建設業の法人成りで建設業許可はどうなる?許可の空白期間と事前認可制度を税理士が解説

建設業の法人成りは建設業許可に注意
目次

許可の空白期間を作らないためのスケジュールと注意点

個人で建設業を営んでいる方が法人成りを検討する場合、税金や社会保険だけでなく、特に注意しなければならないのが建設業許可の承継です。

建設業許可は、個人事業主から新しく設立した法人へ自動的に引き継がれるものではありません。手続きを誤ると、法人として工事を受注できない空白期間が生じたり、無許可営業として大きなリスクを負ったりする可能性があります。

令和2年の建設業法改正により、一定の要件を満たす場合には、事前認可制度を利用して個人の建設業許可を法人へ承継できるようになりました。

本記事では、建設業の法人成りを検討している個人事業主の方向けに、建設業許可の承継制度、無許可営業のリスク、税務上の注意点、専門家に相談すべきタイミングをわかりやすく解説します。

1 なぜ法人成りで許可の問題が起きるのか

スタッフ: 先生、建設業を個人でやっている方が法人成りをする場合、許可はそのまま引き継げないのでしょうか?

松野先生: そうなんです。建設業の許可は、原則として個人から法人へ自動的には引き継げません。個人と法人は法律上まったく別の主体ですから、法人成りすると個人の許可は失効してしまいます。

スタッフ: では、法人が建設工事を受注するためには、新たに許可を取り直さなければならないということですか?

松野先生: 原則としてはそうです。そして許可の審査には時間がかかりますから、その間は法人として建設工事を請け負えないという空白期間が生じてしまいます。これが法人成りにおける最大の落とし穴です。

2 無許可営業のリスク

スタッフ: 空白期間中に法人で工事を受注してしまったら、どうなりますか?

松野先生: それは建設業法違反、つまり無許可営業になります。非常に深刻な結果をもたらします。

リスクの種類具体的な内容
行政処分営業停止命令・建設業許可の取消し
刑事罰(建設業法47条・53条)個人・代表者等:3年以下の懲役または300万円以下の罰金 法人:両罰規定(同法53条)により1億円以下の罰金の可能性
欠格期間許可取消しから5年間は再取得不可
社会的信用の失墜経営事項審査(経審)の格付下落、公共工事入札資格の喪失、元請からの指名停止
⚠️ 許可の空白期間中に工事を受注した場合、個人・法人の双方が処罰対象となり、事業継続が5年間不可能になる可能性があります。

スタッフ: 5年間も再取得できないとなると、会社を畳まなければならないかもしれませんね。

松野先生: 実際そうなるケースもあります。だからこそ、法人成りの前に必ず専門家に相談し、許可の空白を一日も作らないことが絶対条件です。

3 令和2年改正で創設された「事前認可制度」

スタッフ: 何か対策はあるのでしょうか?

松野先生: はい、令和2年(2020年)10月の建設業法改正で、法人成りの際に個人の建設業許可を法人へ引き継ぐことができる「事前認可制度」(建設業法第17条の2)が創設されました。

制度の概要内容
根拠条文建設業法第17条の2
主な要件①個人事業主が新設法人の代表取締役になること ②個人と同一業種での許可申請であること ③個人の建設業を法人が事業譲渡により承継すること
メリット許可番号を引き継いだまま空白なく法人移行ができる
経審への影響経営事項審査の実績を連続性ある状態で維持しやすい
📌 事前認可制度を活用することで、法人成りと同時に許可が承継され、工事受注の空白期間をゼロにすることができます。

4 理想的なスケジュール

スタッフ: 事前認可制度を使う場合、どんなスケジュールで進めればよいですか?

松野先生: はい、ポイントは『事業譲渡より前に認可を受ける』という順序です。法人を設立してから30日以内に申請すればよい、というわけではありません。近畿地方整備局の手引きでは、承継予定日の90日前までに申請するよう示されています。申請時期や必要書類は許可行政庁ごとに異なりますので、少なくとも2〜3か月前には行政書士と一緒にスケジュールを確認しておくことが重要です。

時期主な作業担当・注意点
3か月前〜2か月前税理士・行政書士・社労士で初回打合せ許可承継の可否・法人成り日・事業譲渡日を確認
2か月前〜経営業務管理責任者・専任技術者・財産的基礎の確認資格証、実務経験証明、財産要件(一般建設業:500万円以上)を確認
2か月前〜1.5か月前法人設立準備定款の目的に建設業を明記、資本金を検討
法人設立後事前認可申請の準備・提出承継予定日前に認可申請が必要。近畿地方整備局は承継予定日の90日前までが申請受付の目安
認可後事業譲渡の実行(承継日)認可を受けた承継日に個人から法人へ事業を移す。認可前の工事受注は無許可営業リスクが生じる
承継後個人事業の廃業・契約名義変更・税務処理消費税、棚卸資産、固定資産、未成工事支出金を整理
⚠️ 法人成りによる建設業許可の承継は、法人設立後30日以内に申請すればよいというものではありません。事業譲渡の前に許可行政庁へ事前認可申請を行い、認可を受けたうえで承継日を迎える必要があります。申請時期・必要書類は許可行政庁によって異なるため、少なくとも2〜3か月前には行政書士とスケジュールを確認することが重要です。

5 法人成りにおける税務上の留意点

スタッフ: 税理士として関与する場合、どのような点に注意が必要ですか?

松野先生: 税務面でも重要な検討事項がいくつかあります。事業譲渡の方法によって課税関係が大きく変わりますので、最初にしっかり設計することが必要です。

検討事項内容
消費税法人設立後2年間の免税判定、インボイス登録のタイミング
棚卸資産の引継ぎ未成工事支出金の評価・時価での事業譲渡対価の設定
工具器具・車両時価譲渡か現物出資か(低額譲渡によるみなし譲渡課税に注意)
事業譲渡対価過大・過少いずれも税務リスクが生じるため適正な時価設定が必要
役員報酬損金算入のため事業年度開始から3ヶ月以内の決定が原則
📌 事業譲渡契約書に「本譲渡の効力は法人が建設業許可を取得した日に発生する」旨の条件付き条項を設けることで、許可取得前の法的リスクを回避できます。

6 専門家チームの連携が成功のカギ

スタッフ: 建設業の法人成りは、一人の専門家では対応しきれないということですね。

松野先生: そうです。税理士・行政書士・社労士がそれぞれの専門領域を担当し、緊密に連携することがとても重要です。

専門家主な担当業務
税理士法人設立スキームの設計、資本金・役員報酬の決定、事業譲渡の税務処理、消費税の選択
行政書士建設業許可の事前認可申請、許可申請書類の作成・提出
社労士法人としての社会保険加入手続き、就業規則整備(許可要件の充足)

弊所では、税理士として建設業の法人成りに関する税務・スキーム面での支援を行うとともに、信頼できる行政書士・社労士との連携体制を整えています。

まとめ

  • 建設業許可は個人から法人への自動承継ができない
  • 許可の空白期間中の工事受注は無許可営業となり、最悪の場合は許可取消し・5年間の欠格という致命的リスクがある
  • 令和2年改正の「事前認可制度」を活用することで空白なく許可を引き継ぐことができる
  • 建設業許可の承継を予定する場合は、遅くとも2〜3か月前には専門家チームでスケジュールを確認することが重要
  • 税務面では消費税・事業譲渡対価・棚卸資産の引継ぎなど多岐にわたる検討が必要

建設業の法人成りでは、税務上のメリットだけで判断するのではなく、建設業許可をどのように法人へ引き継ぐかを最初に確認する必要があります。

特に、許可の空白期間中に法人で工事を受注してしまうと、無許可営業として重大なリスクが生じます。法人成りを検討する段階で、税理士・行政書士・社労士が連携し、許可承継・法人設立・事業譲渡・社会保険・税務処理を一体で進めることが重要です。

建設業の法人成りをお考えの方は、法人設立・税務処理・建設業許可の承継スケジュールを一体で検討する必要があります。早めにご相談ください。

税理士法人 松野茂税理士事務所

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