外形標準課税の改正と減資|無償減資・欠損填補・有償減資の違いを解説

外形標準課税の改正と減資|無償減資・欠損填補・有償減資の違いを解説

外形標準課税の改正で封じられたのは、資本金を資本剰余金に振り替えるだけの無償減資です。欠損填補や有償減資のように、資本剰余金が実際に減少する取引については、単なる項目振替とは区別して判定する必要があります。

ただし、100%子法人等については、資本剰余金を原資とする配当や払戻しについて加算措置が設けられているため、資本剰余金が減少していても、その減少原因を確認する必要があります。

この記事は、無償減資、欠損填補、有償減資の場合における外形標準課税の取扱いを整理したものです。実際に減資スキームを実行する場合には、資本金等の額、資本剰余金の増減、欠損填補の有無、配当・払戻しの有無などにより結論が変わる可能性がありますので、必ず最新の条文・通達・実務上の取扱いを再確認することをおすすめします。

なお、外形標準課税はこれまでも抜け道が発見されるたびに逐次改正が重ねられてきた経緯があります。今後もさらなる改正により、適用範囲が拡大・厳格化されていくことが予想されます。現時点で有効な対策も、将来の立法により封じられる可能性があることを念頭に置いておく必要があります。


目次

はじめに

外形標準課税とは、資本金1億円超の法人に対して、利益の有無にかかわらず課税される法人事業税の一種です。赤字でも従業員に給料を払っていれば税負担が生じるため、かねてから大企業を中心に「何とか対象から外れたい」というニーズがありました。

その典型的な手法が無償減資です。資本金を1億円以下に引き下げることで外形標準課税を回避するもので、上場企業にまで広がり社会問題となりました。外形標準課税の対象法人数はピーク時の3分の2にまで減少し、国・地方自治体の税収に大きな影響を及ぼしました。

こうした状況を受け、令和6年度税制改正で対象法人の見直しが行われました。改正のポイントは「資本金だけで判定するから逃げられる。資本金と資本剰余金の合計額(払込資本)でも判定する」という追加基準の導入です。

改正により新たに外形標準課税の対象に加わった法人は次の2種類です。

【追加① 令和7年4月1日以後開始事業年度から適用】減資への対応
前期まで外形標準課税の対象だった法人が資本金を1億円以下に減資しても、払込資本(資本金+資本剰余金)が10億円を超えていれば引き続き対象となります。無償減資による回避を封じる規定です。

【追加② 令和8年4月1日以後開始事業年度から適用】100%子法人等への対応
払込資本(資本金+資本剰余金)が50億円を超える法人(特定法人)の100%子法人で、子法人の払込資本が2億円を超えるものが対象となります。グループ内で子会社に分社化することで外形標準課税を回避する手法への対応です。
100%子法人等は子会社だけでなく孫会社も含まれています。

100%子法人等については、資本剰余金を原資とする配当や有償減資による払戻しについて加算措置が設けられているため、実質的に払込資本が減少する取引(欠損填補等)以外では対象から外れることはできません。

なお、ここで重要なのが「払込資本」の判定方法です。外形標準課税の改正①②はいずれも「払込資本(資本金+資本剰余金)」で判定します。一方、従来の外形標準課税や会社法上の「大会社」(資本金5億円以上)は「資本金」で判定します。この違いを混同すると実務上の見落としが生じますのでご注意ください。

【ほとんどの中小企業には関係ありません】
資本金1億円以下の中小企業はそもそも外形標準課税の対象外です。今回の改正でも対象外であることに変わりはありません。影響が生じるのは、もともと外形標準課税の対象だった資本金1億円超の法人、および大企業グループの100%子会社です。

以下のQ&Aでは、改正の詳細と「減資スキームが使える会社・使えない会社」の判断基準をわかりやすく解説します。


Q1. 外形標準課税とは何ですか?

スタッフ:先生、外形標準課税という言葉をよく耳にするのですが、そもそもどんな税金ですか?

先生:法人事業税の一種で、利益が出ていなくても課税される仕組みです。通常の法人事業税は「所得割」といって、利益に対して課税されます。しかし外形標準課税が適用される法人は、それに加えて「付加価値割」と「資本割」も課税されます。

スタッフ:赤字でも税金がかかるということですか?

先生:そうです。付加価値割は給料や賃借料、支払利子などを基に計算しますから、赤字でも従業員に給料を払っていれば課税されます。資本割は資本金等の額に課税されます。事業規模が大きい法人に、利益とは切り離して広く薄く負担を求める趣旨の税金です。


Q2. どんな会社が対象になりますか?

スタッフ:どんな会社が対象になるのですか?

先生:改正前は「事業年度末日の資本金が1億円を超える法人」が対象でした。ですから資本金1億円以下の中小企業は対象外です。この点は改正後も変わりません。

スタッフ:では中小企業には関係ない話ですか?

先生:資本金1億円以下の会社には、今回の改正も含めて基本的に関係ありません。ただし、令和6年度の税制改正で対象法人が追加されましたので、資本金1億円前後の会社は確認が必要です。


Q3. 令和6年度改正で何が変わりましたか?

スタッフ:改正の背景から教えてください。

先生:実はここ数年、外形標準課税の対象法人数がピーク時の3分の2にまで減少していたのです。原因の大半は「減資」です。資本金が1億円を超えていた法人が、資本金を1億円以下に引き下げて外形標準課税を回避するケースが相次ぎました。上場企業でもこうした動きが報道され、社会問題になりました。

スタッフ:どんな減資が問題だったのですか?

先生:「無償減資」と呼ばれる方法です。たとえば資本金5億円の会社が、株主へ現金を払い戻すわけでもなく、帳簿の上で「資本金1億円・資本剰余金4億円」に振り替えるだけです。会社の実態は何も変わっていないのに、登記上の資本金が1億円以下になるので外形標準課税を回避できました。

スタッフ:それで改正されたのですね。

先生:そうです。令和6年度改正で「資本金の額だけで判定するから逃げられる。資本金と資本剰余金の合計額(払込資本)で判定しよう」という追加基準が設けられました。

外形標準課税の減資スキーム図解:ケース①払込資本10億円以下は改正前後とも回避可能、ケース②払込資本10億円超は無償減資のみ封じられ欠損填補・有償減資は回避可能、の3パターン比較

図1:改正前と改正後の無償減資スキームの比較

実質的に会社から資本が流出・消却されるケースは、最終的な払込資本の水準で判定されます。

減資への対応「10億円ルール」とは?図の解説

令和7年4月1日以後に開始する事業年度からは、資本金を1億円以下に減らしただけでは外形標準課税の対象から外れないケースが新たに生じます。

ここでポイントになるのが、「払込資本(資本金+資本剰余金)が10億円を超えているかどうか」という基準です。

1-1 新たに対象となる法人の要件

いわゆる「10億円ルール」で外形標準課税の対象となるのは、次の3つの要件をすべて満たす法人です。

前事業年度が外形標準課税の対象法人であったこと

当期末の資本金が1億円以下であること

当期末の払込資本(資本金+資本剰余金)が10億円超であること

従来は、資本金を1億円以下に減資すれば形式的には外形標準課税の対象外にできましたが、払込資本が10億円超の大企業については「見かけだけ中小企業に見せている」と判断され、引き続き外形標準課税の対象とされるイメージです。

図の「ケース① 払込資本10億円以下の会社」は、この3要件のうち③を満たしていないため、改正前も改正後も外形標準課税の対象外(=無償減資で回避可能)となるパターンです。

1-2 無償減資では10億円ルールを回避できない

無償減資(資本金を減らしてその他資本剰余金へ振り替えるだけの減資)の場合、会社全体の払込資本(資本金+資本剰余金)の合計額は変わりません。

そのため、図のケース②のように

減資前:資本金3億円、資本剰余金9億円 → 払込資本合計12億円

無償減資後:資本金8,000万円、資本剰余金11億2,000万円 → 払込資本合計12億円(変わらず)

というパターンでは、資本金は1億円以下になっても払込資本は10億円超のままです。

この場合、「前期外形標準課税の対象」「資本金1億円以下」「払込資本10億円超」の3要件をすべて満たすため、改正後も外形標準課税の対象が継続します。

図中の赤枠で示されているように、「無償減資では払込資本が変わらないため、10億円ルールの対象から外れない」ということが、この改正の一番の狙いです。

1-3 欠損填補・有償減資による“実質的な資本縮小”は別扱い

一方で、欠損填補や有償減資のように、会社から資本が実際に減る取引を行った場合には、払込資本自体が減少します。

欠損填補:資本金や資本剰余金を取り崩して、累積赤字の穴埋めに充てる

有償減資:資本金を減らして、その分を株主に払い戻す

このような取引により、期末の払込資本が10億円以下にまで下がれば、10億円ルールの③の要件(払込資本10億円超)を満たさないことになります。

図のケース②の緑のパターンがこのイメージで、「欠損填補や有償減資を組み合わせて、払込資本そのものを10億円以下に圧縮した場合には、改正後も外形標準課税の対象外になり得る」ことを示しています。


Q4. 改正後に追加された対象法人を教えてください。

スタッフ:具体的にどんな法人が追加されたのですか?

先生:大きく2種類あります。

【追加①】減資への対応(令和7年4月1日以後開始事業年度から適用)

  • 前事業年度において外形標準課税の対象だった
  • 当該事業年度末日の資本金が1億円以下
  • 当該事業年度末日の払込資本(資本金+資本剰余金)が10億円超

【追加②】100%子法人等への対応(令和8年4月1日以後開始事業年度から適用)

  • 払込資本(資本金+資本剰余金)が50億円を超える法人(特定法人)の100%子法人
  • 当該事業年度末日の資本金が1億円以下
  • 当該事業年度末日の払込資本(資本金+資本剰余金)が2億円超

スタッフ:②の「特定法人」というのは相当大きな会社ですね。

先生:そうです。払込資本50億円超ですから、上場企業や大手グループ会社の話です。顧問先の大半を占める中小企業には直接関係しません。実務上影響が出るのは①の減資ルールです。


Q5. 「払込資本」とは何ですか?

スタッフ:「払込資本(資本金+資本剰余金)」とは具体的にどの数字を見ればよいですか?

先生:貸借対照表の純資産の部のうち、次の3つの合計額です。

科目内容
資本金登記上の資本金額
資本準備金払込金額のうち資本金に組み入れなかった額
その他資本剰余金資本金・資本準備金の減少差益など

スタッフ:税務上の「資本金等の額」とは違うのですか?

先生:違います。これは会計上の金額で判定します。税務上の資本金等の額(別表5一で計算する金額)ではありません。自己株式の取得を行っても判定に影響しない点も、税務上の資本金等の額とは異なります。


Q6. 無償減資で外形標準課税を外すことはできますか?

スタッフ:今回の改正で、無償減資による外形標準課税の回避はできなくなったのですか?

先生:「無償減資だけ」では封じられた、というのが正確な答えです。前期まで外形標準課税の対象だった法人が無償減資をしても、払込資本の合計が10億円を超えていれば引き続き対象のままです。帳簿上で「資本金→資本剰余金」に振り替えても、合計額は変わりませんから。

スタッフ:「無償減資だけでは」という言い方が気になりました。組み合わせる方法があるのですか?

先生:あります。無償減資で増加した資本剰余金を使って繰越欠損金を填補する方法です。欠損填補は資本剰余金が繰越欠損金と相殺されて実際に消滅しますので、払込資本が実質的に減少します。

【無償減資+欠損填補の仕組み】

手順内容払込資本への影響
①無償減資資本金 → 資本剰余金へ振替変わらない(項目振替のみ)
②欠損填補増加した資本剰余金で繰越欠損金を充当資本剰余金が実際に消滅 → 減少する

スタッフ:具体的にはどうなりますか?

先生:たとえばこういうケースです。

【例】払込資本12億円・繰越欠損金2億円がある会社
減資前:資本金3億円 + 資本剰余金9億円 = 払込資本12億円

①無償減資:資本金2億2,000万円 → 資本剰余金に振替
 資本金8,000万円 + 資本剰余金11億2,000万円 = 払込資本12億円(変わらず)

②欠損填補:増加した資本剰余金2億円で繰越欠損金を填補
 資本剰余金11億2,000万円 → 2億円消滅 → 9億2,000万円

結果:資本金8,000万円 + 資本剰余金9億2,000万円 = 払込資本10億円
   → 10億円超ではないため外形標準課税の対象外 ✓

スタッフ:この方法は親会社が50億円超の100%子法人でも使えますか?

先生:使えます。欠損填補は配当加算措置の対象外と明確に規定されています。100%子法人(改正②)の場合も、無償減資+欠損填補で払込資本が2億円以下になれば対象外となります。改正①・改正②いずれにおいても有効な手法です。

手法改正①(払込資本10億円超の独立会社)改正②(親会社50億円超の100%子法人)
無償減資のみ✗ 対象のまま(払込資本変わらず)✗ 対象のまま(払込資本変わらず)
無償減資+欠損填補✓ 基準以下なら対象外(払込資本が実際に減少)✓ 基準以下なら対象外(加算措置の対象外)
有償減資✓ 基準以下なら対象外(加算規定なし)✗ 対象のまま(加算規定あり)

スタッフ:欠損填補を使えばどんな会社でも回避できるのですか?

先生:繰越欠損金の規模に依存します。欠損金が十分にある会社でなければ払込資本を基準以下まで減らせません。また欠損填補は会社の財務状態が悪化している場合に生じる手法ですので、健全な会社では欠損金自体が存在しないケースがほとんどです。いずれにせよ実施前に顧問税理士への確認が必須です。

スタッフ:では、ほとんどの中小企業は?

先生:中小企業は最初から資本金1億円以下ですから、外形標準課税の対象外です。「無償減資で外す」以前に、そもそも対象ではありません。改正の影響を受けるのは、もともと外形標準課税の対象だった資本金1億円超の法人に限られます。

【判定の3段階】今回の改正を正確に理解するには、次の3段階で見る必要があります。

① 資本金だけを見ると間違える(改正前の落とし穴)
② 資本金+資本剰余金(払込資本)だけを見ても間違える(欠損填補・有償減資を見落とす)
③ 資本剰余金がなぜ減ったかまで確認する(項目振替か・実際の消滅か・加算措置の対象かを区別)


Q7. 有償減資なら外れますか?

スタッフ:株主へ現金を払い戻す「有償減資」なら、払込資本が実際に減りますよね。有償減資で外れることはできますか?

先生:理論上は可能です。有償減資で払込資本を実際に10億円以下まで減らせば、追加基準の対象から外れます。


ここでいう「追加基準」とは令和6年度改正で設けられた払込資本による判定のことで、改正①は払込資本10億円超、改正②(令和8年4月~)は親会社50億円超グループの子法人で払込資本2億円超が対象となります。

(参考)「追加基準」とは、改正で新設された2つの判定基準

ひとつは改正①(令和7年4月~)で、前期まで外形標準課税の対象だった法人が資本金を1億円以下に減資しても、払込資本(資本金+資本剰余金)が10億円を超えていれば引き続き対象となる基準です。

もうひとつは改正②(令和8年4月~)で、払込資本50億円超の親会社の100%子法人のうち、払込資本2億円超のものが対象となる基準です。

有償減資で払込資本を実際に10億円以下(改正①の場合)または2億円以下(改正②の場合)まで減らせば、これらの追加基準を満たさなくなるため、外形標準課税の対象外となります。

無償減資(項目振替型)有償減資(払戻型)
株主への現金払戻なしあり
払込資本合計変わらない実際に減少する
今改正の対象封じられた条件次第で対象外になりうる

スタッフ:では有償減資が有効な節税策になるのですか?

先生:現実的には、独立した事業会社には難しい手法です。有償減資は株主への現金払い戻しですから、会社の手元資金が大幅に減ります。運転資金が失われ、金融機関への信用も低下します。債権者保護手続きが必要なため、取引先や金融機関にも知れ渡ります。税負担の軽減効果より経営へのダメージの方が大きいケースがほとんどです。

スタッフ:有償減資が現実的な会社というのはどんな場合ですか?

先生:100%子会社の場合です。払い戻した現金は親会社に戻るだけですから、グループ全体で資金は消えません。 ただし 改正②(令和8年4月~)により100%子法人については有償減資にも加算措置が適用されるため、さらに厳しくなっています。

今後の改正では特定法人の基準である払込資本50億円超がさらに引き下げられ、対象範囲が拡大されることも予想されます。


Q8. 減資スキームが「使える会社」「使えない会社」を整理してください。

スタッフ:結局のところ、減資スキームが使える会社と使えない会社をまとめてもらえますか?

先生:整理するとこうなります。

【使えない会社】無償減資で外形標準課税を外す方法

対象理由
前期まで外形標準課税の対象だった法人払込資本10億円超なら改正で封じられた
払込資本50億円超の親会社の100%子法人令和8年から100%子法人ルールが適用

【そもそも関係ない会社】

対象理由
資本金1億円以下の中小企業最初から外形標準課税の対象外

【条件次第で使える可能性がある会社】

対象手法条件
払込資本10億円以下の会社(改正①非該当)無償減資のみ払込資本が10億円以下であれば改正①の対象外。資本金を1億円以下に減資するだけで外形標準課税の対象外となる
払込資本10億円超の独立した事業会社(改正①)有償減資払込資本を実際に10億円以下に減らせば対象外。ただし経営上のコストが大きく独立会社には現実的でない
払込資本10億円超の独立した事業会社(改正①)無償減資+欠損填補払込資本を10億円以下に減らせば対象外。繰越欠損金の規模に依存
払込資本50億円超の親会社の100%子法人(改正②)無償減資+欠損填補払込資本を2億円以下に減らせば対象外。有償減資は加算措置により不可

スタッフ:先生、つまり今回の改正で困るのはどんな会社ですか?

先生:一言で言えば、「資本金が1億円を超えていて、節税目的で無償減資を検討していた大企業」です。ほとんどの中小企業にとっては、今回の改正は「知識として知っておく」程度で十分です。


Q9. 会社法上の「大会社」と外形標準課税はどう関係しますか?

スタッフ:先生、「大会社」という言葉もよく聞くのですが、外形標準課税とどう関係しますか?

先生:「大会社」は会社法上の概念で、外形標準課税とは別の話です。ただ、減資を検討するときに両方の影響を同時に考える必要があります。

スタッフ:会社法上の「大会社」とは何ですか?

先生:次のいずれかに該当する株式会社を「大会社」といいます(会社法第2条第6号)。

基準金額
資本金の額5億円以上
負債の部の合計額200億円以上

スタッフ:大会社になると何か義務が増えるのですか?

先生:大きく3つの義務が生じます。まず会計監査人の設置義務です。監査法人または公認会計士による会計監査が義務付けられ、年間数百万円のコストが発生します。次に内部統制システムの整備義務、さらに決算公告の拡充(損益計算書の公告義務)が生じます。

スタッフ:では、外形標準課税と大会社の基準を並べるとどうなりますか?

先生:こうなります。

基準閾値生じる負担
外形標準課税資本金 1億円超付加価値割・資本割が課される
会社法上の大会社資本金 5億円以上会計監査人設置・内部統制整備等が必要

スタッフ:資本金5億円の会社が無償減資で1億円以下にすれば、外形標準課税も大会社も両方外れますか?

先生:会社法上の大会社については、資本金を5億円未満に下げれば外れます。しかし外形標準課税については、払込資本が10億円超なら引き続き対象のままです。

【例】
資本金       4億円(無償減資で5億円→4億円に)
資本剰余金   7億円(振替で増加)
払込資本合計 11億円

→ 大会社(資本金5億円以上):外れる ✓
→ 外形標準課税(払込資本10億円超):外れない ✗

スタッフ:親会社が大きい場合はどうですか?

先生:それが令和8年4月から施行される「100%子法人等への対応」です。親会社の払込資本が50億円を超えている場合、その100%子会社は別のルールで捕捉されます。

スタッフ:親会社の資本金が50億円超かどうかで判断すればよいですか?

先生:それが大事なポイントです。親会社の「特定法人」該当判定は資本金だけでは判断できません。資本金+資本剰余金の合計額(払込資本)が50億円超かどうかで判定します。

【見落としが起きやすい例】
親会社の資本金     :3億円(資本金だけ見れば50億円にほど遠い)
親会社の資本剰余金  :52億円
親会社の払込資本合計 :55億円 → 特定法人に該当 ✗

資本金が数億円でも、過去の増資や組織再編で資本剰余金が積み上がっていると、払込資本合計が50億円を超えているケースがあります。親会社の貸借対照表を確認するまで断言できません。

外形標準課税100%子法人等への対応図解:無償減資・有償減資は配当加算措置で封じられ、無償減資+欠損填補のみ回避可能。各基準(従来・改正①②・大会社)の比較一覧付き

図2:100%子法人等への対応(令和8年4月~)と各基準の比較

100%子法人等に対する「2億円ルール」とは?

令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、大企業グループの100%子法人等について、新たに「払込資本2億円超」を基準とした外形標準課税のルール(いわゆる2億円ルール)が導入されます。
ポイントは、「資本金」ではなく「資本金+資本剰余金(払込資本)」で判定することと、形式的な資本取崩しを防ぐための“配当加算”が入っていることです。

2-1 対象となる100%子法人等のイメージ

2億円ルールの対象となるのは、次の3つの要件を満たす法人です。

  1. 親会社が「特定法人」であること
    → 親会社の払込資本(資本金+資本剰余金)が50億円を超えている大企業グループ
  2. 子会社(100%子法人等)の資本金が1億円以下であること
    → 形式的には中小企業と同じ資本金水準に見える会社
  3. 子会社の払込資本(資本金+資本剰余金)が2億円を超えていること
    → 実態としては中小企業の範囲を大きく超える資本規模を持っている会社

この3つの条件を満たす100%子会社や孫会社は、資本金が1億円以下であっても外形標準課税の対象になります。
「資本金だけを見ると中小企業に見えるが、実際は大企業グループの厚い資本のもとで活動している会社」を捉えるためのルールと考えるとイメージしやすいと思います。

2-2 無償減資では2億円ルールを回避できない

ここで重要なのが、「無償減資」と「払込資本」の関係です。

  • 無償減資とは、資本金を減らして、その分をその他資本剰余金などに振り替えるだけの減資
  • この場合、会社全体としての払込資本(資本金+資本剰余金)の合計額は変わりません

そのため、100%子法人等が無償減資によって資本金を1億円以下に落としても、払込資本が2億円を超えたままであれば、2億円ルールの対象からは外れません。
「資本金の見た目だけをいじる無償減資」では、従来型の外形標準課税と同様、今回の2億円ルールも回避できない設計になっています。

2-3 有償減資・資本剰余金の配当にも“配当加算”で歯止め

では、資本剰余金からの配当や有償減資で払込資本を2億円以下に減らせば、2億円ルールを回避できるのでしょうか。

この点については、2億円ルールには「配当加算」という仕組みが設けられています。
公布日以後に行われた資本剰余金からの配当や、有償減資で株主に払い戻された部分については、その減少額を払込資本に“加算し直して”2億円超かどうかを判定します。

つまり、

  • 資本剰余金から配当を出して払込資本を2億円以下に見せても
  • 判定にあたっては配当前の水準(減少額を加算した金額)でチェックされる

という仕組みであり、形式的な資本取崩しだけでは2億円ルールから外れないようになっています。

2-4 本当に資本規模を縮小した場合だけ2億円以下へ

一方で、欠損填補や一定の自己株式取得・消却など、実質的に会社から資本が失われる取引については、配当加算の対象外とされています。
こうした取引により、会社の払込資本自体が2億円以下にまで縮小した場合には、2億円ルールの対象外となる余地があります。

先生:このように、外形標準課税の改正①②の判定には「払込資本」を使いますが、従来の外形標準課税と会社法上の大会社は「資本金」で判定します。混同しやすい点ですのでご注意ください。

スタッフ:子法人の払込資本を2億円以下に減らせば対象外になりませんか?

先生:「配当加算措置」という抜け道封じの規定があります。ただし、この措置には明確な適用範囲があります。次の3つの条件をすべて満たす場合のみ加算の対象となります。

条件内容
① 完全支配関係100%子法人等(親法人との間に完全支配関係がある法人)であること
② 配当の相手方親法人に対する資本剰余金を原資とした配当であること
③ 実施時期令和6年3月30日(公布日)以後に行われた配当であること

スタッフ:裏を返すと、条件を外れる場合は加算されないということですか?

先生:そうです。条文の文言上、完全支配関係がない状態で行った配当は加算措置の対象外です。たとえば次のようなケースは加算されません。

ケース加算されるか理由
公布日(令和6年3月29日)以前の配当・減資加算されない③時期の条件を満たさない
グループ入り(完全支配関係成立)前の配当加算されない①完全支配関係の条件を満たさない
完全支配関係を解消した状態での配当加算されない①完全支配関係の条件を満たさない(ただし後述のリスクあり)
公布日以後・完全支配関係あり・親法人への資本剰余金配当加算される①②③すべて満たす

スタッフ:「完全支配関係を解消した状態で配当する」という方法が理論上は使えるということですか?

先生:条文の文言上はそのように読めます。しかし実務上は大きなリスクを伴います。税負担軽減のみを目的とした一時的な関係解消は、行政上の否認リスクがあります。またグループ法人税制上の譲渡損益の問題も生じます。さらに立法府はこれまでも抜け道が発見されると逐次手当てをしてきた経緯があり、将来の改正により封じられる可能性も十分あります。こうした手法を検討する際は顧問税理士と十分に相談することが不可欠です。

減資の検討に際しては外形標準課税(従来・改正①・改正②)と会社法上の大会社、これらすべての影響を同時に整理する必要があります。必ず顧問税理士にご相談ください。

欠損填補や、特定の自己株式取得・消却など、一定の取引については配当加算の対象外と整理されており、実質的に会社から資本が流出・消却されるケースは、最終的な払込資本の水準で判定されます。

このため、「本当に資本規模を落としている取引」で2億円以下になった場合には、100%子法人ルールの2億円要件を外れることがあります


まとめ

① 改正の背景
無償減資(資本金から資本剰余金への項目振替)を使った外形標準課税の回避が横行し、対象法人がピーク時の3分の2まで減少したことへの対応。

② 追加された対象法人(令和7年4月~)
前期まで外形標準課税の対象だった法人で、資本金1億円以下でも払込資本(資本金+資本剰余金)が10億円超なら引き続き対象。

③ さらなる追加(令和8年4月~)
払込資本50億円超の大企業グループの100%子法人で払込資本2億円超のものも対象に追加。

④ 中小企業への影響
資本金1億円以下の中小企業はそもそも外形標準課税の対象外であり、今回の改正による直接の影響はありません。

⑤ 会社法上の「大会社」との関係
会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)には会計監査人設置・内部統制整備等の義務が生じます。無償減資で大会社を外れても、払込資本が10億円超であれば外形標準課税は外れません。

資本金1億円前後の法人については、顧問税理士にご確認されることをお勧めします。


目次