相続税の宅地評価と土地評価明細書の書き方|財産評価基本通達の番号で読み解く【スタッフ向け】

相続税の宅地評価と土地評価明細書の書き方|財産評価基本通達の番号で読み解く【スタッフ向け】

宅地の相続税評価は、財産評価基本通達の第2章第2節「宅地及び宅地の上に存する権利」(通達11〜31)に沿って計算します。通達の番号はおおむね計算の順番に並んでいるため、番号の流れをつかむと評価の全体像が見えてきます。

この記事では、宅地の評価に関係する通達を「評価の出発点」「路線価の補正」「形状・規模」「特殊な利用・制限」「貸地・借地」の5つに分け、それぞれ何を定めているかを整理します。末尾に通達番号の早見表を付けました。

評価の流れは次のとおりです。

  1. 評価する土地の地目と評価単位を決める(通達7、7-2)
  2. 路線価方式か倍率方式かを確認する(通達11)
  3. 路線価に奥行や角地などの補正・加算をする(通達15〜18)
  4. 形状や規模による減額を検討する(通達20〜20-7)
  5. 私道、セットバックなど利用上の制限を反映する(通達22〜24-8)
  6. 貸している土地、借りている土地は権利関係を反映する(通達25〜31)
目次

評価の出発点:評価単位と2つの評価方式

宅地の評価は、どの範囲を1つの土地として評価するかを決めるところから始まります。ここを誤ると、後の補正をどれだけ正確に行っても評価額がずれます。

通達番号項目名定めている内容
7土地の評価上の区分宅地、田、畑、山林、雑種地などの地目ごとに評価する。地目は課税時期の現況で判定する
7-2評価単位宅地は、利用の単位となっている1区画(1画地)ごとに評価する
8地積課税時期における実際の面積による
9土地の上に存する権利の評価上の区分借地権、定期借地権等、地上権、区分地上権などに分けて評価する
11評価の方式市街地的形態を形成する地域の宅地は路線価方式、それ以外は倍率方式
13路線価方式路線価を基に、通達15〜20-7の補正をして評価する方式
14路線価路線(道路)ごとに国税局長が評定した1㎡当たりの価額
14-2地区ビル街、高度商業、繁華街、普通商業・併用住宅、普通住宅、中小工場、大工場の7地区
14-3特定路線価路線価のない道路だけに接する宅地について、申出により設定される路線価
21倍率方式固定資産税評価額に、国税局長が定める倍率を掛けて評価する方式
21-2倍率方式による評価倍率方式による具体的な計算方法

登記簿上は1筆でも、自宅と貸家が建っていれば2画地として別々に評価します。反対に、2筆以上にまたがっていても一体で利用していれば1画地です。

通達14-2の地区区分は、後に出てくる補正率表のほとんどで使います。路線価図を見るときは、金額と借地権割合の記号に加えて、地区を示す記号も確認します。

路線価の補正と加算(通達15〜18)

路線価は標準的な形の宅地を前提にした1㎡当たりの価額なので、実際の宅地の奥行や道路との接し方に合わせて調整します。奥行は減額方向、角地や二方路は増額方向に働きます。

通達番号項目名定めている内容使う付表
15奥行価格補正奥行が短すぎる、または長すぎる宅地の路線価を補正する付表1 奥行価格補正率表
16側方路線影響加算角地、準角地は側方の路線価の一定割合を加算する付表2 側方路線影響加算率表
17二方路線影響加算正面と裏面の両方が道路に接する宅地は、裏面の路線価の一定割合を加算する付表3 二方路線影響加算率表
18三方又は四方路線影響加算三方、四方が道路に接する宅地は、通達16と17を併せて適用する付表2、付表3

2つ以上の道路に接する宅地では、どちらが正面路線かの判定が最初の作業です。路線価の高い方ではなく、奥行価格補正率を掛けた後の価額が高い方を正面路線とします。

形状・規模で評価が下がる宅地(通達20〜20-7)

通達20から20-7は、形がいびつ、広すぎる、道路に接していないなど、使いにくい宅地の減額を定めています。相続税の土地評価で差がつきやすいのがこの部分です。

通達番号項目名定めている内容使う付表
20不整形地の評価形がいびつな宅地は、かげ地の割合などに応じた補正率で減額する付表4 地積区分表、付表5 不整形地補正率表
20-2地積規模の大きな宅地の評価三大都市圏で500㎡以上、それ以外で1,000㎡以上の宅地に規模格差補正率を掛ける(通達本文の算式)
20-3無道路地の評価道路に接しない宅地は、通路を開設する費用相当額を40%の範囲内で控除する付表5
20-4間口が狭小な宅地等の評価間口が狭い宅地、奥行が間口に比べて長い宅地を減額する付表6 間口狭小補正率表、付表7 奥行長大補正率表
20-5がけ地等を有する宅地の評価通常の用途に使えないがけ地部分の割合と方位に応じて減額する付表8 がけ地補正率表
20-6土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価特別警戒区域内となる部分の割合に応じて減額する付表9 特別警戒区域補正率表
20-7容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価1画地が容積率の異なる地域にまたがる場合に、一定割合を控除する(通達本文の算式)

通達20-2は、平成29年の改正で旧24-4「広大地の評価」に代わって設けられました。路線価地域では、普通商業・併用住宅地区と普通住宅地区に所在する宅地が対象です。倍率地域でも、地積などの要件を満たす地積規模の大きな宅地は対象になります(通達21-2)。なお、市街化調整区域(一定の区域を除く)、工業専用地域、指定容積率400%(東京都の特別区は300%)以上の地域にある宅地などは対象から除かれます。

通達20-6は平成30年の改正で追加されました。倍率地域の宅地は、固定資産税評価額の段階で減価が織り込まれているため対象外です。

出典:国税庁 財産評価基本通達20〜20-7

特殊な利用・制限のある宅地(通達22〜24-8)

通達22から24-8は、工場用地、私道、セットバックが必要な宅地など、利用のしかたや法令上の制限が特殊な宅地を扱います。住宅地の相続でよく使うのは、24(私道)、24-6(セットバック)、24-7(都市計画道路予定地)の3つです。

通達番号項目名定めている内容
22大規模工場用地の評価大規模工場用地の評価方法
22-2大規模工場用地一団の工場用地の地積が5万㎡以上のものをいう、とする定義
22-3大規模工場用地の路線価及び倍率大規模工場用地に用いる路線価と倍率の定め方
23余剰容積率の移転がある場合の宅地の評価容積率を移転した宅地、移転を受けた宅地の評価方法
23-2余剰容積率を移転している宅地又は余剰容積率の移転を受けている宅地上記の宅地の定義
24私道の用に供されている宅地の評価自用地としての価額の30%で評価する。不特定多数の人が通行する私道は評価しない
24-2土地区画整理事業施行中の宅地の評価仮換地が指定されている場合は、仮換地の価額で評価する
24-3造成中の宅地の評価造成前の地目での価額に、造成費用の現価の80%を加える
24-5農業用施設用地の評価農用地区域内などにある農業用施設用地の評価方法
24-6セットバックを必要とする宅地の評価将来道路として提供する部分は、70%を控除して評価する
24-7都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価地区、容積率、予定地部分の地積割合に応じた補正率を掛ける
24-8文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価重要文化財は70%、登録有形文化財と伝統的建造物は30%を控除する

通達24-4は欠番です。ここにあった「広大地の評価」は平成29年12月31日までの相続等を最後に廃止され、平成30年1月1日以後は通達20-2に引き継がれました。古い解説書や過去の申告書に「24-4」が出てきたら、広大地のことです。

貸している土地・借りている土地(通達25〜31)

通達25以降は、土地に他人の権利が付いている場合の評価です。ここまでの通達で求めた価額を「自用地としての価額」と呼び、そこから権利の分を差し引いたり、権利の割合を掛けたりします。

土地を持っている側(通達25〜26-2)

通達番号項目名定めている内容
25貸宅地の評価借地権などの目的となっている宅地は、自用地としての価額から権利の価額を控除する
25-2倍率方式により評価する宅地の自用地としての価額倍率地域にある貸宅地の、自用地としての価額の求め方
25-3土地の上に存する権利が競合する場合の宅地の評価借地権と区分地上権など、複数の権利が付いた宅地の評価
26貸家建付地の評価貸家の敷地は、借地権割合、借家権割合、賃貸割合に応じて減額する
26-2区分地上権等の目的となっている貸家建付地の評価区分地上権などが付いた貸家建付地の評価

土地を借りている側(通達27〜31)

通達番号項目名定めている内容
27借地権の評価自用地としての価額に借地権割合を掛ける
27-2定期借地権等の評価定期借地権等の原則的な評価方法
27-3定期借地権等の設定の時における借地権者に帰属する経済的利益の総額の計算権利金、保証金などから経済的利益を計算する方法
27-4区分地上権の評価地下鉄のトンネルなど、地下や空間の一部に設定された地上権の評価
27-5区分地上権に準ずる地役権の評価高圧線下の土地などに設定された地役権の評価
27-6土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価複数の権利が競合する場合の借地権等の評価
28貸家建付借地権等の評価借地の上に貸家を建てている場合の借地権の評価
29転貸借地権の評価借地をさらに他人に貸している場合の評価
30転借権の評価借地人から土地を借りている人の権利の評価
31借家人の有する宅地等に対する権利の評価借家人が敷地に対して持つ権利の評価

貸家建付地(通達26)の算式は次のとおりです。

貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

賃貸割合は、原則として課税時期における実際の賃貸状況で判定します。そのため、長期間の空室がある場合は減額が小さくなります。なお、継続的に賃貸されていた部屋が、退去後すぐに入居者の募集を行っているなど一時的に空室となっていたにすぎないと認められる場合は、賃貸されていたものとして取り扱えることがあります。アパートを所有されている方は、相続開始時点の入居状況が評価額に影響する点にご注意ください。

基本通達だけでは足りない場面

宅地の評価には、財産評価基本通達の番号が付いていない取扱いもあります。次の4つの個別通達と総則6項、国税庁タックスアンサーは、基本通達とセットで確認します。

取扱い日付・番号使う場面
居住用の区分所有財産の評価について令和5年9月28日付 課評2-74ほか分譲マンションの敷地利用権。令和6年1月1日以後の相続等から適用
一般定期借地権の目的となっている宅地の評価に関する取扱いについて平成10年8月25日付 課評2-8ほか一般定期借地権が設定された底地。通達25の(2)に代えて適用
相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて昭和60年6月5日付 直資2-58ほか同族会社に土地を貸している場合など、権利金の授受がない借地
使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて昭和48年11月1日付 直資2-189ほか親の土地に子が無償で家を建てている場合など
総則6項(この通達の定めにより難い場合の評価)財産評価基本通達6通達どおりの評価が著しく不適当と認められる場合に、国税庁長官の指示を受けて評価する
利用価値が著しく低下している宅地の評価タックスアンサーNo.4617道路との高低差、騒音、日照阻害などがある宅地。該当部分を10%減額

総則6項については、最高裁令和4年4月19日判決で適用が認められた事例があります。この判決では、通達評価額と鑑定評価額との大きな乖離だけでなく、相続の直前に借入れで不動産を取得したことなど一連の事情が考慮されています。したがって、通達評価額と時価が離れているという理由だけで、直ちに総則6項が適用されるわけではありません。不動産の取得を伴う相続対策では、通達の番号を当てはめるだけでは足りず、取得の経緯も含めた検討が必要です。

評価明細書の各欄と参照する通達

ここまでの通達は、相続税や贈与税の申告書に添付する「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」の各欄にそのまま対応しています。明細書のどの欄を書くときにどの通達を見ればよいかを、第1表、第2表の順に整理します。記号は令和6年分以降用の様式によります。

第1表:自用地の評価額を求める(A〜M)

記号確認する通達番号明細書の欄明細書の算式(1㎡当たりの価額)使う付表
A15(奥行価格補正)1 一路線に面する宅地正面路線価 × 奥行価格補正率付表1
B16(側方路線影響加算)、17(二方路線影響加算)2 二路線に面する宅地A +(側方・裏面路線価 × 奥行価格補正率 × 側方・二方路線影響加算率)付表1、2、3
C18(三方又は四方路線影響加算)3 三路線に面する宅地B +(側方・裏面路線価 × 奥行価格補正率 × 側方・二方路線影響加算率)付表1、2、3
D18(三方又は四方路線影響加算)4 四路線に面する宅地C +(側方・裏面路線価 × 奥行価格補正率 × 側方・二方路線影響加算率)付表1、2、3
E20-4(間口が狭小な宅地等の評価)5-1 間口が狭小な宅地等AからDまでのうち該当するもの ×(間口狭小補正率 × 奥行長大補正率)付表6、7
F20(不整形地の評価)5-2 不整形地AからDまでのうち該当するもの × 不整形地補正率付表4、5、6、7
G20-2(地積規模の大きな宅地の評価)6 地積規模の大きな宅地AからFまでのうち該当するもの × 規模格差補正率通達本文の表
H20-3(無道路地の評価)7 無道路地F又はGのうち該当するもの ×(1 − 控除割合)
I20-5(がけ地等を有する宅地の評価)8-1 がけ地等を有する宅地AからHまでのうち該当するもの × がけ地補正率付表8
J20-6(土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価)8-2 土砂災害特別警戒区域内にある宅地AからHまでのうち該当するもの × 特別警戒区域補正率付表9、8
K20-7(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)9 容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地AからJまでのうち該当するもの ×(1 − 控除割合)
L24(私道の用に供されている宅地の評価)10 私道AからKまでのうち該当するもの × 0.3
M11(評価の方式)、13(路線価方式)自用地の評価額自用地1㎡当たりの価額(AからLまでのうちの該当記号)× 地積

F、G、H、Jの欄には、補正率そのものを求める算式も印刷されています。

  • F欄のかげ地割合 =(想定整形地の地積 − 不整形地の地積)÷ 想定整形地の地積
  • F欄の不整形地補正率 = 次の①と②のいずれか低い率(0.6を下限とする)
    • ① 不整形地補正率表の補正率 × 間口狭小補正率(小数点以下2位未満切捨て)
    • ② 奥行長大補正率 × 間口狭小補正率
  • G欄の規模格差補正率 =(地積Ⓐ × Ⓑ + Ⓒ)÷ 地積Ⓐ × 0.8(小数点以下2位未満切捨て)
  • H欄の控除割合 =(正面路線価 × 通路部分の地積)÷(F又はGのうち該当するもの × 評価対象地の地積)(0.4を上限とする)
  • J欄でがけ地補正率の適用がある場合の特別警戒区域補正率 = 特別警戒区域補正率表の補正率 × がけ地補正率(0.5を下限とし、小数点以下2位未満切捨て)
  • K欄の控除割合は、小数点以下3位未満を四捨五入します。

第1表の上段にも通達が対応します。地目は通達7、地積は通達8、路線価は通達14、地区区分は通達14-2、評価する1画地の範囲は通達7-2です。

様式の注書きにあるとおり、Eの間口狭小とFの不整形地は重複して適用できません。がけ地であり、かつ土砂災害特別警戒区域内にもある宅地は、IではなくJの欄で計算します。

第2表:制限と権利関係を反映する(N〜AD)

記号確認する通達番号明細書の欄明細書の算式(総額)
N24-6(セットバックを必要とする宅地の評価)セットバックを必要とする宅地の評価額自用地の評価額 −(自用地の評価額 × 該当地積 ÷ 総地積 × 0.7)
O24-7(都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価)都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価額自用地の評価額 × 補正率
P22、22-2、22-3(大規模工場用地)大規模工場用地等正面路線価 × 地積 ×(地積が20万㎡以上の場合は0.95)
Q83(ゴルフ場の用に供されている土地の評価)ゴルフ場用地等(宅地とした場合の価額 × 地積 × 0.6)−(1㎡当たりの造成費 × 地積)
R個別通達「居住用の区分所有財産の評価について」区分所有財産に係る敷地利用権の評価額自用地の評価額 × 敷地利用権(敷地権)の割合
S個別通達「居住用の区分所有財産の評価について」同上(居住用の区分所有財産の場合)自用地の評価額 × 区分所有補正率
T25(貸宅地の評価)、25-2貸宅地自用地の評価額 ×(1 − 借地権割合)
U26(貸家建付地の評価)、26-2貸家建付地自用地の評価額又はV ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
V25(地上権、区分地上権、区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地)( )権の目的となっている土地自用地の評価額 ×(1 −( )割合)
W27(借地権の評価)借地権自用地の評価額 × 借地権割合
X28(貸家建付借地権等の評価)貸家建付借地権W、ABのうちの該当記号 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
Y29(転貸借地権の評価)転貸借地権W、ABのうちの該当記号 ×(1 − 借地権割合)
Z30(転借権の評価)転借権W、X、ABのうちの該当記号 × 借地権割合
AA31(借家人の有する宅地等に対する権利の評価)借家人の有する権利W、Z、ABのうちの該当記号 × 借家権割合 × 賃借割合
AB27-4(区分地上権の評価)、27-5(区分地上権に準ずる地役権の評価)( )権自用地の評価額 ×( )割合
AC25-3(土地の上に存する権利が競合する場合の宅地の評価)権利が競合する場合の土地T、Vのうちの該当記号 ×(1 −( )割合)
AD27-6(土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価)他の権利と競合する場合の権利W、ABのうちの該当記号 ×(1 −( )割合)

U、X、AAの賃貸割合・賃借割合は、明細書では面積の比(㎡ ÷ ㎡)で記入します。区分地上権と区分地上権に準ずる地役権が競合する場合は、様式の注書きにより備考欄で計算します。

平成31年1月分から令和5年分までの様式にはRとSの欄がなく、貸宅地がR、貸家建付地がSから始まります。令和5年以前の相続について過去の申告書を見るときは、記号が2つずつずれている点にご注意ください。

次の通達は、この明細書に専用の欄がありません。

  • 定期借地権等(27-2、27-3)は、別の様式「定期借地権等の評価明細書」で計算します。
  • 倍率方式(21、21-2)は、原則として固定資産税評価額に倍率を掛けた金額を自用地の評価額として記載し、AからLの補正は行いません。ただし、倍率地域にある地積規模の大きな宅地は、通達21-2により、規模格差補正率などを使って計算した価額と比べて、いずれか低い方の価額で評価します。
  • 余剰容積率の移転(23、23-2)、土地区画整理事業施行中の宅地(24-2)、造成中の宅地(24-3)、文化財建造物の敷地(24-8)は、第2表の備考欄などで計算過程を示します。

様式と記載要領は、国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」のページに掲載されています。

付属の計算書と参照する通達

評価明細書とあわせて使う計算書が2つあります。「宅地造成費の計算表」は農地や山林を宅地に比準して評価するとき、「区分所有補正率の計算明細書」は分譲マンションを評価するときに作成します。

宅地造成費の計算表

宅地の評価そのものには使いません。市街地にある農地、山林、原野などを「宅地であるとした場合の価額から宅地造成費を差し引く」方法(宅地比準方式)で評価するときの計算書です。

計算表の区分確認する通達番号評価の考え方
市街地農地40(市街地農地の評価)(宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額 − 1㎡当たりの宅地造成費)× 地積
市街地周辺農地39(市街地周辺農地の評価)市街地農地であるとした場合の価額 × 80%
市街地山林49(市街地山林の評価)(宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額 − 1㎡当たりの宅地造成費)× 地積
( )=市街地原野など58-3(市街地原野の評価)、82(雑種地の評価)上記に準じて計算
番号計算表の欄計算表の算式
②整地費整地を要する面積 × 1㎡当たりの整地費
③伐採・抜根費伐採・抜根を要する面積 × 1㎡当たりの伐採・抜根費
④地盤改良費地盤改良を要する面積 × 1㎡当たりの地盤改良費
⑤土盛費土盛を要する面積 × 土盛を要する高さ × 1㎥当たりの土盛費
⑥土止費擁壁の長さ × 擁壁の高さ × 1㎡当たりの土止費
⑦合計額(平坦地)② + ③ + ④ + ⑤ + ⑥
⑧1㎡当たりの造成費(平坦地)⑦ ÷ ①(地積)
⑨傾斜度に係る造成費(傾斜地)傾斜度に応じた1㎡当たりの金額
⑩伐採・抜根費(傾斜地)伐採・抜根を要する面積 × 1㎡当たりの伐採・抜根費
⑪1㎡当たりの造成費(傾斜地)⑨ +(⑩ ÷ ①)

整地費や土盛費などの単価と、傾斜度ごとの造成費は、通達の本文ではなく、各国税局が毎年公表する財産評価基準書の「宅地造成費の金額表」で確認します。評価する年分と都道府県のものを使います。

居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書

参照するのは、財産評価基本通達ではなく個別通達「居住用の区分所有財産の評価について」(令和5年9月28日付 課評2-74ほか)です。令和6年1月1日以後の相続、遺贈、贈与から適用されます。ここで求めた区分所有補正率を、評価明細書第2表のS欄に転記します。

記号計算明細書の欄計算明細書の算式
A① 築年数① × △0.033
B② 総階数、③ 総階数指数③(② ÷ 33、1を超える場合は1)× 0.239
C④ 所在階④ × 0.018
D⑤ 専有部分の面積、⑥ 敷地の面積、⑦ 敷地権の割合、⑧ 敷地利用権の面積、⑨ 敷地持分狭小度⑧ = ⑥ × ⑦、⑨ = ⑧ ÷ ⑤、D = ⑨ × △1.195
⑩評価乖離率A + B + C + D + 3.220
⑪評価水準1 ÷ ⑩
⑫区分所有補正率評価水準に応じて下の表のとおり
評価水準区分所有補正率
0.6未満⑩(評価乖離率)× 0.6
0.6以上1以下補正なし
1超⑩(評価乖離率)
個別通達の項目定めている内容明細書との関係
1 用語の意義評価乖離率、評価水準、区分所有補正率などの定義と算式計算明細書のAから⑫まで
2 一室の区分所有権等に係る敷地利用権の価額自用地としての価額 × 区分所有補正率評価明細書第2表のR欄、S欄
3 一室の区分所有権等に係る区分所有権の価額自用家屋としての価額(通達89)× 区分所有補正率家屋(建物部分)の評価

記入にあたっては、様式の注書きを確認します。築年数は1年未満の端数を1年とし、総階数に地階は含めません。所在階は、専有部分が複数階にまたがる場合は低い方の階、地階の場合は0とします。一棟のすべての専有部分と敷地を単独で所有している場合は、敷地利用権の区分所有補正率は1が下限です。

端数処理も欄ごとに決まっています。③総階数指数とBは小数点以下第4位を切り捨て、⑧敷地利用権の面積は第3位を切り上げ、⑨敷地持分狭小度とDは第4位を切り上げます。

通達番号早見表

宅地の評価に関係する通達を番号順に並べると、次の49項目と付表9種類になります。

通達番号項目名区分
7土地の評価上の区分通則
7-2評価単位通則
8地積通則
9土地の上に存する権利の評価上の区分通則
11評価の方式評価方式
13路線価方式評価方式
14路線価評価方式
14-2地区評価方式
14-3特定路線価評価方式
15奥行価格補正路線価の補正
16側方路線影響加算路線価の補正
17二方路線影響加算路線価の補正
18三方又は四方路線影響加算路線価の補正
20不整形地の評価形状・規模
20-2地積規模の大きな宅地の評価形状・規模
20-3無道路地の評価形状・規模
20-4間口が狭小な宅地等の評価形状・規模
20-5がけ地等を有する宅地の評価形状・規模
20-6土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価形状・規模
20-7容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価形状・規模
21倍率方式評価方式
21-2倍率方式による評価評価方式
22大規模工場用地の評価特殊な利用・制限
22-2大規模工場用地特殊な利用・制限
22-3大規模工場用地の路線価及び倍率特殊な利用・制限
23余剰容積率の移転がある場合の宅地の評価特殊な利用・制限
23-2余剰容積率を移転している宅地又は余剰容積率の移転を受けている宅地特殊な利用・制限
24私道の用に供されている宅地の評価特殊な利用・制限
24-2土地区画整理事業施行中の宅地の評価特殊な利用・制限
24-3造成中の宅地の評価特殊な利用・制限
24-5農業用施設用地の評価特殊な利用・制限
24-6セットバックを必要とする宅地の評価特殊な利用・制限
24-7都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価特殊な利用・制限
24-8文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価特殊な利用・制限
25貸宅地の評価貸地・借地
25-2倍率方式により評価する宅地の自用地としての価額貸地・借地
25-3土地の上に存する権利が競合する場合の宅地の評価貸地・借地
26貸家建付地の評価貸地・借地
26-2区分地上権等の目的となっている貸家建付地の評価貸地・借地
27借地権の評価貸地・借地
27-2定期借地権等の評価貸地・借地
27-3定期借地権等の設定の時における借地権者に帰属する経済的利益の総額の計算貸地・借地
27-4区分地上権の評価貸地・借地
27-5区分地上権に準ずる地役権の評価貸地・借地
27-6土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価貸地・借地
28貸家建付借地権等の評価貸地・借地
29転貸借地権の評価貸地・借地
30転借権の評価貸地・借地
31借家人の有する宅地等に対する権利の評価貸地・借地
付表番号名称対応する通達
付表1奥行価格補正率表15
付表2側方路線影響加算率表16、18
付表3二方路線影響加算率表17、18
付表4地積区分表20
付表5不整形地補正率表20、20-3
付表6間口狭小補正率表20-4
付表7奥行長大補正率表20-4
付表8がけ地補正率表20-5
付表9特別警戒区域補正率表20-6

通達の原文は、国税庁「財産評価基本通達」目次から各項目を開いて確認できます。

土地の評価でお困りの方へ

同じ宅地でも、評価単位の取り方や、どの通達の減額を使えるかの判断によって評価額は変わります。路線価に面積を掛けただけの概算と、現地と役所の調査を踏まえた評価とでは、相続税額に差が出ることも珍しくありません。

形のいびつな土地、広い土地、私道やセットバックのある土地、貸地や貸家の敷地をお持ちの方は、申告の前に一度ご相談ください。相続税の申告と生前の相続対策について、当事務所の相続のご案内ページもあわせてご覧ください。

税理士法人松野茂税理士事務所 〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F(阪神尼崎駅 徒歩1分)

本記事は掲載日時点で国税庁が公表している財産評価基本通達に基づいています。通達は改正されることがあるため、実際の評価にあたっては最新の原文をご確認ください。

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