今年の業績が悪い個人事業主が使える2つの資金繰り対策|予定納税の減額申請と消費税の仮決算中間申告

今年の業績が悪い個人事業主が使える2つの資金繰り対策|予定納税の減額申請と消費税の仮決算中間申告

「今年は売上が落ちているのに、去年の税金を基準に前払いしないといけないの?」 個人事業主の方から、このようなご相談を受けることがあります。

所得税には「予定納税」、消費税には「中間申告・中間納付」という制度があり、前年の税額をもとに今年の税金を前払いする仕組みがあります。

しかし、今年の業績が大きく悪化している場合には、所得税の「予定納税額の減額承認申請」や、消費税の「仮決算による中間申告」を活用することで、当面の納税額を実態に近づけ、資金繰りの負担を軽くできる可能性があります。

本記事では、売上が落ちている個人事業主の方向けに、予定納税の減額申請と消費税の仮決算中間申告について、会話形式でわかりやすく解説します。


目次

① 所得税の予定納税 減額承認申請

予定納税って何ですか?

スタッフ: 先生、うちの顧客の田中さん(個人事業主)から「7月に予定納税の通知が来た。今年は売上がかなり落ちているのに、なぜ昨年と同じ金額を払わないといけないの?」と相談がありました。

松野先生: 予定納税というのは、前年の所得税の確定申告額をベースに、今年の税金をあらかじめ分割して前払いする制度です。 前年の「所得税及び復興特別所得税」の合計額が15万円以上の場合に、通知が届きます。

スタッフ: いつ、いくら払うんですか?

松野先生: 基本的には、前年の申告税額をもとに計算された「予定納税基準額」の3分の1ずつを、7月31日11月30日の2回に分けて納付します。 たとえば予定納税基準額が60万円なら、7月に20万円、11月に20万円の合計40万円を前払いすることになります(残り20万円は翌年3月の確定申告で精算)。


でも今年は業績が悪いんです…

スタッフ: 田中さんのように「今年は業績が落ちているから、前年と同額を払うのはきつい」という場合はどうすればいいでしょうか?

松野先生: そのための制度が**「予定納税額の減額承認申請」**です。 今年の業績をもとに試算した税額が予定納税額より少なくなると見込まれる場合、税務署に申請することで予定納税額を減らしてもらえます。

スタッフ: 具体的にはどんな理由のときに使えますか?

松野先生: 主な理由はこんなケースです。

  • 売上・収入が前年より大幅に減少している
  • 今年から廃業・休業した、または事業の一部をやめた
  • 今年から専従者給与の増額経費の大幅増加がある
  • 災害・盗難・横領などの損失が生じた
  • 医療費の大幅な増加がある

「今年は業績が悪い」という田中さんのケースはまさに典型的な適用場面です。


申請の期限とタイミング

スタッフ: 申請の期限はいつまでですか?

松野先生: 申請できる時期が2つあります。

申請時期申請期間減額される予定納税
第1回目7月1日〜7月15日第1期分(7月)・第2期分(11月)の両方
第2回目11月1日〜11月15日第2期分(11月)のみ

スタッフ: ということは、7月の申請期間に申請すれば、7月と11月の両方を減額できる可能性があるんですね。

松野先生: そのとおりです。資金繰りに余裕を持たせるためにも、7月の申請期間を逃さないことが重要です。


申請の方法と計算のしかた

スタッフ: 申請はどうやってするんですか?計算が難しそうで…

松野先生: 申請書の名前は「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」です。 国税庁のホームページからダウンロードするか、e-Taxで電子申告することもできます。

提出先は、所轄の税務署です(郵送・持参・e-Tax のいずれも可)。

スタッフ: 申請書には何を書くんでしょうか?

松野先生: 申請書には、今年の1月1日から6月30日現在の実績(売上・仕入・経費)をもとに、年間の所得と税額を見積もった金額を記入します。 その年の見込み税額を計算し、税務署から通知された予定納税基準額より少なくなると見込まれる場合には、予定納税額の減額を申請できます。

※ 11月に第2期分のみ減額申請をする場合は、10月31日現在の状況をもとに所得金額と税額を見積もります。

スタッフ: 自分で計算できますか?

松野先生: 売上や仕入・経費を半年分まとめられる方であれば、概算での計算は可能です。 ただし、青色申告特別控除・専従者給与・各種所得控除など、計算が複雑になる部分も多いので、確実に資金繰り改善効果を出すために早めに税理士に相談されることをおすすめします。 申請期間(7月1日〜15日)は非常に短いため、6月中にはご相談いただくと余裕を持って対応できます。


② 消費税の仮決算による中間申告

消費税の中間申告とは?

スタッフ: 田中さんは消費税も中間申告があるようで、「消費税も前払いしないといけないの?今年は売上が少ないのに…」と困っていました。

松野先生: 消費税も所得税と同様に、前年の確定申告額をもとに中間申告・中間納付が必要な場合があります。

個人事業主の場合、前年の確定消費税額(国税分)が48万円を超える方は中間申告の義務があります。

スタッフ: 何回申告しないといけないんですか?

松野先生: 前年の確定消費税額に応じて、回数が変わります。

前年の確定消費税額(国税分)中間申告の回数個人の場合の申告・納付期限
48万円超〜400万円以下年1回8月31日
400万円超〜4,800万円以下年3回各中間期末の翌2ヶ月以内
4,800万円超年11回各中間期末の翌2ヶ月以内

個人事業主で最もよくあるのは「年1回・8月31日申告」のケースです。


「予定申告」と「仮決算」の2つの方法

スタッフ: 中間申告には2種類の方法があると聞きましたが?

松野先生: はい、中間申告には次の2つの方法があります。

● 予定申告方式(通常の方法)

前年の確定消費税額の2分の1(年1回の場合)を納付します。 計算が簡単で、税務署からあらかじめ納付書が届くため、そのまま納付するだけです。

● 仮決算方式(今年の実績で計算する方法)

今年の1月1日から6月30日までの実績(売上・仕入・経費)をもとに、実際に消費税を計算して申告・納付する方法です。

スタッフ: 田中さんのように、今年の売上が落ちている場合は仮決算方式のほうが得なんですか?

松野先生: そのとおりです。今年の業績が前年より悪ければ、仮決算方式で計算した消費税額のほうが少なくなる可能性が高く、中間納付額を抑えることで資金繰りの改善につながります。 ただし、仮決算方式は「必ず得になる方法」ではありません。今年の上半期の実績で計算した税額が大きければ、その金額で申告・納付することになります。また、仮決算で計算した税額がマイナスになった場合でも、中間申告の段階で還付を受けることはできず、中間申告税額は0円となります。したがって、仮決算方式は、今年の業績が悪く、予定申告方式よりも中間納付額を下げられる場合に検討する制度です。


仮決算の計算方法

スタッフ: 仮決算はどうやって計算するんですか?

松野先生: 基本的な流れはこうです。

① 課税売上高の集計 1月〜6月の課税売上高(税抜)を合計します。

② 課税仕入高の集計 同じく1月〜6月の課税仕入れ・経費(税抜)を集計します。 簡易課税の方は、みなし仕入率で計算します。

③ 差引税額の計算 売上にかかる消費税額から仕入にかかる消費税額(仕入税額控除)を差し引きます。

④ 申告・納付 計算した税額を、8月31日までに申告・納付します(年1回の場合)。

【重要】 仮決算による中間申告書は、期限後に提出することはできません。 期限を過ぎると、原則として前年実績による中間申告額で納付することになります。期限管理には十分ご注意ください。

スタッフ: 自分でできますか?

松野先生: 帳簿や請求書をきちんと整理されている方であれば、概算的な数字の計算は可能です。 ただし、課税・非課税の区分、インボイス対応(仕入税額控除の要件)、簡易課税の適用など、計算を誤ると思わぬ税額不足が生じることもあります。 「計算が合っているか不安…」「損得の判断が難しい…」と感じる場合は、お早めに税理士にご相談ください。


まとめ

今年の業績が悪い個人事業主の方には、次の2つの制度が大きな助けになります。

制度活用できる人申請・申告期限
所得税 予定納税の減額承認申請今年の所得が前年より減少しそうな人7月1日〜7月15日(第1・2期両方の減額)
消費税 仮決算による中間申告今年の実績で計算した消費税額が、前年実績による中間納付額より少なくなりそうな人8月31日(年1回の場合)

どちらも申請・申告期限が短く、計算に一定の手間がかかります。 「自分でできるかな?」と迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。 早めのご相談が、資金繰り改善への近道です。


ご相談はお気軽に

税理士法人 松野茂税理士事務所 〒660-0861 兵庫県尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F (阪神尼崎駅西出口より徒歩1分・南改札口)

📞 06-6419-5140 FAX 06-6423-7500

受付時間:平日 9:00〜17:00

予定納税の減額申請や消費税の中間申告について、申請が必要かどうか、どのように計算すべきかを個別に確認したい方は、お早めにご相談ください。 特に、今年の業績悪化により納税資金に不安がある個人事業主の方は、6月中から帳簿を整理し、早めに試算しておくことをおすすめします。

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