~配当還元方式は適用できるか~
同族株主以外の株主で配当還元法が使えると思っていましたが相互持合いにより議決権割合が変化して同族株主に該当してしまい。配当還元法が使えないことがあります。
結論:
本件では配当還元方式は使えません。
理由は、相互保有株式により議決権総数が減少し、
相続人の議決権割合が30%超となるため、
同族株主に該当するからです。
※実務では「25%しか持っていないから配当還元でよい」と誤判断するケースが多く、
税務調査で否認されやすい論点です。
相互持株前に配当還元法で評価したい方は、
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はじめに
非上場株式の相続税評価において、配当還元方式を適用できるかどうかは、株主が「同族株主以外の株主等」に該当するかどうかによって決まります。その判定の核心は議決権割合の計算にありますが、会社間で株式を相互に保有している場合(「相互保有株式」)には、通常とは異なる計算方法が適用されます。
Q(質問) 議決権割合が25%なので同族株主以外の株主に該当して配当還元法が使えますか?
A社の株式の保有割合は下図のとおりです。乙に相続が開始し、乙が保有していたA社の全株式を乙の長男が相続することになりました。乙の長男は、相続により取得したA社の株式を配当還元方式により評価することができるでしょうか。
(注)甲、乙および丙の間に親族関係はありません。また、A社の株式1株につき1個の議決権があります。
株式保有状況
| 株主 | 保有株数 | 保有割合 | 備考 |
| 甲 | 40株 | 40% | 個人 |
| 乙(被相続人) | 25株 | 25% | 個人 |
| 丙 | 5株 | 5% | 個人 |
| B社 | 30株 | 30% | 法人(相互保有) |
| 合 計 | 100株 | 100% | ― |
株式保有関係図

A(回答)乙の相続ではA社の議決権のうちB社が相互保有している部分は議決権割合から除きます
100 → B社30消滅 → 70 議決権割合 25 ÷ 70 = 約35.7% > 30% → 乙は同族株主に該当
乙が有していたA社の株式全株を相続した長男は、相続税の申告に際し、A社の株式を原則的評価方法(類似業種比準方式または純資産価額方式・併用方式)により評価することとなります。配当還元方式は適用できません。
参考注意 甲が35%である場合は 35/0.7=50%となり 甲及び乙ともに同族株主に該当しますが、設例を変えて 甲が36%のケースでは 35%/0.7=51%となり 甲は50%超の同族株主になりますので 乙の議決権割合が35.7%となっても 乙は同族株主以外の株主となり乙の相続時の評価は配当還元法となります。
1 相互保有株式と議決権制限(会社法308条1項)
A社はB社の議決権の4分の1以上を保有しています。会社法第308条第1項は、「株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有する…関係にある株主」は、その株式会社の株主総会において議決権を有しないと規定しています。
これを本問に当てはめると、A社がB社の議決権の4分の1以上を保有しているため、B社はA社の株主総会において、その保有する30%の株についての議決権を行使することができません。
2 財産評価基本通達188-4の適用
財産評価基本通達188-4は、評価会社の株主のうちに会社法第308条第1項の規定により議決権を有しないこととされる会社がある場合、その会社が有する評価会社の議決権の数を「0」として計算した数をもって評価会社の議決権総数とすると規定しています。
本問では、B社が保有する30%の株分の議決権を議決権総数から除いて計算します。
3 議決権割合の計算
| 項 目 | 計 算 | 結 果 |
| A社の議決権総数(通常) | 100株 × 1議決権 | 100個 |
| B社保有分の控除(会社法308条・通達188-4) | ▲30株分の議決権 | ▲30個 |
| 調整後の議決権総数 | 100個 - 30個 | 70個 |
| 乙の長男の保有議決権数 | 25株 × 1議決権 | 25個 |
| 乙の長男の議決権割合 | 25個 ÷ 70個 | 約35.7% |
25 ÷ 70 = 約35.7% > 30% →乙は 同族株主に該当
図は株式数100株で説明しています。
4 評価方法の決定
乙の長男の議決権割合は約35.7%と30%以上となることから、乙の長男はA社の同族株主に該当します。したがって、取得したA社株式は原則的評価方法によって評価することになります。
根拠法令・通達
財産評価基本通達 188-4
評価会社の株主のうちに会社法第308条第1項の規定により評価会社の株式につき議決権を有しないこととされる会社があるときは、当該会社の有する評価会社の議決権の数は0として計算した議決権の数をもって評価会社の議決権総数となることに留意する。
会社法 第308条第1項
株主(株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式1株につき1個の議決権を有する。
会社法施行規則 第67条
法第308条第1項に規定する法務省令で定める株主は、株式会社(当該株式会社の子会社を含む。)が、当該株式会社の株主である会社等の議決権の総数の4分の1以上を有する場合における当該株主であるものとする。
まとめ:実務上のチェックポイント
- 評価会社(A社)の株主に法人株主がある場合、相互保有関係の有無を確認する
- A社がその法人株主(B社)の議決権の4分の1以上を保有していれば、B社はA社の議決権を行使できない(会社法308条1項)
- 財産評価基本通達188-4により、B社保有分の議決権を「0」として議決権総数を計算し直す
- 調整後の議決権総数で相続人の議決権割合を計算し、同族株主かどうかを再判定する
- 同族株主に該当すれば、表面上の保有割合が少数に見えても原則的評価方法が適用される
税理士法人松野茂税理士事務所から
非上場株式の相続税評価は、株式の保有構造・議決権の実態を丁寧に把握することが重要です。相互保有株式がある場合には、会社法上の議決権制限を通じて議決権総数が変わり、評価方法の選択そのものに影響することがあります。
「少数株主だから配当還元方式でいいだろう」と安易に判断することなく、株主名簿や株式異動の経緯を慎重に確認することが申告ミスの防止につながります。
相互持株が絡む株式評価は、
「議決権割合の計算ミス」で評価方法を誤るケースが非常に多い分野です。
当事務所では、実際の株主構成をもとに
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