寄帳・登記事項証明書・評価証明書市区町村役場・法務局
上場株式取引残高報告書・残高証明書各証券会社
非上場株式株主名簿・決算書対象会社
生命保険保険証券・支払通知書各保険会社
借入金返済予定表・残高証明書各金融機関

見落としやすい財産

  • ゴルフ会員権・リゾート会員権
  • 過去3〜7年以内の贈与財産(相続税加算対象)
  • 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産
  • 農地・山林・私道(固定資産税が非課税のため課税明細に載らない場合がある)
  • デジタル資産(暗号資産・ポイント等)

第3章 戸籍の集め方

相続手続きでは、預貯金の払い戻し・不動産の名義変更・相続税申告など、ほぼすべての手続きに戸籍が必要です。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を収集し、相続人の範囲を確定させます。

種類内容
戸籍謄本(全部事項証明書)現在有効な戸籍。戸籍に記載された全員の情報
除籍謄本全員が抜けた(死亡・婚姻・転籍等)戸籍
改製原戸籍謄本(原戸籍)法改正により作り直される前の古い戸籍

収集の手順

ステップ1 死亡時の戸籍から取得する

被相続人が死亡時に登録されていた市区町村の役場で、死亡の記載がある最新の戸籍を取得します。

ステップ2 出生までさかのぼる

取得した戸籍の「従前戸籍」欄をたどり、出生まで連続して取得します。転籍や婚姻で本籍地が変わっている場合は、それぞれの市区町村で取得が必要です。

ステップ3 相続人全員の現在の戸籍を収集する

確認できた相続人(配偶者・子・孫・兄弟姉妹など)それぞれの現在の戸籍謄本を収集します。

便利な制度

広域交付制度(令和6年3月スタート)

本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍謄本等の取得が可能になりました。本籍地が遠方でも、お近くの役場で手続きができます。

注意:広域交付は利用できる人や請求方法に制限があります。代理人による請求や郵送請求では利用できない場合があるため、事前に市区町村窓口へ確認してください。

法定相続情報証明制度

法務局に戸籍一式と法定相続情報一覧図を提出すると、法務局が認証した一覧図のコピーを無料で交付してくれます。金融機関・法務局・税務署などへの各種手続きで戸籍の原本を何度も提出する手間が省けます。


第4章 遺言書の確認方法

相続手続きの最初に必ず確認しなければならないのが遺言書の有無です。遺言書がある場合は原則としてその内容に従って手続きを進めます。

遺言書あり遺言書なし
財産の分け方原則として遺言書の内容に従う相続人全員で遺産分割協議
相続人全員の合意原則不要(遺言執行者が手続き)全員の署名・実印が必要

遺言書の種類と確認方法

① 公正証書遺言

公証役場で公証人が作成した遺言書です。原本は公証役場に保管され、家庭裁判所での検認が不要です。全国の公証役場で「遺言検索システム」による照会(昭和64年以降)が可能です。

② 自筆証書遺言(自宅保管)

遺言者が全文を自筆で書いた遺言書で、自宅の金庫・仏壇・書斎などに保管されています。発見しても家庭裁判所での検認が必要です。

注意:自筆証書遺言を検認前に開封すると、5万円以下の過料が科される場合があります。発見したらそのままの状態で保管し、家庭裁判所へ連絡してください。

③ 自筆証書遺言(法務局保管)

令和2年7月から始まった法務局の保管制度を利用したものです。家庭裁判所での検認が不要で、法務局への照会で有無を確認できます。

遺言書に関する注意事項

形式上の不備に注意

自筆証書遺言は全文が自筆であること・日付の記載(「吉日」は無効)・署名・押印が必要です。形式に不備があると無効になる場合があります。

遺留分への配慮

遺言書の内容が遺留分(法律で保障された最低限の取り分)を侵害している場合、遺留分侵害額請求の問題が生じることがあります。配偶者・子・直系尊属に遺留分が認められます(兄弟姉妹には遺留分なし)。


第5章 遺産分割のやり方

遺産分割とは、相続人全員で話し合い、誰がどの財産を引き継ぐかを決める手続きです。相続手続きの中でも最もトラブルが起きやすい場面です。

法定相続分

相続人の構成配偶者その他
配偶者+子1/2子全員で1/2
配偶者+父母2/3父母全員で1/3
配偶者+兄弟姉妹3/4兄弟姉妹全員で1/4
子のみ子全員で全部

ポイント:法定相続分はあくまで目安です。相続人全員が合意すれば異なる割合で分割することも可能です。

遺産分割の4つの方法

① 現物分割

財産をそのままの形で各相続人に分ける最もシンプルな方法です。財産の種類・金額によっては不公平が生じやすい面もあります。

② 換価分割

財産を売却して現金化し、代金を分ける方法です。公平に分けやすい反面、譲渡所得税が発生する場合があります。

③ 代償分割

特定の相続人が財産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払う方法です。事業承継や自宅の維持に有効ですが、支払う側に十分な資力が必要です。

④ 共有分割

財産を相続人全員で共有する方法です。将来の売却・管理で全員の合意が必要になりトラブルの原因になりやすいため、できる限り避けることを推奨します。

相続税申告との関係で重要なポイント

配偶者の税額軽減

配偶者が取得した財産について、法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額まで相続税が課税されない特例があります。原則として、申告期限までに遺産分割が確定していることが重要です。

小規模宅地等の特例

自宅・事業用土地について最大80%の評価減が受けられます。こちらも原則として、申告期限までに分割が確定していることが重要です。

二次相続への影響

配偶者の税額軽減を最大限使うと一次相続の税負担は軽くなりますが、配偶者が亡くなった際の二次相続で税負担が重くなる場合があります。一次・二次相続を通じたシミュレーションを踏まえた分割方法の検討が重要です。

期限内に分割が間に合わない場合:「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付することで特例の適用を留保できます。必ず税理士にご相談ください。


第6章 相続税申告をスムーズに依頼するために

相続税申告が必要なケース

遺産の総額が基礎控除額を超える場合に申告が必要です。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

注意:小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って税額がゼロになる場合でも申告は必要です。「税金がかからないから申告不要」という誤解に注意してください。

税理士選びのポイント

① 相続税申告の実績があるか

相続税申告は法人税・所得税とは異なる専門知識が必要です。相続税申告の経験が豊富な税理士を選ぶことが大切です。

② 不動産評価に強いか

広大地・不整形地・借地権・貸家建付地など特殊な評価が必要なケースでは、税理士の実力差が納税額に直結します。

③ 書面添付制度を活用しているか

書面添付制度とは、税理士が申告内容の根拠や調査内容を記載した書面を申告書に添付する制度です。申告内容への自信の表れであり、税務調査リスクの軽減にもつながります。

④ 報酬体系が明確か

初回相談で報酬の算定方法・目安を明確に説明してくれる事務所を選びましょう。加算報酬(非上場株式・複数不動産・期限直前依頼など)の有無も確認が必要です。

申告までの大まかなスケジュール

時期内容
1〜2か月相談・依頼・資料収集
2〜5か月財産評価・遺産分割の検討
6〜8か月申告書の作成・相続人への確認
9〜10か月申告書の最終確認・提出・納税

第7章 名義財産の留意事項

相続税の税務調査において最も指摘されやすい項目のひとつが名義財産です。名義上は別の人の財産でも、実質的には被相続人の財産とみなされるものを指します。

名義財産の典型的なパターン

① 子・孫名義の預貯金(名義預金)

親が子ども名義の通帳を作り自分でお金を入れ続けていた、子どもは口座の存在を知らなかった、通帳・印鑑を親が管理していたなどのケースが典型例です。

② 配偶者名義の預貯金

専業主婦(夫)の配偶者名義の預金が問題になるケースです。被相続人の収入から移転した資金は被相続人の財産とみなされる可能性があります。

③ 名義株(同族会社の株式)

同族会社において、実際には出資していないにもかかわらず株主名簿に名前が載っているケースです。生前に整理しておくことを強くお勧めします。

名義財産と認定されるとどうなるか

ペナルティ内容
本税(相続税の追徴)名義財産を加算した相続税額との差額を納付
過少申告加算税追徴税額の10〜15%
重加算税隠蔽・仮装と認定された場合35〜40%(非常に重い)
延滞税申告期限の翌日から納付日まで年利がかかる

名義財産にならないための対策

① 贈与契約書を毎回作成する

口頭での贈与は後から証明が困難です。毎年贈与を行う場合は、その都度贈与契約書を作成し双方が署名・押印します。

② 通帳・印鑑の管理を受贈者本人に移す

贈与を受けた人が通帳・印鑑を自ら管理していることが必要です。被相続人が管理し続けている限り名義預金と認定されるリスクがあります。

③ 振込による贈与で記録を残す

現金手渡しは記録が残りません。金融機関の口座への振込で行い、資金移動の記録を残すことが重要です。

名義財産 確認チェックリスト

  • 家族名義の預貯金口座で、被相続人が資金を入れたものはないか
  • 家族名義の口座の通帳・印鑑を被相続人が管理していなかったか
  • 収入のない家族名義に多額の預金がないか
  • 被相続人の口座からの大きな出金で使途不明なものはないか
  • 同族会社の株主名簿に実態と異なる名義株がないか
  • 過去の贈与について、贈与契約書・贈与税申告書が揃っているか

第8章 生前贈与の確認

相続税申告において、生前贈与の把握は非常に重要なポイントです。被相続人が生前に行った贈与の一部は、相続税の計算において相続財産に加算されるルールがあります。

① 暦年課税による贈与(生前贈与加算の対象期間)

令和6年1月1日以後の暦年贈与については、生前贈与加算の対象期間が、従来の相続開始前3年以内から最長7年以内へ段階的に延長されています。ただし、実際に何年分を加算するかは相続開始日によって異なります。

相続開始日加算対象期間
令和8年12月31日まで相続開始前3年以内(従来どおり)
令和9年〜令和12年令和6年1月1日から相続開始日まで(段階的に延長)
令和13年以降相続開始前7年以内(最大7年)

緩和措置:延長された4年分(相続開始前4〜7年以内)の贈与については、総額100万円まで加算不要です(4年間合計)。

② 相続時精算課税制度による贈与(全期間)

相続時精算課税を選択して行われた贈与は、贈与の時期にかかわらず全額が相続財産に加算されます。令和6年1月1日以降は年間110万円の基礎控除が設けられ、この基礎控除分は加算不要です。

③ 非課税特例を使った贈与

特例の種類非課税限度額注意点
住宅取得等資金の贈与省エネ等住宅:最大1,000万円
それ以外:最大500万円
令和6年1月1日〜令和8年12月31日。住宅の取得・居住が要件
教育資金の一括贈与1,500万円未使用残額は相続財産に加算
結婚・子育て資金の一括贈与1,000万円未使用残額は相続財産に加算
贈与税の配偶者控除2,000万円婚姻20年以上が要件

税務調査で問題になるケース

加算漏れ

「3年以内だけ加算すれば良い」という古い認識のまま申告してしまい、7年以内の加算漏れを指摘されるケースが今後増えることが予想されます。

定期贈与(連年贈与)とみなされるリスク

毎年同額・同時期に贈与を繰り返していると、あらかじめ一定額を贈与することを約束した定期贈与とみなされる場合があります。毎年ごとに贈与の意思を確認し、贈与契約書・振込記録・受贈者本人の管理状況を残しておくことが重要です。

生前贈与 確認チェックリスト

  • 被相続人の通帳の過去7年分(できれば10年分)の出金・振込を確認した
  • 贈与税申告書の控えを確認した
  • 贈与契約書の有無を確認した
  • 相続時精算課税の選択届出書を確認した
  • 教育資金・結婚子育て資金の非課税特例の残高を確認した
  • 相続財産を受け取る人への贈与のみ加算対象として整理した
  • すでに支払った贈与税額を把握した

まとめ 相続手続きの全体チェックリスト

直後フェーズ(1か月以内)

  • 死亡届を7日以内に提出した
  • 年金・健康保険の資格喪失手続きをした
  • 遺言書の有無を確認した(自宅・公証役場・法務局)
  • 自筆証書遺言は検認前に開封していない

調査・判断フェーズ(3か月以内)

  • 相続人を戸籍で確定した
  • プラス・マイナス両方の財産を網羅的に調査した
  • 相続放棄・限定承認の要否を検討した(3か月以内)
  • 税理士への相談を開始した

申告・納税フェーズ(10か月以内)

  • 準確定申告を4か月以内に完了した
  • 名義財産・生前贈与を漏れなく把握した
  • 遺産分割協議書を作成し全員の実印を取得した
  • 小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減を検討した
  • 一次・二次相続を通じた税負担シミュレーションを行った
  • 相続税申告書を期限内に提出・納税した
  • 相続登記(不動産名義変更)の手続きを進めた(3年以内)

相続税申告・相続手続きのご相談について

相続税申告は、財産評価・名義財産・生前贈与・遺産分割の方針により、税額や手続きの進め方が大きく変わります。
相続が発生した場合は、資料がすべて揃う前でも、早めにご相談ください。

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