【税理士解説】経営力向上計画A類型と先端設備等導入計画の違い|先端設備等導入計画で固定資産税1/4(最大5年)の要件まとめ

【見落とし注意】先端設備等導入計画で固定資産税が最大5年間1/4に|経営力向上計画A類型との違いを税理士が解説
目次

経営力向上計画A類型で即時償却(または税額控除)、先端設備等導入計画で固定資産税が賃上げ率に応じて最大5年間1/4まで軽減」

設備投資をされた中小企業の経営者の方から「経営力向上計画で即時償却ができると聞いたので、販売店に証明書をもらいました」というお話をよくいただきます。

確かに、経営力向上計画(A類型)による即時償却は設備投資の節税策として非常に有名です。しかし、もう一つの強力な制度である「先端設備等導入計画」による固定資産税の軽減は、意外と見落とされがちです。

経営力向上計画(A類型)→ 即時償却で法人税を節税

先端設備等導入計画固定資産税が3年間1/2、最大5年間1/4に軽減

この2つは併用可能です。両方使えば、法人税+固定資産税のダブルで節税効果が得られます。

ところが、この2つの制度は手続きの流れがまったく異なります。経営力向上計画A類型のつもりで動いていると、先端設備等導入計画のほうは手遅れになってしまうことがあるのです。

本記事では、この2つの制度の手続きの違いを詳しく解説し、両方の恩恵を確実に受けるためのポイントをお伝えします。設備の取得前に認定を受けることは非常に重要です。

1. まずは結論:2つの制度の決定的な違い「経営力向上計画=法人税」「先端設備等導入計画=固定資産税」

経営力向上計画(A類型)
中小企業者が対象
先端設備等導入計画
経営強化法による中小企業者が対象
節税の対象法人税(即時償却 or 税額控除)固定資産税(償却資産)
軽減内容取得価額の全額を即時償却
又は10%等税額控除
3年間1/2 又は 5年間1/4に軽減
工業会証明書必要不要(ただし生産性向上の確認は必要)
認定支援機関の確認書不要必要(2通)
賃上げ方針の表明不要必要(従業員代表の署名も)
設備取得後の申請60日以内ならOK不可(取得前に認定必須)
申請先主務大臣(業種ごと)設備所在地の市区町村
認定期間の目安30~45日程度約20営業日

最大の違いは「設備取得後に申請できるかどうか」です。

経営力向上計画A類型は、設備を買ってしまった後でも60日以内なら申請が間に合います。一方、先端設備等導入計画は設備を取得する前に必ず認定を受けなければなりません。取得後に「あの制度も使いたかった」と気づいても手遅れです。原則は設備の取得前に経営力向上計画を申請して認定を受けます。

経営強化法に規定する中小企業者とは

以下のいずれかに該当する会社・個人事業主が対象です。

業種資本金(または出資金)従業員数
製造業・建設業・運輸業・その他3億円以下または 300人以下
卸売業1億円以下または 100人以下
サービス業5,000万円以下または 100人以下
小売業5,000万円以下または 50人以下

個人事業主は、業種に関係なく対象になります(従業員要件なし)。

【政令による範囲の拡大】 ※中小企業等経営強化法施行令第1条

中小企業基本法の定義より要件が緩和され、次の業種はより多くの企業が対象になります。

業種資本金(または出資金)従業員数
ゴム製品製造業 ※3億円以下または 900人以下
ソフトウェア業・情報処理サービス業3億円以下または 300人以下
旅館業5,000万円以下または 200人以下

※ 自動車・航空機用タイヤ・チューブ製造業および工業用ベルト製造業を除く

💡 ポイント ゴム製品製造業・ソフトウェア業等・旅館業は、通常のサービス業(100人以下)より従業員数の上限が大幅に引き上げられています。該当業種の方は見落とさないようご注意ください。

2. 経営力向上計画(A類型)の手続き ― 販売店がやってくれる部分が大きい

A類型の手続きが比較的簡単な理由は、設備メーカーの工業会が発行する「生産性向上要件証明書」があれば認定支援機関の確認が不要だからです。

A類型 2つのパターン

手続きの流れ

1工業会証明書の取得

販売店やメーカーに依頼すれば、設備メーカーの所属工業会から「生産性向上要件証明書」を取得してくれます。つまり、販売店任せでOKの部分です。

2経営力向上計画の策定・申請

工業会証明書を添えて、業種に対応する主務大臣(建設業なら国土交通大臣など)へ認定申請します。税理士が計画書を作成するケースが一般的です。

3認定書の受領 → 設備取得 → 確定申告で即時償却を適用

認定後に設備を取得し、確定申告時に即時償却(又は税額控除)を適用します。

A類型のポイント:設備を先に取得してしまった場合でも、取得日から60日以内に申請し、かつ取得した事業年度内に認定を受ければ適用可能です。この「後出し」が効くのがA類型の大きなメリットです。取得後【経営力向上計画】を60日以内に申請(到達)は必須の条件です。【工業会の証明】から取得が60日以内という条件及び事業年度末までに経営力向上計画の認定を受けられるようにします。

3. 先端設備等導入計画の手続き ― 事前準備が命

先端設備等導入計画の手続きは、A類型とはまったく異なります。顧問の先生(税理士等の認定支援機関)との事前相談が不可欠で、複数の書類を揃えてから市区町村に申請する必要があります。

最先端導入 タイムライン

手続きの流れ

1先端設備等導入計画の策定

設備の導入によって労働生産性が年平均3%以上向上する見込みであることを盛り込んだ計画を策定します。

2認定経営革新等支援機関から確認書を2通取得

ここがA類型との最大の違いです。顧問の税理士や商工会議所等の認定支援機関に依頼して、以下の2通の確認書を発行してもらう必要があります。

 (a)先端設備等導入計画に関する確認書
  → 計画の内容が適切であること、労働生産性が年平均3%以上向上する見込みであることの確認

 (b)投資計画に関する確認書
  → 年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれることの確認
  → 投資利益率の計算根拠資料(決算書・見積書・売上増加の積算資料等)の提出が必要

これらの確認書の発行には2週間~1ヶ月程度かかることがあります。

3賃上げ方針の表明

固定資産税の特例を受けるためには、従業員に対して賃上げ方針を表明し、その証明書面に従業員代表の署名を取得する必要があります。

賃上げの表明内容によって軽減の度合いが変わります。

賃上げ方針固定資産税の軽減
雇用者給与等支給額を1.5%以上増加3年間、課税標準を1/2に軽減
雇用者給与等支給額を3.0%以上増加5年間、課税標準を1/4に軽減

4設備所在地の市区町村へ認定申請

上記の書類一式を揃えて、設備を設置する市区町村(本店所在地ではありません)に申請します。認定までの処理期間は約20営業日です。

なお、市区町村が「導入促進基本計画」を策定していることが前提となりますので、事前に確認が必要です。

5認定書を受領してから設備を取得

ここが最も重要なポイントです。必ず認定書が届いてから設備を取得(引渡しを受ける)必要があります。

6翌年1月に償却資産の税務申告

設備取得後、翌年1月の償却資産申告時に、認定書の写し等を添付して固定資産税の特例を申請します。

4. なぜ先端設備等導入計画は見落とされるのか

設備投資をする際、販売店から「この設備は経営力強化税制の対象になりますよ。工業会の証明書を取りましょう」と提案されることは珍しくありません。販売店としても、税制優遇が使えることは設備を販売する際のセールスポイントになるからです。

しかし、先端設備等導入計画のほうは事情が違います。

経営力向上計画A類型では、工業会証明書はメーカー・販売店が手配してくれます。経営者は「販売店にお任せ」で進められる部分が大きいのです。

一方、先端設備等導入計画では、認定支援機関の確認書や賃上げ方針の表明など、経営者自身と顧問の先生が主体的に動かなければならない手続きばかりです。販売店が代わりにやってくれるものではありません。

そのため、「工業会証明書をもらったから税制優遇はバッチリ」と思い込んで設備を購入してしまい、後から先端設備等導入計画の存在に気づいても、設備取得後では申請できないという事態が起きてしまいます。

つまり、設備投資の計画段階で顧問の税理士に相談することが極めて重要です。

経営力向上計画(即時償却)だけでなく、先端設備等導入計画(固定資産税軽減)も併用できないか、設備を発注する前の段階で検討しておくことで、節税効果を最大化できます。

5. 具体的な節税効果のシミュレーション

例えば、取得価額2,000万円の機械装置を購入した場合の節税効果を比較してみましょう。

経営力向上計画(即時償却)だけの場合

取得価額2,000万円を初年度に全額償却 → 法人税率を約34%とすると、約680万円の法人税の繰延効果(※即時償却は課税の繰延であり、トータルの償却額は変わりません)

先端設備等導入計画も併用した場合(1.5%賃上げ表明)

上記に加えて、固定資産税の課税標準が3年間1/2に軽減されます。

 固定資産税の通常額:2,000万円 × 1.4% = 約28万円/年

 軽減後:約14万円/年 → 3年間で約42万円の節税

先端設備等導入計画も併用した場合(3.0%賃上げ表明)

固定資産税の課税標準が5年間1/4に軽減されます。

 軽減後:約7万円/年 → 5年間で約105万円の節税

賃上げの方針を実施すれば、固定資産税が大きく減税されます。特に3.0%以上の賃上げ表明で5年間1/4軽減を受けられれば、設備投資の負担を大幅に軽減できます。前向きな賃上げと設備投資を組み合わせることで、会社の成長と節税の両方を実現できる制度です。

6. 設備投資を検討されている経営者の方へ

設備投資の際には、以下のタイミングで顧問の税理士にご相談ください。

設備の発注・契約前に相談するのがベストです。

 → 先端設備等導入計画の申請準備には2~3ヶ月かかります

 → 設備の引渡し日から逆算してスケジュールを組む必要があります

 → 認定支援機関の確認書取得、賃上げ方針の表明、市区町村への申請、認定書の受領、これらすべてが引渡し日より前に完了していなければなりません

経営力向上計画(A類型)だけなら、最悪、設備購入後60日以内に動き出せば間に合います。しかし、先端設備等導入計画は、そうはいきません。事前の計画が不可欠です。

「設備を買ってから考えよう」ではなく、「設備を買う前に相談しよう」――この意識の違いが、年間数十万円の固定資産税の差となって現れます。

NGパターン:こうなると税務事故になります。

設備投資のご相談を受けていて、特に注意が必要だと感じるパターンを挙げておきます。

  • 工業会証明書をもらっただけで安心して発注・購入してしまう
    → 経営力向上計画A類型の即時償却は間に合っても、先端設備等導入計画は「取得前認定」が必須のため、あとから固定資産税の特例が使えないケースがあります。
  • 設備の引渡し日から逆算せずに、ギリギリで先端設備等導入計画の準備を始める
    → 認定支援機関の確認書2通の取得、賃上げ方針の表明、市区町村での審査に時間がかかり、引渡しまでに認定が間に合わないと特例は適用できません。
  • 経営力向上計画の「60日ルール」を誤解している
    → 「取得後60日以内に申請書が提出されていればよい」と誤解しがちですが、実務上は“行政庁への到達日(受理日)”ベースでカウントされます。ポストに投函した日ではなく、到達日・受理日で60日以内かどうかを確認する必要があります。
  • 固定資産税の申告(償却資産申告)で特例の記載を忘れる
    → 先端設備等導入計画の認定を受けていても、翌年1月の償却資産申告で「特例対象資産」であることの記載・添付が漏れていると、軽減が適用されません。

いずれも、「設備を買う前に顧問税理士に一言相談していれば防げた」事例ばかりです。発注・契約前の段階で、スケジュールと手続きの流れを一緒に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

チェックポイント経営力向上計画(A類型)先端設備等導入計画
販売店任せで進められるか○ 工業会証明書は販売店が手配× 経営者と顧問税理士が主体的に動く
設備購入後に申請できるか○ 60日以内なら可能× 取得前に認定が必須
認定支援機関の確認書不要2通必要
賃上げ方針の表明不要必要(署名あり)
節税効果法人税の即時償却(課税繰延)又は10%等税額控除固定資産税が最大5年間1/4
併用併用可能 → ダブルの節税効果

設備投資は経営にとって大きな判断です。せっかくの投資ですから、使える税制優遇はすべて活用したいものです。設備投資をお考えの際は、発注前の段階で顧問の税理士にご相談ください。

私見ですが経営力強化設備の即時償却はインパクトが大きいですが10%税額控除を活用してP/L対策するほうが良いように感じています。翌期への繰越ができますのでうまく活用できるようにしてください。

設備の取得時期にについて

原則は設備の取得前に経営力向上計画を申請して認定を受けます。

例外 先に設備を取得した場合には60日以内に経営力向上計画を60日以内に申請(到達)が絶対要件です。

事業年度末までに
①原則の場合は事業に供与していることと
②設備を先に取得している場合には経営力控除計画 の認定が事業年度末までに受けておく必要があります。
   

①経営力向上計画(A類型)設備取得後の申請は取得後60日です。工業会の証明書+設備の取得が先に行われた場合は60日以内に経営力向上計画に申請書が到達しないと税務事故になります。
②経営力向上計画の認定は事業年度終了までに受ける必要があります。

経営力強化設備と所得時期


   

税理士法人松野茂税理士事務所

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