中小企業投資促進税制とは?適用要件と中小企業経営強化税制との違いを徹底解説 | 尼崎の税理士

中小企業投資促進税制とは?適用要件と中小企業経営強化税制(A累計)との違いを徹底解説 | 尼崎の税理士

税理士(ベテラン):先生 スタッフ:田中さん


田中: 先生、最近お客様から「機械を買ったので節税になりますか?」というご相談が増えているのですが、中小企業投資促進税制について改めて教えていただけますか?

先生: いいタイミングで聞いてくれましたね。令和7年度税制改正でこの制度の適用期限が延長されましたので、改めて整理しておきましょう。まず、この制度は一定の機械や設備を購入した中小企業者が、特別償却30%か税額控除7%を選択できる制度です。


目次

適用を受けるための基本的な要件

田中: どんな会社でも使えるのですか?

先生: 4つのチェックポイントがあります。順番に確認しましょう。

1. 中小企業者に該当するかどうか

この税制における「中小企業者」とは、租税特別措置法上の定義で判断します。中小企業基本法の業種別基準とは全く異なりますので注意してください。

法人の場合は、資本金または出資金の額が1億円以下の法人、または資本・出資を有しない法人で常時使用する従業員数が1,000人以下の法人が該当します。個人事業者の場合は、常時使用する従業員数が1,000人以下であれば該当します。

田中: みなし大企業の判定は見落としやすそうですね。

先生: そうです。資本金が1億円以下でも、親会社や大株主の状況によっては適用できないケースがあります。大規模法人が発行済株式の2分の1以上を保有している法人、2以上の大規模法人が3分の2以上を保有している法人、さらに大規模法人の100%子会社も対象外となります。グループ会社や出資関係のある会社は必ず株主構成を確認するようにしてください。

2. 指定業種に該当するかどうか

ほとんどの業種は対象になりますが、娯楽業(映画業を除く) は対象外です。また農業・林業・漁業なども一部除外されています。サービス業や飲食業のお客様は念のため確認するようにしましょう。

3. 対象となる資産

田中: どんな設備を買えば使えるのですか?

先生: 以下の資産が対象になります。

資産の種類要件
機械装置1台160万円以上
測定工具・検査工具1台120万円以上、または1台30万円以上で年間合計120万円以上
電子計算機(デジタル複合機を含む)1台120万円以上
ソフトウエア70万円以上(複数合算可)
貨物自動車(普通自動車)車両総重量3.5トン以上
内航船舶※詳細要件は個別にご確認ください

田中: 工具や器具・備品はどうですか?

先生: 一律に対象外というわけではありません。測定工具・検査工具は、製品の品質管理の向上等に資するものであれば対象になります。ただし一般的なオフィス用の器具・備品は対象外です。また電子計算機については1台120万円以上が要件ですので、通常の業務用パソコンは多くの場合この金額要件を満たさず対象外となりますが、サーバー等の高額なものは個別に要件を確認する必要があります。いずれにしても、中古品は対象外新品であることが要件です。

トラックについては車両総重量3.5トン以上の普通自動車であれば対象になりますので、運送業や建設業の方には活用の機会があります。

4. 青色申告書を提出していること

田中: この制度を使うために、事前に何か手続きは必要ですか?

先生: 投資促進税制の適用を受けるためには、青色申告書を提出していることが前提条件です。白色申告の方は適用を受けることができませんので、まだ青色申告をされていない個人事業者の方は早めに承認申請をしておく必要があります。また、適用を受ける年度の確定申告書(法人税申告書)に必要事項を記載して申告することが要件となります。申告書への記載を失念すると適用を受けられなくなりますので注意が必要です。


特別償却と税額控除の選択

田中: 特別償却と税額控除はどう違うのですか?どちらを選んだらよいのでしょうか?

先生: ここが実務のポイントです。

特別償却30%

特別償却を選択した場合、通常の減価償却費に加えて取得価額の30%を上限として追加で償却できます。つまり償却の前倒しです。節税効果は一時的で、将来その分だけ減価償却費が減少します。「税金の繰り延べ」とも説明できます。

なお、限度額を超えた特別償却未済額は1年間の繰越しが認められます。

税額控除7%

税額控除は取得価額の7%を直接、法人税額(または所得税額)から差し引くものです。こちらは償却の前倒しではなく、永久的な節税になります。

ただし、控除できる金額には上限があり、法人税額(または所得税額)の20%が限度です。限度額を超えた部分は1年間の繰越しが可能です。

また、税額控除7%を選択できるのは、資本金3,000万円以下の法人、または常時使用する従業員数1,000人以下の個人事業者に限られます。資本金が3,000万円超1億円以下の法人は特別償却のみ適用可能ですのでご注意ください。


法人と個人で選択が異なる理由

田中: 法人と個人で選び方が違うと聞いたのですが、どういうことですか?

先生: 実務的に非常に重要な視点です。

法人の場合は、税額控除が「永久の節税」になるため、税額控除を選択することが多いです。特に黒字が安定している法人では、確実に法人税額から控除できる税額控除の方が有利になるケースがほとんどです。

個人事業者の場合は、所得税に超過累進税率が適用されます。所得が高い年に特別償却を大きく取ることで、その年の高い税率の所得税を抑え、翌年以降の低い税率帯で課税を受けるという節税効果が生まれます。そのため特別償却が有利になるケースが多く、節税額のシミュレーションをもとにご説明することが多いです。

田中: 同じ年に複数の資産を購入した場合はどうなりますか?

先生: いい質問ですね。複数の資産を購入した場合は、資産の「種類」ではなく**「資産ごと」**に特別償却か税額控除かを選択することができます。たとえば機械Aは特別償却、機械Bは税額控除、といった選択が可能です。これを活用して、法人税額のバランスを取ることができます。


リース資産はどうなりますか?

田中: 設備をリースで導入した場合はどうなりますか?

先生: リースについては制度ごとに取り扱いが異なりますので整理しておきましょう。まず対象となるリースは、税法上の「リース取引」、すなわち所有権移転リース所有権移転外ファイナンスリースです。オペレーティングリースは対象外となりますのでご注意ください。

中小企業投資促進税制の場合、対象となるリース取引で導入した設備も税額控除7%(資本金3,000万円以下の法人等)の適用が可能です。ただし特別償却は適用できません。

中小企業経営強化税制の場合も、対象となるリース取引で導入した特定経営力向上設備について税額控除(7%または10%)のみ適用可能です。こちらも即時償却は適用できません。

田中: どちらの制度もリースは税額控除のみで、特別償却・即時償却は使えないということですね。

先生: そうです。「リースは特別償却・即時償却NG、税額控除のみOK」と覚えておいてください。実務上は、リース料の支払いが平準化されるうえに税額控除も活用できますので、「リースなら即時償却は使えないが、税額控除はむしろ使いやすい」という側面もあります。ただし、割賦(分割払い)で購入した場合は特別償却・税額控除ともに対象となります。お客様から「リースと購入どちらがよいですか」というご相談を受けた際は、この点も含めてトータルでシミュレーションすることが重要です。


具体的な節税額のイメージ

田中: 実際にどのくらい節税になるのか、具体的なイメージを教えていただけますか?

先生: たとえば資本金1,000万円の法人が、1,000万円の機械装置を購入したケースで考えてみましょう。

税額控除を選択した場合、取得価額1,000万円×7%=70万円が法人税額から直接控除されます。さらに通常の減価償却費も全額損金算入できますので、永久的な節税70万円に加えて通常の減価償却による節税効果も得られます

特別償却を選択した場合、取得価額1,000万円×30%=300万円が追加で損金算入されます。税率23%で計算すると約69万円の税負担が翌期以降に繰り延べられますが、あくまで繰り延べであり永久の節税にはなりません。

この比較からも、法人では税額控除の方がかなり有利であることが分かります。ただし、繰越欠損金がある場合や、その年度の利益が少なく法人税額の20%の上限に引っかかる場合は、特別償却の方が有利になることもあります。必ずその年度の利益状況に応じてシミュレーションを行うようにしてください。


少額減価償却資産の特例

田中: 先生、設備投資の節税という点では他に使える方法はありますか?

先生: 中小企業者であれば少額減価償却資産の特例も活用できます。取得価額が一定金額未満の減価償却資産であれば、取得した年に全額を損金に算入できる制度です。令和8年度税制改正でいくつかの重要な見直しが行われましたので整理しておきましょう。

田中: どのような改正があったのですか?

先生: 主なポイントは4つです。

まず取得価額の上限引き上げです。現行の30万円未満から、令和8年4月1日以後に取得する資産については40万円未満に引き上げられます。年間の合計取得価額の上限は300万円のまま据え置きです。

次に対象者の従業員要件の厳格化です。現行の常時使用する従業員数500人以下から、改正後は400人以下に引き下げられる予定です。

また適用期限の延長として、令和11年3月31日まで3年間延長される方向です。

田中: 同じ事業年度内に30万円ルールと40万円ルールが混在することはありますか?

先生: 非常に重要な点です。令和8年4月1日以後の取得日の資産から40万円未満の基準が適用されますので、同一事業年度内であっても令和8年3月31日以前に取得した資産は30万円未満、4月1日以後に取得した資産は40万円未満と、2つのルールが混在することがあります。3月決算法人以外では特にこの点に注意が必要です。

田中: 投資促進税制や経営強化税制と組み合わせて使うことはできるのですか?

先生: 同一の資産に重複適用はできませんが、資産ごとに最適な制度を選択することができます。高額な機械は投資促進税制または経営強化税制、40万円未満の小口資産は少額減価償却資産の特例、と使い分けることで設備投資全体での節税効果を最大化することができます。


中小企業経営強化税制との違い

田中: よく似た制度に「中小企業経営強化税制」がありますが、どう違うのでしょうか?

先生: 実際の相談でもよく混同されます。まず対象資産の違いを確認しましょう。

資産の種類投資促進税制経営強化税制
機械装置○(160万円以上)
測定工具・検査工具○(120万円以上等)
器具・備品×
電子計算機・デジタル複合機○(120万円以上)
ソフトウエア○(70万円以上)
貨物自動車(普通自動車)○(車両総重量3.5トン以上)×
建物附属設備×○(60万円以上)
内航船舶○(※詳細要件は個別にご確認ください)×

田中: 対象資産にも大きな違いがあるのですね。建物附属設備というのは具体的にどのようなものですか?

先生: 工場・店舗・事務所に設置される設備が広く対象になります。具体的には空調設備、照明設備、配電盤、給排水設備、エレベーター、防犯・監視カメラなどが代表的な例です。また国税庁のQ&Aでは、工場内の食堂やシャワールームなどに設置された建物附属設備も対象に含まれると示されています。意外と範囲が広いと感じるお客様も多いですね。設備投資の際には「建物附属設備ではないか」という視点で確認することをお勧めします。

先生: 貨物自動車(トラック)は投資促進税制のみ対象で、経営強化税制では対象外です。一方、器具・備品および建物附属設備は経営強化税制のみ対象で、投資促進税制では対象外となります。お客様が購入した設備がどちらの制度で使えるかは、まずこの対象資産の確認から始めることが重要です。

次に特別償却と税額控除を資本金別に整理するとこうなります。

資本金投資促進税制 特別償却投資促進税制 税額控除経営強化税制 特別償却経営強化税制 税額控除
3,000万円以下30%7%即時償却(100%)10%
3,000万円超1億円以下30%なし即時償却(100%)7%

田中: 経営強化税制の方が全体的に優遇が大きいのですね。

先生: そうです。特別償却については、投資促進税制が30%の前倒しであるのに対し、経営強化税制は取得価額の全額を初年度に償却できる即時償却(100%)ですので、資本金の額にかかわらず経営強化税制の方が有利です。税額控除については、資本金3,000万円以下の法人では投資促進税制7%に対し経営強化税制は10%、資本金3,000万円超1億円以下の法人では投資促進税制は税額控除自体が使えないのに対し経営強化税制では7%の控除が受けられます。

ただし、経営強化税制を適用するには事前の手続きが必要です。A類型の場合、手続きの流れは次の通りです。

①工業会等による証明書の取得 → ②経営力向上計画の申請・認定 → ③設備の取得

原則としてこの順序を守る必要があり、設備取得前に認定を受けることが前提です。やむを得ず設備を先行取得した場合でも、取得後60日以内に経営力向上計画を申請しなければなりません。この期限を過ぎると適用を受けることができなくなりますので十分な注意が必要です。

田中: 確かに、以前お客様が設備を購入されたことを事前に知らせてくださらなかったので、60日の期限に間に合わなかったケースがありましたね。

先生: そうなんです。お客様からすると「買ったことを税理士に報告する」という意識がなかなか生まれにくいものです。だからこそ、設備投資を検討している段階で早めにご相談いただくことが大切です。投資促進税制であれば事前手続きが不要ですので、その点では使いやすい制度といえます。いずれにしても、設備を取得する前に一度ご相談いただくようにお客様へ日頃からお伝えしておくことが重要です。


まとめ

田中: 今日のポイントをまとめてもらえますか?

先生: 中小企業投資促進税制のポイントは次の通りです。

まず適用要件の確認として、①資本金1億円以下(または従業員1,000人以下)の中小企業者に該当するか・大規模法人の子会社等でないか、②指定業種か(娯楽業などは対象外)、③対象資産か(新品・機械装置160万円以上、測定工具・検査工具は要件あり、一般的な器具備品は対象外)、④青色申告書を提出しているか、の4点を必ず確認します。

次に優遇内容として、特別償却30%か税額控除7%(資本金3,000万円以下の法人、または従業員1,000人以下の個人事業者)を選択します。税額控除は永久の節税となるうえに通常の減価償却も行えるため、法人では税額控除の方がかなり有利です。税額控除には法人税額の20%という限度額があり、超過分は1年間繰越し可能です。

選択の考え方として、法人は税額控除を優先的に検討します。個人は超過累進税率の関係から特別償却が有利になるケースが多いです。複数資産がある場合は資産ごとに選択できるため、税額のバランスを見て最適な組み合わせを検討します。リース取引(所有権移転リース・所有権移転外ファイナンスリース)は特別償却・即時償却は使えませんが税額控除は適用可能です。割賦購入は特別償却・税額控除ともに対象となります。

少額減価償却資産の特例については、令和8年4月1日以後取得分から40万円未満(現行30万円未満)に引き上げられます。年間300万円を上限として取得年度に全額費用化できますので、投資促進税制や経営強化税制の金額要件に満たない小口資産についてはこの特例を活用することで節税効果を最大化できます。同一事業年度内で30万円ルールと40万円ルールが混在することがある点にも注意が必要です。

経営強化税制との使い分けとしては、優遇内容の大きさでは経営強化税制が上回りますが、A類型は工業会証明書の取得・経営力向上計画の認定と手続きに時間がかかります。先行取得の場合は取得後60日以内の申請が必要であり、期限を過ぎると適用を受けられなくなります。また対象資産の違いも重要で、トラックは投資促進税制のみ、器具・備品や建物附属設備(60万円以上)は経営強化税制のみが対象です。設備投資の計画段階で早めにご相談いただくことが何より重要です。

設備投資を検討されているお客様は、購入前にぜひ一度ご相談ください。どちらの制度が有利か、シミュレーションをもとにご提案いたします。

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