一人親方が「忙しいのに儲からない」理由|安売りをやめる見積もりの考え方

一人親方が「忙しいのに儲からない」理由|安売りをやめる見積もりの考え方

尼崎・阪神間で建設業・請負業をされている一人親方・一人法人の方から、「仕事はそこそこ入っているのに、お金が残らない」というご相談を受けることがあります。その多くは、見積もりの金額設定に原因があります。

Q

先生、尼崎で建設業をされているお客さんなんですが、仕事はそこそこ入っているのに、なかなかお金が残らないとおっしゃっていて。

A

それは見積もりの金額が低すぎる可能性が高いですね。尼崎・阪神間エリアで一人でやっている方に多いパターンです。今日は、儲けが出る見積もりの考え方についてお話しします。


なぜ一人親方は安く見積もってしまうのか

Q

そもそも、なぜ安くなってしまうんでしょうか?

A

理由はいくつかあります。まず、独立したばかりの頃は経験が少ないため、自分の仕事に自信が持てないことが大きいです。「この金額で本当に依頼してもらえるだろうか」という不安から、つい低めに出してしまいます。

Q

断られるのが怖い、ということですね。

A

そうです。それに加えて、コストの計算が甘いという問題もあります。材料費や外注費は計算できても、自分の人件費・移動時間・段取り・打ち合わせ・やり直しの時間、こういったものを見積もりに入れていないケースがよくあります。

Q

見えにくいコストが抜けているわけですね。

A

はい。さらに言えば、相場をよく知らないまま感覚で金額を出していることも多いです。業界の相場より自分が低く設定していても、それに気づいていない。一人でやっていると、他の業者と比較する機会が少ないので仕方ない面もあります。


安い見積もりがもたらす悪循環

Q

安く出すこと自体、そんなに問題なんでしょうか?

A

大きな問題です。安い見積もりで仕事を取り続けると、次のような悪循環が起きます。

安値受注の悪循環
仕事は入るが利益が残らない → 設備投資・技術向上ができない → 忙しいのに資金繰りが苦しいまま → また安い仕事を急いで取る → さらに疲弊する
A

そして安い金額で受け続けると、お客さんの中にその金額が「普通」として定着してしまいます。後から値上げしようとすると、以前より難しくなります。最初の金額設定がその後をずっと縛ることになるんです。


断られることを怖がらなくていい理由

Q

値上げしたら断られそうで、どうしても踏み切れないとおっしゃる方が多いです。

A

気持ちはよくわかります。ただ、少し視点を変えてみましょう。断られることは、必ずしも失敗ではありません。

Q

どういうことですか?

A

たとえば、10件見積もりを出して3件受注できたとします。安い金額なら10件中8件受注できるかもしれません。でも、1件あたりの利益が2倍になれば、3件受注でも8件と同じかそれ以上の利益が出る計算になります。

Q

件数が減っても、利益は増えるということですね。

A

そうです。しかも仕事の件数が減れば、1件1件に集中できます。品質が上がり、お客さんの満足度も上がり、紹介にもつながりやすくなります。価格だけで選ぶお客さんは、もっと安い業者が現れたらすぐに移ります。適正な金額でも依頼してくれるお客さんとの関係を増やす方が、事業は安定します。

実務で見ていると、値上げを決断できる方は少しずつ資金繰りが改善していきます。反対に、安い単価のまま忙しさだけを増やしてしまうと、売上は増えているのに借入も増えていく、という状態になりやすいです。

儲かる見積もりを作るための考え方

Q

では、見積もりをどう考えればいいでしょうか?

A

まず、見積もりは「かかったコスト+利益」で作るという基本に立ち返ることです。コストには次のものをすべて含める必要があります。

見積もりに含めるべきコスト
材料費・外注費・経費
自分の労働時間(移動・打ち合わせ・段取り・やり直しも含む)
道具・車両・機械の減価償却分
保険・税金・社会保険の負担分
万が一のやり直しや保証のリスク分
Q

自分の人件費を入れていない方が多そうですね。

A

非常に多いです。特に独立当初は「自分はまだ未熟だから」と自分の時間をタダ同然に扱ってしまいます。しかし自分の時間にコストを乗せなければ、働けば働くほど損をする構造になってしまいます。利益は「残ればいい」ではなく、最初から金額として設計するものです。

Q

開業当初はみなさん同じように見積もりを出しているんですよね。自分が儲かっているのか損しているのか、どうやって判断すればいいんでしょう?

A

これが難しいところです。開業当初は、数か月分の売上や経費を見ないと、自分の事業が本当に儲かっているのか判断しにくいという方が多いです。税金や社会保険の支払いが重なる時期に初めて「思ったより手元に残っていない」と気づくケースがよくあります。

Q

年に1回、決算のときに確認するだけでは遅いですか?

A

遅いです。決算で気づいた時には、すでに1年分の赤字や資金繰りの悪化が進んでいることもあります。月次の試算表を毎月確認して、売上・原価・利益の流れをその都度把握しておくことが大切です。特に開業1年目は、単価設定が適正かどうかを早めに確認しないと、安い見積もりのまま習慣化してしまいます。

Q

税理士と一緒に数字を確認すると、何が変わりますか?

A

毎月の試算表をもとに、売上の構成・原価率・固定費の割合を一緒に確認できます。「この仕事は利益が出ているのか」「単価をどう設定すれば手元に残るのか」を数字で把握できると、見積もりの精度が上がります。感覚ではなく、根拠のある金額で見積もりを出せるようになることが、尼崎の税理士として顧問契約でサポートできる一番の効果だと考えています。


値上げは一気にしなくていい

Q

既存のお客さんへの値上げは、さすがに難しいですよね。

A

既存客への値上げは、確かに一気にやると摩擦が生じます。ただ、方法はあります。

値上げの進め方
新規のお客さんからは最初から適正な金額で出す
既存客には材料費・燃料費の上昇を説明しながら段階的に上げる
工事の内容や対応の範囲を整理して、金額の根拠を丁寧に説明する
A

値上げして離れていくお客さんは、もともと価格以外の価値を認めていないお客さんです。残ってくれるお客さんとの関係をしっかり築いていく方が、長期的には安定します。


段階的に事業を成長させる

Q

先生、見積もりで利益が出るようになってきたら、次はどう考えればいいですか?

A

利益が安定してきたら、次のステップとして事業を段階的に大きくすることを考えます。ただし、一気に拡大しようとすると資金繰りが苦しくなります。順番が大切です。

Q

どんな順番で考えればいいですか?

A

まず最初に整えたいのが下請け先・協力業者のネットワークです。自分一人では受けられなかった規模の仕事や、専門外の工程を任せられる業者を早めに確保しておくと、受注の幅が広がります。外注をうまく使えれば、自分が現場に出なくても仕事を回せるようになります。

Q

外注先が増えると、自分は営業や段取りに集中できますね。

A

そうです。そして次に考えるのが事務作業を任せる体制づくりです。いきなり正社員を雇う必要はありません。請求書の作成・電話対応・書類整理などを、家族・パート・外部サービスなどに少しずつ任せるだけでも、社長の動ける時間はかなり変わります。

Q

事務所を借りるのはどのタイミングでしょうか?

A

事務所は対外的な信用にもつながります。自宅兼事務所から始めるケースが多いですが、取引先や下請け業者が増えてきたタイミングで借りることを検討する方が多いです。ただし、事務所の家賃は固定費の増加になりますので、売上が安定してから動く方が安全です。

Q

成長のスピードを急ぎすぎると危険ですか?

A

はい。よくあるパターンが、売上が好調な時期に事務所・人員・設備を一気に拡大して、固定費が跳ね上がり、その後売上が落ちた時に苦しくなるというものです。事務所を借りるタイミング・人を雇うタイミング・借入をするタイミング、これらはすべて資金繰りと連動しています。月次の試算表で確認しながら動くと、無理のないペースで成長できます。


まとめ

Q

大切なのは、見積もりを「受注するための価格」ではなく、「利益が出る価格」から考えることですね。

A

そうです。一人親方・一人法人の方が安く見積もりがちな背景には、経験の少なさからくる自信のなさ・断られることへの恐れ・コスト計算の甘さがあります。しかし安い見積もりを続けることは、忙しいのに儲からないという状況を固定させてしまいます。

A

月次の試算表を毎月確認し、数字で把握する習慣が、開業当初から必要です。断られることを恐れず、根拠のある金額で仕事を取っていく。その土台を一緒に作ることが、顧問税理士としての役割だと考えています。

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