法定70業種・不動産貸付・駐車場の課税ライン・都道府県ごとの判断を解説
個人事業主だからといって、必ず個人事業税がかかるわけではありません。
個人事業税は、地方税法で定められた「法定70業種」に該当する事業に対して課税される税金です。そのため、フリーランス、ITエンジニア、ライター、クリエイター、整体・カイロプラクティック、YouTuberなどは、業務内容や契約形態によって課税・非課税の判断が分かれることがあります。
また、不動産貸付業や駐車場業については、所得税の「5棟10室基準」と個人事業税の認定基準が異なるため、所得税では事業的規模とされても、個人事業税では課税されないケースがあります。
この記事では、個人事業税がかかる業種・かからない業種、290万円の事業主控除の考え方、不動産貸付・駐車場の課税ライン、都道府県によって判断が異なるケースについて解説します。
目次
1.個人事業税の基本的な仕組み
Q(スタッフ) まず基本から教えてください。個人事業税はどんな税金ですか?
A(松野先生) 個人事業税は、個人が事業を行う際に都道府県に納める地方税です。課税されるのは地方税法で定められた「法定70業種」に該当する場合のみで、すべての個人事業主が対象になるわけではありません。 また、年間290万円の「事業主控除」があります。ただし、個人事業税では青色申告特別控除は控除されない点に注意が必要です。所得税の確定申告上の所得が290万円以下であっても、青色申告特別控除の金額を加算すると課税対象になる場合があります。
【個人事業税の計算式】 個人事業税 =(事業所得または不動産所得 + 青色申告特別控除額 ー 繰越控除等 ー 事業主控除290万円)× 税率 ※ 個人事業税では青色申告特別控除は控除されません(所得税の申告所得に加算して計算します) ※ 所得税で使える「所得控除(医療費控除・扶養控除等)」は、個人事業税では控除できません ※ 事業主控除は年の途中で開廃業した場合、月割計算になります ※ 税率は業種により3〜5%(第1種事業・第2種事業・第3種事業で異なります)
2.個人事業税がかかりにくい業種(法定70業種に含まれないもの)
Q(スタッフ) 法定70業種に含まれない業種には、どんなものがあるのでしょうか?
A(松野先生) 農業・林業・漁業、システムエンジニア・プログラマー・ライター、画家・漫画家・イラストレーター、プロスポーツ選手などが代表例として挙げられます。これらは法定70業種に明示されていないため、直ちに課税対象とされない可能性があります。 ただし、「法定業種に含まれていないから必ず非課税」というわけではありません。契約内容や業務実態によっては、請負業・広告業・デザイン業などとして課税対象と判断される場合があります。業種の境界線が曖昧な場合は、管轄の都道府県税事務所または税理士へご相談ください。
法定70業種に含まれない業種の例と実務上の注意点 業種・職種 課税関係の整理 実務上の注意点 農業・林業・漁業 法定業種外 自家栽培の農作物の販売は非課税。ただし仕入れた農作物の販売は「商品取引業」として課税対象になる場合あり SE・プログラマー・ライター 法定業種外(要確認) 準委任契約による業務は課税対象とされない可能性がある。ただし成果物の完成を目的とする請負契約は課税対象と判断される場合あり 画家・漫画家・イラストレーター 法定業種外(要確認) 作品販売・原稿料収入は課税対象とされない可能性がある。ただしデザイン業と認定される場合は課税対象になる場合あり プロスポーツ選手・芸能人 法定業種外(要確認) 競技・出演活動は課税対象とされない可能性がある。ただし契約形態によっては請負業と認定される場合あり カイロプラクティック・整体 法定業種外(要確認) 請負業に該当しないと判断した裁判例がある。ただし施術内容・営業実態によって課税が問題になる場合があるため、都道府県税事務所への確認が必要 YouTube広告収入 法定業種外(要確認) 石川県では「広告業」として課税対象とした裁決事例あり。全国一律の取扱いは示されておらず、都道府県によって判断が分かれる可能性がある TikTok・ライブ配信の投げ銭 法定業種外(慎重に判断) 広告収入と異なり広告主からの対価とはいえないため、広告業としての課税関係は慎重に判断する必要がある。ただし確定した裁決・判例はなく今後の動向に注意 医業(社会保険診療報酬部分) 法定業種外 社会保険診療報酬に係る所得は非課税。自由診療部分は第3種事業として課税対象
3.不動産貸付・駐車場・土地の貸付(大阪府の課税ライン)
【注意】以下の認定基準は大阪府の場合です。都道府県により認定基準が異なる場合があります。 不動産貸付業・駐車場業を営んでいる方は、必ず所在地の都道府県の基準をご確認ください。
Q(スタッフ) 不動産を貸している場合はどうなりますか?アパートを持っている方は必ず課税されるのでしょうか?
A(松野先生) 不動産貸付業も法定業種の一つですが、課税されるのは一定の規模以上の場合に限られます。 重要なのは、所得税の「5棟10室基準」と個人事業税の認定基準は別物だということです。大阪府では、住宅用アパート等の場合、10室以上が課税ラインとなります。所得税で事業的規模(5棟10室以上)と判定されていても、個人事業税の基準を満たさなければ課税されません。逆に言えば、個人事業税の基準を満たした場合は、所得税の申告内容にかかわらず課税対象となります。
大阪府における不動産貸付業・駐車場業の課税ライン ※都道府県により異なる場合があります 貸付けの種類 課税の有無 大阪府の認定基準 アパート・貸間(住宅) 課税対象(10室以上) 独立室数が10室以上(空室も含む) 一戸建住宅の貸付 課税対象(10棟以上) 棟数が10棟以上 貸店舗・貸事務所(住宅以外) 課税対象(10室以上) 独立室数が10室以上 倉庫・独立家屋(住宅以外) 課税対象(5棟以上) 棟数が5棟以上 住宅用土地の貸付(借地等) 課税対象(10件以上等) 貸付契約10件以上 または 総面積2,000㎡以上 住宅用以外の土地貸付 課税対象(10件以上) 貸付契約件数が10件以上 青空駐車場(建物なし) 課税対象(10台以上) 収容可能台数10台以上(空き台含む) 立体・屋内駐車場(建物あり) 課税対象(1台から) 収容台数に関係なく課税対象 コインパーキングへの土地一括貸付 法定業種外(要確認) 「土地の貸付」として件数で判定。借主が駐車場を経営する場合は駐車場業に非該当の場合あり
【所得税の5棟10室基準と個人事業税の認定基準の違い(大阪府の場合)】 所得税:5棟または10室以上 → 事業的規模(青色申告の特典等が受けられる) 個人事業税:住宅は10棟・10室以上、住宅以外の独立家屋は5棟以上 → 課税対象 ※ 所得税で事業的規模と判定されていても、個人事業税の基準を満たさなければ課税されません ※ なお大阪府では、建物の貸付けについて基準未満であっても、 貸付総面積600㎡以上かつ賃貸料収入年1,000万円以上の場合には不動産貸付業に該当する場合があります (この例外は土地の貸付には適用されません)
4.都道府県によって課税・非課税の判断が異なる場合がある
Q(スタッフ) 先生、同じ業種でも都道府県によって課税されたりされなかったりするのですか?
A(松野先生) そうです。個人事業税は都道府県が課税する地方税ですので、各都道府県が独自に認定基準を定めています。そのため、まったく同じ事業内容でも、住んでいる都道府県によって課税・非課税の結論が変わることがあります。 特にIT系・クリエイター系・新しいビジネスモデルの業種については、国が統一的な基準を示していないため、各都道府県の判断に委ねられているのが実情です。現在課税されていない場合でも、行政の判断が変わることがありますので、最新情報の把握が大切です。
都道府県によって判断が分かれる主な事例 業種・ケース 現状の整理 実務上のポイント YouTuberの広告収入 法定業種外(要確認) 石川県では「広告業」として課税とした裁決(令和4年)あり。全国一律の取扱いは示されておらず、都道府県によって判断が異なる可能性がある TikTok・ライブ配信の投げ銭 法定業種外(慎重に判断) 広告主からの対価とはいえないため、広告業としての課税関係は慎重に判断する必要がある。確定した裁決・判例はなく今後の動向に注意 カイロプラクティック・整体 法定業種外(要確認) 令和2年東京高裁にて請負業に非該当と判断した裁判例あり(最高裁不受理)。ただし施術内容・実態によって課税が問題になる場合がある パソコン保守・システム保守 法定業種外(要確認) 保守は準委任契約的な性格が強く課税対象とされにくい。ただしシステム開発(請負)は課税とする都道府県が多い。常駐型は雇用に近いとして課税しない都道府県もある 青空駐車場(建物なし) 課税対象(10台以上・大阪府) 大阪府では10台以上で課税対象。都道府県によって認定台数の基準が異なる場合があるため、所在地の府県への確認が必要
Q(スタッフ) では、自分が課税対象かどうかをどう確認すればいいのでしょうか?
A(松野先生) まず、ご自身の業種が法定70業種に含まれるかを確認することが第一歩です。不動産貸付や駐車場を営んでいる方は、お住まいの都道府県の認定基準と照らし合わせることが必要です。 業種の判定が難しいケース(IT系フリーランス、整体・カイロ、ライブ配信など)は、管轄の都道府県税事務所へ直接確認するか、税理士へご相談ください。現在課税されていない場合でも、行政の判断が変われば遡及して課税されるリスクがゼロとは言えません。
5.まとめ
① 個人事業税は法定70業種のみが課税対象。農業・漫画家等は法定業種に含まれないため課税対象とされない可能性が高い ② 年間290万円の事業主控除があるが、個人事業税では青色申告特別控除は控除されない 所得税の申告上の所得が290万円以下でも、課税対象になる場合がある点に注意 ③ 所得税で使える「所得控除」は個人事業税では控除できない ④ 不動産・駐車場・土地の貸付は「規模」によって課税・非課税が分かれる(大阪府の認定基準を参照) ⑤ 所得税の「5棟10室基準」と個人事業税の認定基準は異なる(混同に注意) ⑥ 「法定業種に含まれない」=「必ず非課税」ではない。契約内容・業務実態・都道府県によって判断が異なる ⑦ 判断が難しいケースは、管轄の都道府県税事務所または税理士に確認を
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