新築一棟マンションによる相続対策は、
判断を誤ると大きな損失につながる可能性があります。
尼崎で相続対策・不動産活用のご相談は、
税理士法人松野茂税理士事務所までご相談ください。
税理士法人松野茂税理士事務所 代表税理士 松野茂
⚠ 銀行に勧められた方は、購入前に必ず読んでください
新築一棟マンションによる相続税対策は、やり方を間違えると数千万円単位の損失になる可能性があります。
実際に私は、「節税になる」と説明されて購入した結果、
- 毎年赤字
- 売却できない
- 相続税も思ったほど減らない
というケースを数多く見てきました。
30年以上、相続税の実務に携わってきた税理士として、表面的な節税効果だけでなく、「誰が本当に得をするのか」「どんなリスクがあるのか」 を包み隠さずお伝えします。
第1章 「新築一棟マンション節税」の仕組みと限界
なぜ節税になるのか
不動産の相続税評価額は、現金と比べて大幅に低くなります。
2億3,000万円の現金を収益マンションに替えた場合、相続税評価額はおよそ次のようになります。
| 項目 | 評価割合(目安) |
|---|---|
| 土地(貸家建付地) | 約10〜12% |
| 建物(固定資産税評価額×70%) | 約12〜15% |
| 合計 | 約22〜27% |
2億3,000万円が5,000万円前後の評価になる。この差額が「節税効果」として説明されます。
しかし、ここに大きな落とし穴がある
節税効果が数字の上で成立しても、収益性がなければ資産は確実に目減りします。
表面利回り4.5%の物件で金利2%・30年ローンを組むと、年間のキャッシュフローはマイナス100〜200万円になります。20年間で最大4,000万円もの持ち出しが生じることになります。
節税できた相続税額より、持ち出し損失のほうが大きくなるケースが少なくありません。
第2章 誰が本当に得をするのか
【この取引で得をする人】
銀行 → 30年分の融資利息・融資残高の確保
不動産業者 → 物件価格の3%の仲介手数料(約700万円)
管理会社 → 20〜30年分の管理料
──────────────────────────
購入者 → 節税効果(ただしリスクをすべて負う)
銀行にとって、高齢の富裕層に多額の融資をつけることは「融資残高の確保」につながります。相続対策として提案することで、「断りにくい」状況も生まれます。
この提案はクライアントの利益より、銀行・不動産業者の利益が優先されていることが多いと感じます。
第3章 国税が否認する「総則6項」――相続直前の購入が危険な理由
「総則6項」とは何か
👉 一言でいうと、「やりすぎた節税は認めない」というルールです。
正式には「財産評価基本通達総則6項」といい、通達による評価が著しく不適当な場合に、国税当局が時価(鑑定評価額)で課税できる規定です。
令和4年最高裁判決の衝撃
令和4年4月19日、最高裁判所は画期的な判決を下しました。
90歳を超えた被相続人が、約10億円を借り入れて約14億円の賃貸マンション2棟を購入。相続税評価額を約3億円に圧縮し、相続税ゼロ円で申告したところ、国税当局が総則6項を適用して否認。最終的に2億円以上の追徴課税が確定しました。
総則6項が問題になる典型例とは
総則6項が問題になりやすいのは、実務上、高齢者が相続直前に取得したケースです。
とくに、次の要素が重なる場合には、否認リスクが高まります。
| リスク要素 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 年齢・健康状態 | 高齢・病気など近い将来の相続が予見できる |
| 借入れの経緯 | 被相続人自身が全額借入で取得した |
| 評価乖離の大きさ | 購入価額と通達評価額の乖離が3〜4倍以上 |
| 取得後の行動 | 相続直後に売却している |
| 銀行稟議書の記載 | 「相続税対策」と明記されている |
法人が購入した場合や、若いうちから計画的に対策した場合は、上記の要素が揃いにくく、相対的にリスクが低いとされています。ただし、個別の事情によって判断が異なりますので、必ず専門家にご相談ください。
第4章 令和8年度税制改正で「包囲網」が完成する
令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定) では、相続税等の財産評価の適正化として、一定の貸付用不動産に関する見直しが示されました。
令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与から適用予定
被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築した一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価する見直しが示されています。そのうえで、課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価変動等を考慮して計算した価額の80%相当額による評価も認める扱いが予定されています。
👉 つまり、「今やっても、5年以内に亡くなると節税が無効になる」
これは非常に重要です。具体的に数字で見てみましょう。
| 条件 | 従来 | 見直し後(5年以内に相続) |
|---|---|---|
| 購入価格 | 2億3,000万円 | 2億3,000万円 |
| 相続税評価額 | 約5,000万円 | 約1億8,400万円前後 |
| 節税効果 | 約1億8,000万円の圧縮 | 大幅に縮小 |
たとえば令和7年7月に新築マンションを購入した場合、令和12年7月(5年後)までに相続が発生すると、節税効果が大幅に縮小します。
なお、今後の法令・通達の制定により制度の詳細が変わる可能性があります。また、法人スキームについても、制度趣旨上、今後は慎重な検討が必要です。最新の情報は専門家にご確認ください。
税務上の取扱いは個別事情により大きく異なります。
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第5章 地主の土地活用とは根本的に違う
「不動産で相続対策」と一口に言っても、銀行が持ち込む新築マンション購入と、地主が自分の土地に賃貸を建てることは、まったく別物です。
| 比較項目 | 銀行提案の新築購入 | 地主の土地活用 |
|---|---|---|
| 土地の取得 | 借金で新たに購入 | 先祖代々・自己所有 |
| 建設目的 | 節税が主目的 | 事業活動・土地の有効活用 |
| 経済合理性 | 説明が困難 | 十分な合理性がある |
| 総則6項リスク | 相対的に高い | 相対的に低い |
| 収益性 | 4〜5%台が多い | 設計次第で高利回りも可能 |
| 出口戦略 | 難しい | 土地自体に価値がある |
地主が長年所有する土地に賃貸住宅を建てる場合は、「事業行為」として経済合理性が認められやすく、総則6項の対象になりにくいとされています。
第6章 収益物件として合格するための「利回り7%の壁」
もし収益物件を使った相続対策を検討するなら、表面利回り7%以上が最低基準です。
| 表面利回り | 年間賃料 | 実質収益 | 年間返済額 | 収支判定 |
|---|---|---|---|---|
| 4.5% | 1,050万円 | 約857万円 | 1,041万円 | ❌ 赤字 |
| 6.0% | 1,400万円 | 約1,142万円 | 1,041万円 | △ ギリギリ |
| 7.0% | 1,633万円 | 約1,332万円 | 1,041万円 | ✅ 合格 |
| 8.0% | 1,866万円 | 約1,522万円 | 1,041万円 | ✅✅ 理想 |
※2億3,000万円・金利2%・30年ローンの場合
銀行が持ち込む新築好立地物件は、ほぼ例外なく利回り4〜5%台です。表面上の節税効果があっても、収益性がなければトータルで損をします。
まとめ
⚠ あなたのケースは安全ですか?
以下に1つでも当てはまる方は、要注意です。
- [ ] 利回りが5%以下の物件を勧められている
- [ ] 銀行主導で話が進んでいる(税理士への相談が後回し)
- [ ] キャッシュフローをきちんと計算していない
- [ ] 70歳以上での購入を検討している
- [ ] 5年以内に相続が発生する可能性がある
👉 1つでも該当する場合は、個別判断が必要です。
節税効果の数字だけを見て購入を決断することは、非常に危険です。収益性・流動性・家族の将来設計を総合的に検討してこそ、本当の意味での相続対策になります。
銀行や不動産業者の提案をそのまま受け入れる前に、必ず利害関係のない税理士にご相談ください。
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新築一棟マンションによる相続対策は、
節税効果だけでなく、収益性や出口戦略も含めた総合的な判断が必要です。
尼崎市で相続対策・不動産活用をご検討の方は、
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本記事は令和7年(2025年)時点の法令・通達に基づいています。今後の税制改正・通達の制定により内容が変わる場合があります。個別の税務判断については、専門家にご相談ください。







