はじめに
無道路地は、接道義務を満たすために必要な最小限度の通路を開設するものと仮定し、その通路に相当する部分の価額を差し引いて評価します。この価額は、実際の工事費用ではなく、路線価に通路部分の地積を乗じて計算します。評価ソフトでは、想定整形地の間口・奥行や評価対象地の地積などを入力すると、補正率を自動計算できます。ただし、その結果が正しいかどうかは、手計算の流れを知らないと確認できません。
この記事では、国税庁の質疑応答事例「無道路地の評価」の設例を使い、手計算の過程と評価ソフトの入力を対応させて確認します。
根拠は財産評価基本通達20-3(無道路地の評価)です。実際に利用している路線の路線価に基づいて不整形地として計算した価額から、その価額の100分の40の範囲内で、通路開設費用相当額を控除します。この通路相当部分の価額は、路線価に地積を乗じた価額とされています。
設例:道路に面した前面宅地の奥にある無道路地
道路から見て手前に前面宅地②があり、その奥に無道路地①があります。①は道路に接しておらず、②の一部を通路として通らないと出入りできません。国税庁の質疑応答事例の設例は、次の条件です。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 地区区分 | 普通住宅地区 |
| 路線価 | 100,000円(1㎡あたり) |
| 無道路地① | 20m × 20m = 400㎡ |
| 前面宅地② | 20m × 20m = 400㎡(想定整形地のかげ地になる部分) |
| 差引計算に用いる整形地(①+②) | 間口20m × 奥行40m = 800㎡ |
| 通路部分 | 幅2m × 長さ20m = 40㎡ |
| 無道路地①の間口 | 2m(接道義務を満たす最小限度の間口) |
評価の対象は①です。①の奥行価格補正後の価額を求めるため、②を含む800㎡の整形地を設定し、差引計算を行います。
手順1:奥行価格補正後の価額を差引計算で求める
無道路地①の奥行価格補正後の価額は、「①+②の奥行価格補正後の価額」から「②の奥行価格補正後の価額」を差し引いて求めます。近似整形地の価額から、不整形地に含まれない前面宅地の価額を引く方法(差引計算)です。
| 区分 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| (1) ①+②(奥行40m、800㎡) | 100,000円 × 0.91 × 800㎡ | 72,800,000円 |
| (2) ②(奥行20m、400㎡) | 100,000円 × 1.00 × 400㎡ | 40,000,000円 |
| (3) ①の奥行価格補正後の価額(A) | (1) − (2) | 32,800,000円 |
(A)を①の地積400㎡で割ると、1㎡あたり82,000円です。評価ソフトでは、この82,000円を「1路線に面する宅地」の単価欄に入力することになります。
ここで使う奥行価格補正率は、設例では奥行40mが0.91、奥行20mが1.00です。補正率は付表1(奥行価格補正率表)で確認します。
手順2:不整形地補正率を求める(3つの補正率を表で確認)
この設例の補正率は0.71です。不整形地補正率、間口狭小補正率、奥行長大補正率の3つを表で確認し、2通りの計算のうち低い率を採用します。
(1) かげ地割合と地積区分
かげ地割合は、想定整形地のうち、評価する土地以外の部分(かげ地)が占める割合です。
かげ地割合 = (想定整形地の地積 − 不整形地の地積)÷ 想定整形地の地積
この設例では、(800㎡ − 400㎡)÷ 800㎡ = 50%です。
地積区分は、普通住宅地区では500㎡未満がA、500㎡以上750㎡未満がB、750㎡以上がCです。無道路地①は400㎡なので、地積区分はAです。
(2) 不整形地補正率表(普通住宅地区)
普通住宅地区・地積区分A・かげ地割合50%の行を見ると、補正率は0.79です。
| かげ地割合 | 地積区分A | 地積区分B | 地積区分C |
|---|---|---|---|
| 10%以上 | 0.98 | 0.99 | 0.99 |
| 15%以上 | 0.96 | 0.98 | 0.99 |
| 20%以上 | 0.94 | 0.97 | 0.98 |
| 25%以上 | 0.92 | 0.95 | 0.97 |
| 30%以上 | 0.90 | 0.93 | 0.96 |
| 35%以上 | 0.88 | 0.91 | 0.94 |
| 40%以上 | 0.85 | 0.88 | 0.92 |
| 45%以上 | 0.82 | 0.85 | 0.90 |
| 50%以上 | 0.79 | 0.82 | 0.87 |
| 55%以上 | 0.75 | 0.78 | 0.83 |
| 60%以上 | 0.70 | 0.73 | 0.78 |
| 65%以上 | 0.60 | 0.65 | 0.70 |
(3) 間口狭小補正率表(10m未満を抜粋)
無道路地の間口は、接道義務を満たす最小限度の2mとして計算します。2mは4m未満の行にあたり、普通住宅地区の補正率は0.90です。
| 間口距離 | ビル街 | 高度商業 | 繁華街 | 普通商業・併用住宅 | 普通住宅 | 中小工場 | 大工場 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4m未満 | - | 0.85 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.80 | 0.80 |
| 4m以上6m未満 | - | 0.94 | 1.00 | 0.97 | 0.94 | 0.85 | 0.85 |
| 6m以上8m未満 | - | 0.97 | 1.00 | 1.00 | 0.97 | 0.90 | 0.90 |
| 8m以上10m未満 | 0.95 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.95 | 0.95 |
(4) 奥行長大補正率表(普通住宅地区)
奥行長大補正率は、奥行距離を間口距離で割った倍率で決まります。この設例は、奥行40m ÷ 間口2m = 20倍で、6倍以上の0.90です。計算上の奥行距離は200mですが、想定整形地の奥行40mが限度となるため、40mを使用します。
| 奥行距離 ÷ 間口距離 | 普通住宅地区 |
|---|---|
| 2以上3未満 | 0.98 |
| 3以上4未満 | 0.96 |
| 4以上5未満 | 0.94 |
| 5以上6未満 | 0.92 |
| 6以上 | 0.90 |
(5) 2通りの計算を比べて低い率を採用する
国税庁の設例では、次の2つを計算し、低いほうの率を採用しています。
| 計算 | 式 | 率 |
|---|---|---|
| ア:不整形地補正 | 0.79 × 0.90(間口狭小補正率) = 0.711 → 小数点第2位未満切り捨て | 0.71 |
| イ:間口狭小・奥行長大補正 | 0.90 × 0.90 = 0.81 | 0.81 |
アのほうが低いので、不整形地補正率は0.71です。これを手順1の価額(A)に掛けます。
32,800,000円 × 0.71 = 23,288,000円(B)
不整形地補正率表の率に間口狭小補正率を乗じた結果が0.60を下回るときは、付表5の注により、0.60とします。
手順3:通路部分の価額は「路線価 × 通路の地積」で求める
通路部分の価額には、奥行価格補正や不整形地補正をした後の単価ではなく、正面路線の路線価をそのまま使います。通達が、通路に相当する部分の価額を「路線価に地積を乗じた価額」としているためです。
100,000円 × 40㎡ = 4,000,000円(C)
控除できる金額には限度があります。不整形地補正後の価額(B)の100分の40までです。
23,288,000円 × 0.4 = 9,315,200円
(C)の4,000,000円は限度額の9,315,200円以内なので、全額を控除できます。通路の価額が限度額を超えるときは、限度額が控除額になります。
手順4:評価額は19,288,000円
不整形地補正後の価額(B)から、通路部分の価額(C)を引いた金額が、無道路地①の評価額です。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 奥行価格補正後の価額(A) | 32,800,000円 |
| 不整形地補正後の価額(B)= (A) × 0.71 | 23,288,000円 |
| 通路部分の価額(C)= 100,000円 × 40㎡ | 4,000,000円 |
| 無道路地①の評価額 = (B) − (C) | 19,288,000円 |
1㎡あたりでは、19,288,000円 ÷ 400㎡ = 48,220円です。
評価ソフトでの入力:手計算の各ステップがそのまま対応する
評価ソフトでは、手順1の差引計算の結果を単価として入れ、想定整形地の間口と奥行を入力すれば、不整形地補正までが自動で計算されます。入力の順序は次のとおりです。欄の名称は、使用しているソフトの例です。ソフトによって、入力画面や端数処理は異なります。
- 基本情報:地積400㎡、間口2mを入力します。間口2mは、この計算で最も重要な入力です。奥行は、想定整形地の奥行40mと、計算上の奥行(400㎡ ÷ 2m = 200m)のうち、想定整形地の奥行40mを入力します。

- A欄:手順1で差引計算した単価(82,000円)を入力します。

- F欄(不整形地):想定整形地の間口20mと奥行40mを入力すると、かげ地割合と補正率が自動で計算されます。ただし、不整形地補正率(0.79)、間口狭小補正率(0.90)、奥行長大補正率(0.90)は、補正率表と照らして目で確かめます。採用される率は0.71で、単価は58,220円になります。

- 通路の開設費用:通路部分の価額の合計額(100,000円 × 40㎡ = 4,000,000円)を、地積400㎡で割った単価(10,000円)を、F欄の単価から引きます。通路部分の価額が、不整形地補正後の価額の4割以内であることも確認します。 4,000,000円÷400㎡=10,000円 58,000円-10,000円=48,000を直接入れます。端数を出さないためです

- H欄・M欄:差引後の単価(58,220円 − 10,000円 = 48,220円)は、ソフトに頼らず電卓で計算し、H欄に入力します。M欄には、48,220円 × 400㎡ = 19,288,000円と表示され、手計算の評価額と同じになります。

通路部分の控除額は、正面路線価100,000円を使って手計算します。差引計算後の単価82,000円や、不整形地補正後の単価58,220円は使用しません。
手計算した評価単価をソフトに直接入力する
評価ソフトの自動計算では、端数処理によって手計算とわずかな差が生じる場合があります。そのため、国税庁の設例に従って手計算した評価単価を、評価ソフトに直接入力します。直接入力するのは、A欄(奥行価格補正後の単価)とH欄(最終評価単価)の2か所です。H欄は、端数を手計算と合わせるため、ソフトの自動計算に頼らず、電卓で計算した単価を入力します。
- A欄に入力:奥行価格補正後の単価 32,800,000円 ÷ 400㎡ = 82,000円
- 不整形地補正後の単価(ソフトが自動計算):82,000円 × 0.71 = 58,220円
- 通路部分の控除額(1㎡当たり):4,000,000円 ÷ 400㎡ = 10,000円
- H欄に入力(ソフトに頼らず電卓で計算):最終評価単価 58,220円 − 10,000円 = 48,220円
- 評価額(M欄):48,220円 × 400㎡ = 19,288,000円
これにより、手計算と評価ソフトの評価額を一致させることができます。ソフトの内部的な端数処理を追う必要もありません。評価明細書には、手計算の過程も残しておきます。
実務上のポイント:間口は2m、奥行は想定整形地の奥行まで
- 無道路地に当たるかを先に確認:他人の土地に囲まれていても、その土地について通行の用に供する権利が設定されている場合は、無道路地として評価しません。現況の通路だけでなく、権利関係も確認します。
- 間口は2m:無道路地は、接道義務を満たす最小限度の間口を有するものとして、間口狭小補正率を使います。この設例の間口は2mなので、普通住宅地区の間口狭小補正率は0.90です。
- 奥行は想定整形地の40m:不整形地の地積を間口で割った「計算上の奥行」は400㎡ ÷ 2m = 200mになりますが、計算上の奥行は想定整形地の奥行を限度とします。奥行長大補正率の判定には40mを使い、40m ÷ 2m = 20倍で0.90になります。
- 通路は路線価で計算:通路部分の価額は、路線価 × 通路の地積です。手順1で求めた差引後の単価や、補正後の単価は使いません。
- 補正率は低いほうを採用:不整形地補正率 × 間口狭小補正率と、間口狭小補正率 × 奥行長大補正率を比べ、低い率を使います。評価ソフトも同じ判定をします。
- 接道義務の間口は条例で異なる:東京都では2mですが、路地状部分の長さに応じて、2mより広い間口を求める自治体もあります。通路の幅は、その土地に適用される条例で確認してください。
- 補正率表は評価年分のものを確認:付表1(奥行価格補正率表)などは改正されることがあります。申告では、その年分の国税庁の表で数値を確認してください。
「奥行」は3つに分けて考える
この設例には、役割の違う3つの奥行が出てきます。混同しやすいので、表で整理します。
| 区分 | 奥行 | 用途 |
|---|---|---|
| 差引計算の整形地 | 40m | 奥行価格補正率(0.91)を求める |
| 計算上の奥行(地積 ÷ 間口) | 200m | 400㎡ ÷ 2m。ただし想定整形地の奥行40mが限度 |
| 奥行長大補正率の判定に使う奥行 | 40m | 40m ÷ 2m = 20倍 → 補正率0.90 |
近似整形地・差引計算に用いる整形地・想定整形地の違い
不整形地の評価では、目的の異なる整形地が登場します。混同しやすいため、3つに分けて整理します。
| 区分 | 考え方 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 近似整形地 | 不整形地の形状にできるだけ近づけた整形地 | 奥行価格補正後の価額を求める |
| 差引計算に用いる整形地 | 近似整形地と隣接する整形地を合わせた整形地 | 全体の価額から隣接地の価額を差し引く |
| 想定整形地 | 評価対象地の全域を囲む、正面路線に面する長方形または正方形 | かげ地割合の計算、計算上の奥行距離の上限 |
近似整形地は、実際の不整形地からはみ出す部分と、不整形地以外の部分を含む面積がおおむね等しく、かつ、その合計面積ができるだけ小さくなるように設定します。
差引計算に用いる整形地は、近似整形地と隣接する整形地を組み合わせたものです。全体の奥行価格補正後の価額から隣接する整形地の価額を差し引き、評価対象地の価額を求めます。
想定整形地は、評価対象地の全域を囲む整形地です。かげ地割合を求める際に使用し、計算上の奥行距離の上限にもなります。
今回の無道路地の設例では、差引計算に用いる整形地も、かげ地割合を求める想定整形地も20m×40mです。しかし、両者は計算上の役割が異なり、一般の不整形地では必ずしも一致しません。
実務では、「何のために整形地を設定しているのか」を意識することが大切です。
国税庁の税務大学校資料および評価明細書の記載例でも、近似整形地を用いる差引計算と、想定整形地を用いるかげ地割合の算定が区別されています
| 計算 | 使用する整形地 |
|---|---|
| 奥行価格補正後の価額を求める差引計算 | 近似整形地を基礎とする |
| かげ地割合の計算 | 想定整形地 |
| 奥行長大補正率などの奥行距離 | 計算上の奥行距離(想定整形地の奥行を限度) |








