分譲マンション評価の落とし穴|歩道状空地と公開空地の評価の違い|連坦建築物設計制度(建基法86条2項)の実務判断 | 尼崎の税理士が解説

分譲マンション評価の落とし穴|歩道状空地と公開空地の評価の違い|連坦建築物設計制度(建基法86条2項)の実務判断 | 尼崎の税理士が解説

  • 公開空地(建基法59条の2) → 1画地評価(評価減なし)
  • 歩道状空地(都計法) → 財基通24(私道評価)
  • 連坦建築物設計制度(建基法86条2項) → 原則は1画地評価寄り(※個別判断・要根拠)

※名称ではなく「容積率等の緩和の有無」で判断するのが実務上のポイント 個別判断が必要


目次

はじめに

相続税の申告において、分譲マンションの評価は年々複雑さを増しています。令和6年からは区分所有マンションの評価方法が大幅に見直され、実務上の注意点がさらに増えました。

その中でも見落とされがちなのが、マンション敷地内に設けられた**「歩道状空地」や「公開空地」の評価上の取り扱い**です。

現地に設置されている看板の名称だけを頼りに判断すると、評価を誤るリスクがあります。本記事では、特に実務で問題となる「連坦建築物設計制度」(建築基準法第86条第2項)との関係を中心に、正しい評価の考え方を解説します。


1. 公開空地・歩道状空地とは何か

公開空地(建基法第59条の2|総合設計制度)

大規模建築において、容積率や高さ制限の緩和を受ける代わりに、一般公衆が自由に利用できるよう設けられる私有の空地です。

財産評価上の取り扱い: 公開空地部分も含めて1画地の宅地として評価します。容積率割増という経済的恩恵を受けていることから、評価減は認められません。

参考:国税庁HP質疑応答事例「公開空地のある宅地の評価」


歩道状空地(都市計画法の開発許可|行政指導)

都市計画法上の開発許可を受けるために、地方公共団体の指導要綱等に基づく行政指導によって整備された空地です。

財産評価上の取り扱い: 以下の3要件をすべて満たす場合、宅地と評価単位を分け、財産評価基本通達24(私道の評価)に基づいて評価します。

要件内容
都市計画法の開発許可のための行政指導により整備されたこと(容積率・高さ制限の緩和は基本的になし)
道路に沿ってインターロッキング等の舗装が施されていること
居住者以外の第三者による自由な通行の用に供されていること

参考:国税庁HP質疑応答事例「歩道状空地の用に供されている宅地の評価」


2. 連坦建築物設計制度とは

制度の概要

建築基準法第86条第2項に基づく制度で、既存の複数の建築物と新たに建築する建築物を一体とみなして、容積率・斜線制限等の建築規制を緩和できる制度です。

老朽化した複数のマンションを一体的に建て替える場合や、隣接する複数の土地を活用した大規模再開発で多く利用されます。

総合設計制度との違い

比較項目総合設計制度(59条の2)連坦建築物設計制度(86②)
対象単一の敷地・建築物複数の既存建築物+新築建築物
主な緩和内容容積率・高さ制限容積率・斜線制限
典型的な場面単独の大規模開発既存市街地の建替え・再開発
設けられる空地公開空地歩道状空地等
国税庁の取り扱い質疑応答事例あり(明確)未公表(グレーゾーン)

3. 連坦建築物設計制度による歩道状空地の評価上の問題

ここが実務上、最も注意を要するポイントです。

連坦建築物設計制度(建基法86②)に基づいて設けられた歩道状空地は、国税庁がその財産評価上の取り扱いを公表していません

性格の類似性から見た論点

比較軸公開空地(59条の2)連坦建築物設計制度の歩道状空地都計法の歩道状空地
容積率割増あり場合による(中程度)基本なし
斜線制限緩和ありありなし
空地設置の趣旨公衆への開放公衆への開放公衆への通行
評価通達1画地評価未定(個別判断)財基通24

この制度による歩道状空地は、総合設計制度(公開空地)と都計法(歩道状空地)の中間的な性格を持ちます。

実務上の私見(筆者)

連坦建築物設計制度による歩道状空地は、内容面では総合設計制度による公開空地と類似しているため、当該歩道状空地も含めて1画地の宅地として評価するのが妥当と考えられます。

ただし、国税庁が見解を示していないグレーゾーンであるため、個別の状況に応じた慎重な判断と、書面添付制度を活用した根拠の明示が重要です。


4. 判断フロー

マンション敷地内に歩道状空地・公開空地がある場合の評価判断は、以下の順序で行います。

STEP 1:設置根拠の法令を確認
  ├ 建基法59条の2(総合設計制度)
  │ → 公開空地 →【1画地評価・評価減なし】
  │
  ├ 建基法86②(連坦建築物設計制度)
  │ → STEP 2へ
  │
  └ 都計法29条(開発許可・行政指導)
    → 歩道状空地 → STEP 3へ

STEP 2(連坦建築物設計制度の場合):緩和内容を確認
  ├ 容積率割増あり → 公開空地に近い → 【1画地評価】方向
  └ 斜線制限の緩和のみ → STEP 3へ(財基通24類推を検討)

STEP 3(都計法・連坦の一部):歩道状空地3要件の充足確認
  ├ ①行政指導による整備 ②インターロッキング舗装 ③一般公衆の通行
  ├ 3要件充足 → 【財基通24(私道評価)を適用】
  └ 未充足 → 【1画地評価】

5. 実務上の落とし穴と対策

落とし穴① 看板の名称だけで判断してしまう

現地に「歩道状空地」と記載された看板があっても、それが連坦建築物設計制度によるものか、都計法によるものかで、評価方法が異なります。名称だけを鵜呑みにした判断は危険です。

対策: 建築確認書類・特定行政庁の許可書を入手し、根拠法令を確認する。


落とし穴② 区分地上権・地役権の見落とし

分譲マンションの評価では、建物登記簿だけを入手して、土地登記簿を確認しないケースが散見されます。

区分地上権や地役権の設定登記は土地登記簿の乙区に記録されています。地下に設備が設置されている場合の区分地上権は、現地調査では発見できません。

対策: 分譲マンションの評価では必ず土地登記簿(乙区)を取得・確認する。


落とし穴③ 連坦建築物設計制度のグレーゾーンを見過ごす

国税庁が公式見解を示していないため、評価の根拠が曖昧になりがちです。税務調査で指摘された場合に、説明責任を果たせないリスクがあります。

対策: 書面添付制度を活用し、評価の根拠・判断プロセスを書面に明示する。


6. 確認書類チェックリスト

分譲マンションの相続税評価にあたり、以下の書類を必ず確認しましょう。

  • [ ] 土地登記簿(甲区・乙区) → 区分地上権・地役権の有無
  • [ ] 建物登記簿 → 専有部分・敷地権の確認
  • [ ] 建築確認済証・検査済証 → 設置根拠の法令確認
  • [ ] 特定行政庁の許可書(総合設計・連坦建築物設計) → 緩和内容の確認
  • [ ] 開発許可書・行政指導文書 → 歩道状空地の設置条件確認
  • [ ] 管理規約・敷地の管理図 → 公開空地・歩道状空地の範囲確認
  • [ ] 固定資産税の課税状況 → 課税対象となっているか

税務調査で否認されやすいケース

よくある否認パターン

#誤りの内容正しい判断
現地看板の「歩道状空地」という名称だけで財基通24を適用設置根拠の法令(建基法86②か都計法か)を必ず確認
連坦建築物設計制度(建基法86②)を都計法の開発許可と混同建築確認書類・許可書で根拠法令を確認
容積率緩和があるにもかかわらず評価単位を分けて減額申告容積率緩和ありの場合は原則1画地評価

否認された場合のリスク

【否認時のコスト試算イメージ】

 評価差額(例:360㎡ × 路線価50万円 = 1億8,000万円)
    ↓
 相続税の増額分 × 税率(最大55%)
    ↓
 過少申告加算税 10〜15%
    ↓
 延滞税 年8.7%(令和6年)
    ↓
 → 合計で評価差額の60〜70%超の負担となるケースも

⚠️ 相続税の場合、評価差額そのものよりも加算税・延滞税を含めた総負担額が問題になります。グレーゾーンの案件こそ、事前に根拠を整理した上で申告することが不可欠です。


具体例

ケース:名称は「歩道状空地」でも連坦建築物設計制度による場合

前提条件

項目内容
空地の規模幅4m × 延長90m(360㎡)
舗装インターロッキング舗装あり
通行状況一般公衆が自由に通行可
建築確認の根拠連坦建築物設計制度(建基法86条2項)
容積率の緩和あり

判断プロセス

STEP1:現地看板・名称の確認
  「歩道状空地」と表示
   → 名称だけでは判断不可

STEP2:建築確認書類で設置根拠を確認
  建基法86条2項(連坦建築物設計制度)
   → 都計法(開発許可)ではない

STEP3:容積率等の緩和の有無を確認
  容積率割増の恩恵あり
   → 公開空地(総合設計制度)に近い性格

STEP4:評価方針の決定
  財基通24-6(私道評価)の適用は困難
   → 歩道状空地部分も含めて1画地評価

結論

名称は「歩道状空地」でも、連坦建築物設計制度に基づき容積率緩和を伴う場合は、公開空地と同様に1画地評価とする余地が高い。インターロッキング舗装・一般通行可という外観上の特徴があっても、設置根拠と容積率緩和の有無が評価方法を左右する。

⚠️ 実務上の対応:国税庁の公式見解がないグレーゾーンであるため、上記の判断根拠(建築確認書類・容積率緩和の事実)を書面添付に明記し、税務調査への備えを万全にすることが重要です。


まとめ

空地の種類根拠法令評価方法国税庁の公式見解
公開空地建基法59条の21画地評価(評価減なし)あり(明確)
歩道状空地都計法・行政指導財基通24(私道評価)あり(明確)
連坦建築物設計制度の空地建基法86②個別判断(グレー)未公表

分譲マンションの敷地内に公開空地・歩道状空地がある場合は、名称にとらわれず、設置根拠の法令と容積率等の緩和の有無を必ず確認することが正確な評価の第一歩です。

特に連坦建築物設計制度に基づく空地は、国税庁の公式見解がないグレーゾーンです。評価の根拠を書面で明示し、税務調査に備えた対応が求められます。


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