休眠会社を復活させる手順|みなし解散・青色申告・決算期変更の実務

休眠会社を復活させる手順|みなし解散・青色申告・決算期変更の実務

「数年前に休眠させた会社を、また動かしたい」というご相談は決して珍しいものではありません。新しく会社をつくるより、既存の法人を復活させたほうが有利な場面は確かにあります。

ただし休眠会社の復活は、届出書を提出すれば終わりという手続きではありません。実務上の勝負どころは、休眠中に失われた権利をどこまで取り戻せるか、そして事業を動かす前に手を打てるかの二点にあります。

とりわけ多いのが、役員報酬を払い始めてからご相談に来られるケースです。休眠会社の場合には、事業を再開する前であれば、決算期を変更して現在の事業年度をいったん終了させ、新しい事業年度の開始前に青色申告承認申請書を提出するという方法を検討できます。

ところが、すでに役員報酬を支払ったり、売上や仕入が発生したりしている場合、それらの取引は変更前の事業年度の損益として残ります。後から決算期を変更しても、復活後の白色の事業年度ができてしまいます。

つまり、事業を動かす前にご相談いただければ「どこで事業年度を切るか」を設計できますが、動かした後では、すでに発生した損益について選択肢がなくなります。休眠会社の復活では、事業を始める前の段階で税務上の順序を決めることが非常に重要です。

本記事では、休眠会社を復活させる際の税務手続きを、実際に進める順序に沿って整理します。

目次

まず確認すべき4つのポイント

ご相談を受けたら、最初に次の4点を確認します。ここで手続きの重さと、そもそも復活すべきかどうかの判断がほぼ決まります。

  1. 休眠中の申告状況(無申告か、ゼロ申告を継続していたか)
  2. 休眠時に提出した届出の内容(異動届出書のみか、給与支払事務所廃止届・社会保険の全喪届まで出しているか)
  3. 登記の最終年月日(みなし解散のリスク、役員任期の状況)
  4. インボイス登録の有無と消費税の各種選択届出の履歴

このうち①と③が、以降のすべてに影響します。

そもそも復活できるのか|12年経過と「みなし解散」

12年経過は即解散ではない

最後の登記から12年が経過した株式会社は、会社法472条により「みなし解散」の対象となります。ただし、12年経過した瞬間に解散するわけではありません。実際の流れは次のとおりです。

  1. 最後の登記から12年経過した株式会社について、法務大臣が官報公告(例年10月上旬)
  2. 同時に、登記所から本店所在地宛に通知書が送付される
  3. 公告から2か月以内に「まだ事業を廃止していない旨の届出」を提出するか、何らかの登記をすれば解散扱いにならない
  4. 何もしなければ、2か月経過時に職権でみなし解散の登記(例年12月中旬)

つまり、通知書が届いた段階であれば、届出書1枚で解散を回避できます。ただし届出をしても登記懈怠そのものは解消しませんので、過料は別途課されます。どうせ手続きをするなら、役員変更登記を入れてしまうほうが実務的です。

みなし解散されても法人格は消滅していない

ここが最も誤解の多い部分です。みなし解散の登記がされても、会社は清算株式会社として存続しています。清算結了の登記がされない限り、法人格は残ったままです。

そして会社法473条により、みなし解散の日から3年以内であれば、株主総会の特別決議によって会社を継続することができます。

  • 起算点は「最後の登記から12年経過した日」ではなく、解散したものとみなされた日
  • みなし解散の登記がされても、その日から3年以内であれば会社を継続できる
  • 3年を経過すると、会社継続の手続きはできなくなる

「もう解散になっているから無理でしょう」とおっしゃる経営者の方は多いのですが、登記簿の解散年月日を確認して3年以内であれば、十分に間に合います。

会社の種類によって扱いが違う

会社の種類みなし解散
株式会社12年で対象
一般社団法人・一般財団法人5年で対象
特例有限会社対象外
合名会社・合資会社・合同会社対象外

特例有限会社や持分会社は、株式会社のような休眠会社のみなし解散制度の対象ではありません。特例有限会社については取締役に法定の任期がないため、株式会社のように任期満了のたびに役員変更登記をする必要がありません。そのため、長期間登記がされていない会社も少なくありません。

休眠会社のご相談では旧有限会社が相当数を占めますので、まずここを確認すると話が早く進みます。

復活時の登記手続き

みなし解散の登記は職権でされますが、清算人の登記は職権ではされません。そのため復活の際は、おおむね次の順序になります。

  1. 清算人・代表清算人の就任登記(解散時に遡って)
  2. 会社継続の登記(株主総会特別決議、決議から2週間以内)
  3. 取締役・代表取締役等の就任登記(継続に伴う機関の復旧)

登録免許税は、清算人登記9,000円+継続登記30,000円+役員就任登記10,000円(資本金1億円超は30,000円)が目安です。これに加えて、代表者個人宛に過料の通知が届きます(会社法976条、100万円以下。実務上は休怠期間に応じて数万円から十数万円程度)。

登記手続きそのものは司法書士の職域ですが、3年以内かどうかの判定を最初にご案内するだけでも、その後の進め方が大きく変わります。

登記の解散・継続は事業年度を切る

税務上、見落としてはならないのがここです。

  • みなし解散の日で事業年度が終了し、翌日から清算事務年度(1年ごと)に移行
  • 継続の日の前日で清算事務年度が終了し、継続の日から新たな事業年度

つまり、みなし解散された会社を復活させる場合、解散日までのみなし事業年度と、その後の各清算事務年度について、遡って申告義務が発生していることになります。通常は無申告のまま放置されていますので、遡及申告の範囲と実費(均等割の累積を含む)を試算したうえで、復活コストと新設法人のコストを比較してご提案することになります。

許認可、取引先との契約、屋号の信用、繰越欠損金の残高が大きい場合は復活に分がありますが、そうでなければ新設のほうが安く早いという結論になるケースも少なくありません。

休眠中こそゼロ申告を続ける|連続提出が守るもの

休眠中も毎期ゼロで申告書を出し続けることには、明確な意味があります。

①繰越欠損金の「連続提出」要件

欠損金の繰越控除の要件は、次の2つです(法人税法57条1項・10項)。

  • 欠損金額の生じた事業年度について青色申告書である確定申告書を提出していること
  • その後において連続して確定申告書を提出していること

ここで押さえておきたいのが、後段には「期限内に」という限定がないことです。さらに法人税法2条31号は、「確定申告書」に期限後申告書を含むと明記しています。

したがって、

  • 休眠中の各期について、白色でもゼロで申告書を出していれば連続性は満たされる
  • 提出が期限後になっていても、提出されている限り連続性は満たされる
  • 未提出の期がある場合には、期限後申告を提出したうえで、連続提出要件を満たすか確認する

つまり「休眠中に1期でも申告していなければ、過年度の欠損金は二度と使えない」というものではありません。休眠中に無申告の事業年度がある場合は、そのままでは連続提出要件を満たしませんので、まず未申告事業年度の期限後申告を行い、欠損金の繰越状況を確認するのが実務の出発点になります。

もっとも、無申告の期間が長いほど遡及申告の実費と均等割の累積が膨らみますし、資料が散逸して申告書自体を組めなくなるリスクもあります。実務上は休眠中もゼロ申告を継続しておくのが安全であることに変わりはありません。

②青色申告の承認取消しは、別の問題として整理する

ここは①と混同されやすいところですので、切り分けて理解する必要があります。

法人税法127条1項4号は、確定申告書をその提出期限までに提出しなかったことを青色申告の承認取消事由としています。実務上は国税庁の事務運営指針により、2事業年度連続して期限内に確定申告書の提出がない場合には、原則として2事業年度目以後について青色申告の承認を取り消すという取扱いがされています。

したがって休眠会社を復活させる場合には、単に未申告分を提出するだけではなく、青色申告の承認が現在どうなっているかを確認することが重要です。

重要なのは、青色申告の承認が取り消されても、それ以前に生じた青色欠損金が消えるわけではないという点です。国税庁も質疑応答事例で、取消し前の事業年度に生じた欠損金については、その後の事業年度について連続して確定申告書を提出していれば繰越控除できるとの整理を示しています。取消し後の事業年度が白色申告であっても同様です。

青色申告の承認取消しの効果は、あくまで取消し後の事業年度に生じた欠損金が青色欠損金として繰り越せなくなること(災害損失欠損金を除く)、および特別償却や各種税額控除といった青色申告を前提とする特典が使えなくなることにあります。

まとめると、

論点要件・効果
過年度の青色欠損金を使えるかその後連続して確定申告書を提出していれば可(期限後申告でも可、白色でも可)
再開後に生じた欠損金を繰り越せるかその事業年度が青色であることが必要
特別償却・税額控除を使えるかその事業年度が青色であることが必要

すでに承認が取り消されている場合、取消通知を受けた日以後1年以内に提出された承認申請書は却下されることがあります(法人税法123条2号)。再開時期の設計に直結しますので、取消しの有無と通知日の確認は早い段階で行っておく必要があります。

決算期変更で「次の事業年度から青色」にする

青色申告承認申請の期限は「事業年度開始の日の前日」

青色申告の承認を受けていない既存法人の場合、青色申告承認申請書の提出期限は、原則として青色申告を適用しようとする事業年度開始の日の前日までです(法人税法122条1項)。

すでに現在の事業年度が始まっている場合、その事業年度について後から青色申告に変更することはできません。再開初年度は往々にして赤字ですから、その欠損金を青色欠損金として繰り越せないのは痛手です。

そこで決算期変更を検討する

一定の場合には、定款を変更して現在の事業年度を短縮し、その翌日から新しい事業年度を開始する方法があります。新しい事業年度開始日の前日までに青色申告承認申請書を提出しておけば、新しい事業年度から青色申告を適用できる可能性があります。

  1. 株主総会で事業年度の変更を決議
  2. 変更後の事業年度を確定
  3. 税務署・都道府県・市町村へ事業年度変更の届出
  4. 新事業年度開始日の前日までに青色申告承認申請書を提出
  5. 新しい事業年度を開始

④が⑤より前であることが要点です。実務上はe-Taxで提出し、送信日時と受信通知を保存しておくことで、提出時期を客観的に確認できるようにしておきます。

ただし、決算期変更前にすでに売上・仕入・役員報酬などが発生している場合、それらは変更前の事業年度の損益です。後から新しい青色事業年度へ移すことはできません。

そのため、事業再開前にご相談いただいたほうが、決算期変更や青色申告の適用時期について選択肢が多くなります。

なお、事業年度の変更は登記事項ではありませんので、登記は不要です。

短期事業年度の申告も忘れずに

決算期変更によって生じる短い事業年度についても、通常どおり確定申告が必要です。

  • 申告期限はその事業年度終了の日の翌日から2か月以内
  • ゼロ申告を続けてきた流れなら、この短期事業年度もゼロ申告で連続性を維持
  • 均等割は月割(1月未満の端数は原則切捨て。ただし事業年度全体が1月未満の場合は1月として計算)。7か月なら7か月分
  • 申告期限の延長特例を受けている場合は、短期事業年度にもそのまま適用

【重要】事業を動かす前にご相談ください

本記事でもっともお伝えしたいのがこの点です。

先に役員報酬を支払ったり仕入れを始めたりしてしまうと、それらはすべて変更前の事業年度の損益として確定します

  • 役員報酬を払い始めた時点で、その期はすでに「事業を行っている期」として動き出している
  • 源泉徴収義務が発生し、給与支払事務所等の開設届の提出日が事業開始日を裏づける
  • その後に決算期変更で期を切っても、切る前の期間に生じた損益を新しい青色事業年度へ移すことはできない
  • 役員報酬の定期同額給与の判定も、期首から3か月以内の改定という枠に縛られる

さらに、設備投資や車両購入を先行させていると、その事業年度については特別償却・少額減価償却資産の特例(措置法67条の5)・中小企業経営強化税制など、青色申告を前提とする優遇措置が使えません。再開初年度こそ、これらのニーズが集中する時期です。

たとえば再開初年度の赤字が500万円あった場合、これを青色欠損金として繰り越せなければ、将来の法人税等でおよそ150万円の差が生じます。ご相談のタイミングを1か月早めるだけで防げる損失です。

なお、すでに事業を動かし始めてしまった場合でも、決算期変更そのものは可能です。変更前の短期事業年度は白色、新しい事業年度から青色という設計はできますので、その時点でできる最善の形をご提案します。事業開始後は、開始前に比べて選択肢が減るというだけのことです。

異動届出書の実務|提出先・記載・添付書類

提出先と添付書類

提出先様式添付書類
所轄税務署異動届出書原則として添付書類なし
都道府県税事務所異動届出書(都道府県様式)自治体ごとに要確認
市町村(法人市民税)異動届出書(市町村様式)自治体ごとに要確認

税務署への異動届出書については、現在は原則として添付書類は不要とされています。ただし内容の確認のため、定款や株主総会議事録の提示・提出を求められることがありますので、決議の記録は必ず整えて保管しておいてください。

一方、都道府県・市町村は独自様式で、添付要件も異なります。定款の写しや議事録の添付を求める自治体もありますので、提出先ごとに個別の確認が必要です。

記載上のポイント

異動事項欄

  • 「事業年度」にチェックし、変更前・変更後の決算期を記載
  • 「その他」に「休業中の事業再開」と記載(休眠届を「休業」で出しているはずなので、その解除に対応させる)

異動年月日

  • 決算期変更は株主総会決議の日
  • 事業再開は実際に事業を開始した日

この2つが別日になる場合は、1枚にまとめず2枚に分けたほうが誤解が生じにくいです。とくに事業再開日は、青色申告承認申請の期限判定や源泉徴収義務の起算に関わりますので、明確に記録として残しておきたいところです。

提出期限

異動届出書は「遅滞なく」とされていますが、決算期変更は必ず変更前の期の終了前に決議・届出しておく必要があります。期が終わってから遡って変更することはできません。

事業再開に伴うその他の届出

届出期限備考
給与支払事務所等の開設届出書給与支払開始から1か月以内休眠時に廃止届を出していれば必要
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書随時提出月の翌月末納付分から特例適用
健康保険・厚生年金保険 新規適用届事実発生から5日以内全喪届を提出済の場合
労働保険 保険関係成立届成立から10日以内
雇用保険 適用事業所設置届設置から10日以内

社会保険の再適用については、旧事業所整理記号が使えるか新規発番になるかが年金事務所の運用で分かれます。全喪から時間が経っていると新規扱いになることが多く、その場合は被保険者全員の資格取得届が必要です。

消費税の届出は「生きたまま」残っている

法人格は継続していますので、過去に提出した消費税関係の届出はすべて有効なままです。ここは見落としが多い論点です。

  • 簡易課税制度選択届出書が有効なまま残っていれば、基準期間の課税売上高が5,000万円以下である限り簡易課税が強制適用されます。設備投資を伴う再開なら、不適用届出書の提出時期を事前に検討する必要があります。
  • インボイス登録を維持していれば、基準期間の課税売上高がゼロでも課税事業者です。休眠中に登録だけ残っているケースは実務でよく見かけます。
  • 逆に免税事業者に戻っている場合、還付を受けるなら課税事業者選択届出書を前事業年度末までに提出する必要があります。

これらの届出は、それぞれ提出期限や適用開始時期が異なります。インボイス制度に関するものは経過措置や改正が重ねられており、一律に「新事業年度開始日の前日まで」とまとめられるものではありません。

再開にあたっては、過去にどの届出を提出しているかを国税庁に確認したうえで、届出ごとに提出期限を個別に判定する必要があります。

決算書の科目整理|休眠前のB/Sをどう扱うか

休眠明けの実務でもっとも手間がかかるのが、休眠直前期の貸借対照表に残った科目の整理です。

ここで最初にお伝えしておきたいのは、科目整理は「帳簿を都合よく合わせる作業」ではないということです。整理にあたっては、次の順序を守る必要があります。

  1. 原因を調査する(通帳、契約書、稟議書、当時の担当者への確認)
  2. 本来帰属すべき事業年度を判定する
  3. 過年度に帰属すべきものであれば、必要に応じて過年度の申告を修正する
  4. 当期の事実として処理できるものだけを、当期で処理する

損益の計上時期は法令上定まるものであり、納税者が任意に選べるものではありません。「欠損金のある年度に整理益を立てる」といった発想で処理時期を動かすことはできません。

仮払金・役員貸付金

休眠直前の決算書に残った仮払金は、内容が特定できないまま放置されていることが少なくありません。

  • まず当時の支出内容を特定できるかを確認します。特定できれば、本来の科目に振り替えるべき事業年度が決まります
  • 役員に対する貸付金として残っている場合、認定利息の計上を求められる可能性があります
  • 役員借入金と相対する債権債務がある場合、相殺の合意があれば相殺処理が可能です。ただし合意の事実と時期を書面で残しておく必要があります
  • 債権を放棄する場合は役員給与(賞与)認定となり、法人側で損金不算入、役員個人に源泉徴収義務が生じます。放棄の意思決定をした事業年度で処理します

未払金・未払費用

休眠から数年経過している未払金は、実際には支払われていないケースが多くあります。

  • 消滅時効(民法166条、原則5年)が完成していても、時効の援用をしない限り債務は消えません。放置している限り、直ちに債務免除益課税とはなりません
  • 相手先から債務免除を受けた場合や、相手先が消滅して債務が消滅したと認められる場合には、その事実が生じた事業年度の益金となります

重要なのは、債務免除益等を認識する事業年度は事実関係によって決まるという点です。繰越欠損金の残高を見て計上時期を選ぶことはできません。すでに過年度に免除の事実が生じていたのであれば、その事業年度の申告を見直すことになります。

預金残高が帳簿と一致しない場合

休眠会社では、帳簿の預金残高と実際の残高が一致しないことが頻繁にあります。この場合も、差額を役員借入金で調整して合わせるという発想で処理してはいけません。

まず原因を調べます。休眠中の差額は、口座管理手数料、受取利息、自動引落の残存、振込手数料など、記帳漏れが原因であることが大半です。通帳や取引明細を取り寄せれば、ほとんどは特定できます。

帳簿残高>実残高(資金が流出している場合)

引落や支払の記帳漏れであれば、その支出があった事業年度の費用として処理すべきものです。役員が引き出していたのであれば、役員貸付金または役員給与の認定という論点になります。使途が不明のまま損金処理すると、使途秘匿金課税(措置法62条、40%の追加課税)の議論を招きます。

帳簿残高<実残高(資金が入っている場合)

受取利息や家賃収入の記帳漏れであれば、その収入があった事業年度の益金です。役員が資金を入れていたのであれば役員借入金ですが、役員側の資金源を説明できることが前提です。説明のつかない入金は売上計上漏れを疑われる典型的なパターンですので、「休眠中なのに入金がある」という事実そのものを丁寧に検証する必要があります。実は細々と事業が続いていたというケースも現実にあります。

いずれの場合も、原因が特定できたら本来帰属すべき事業年度で処理するのが原則です。すでに申告済みの事業年度に帰属するものであれば、修正申告や更正の請求を検討することになります。

役員借入金と相続税|復活時に決まる「その後の初期条件」

科目整理は単なる帳簿の後始末ではありません。その後の相続対策の初期条件を決める作業でもあります。

役員借入金は、役員個人から見れば会社に対する貸付金=相続財産です。原則として額面で評価されますので、休眠期間中の調整で借入金を膨らませると、その分だけ相続税の課税価格が増えます。

会社に返済能力がなくても、評価減が認められるのは、会社が解散・清算中である、継続的な債務超過が相当期間続いているなど、財産評価基本通達205に定める限定的な場合のみです。

したがって、

  • 高齢のオーナーの休眠会社を復活させる場面では、役員借入金を膨らませる調整は相続対策上マイナス
  • むしろDES(債務の資本等への転換)や債権放棄で圧縮する方向を検討する場面もある
  • ただしDESは券面額と時価の差額が債務消滅益として法人側で課税されるため、繰越欠損金の残高と一体で判断が必要

オーナーの年齢と株式の承継方針を確認したうえで、借入金を増やす方向か減らす方向かを決めるのが本筋です。

整理作業の進め方(実務手順)

  1. 休眠直前期の貸借対照表を起点に、科目ごとの実在性を確認
  2. 銀行の残高証明書と取引明細を取り寄せ、実残高と入出金の履歴を確定(休眠中に口座が凍結・解約されている場合もあります)
  3. 差額の原因を特定(口座管理料、利息、自動引落の残存など)
  4. 特定できた項目について、本来帰属すべき事業年度を判定
  5. 過年度に帰属するものは、修正申告・更正の請求の必要性を検討
  6. 当期の事実として処理すべきものだけを当期で処理
  7. 判断の根拠を議事録・確認書・調査メモとして保存(後日の税務調査対応)

当事務所ではほぼすべての関与先に書面添付制度を適用していますので、整理の経緯と根拠を添付書面に記載することで、後日の説明負担を大きく減らすことができます。

まとめ|休眠会社の復活は「順序」がすべて

本記事の要点を整理します。

  • 12年経過しても、通知後2か月以内なら届出1枚で解散を回避できる
  • みなし解散されても、解散から3年以内なら株主総会の特別決議で復活できる
  • 特例有限会社と持分会社は、そもそもみなし解散の対象外
  • 繰越欠損金の要件は「連続して確定申告書を提出」であり、期限内提出までは求められていない。未提出の期がある場合は、期限後申告を行ったうえで連続提出要件を確認する
  • 青色申告の承認取消しは別問題。取消し前に生じた青色欠損金は消えない
  • 期首を過ぎていても、決算期変更で期を切れば新しい事業年度から青色にできる場合がある
  • ただし事業開始後は、開始前に比べて選択肢が大きく減る(すでに生じた損益を新しい青色事業年度へ移すことはできない)
  • 消費税の各種選択届出は、休眠前のものが生きたまま残っていることがあり、届出ごとに期限を確認する必要がある
  • 科目整理は原因調査と帰属年度の判定が出発点であり、計上時期を任意に選ぶことはできない
  • 役員借入金の扱いは、その後の相続対策の初期条件を左右する

休眠会社の復活は、登記・税務・社会保険・相続対策が交差する分野です。一つひとつの手続きは難しくありませんが、着手の順序によって選べる選択肢が変わってくるという特徴があります。

ご相談について

当事務所は、法人税・所得税・相続税に加え、組織再編やM&Aといった高度な専門分野を扱う税理士法人です。休眠会社の復活についても、単なる届出の代行にとどまらず、

  • 復活と新設のどちらが有利かの試算
  • 青色申告を確保するための決算期変更のスケジュール設計
  • 休眠中の未申告分の遡及処理
  • 貸借対照表の科目整理と、その後の相続・承継を見据えた設計

まで一貫してご対応いたします。

事業を動かす前の段階でご相談いただければ、選べる選択肢が大きく広がります。すでに動かし始めてしまった場合でも、次期以降の設計でリカバリーできる余地はありますので、お早めにご連絡ください。

税理士法人 松野茂税理士事務所

  • 〒660-0861 兵庫県尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F(阪神尼崎駅から徒歩1分)
  • TEL:06-6419-5140
  • FAX:06-6423-7500

お問い合わせは、お電話または当サイトのお問い合わせフォームよりお願いいたします。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務判断を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。記事の内容は執筆時点の法令に基づいています。

目次