相続税の申告で土地の評価をしていると、不整形地の評価で必ず出てくるのが、評価明細書の「A」欄(奥行価格補正後の1㎡当たりの価額)です。
書籍の計算例では、整形地ごとの奥行価格補正後の価額を「合計」して計算しているものが多く見られます。一方、評価ソフトや計算書では、この価額を「面積単価」として入力する方法もあります。さらに、A欄を求める方法そのものにも、通達上4つの選択肢があります。
この記事では、A欄の求め方を4つの方法ごとに整理し、大きな宅地で比較計算をする意味をまとめます。
1. A欄とは何か
A欄には、不整形地補正率を掛ける前の「奥行価格補正後の1㎡当たりの価額」を記載します。
整形地であれば、次の算式で簡単に求まります。
正面路線価 × 奥行価格補正率 = A欄
不整形地の場合は、この「奥行価格補正後の価額」をどう作るかに選択肢があります。そのうえで、A欄に不整形地補正率などを掛けて最終の評価額を求めます。

本記事では、一路線に面する不整形地を基本例として、評価明細書第1表のA欄に記載する「奥行価格補正後の1㎡当たりの価額」の求め方を解説します。不整形地の評価では、この単価を基礎として不整形地補正等を行います。複数の路線に面する宅地では、側方路線影響加算等を別途考慮する必要があります。
2. 財産評価基本通達20が定める4つの方法
通達20は、不整形地の価額を、次の(1)から(4)までのいずれかの方法で計算した価額に、不整形地補正率を乗じて評価すると定めています。国税庁の質疑応答事例にも、それぞれの方法が掲載されています。
| 方法 | 内容 | A欄の考え方 |
|---|---|---|
| ① 区分した整形地を基にする方法 | 不整形地を整形地に区分し、それぞれに奥行価格補正を行う | 各整形地の補正後の価額の合計 ÷ 不整形地の地積 |
| ② 計算上の奥行距離を基にする方法 | 地積を間口距離で割った「計算上の奥行距離」で整形地とみなす | 正面路線価 × 計算上の奥行距離に応じた奥行価格補正率 |
| ③ 近似整形地を基にする方法 | 不整形地に近い整形地(近似整形地)を設定する | 正面路線価 × 近似整形地の奥行距離に応じた奥行価格補正率 |
| ④ 差引き計算による方法 | 隣接する整形地と合わせた全体の価額から、隣接部分の価額を差し引く | 差引き後の価額 ÷ 近似整形地の地積 |
3. 4つの方法の計算手順
① 区分した整形地を基にする方法
不整形地を複数の整形地に区分し、それぞれの整形地について奥行価格補正を行います。
- 区分した整形地ごとに、正面路線価 × 奥行価格補正率 × 地積 を計算する
- その合計額を求める
- 合計額 ÷ 不整形地の地積 = 1㎡当たりの価額(A欄)
- A欄の単価 × 適用する不整形地補正率(間口狭小補正率等との調整後)× 不整形地の地積 = 評価額(地積規模の大きな宅地の評価などが適用される場合は、さらに別途補正が必要)
書籍では2の「合計額」のまま計算が進みますが、ソフトでは3で求めた1㎡当たりの単価をA欄に入力します。別紙のエクセルなどで区分ごとの計算をしておき、単価をA欄に転記する方法です。

計算例(国税庁の質疑応答事例・区分した整形地を基として評価する場合)
国税庁の質疑応答事例の計算例です。路線価は100,000円/㎡、普通住宅地区・地積区分Aの土地です。不整形地を甲・乙・丙の3つの整形地に区分し、それぞれ奥行価格補正を行います。
| 区分 | 奥行距離 | 奥行価格補正率 | 地積 | 補正後の価額 |
|---|---|---|---|---|
| 甲土地 | 25m | 0.97 | 75㎡ | 7,275,000円 |
| 乙土地 | 15m | 1.00 | 45㎡ | 4,500,000円 |
| 丙土地 | 20m | 1.00 | 60㎡ | 6,000,000円 |
| 合計 | - | - | 180㎡ | 17,775,000円 |
不整形地補正率は、想定整形地(9m × 25m = 225㎡)に対するかげ地割合から求めます。
かげ地割合 = (225㎡ − 180㎡)÷ 225㎡ = 20%
このかげ地割合20%の場合、不整形地補正率は0.94です。国税庁の事例では、次のとおり評価します。
17,775,000円 × 0.94 = 16,708,500円
これをソフトのA欄に入力する場合は、合計額を地積で割って単価にします。
A欄の単価 = 17,775,000円 ÷ 180㎡ = 98,750円/㎡
検算:98,750円/㎡ × 0.94 × 180㎡ = 16,708,500円(国税庁の事例と一致)
※この例は割り切れますが、割り切れない場合の端数処理は、使用する評価明細書・ソフトの仕様に従います。区分は、土地の形状に応じて合理的に行います。
② 計算上の奥行距離を基にする方法
最も一般的に使われる方法です。不整形地の地積を間口距離で割って、計算上の奥行距離を求めます。
計算上の奥行距離 = 不整形地の地積 ÷ 間口距離
ただし、計算上の奥行距離は、想定整形地の奥行距離を限度とします。計算結果が想定整形地の奥行距離を超える場合は、想定整形地の奥行距離を用います。
この奥行距離に対応する奥行価格補正率を路線価に掛けた額が、そのままA欄になります。

計算例(国税庁の質疑応答事例・計算上の奥行距離を基として評価する場合)
普通住宅地区で、路線価は100,000円/㎡です。図の「100E」は、路線価が1㎡当たり100千円(100,000円)、借地権割合が50%であることを示しています。なお、自用地の評価では借地権割合は計算に使いません。不整形地の地積は400㎡、想定整形地の地積は700㎡、間口距離は20m、想定整形地の奥行距離は25mです。
計算上の奥行距離 = 400㎡ ÷ 20m = 20m(想定整形地の奥行距離25m以内)
奥行距離20mの奥行価格補正率は1.00ですので、A欄は次のとおりです。
A欄 = 100,000円 × 1.00 = 100,000円/㎡
不整形地補正率は、かげ地割合から求めます。
かげ地割合 = (700㎡ − 400㎡)÷ 700㎡ ≒ 42.86%
このかげ地割合(普通住宅地区・地積区分A)の場合、不整形地補正率は0.85です。評価額は次のとおりです。
100,000円 × 400㎡ × 0.85 = 34,000,000円
③ 近似整形地を基にする方法
不整形地に近似する整形地を設定して計算します。国税庁の質疑応答事例には、次の注意事項が示されています。
- 近似整形地からはみ出す不整形地の部分と、近似整形地に含まれる不整形地以外の部分の地積が、概ね同じになるように設定する。
- その合計地積が、できるだけ小さくなるようにする。
- 近似整形地の屈折角は90度とする。
- 近似整形地と想定整形地の地積は、必ずしも一致しない。

計算例(国税庁の質疑応答事例・近似整形地を基として評価する場合)
普通住宅地区で、路線価は100,000円/㎡です。図の「100E」は、路線価が1㎡当たり100千円(100,000円)、借地権割合が50%であることを示しています。なお、自用地の評価では借地権割合は計算に使いません。不整形地の地積は600㎡、想定整形地の地積は750㎡、近似整形地の奥行距離は30mです。
奥行距離30mの奥行価格補正率は0.95ですので、A欄は次のとおりです。
A欄 = 100,000円 × 0.95 = 95,000円/㎡
不整形地補正率は、かげ地割合から求めます。
かげ地割合 = (750㎡ − 600㎡)÷ 750㎡ = 20%
このかげ地割合(普通住宅地区・地積区分B)の場合、不整形地補正率は0.97です。評価額は次のとおりです。
95,000円 × 600㎡ × 0.97 = 55,290,000円
※この事例は、通達20-2「地積規模の大きな宅地の評価」を考慮しないものとして計算されています。
④ 差引き計算による方法
L字型やコの字型の土地で使われる方法です。近似整形地と、隣接する整形地を合わせた「全体の整形地」を考えます。
- 全体の整形地の奥行価格補正後の価額を求める
- 隣接する整形地の奥行価格補正後の価額を求める
- 1から2を差し引いて、近似整形地の奥行価格補正後の価額を求める
- 3 ÷ 近似整形地の地積 = 1㎡当たりの価額(A欄)
国税庁の質疑応答事例には、差し引く隣接整形地の奥行価格補正率について注意書きがあります。隣接整形地の奥行距離が短くて補正率が1.00未満になる場合は、原則として1.00とします。ただし、全体の整形地の奥行距離が短くて補正率が1.00未満となる場合は、隣接整形地にも同じ補正率を使います。
なお、①では実際の不整形地の地積で割りますが、④では近似整形地の地積で割ります。分母を混同しないよう注意が必要です。

計算例(国税庁の質疑応答事例・差引き計算により評価する場合)
普通住宅地区で、路線価は100,000円/㎡です。図の「100E」は、路線価が1㎡当たり100千円(100,000円)、借地権割合が50%であることを示しています。なお、自用地の評価では借地権割合は計算に使いません。不整形地の地積は450㎡、想定整形地の地積は700㎡です。近似整形地①は450㎡、隣接する整形地②は150㎡で、①と②を合わせた全体の整形地は600㎡(奥行距離30m)、②の奥行距離は15mです。
- 全体の整形地(①+②)の奥行価格補正後の価額
100,000円 × 0.95(奥行距離30m)× 600㎡ = 57,000,000円
- 隣接する整形地②の奥行価格補正後の価額
100,000円 × 1.00(奥行距離15m)× 150㎡ = 15,000,000円
- 近似整形地①の奥行価格補正後の価額
57,000,000円 − 15,000,000円 = 42,000,000円
- A欄の単価(近似整形地①の地積450㎡で割る)
42,000,000円 ÷ 450㎡ = 93,333円/㎡(円未満の端数を除いた額)
- 不整形地補正率
かげ地割合 = (700㎡ − 450㎡)÷ 700㎡ ≒ 35.71%
このかげ地割合(普通住宅地区・地積区分A)の場合、不整形地補正率は0.88です。
- 評価額
93,333円 × 450㎡ × 0.88 = 36,959,868円
※この例は割り切れず、国税庁の事例は単価を円未満の端数を除いた93,333円として評価額を求めています。端数を除かずに 42,000,000円 × 0.88 で計算すると36,960,000円で、132円の差が出ます。ソフトに単価を入力する場合は、端数の扱いを事務所内で統一し、計算の根拠を保存しておくことが大切です。
4. 「合計」で計算する方法と「面積単価」を入力する方法
書籍の計算例は、①のように区分した整形地の価額を合計していくものが中心で、そのまま不整形地補正率を掛けて評価額を出す流れになっています。
一方、計算書やソフトのA欄は「1㎡当たりの価額」を入力する形式です。そのため、合計額を地積で割って単価に直す手間が生じます。割り切れない場合は、端数の扱いで最終の評価額に少額の差が出ることがあります。事務所内で端数処理のルールを統一し、計算の根拠を保存しておくことをお勧めします。
具体的な数値での換算は、第3章①の国税庁の計算例(合計額17,775,000円 → A欄の単価98,750円/㎡)で確認できます。
5. 大きな宅地では、4つの方法を比較計算する
実務では②が多く使われます。計算が比較的簡単で、地積と間口距離から計算上の奥行距離を求められるためです。ただし、想定整形地の奥行距離を限度とする点に注意が必要です。
しかし、通達は4つの方法に優劣や順位を定めておらず、「いずれかの方法」としています。そして、不整形地補正率は想定整形地に対するかげ地割合から求めるため、方法による違いは主にA欄(奥行価格補正後の単価)に現れます。
②は、土地全体を「計算上の奥行距離」という1本の奥行に平均化します。これに対して①は、区分した部分ごとの実際の奥行で補正します。奥行価格補正率は、奥行が長くなるほど下がる区分があるため、奥行の長い部分と短い部分が混在する宅地では、平均化するか、部分ごとに計算するかで結果が変わります。
宅地が小さくても、形状や補正率によって差が生じることがあり、大きな宅地では評価額に大きな差額が生じることがあります。どの方法が有利になるかは、土地の形状によって異なります。
- 大きな宅地や奥行の差が大きい宅地では、②だけで済ませず、土地の形状に応じて適用可能な①③④の方法も試算する。
- 比較した結果と、採用した方法の理由を、申告書の添付資料として残す。
- 地積規模の大きな宅地の評価(通達20-2)に該当する場合は、別途その適用も検討する。
比較計算を行う場合は、それぞれの方法による土地の区分、近似整形地の設定、奥行距離の算定が合理的であることを確認します。評価額の差だけでなく、採用した計算方法の根拠を説明できるようにしておくことが重要です。評価額が低くなる方法を自由に選べるという意味ではありません。
6. 実務のチェックポイント
- 想定整形地の設定が適切であるか確認する。想定整形地の地積は、かげ地割合の計算に直接影響するため、土地の形状に基づいて正確に求める。
- ③の近似整形地は、屈折角が90度になっているか確認する。
- ④は、隣接整形地の奥行価格補正率の扱い(上記の注意書き)を間違えやすい。
- 評価ソフトにA欄を手入力する場合は、別紙の計算過程も保存しておく。
- 不整形地補正率と間口狭小補正率を乗じる場合は、0.60を下限とする取扱いに注意する。
- 奥行長大補正率を使用する場合は、不整形地補正率との適用関係を確認する。
まとめ
- A欄は、不整形地補正率を掛ける前の「奥行価格補正後の1㎡当たりの価額」である。
- 求め方は通達20で4つ。②が一般的だが、いずれかを選ぶこととされている。
- 書籍は「合計」、ソフトは「面積単価」の入力で、同じ結果になるよう端数処理に注意する。
- 大きな宅地では、複数の方法で比較計算すると評価額に大きな差が出ることがある。
参考(国税庁)
- 不整形地の評価-区分した整形地を基として評価する場合
- 不整形地の評価-計算上の奥行距離を基として評価する場合
- 不整形地の評価-近似整形地を基として評価する場合
- 不整形地の評価-差引き計算により評価する場合
※本記事は令和8年10月時点の情報に基づく一般的な解説です。個別の土地の評価は、形状や路線の状況により結論が異なります。
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