空き家放置のリスクとは?固定資産税6倍・近隣トラブル・管理責任【第3回】

空き家放置のリスク(固定資産税・近隣トラブル・管理責任)【第3回】

「親が亡くなって実家が空き家になったが、どうするか決められていない」「誰も住んでいないが、取り壊すのももったいない」——こうした理由で空き家を放置しているケースは、全国各地で急増しています。

しかし、空き家の放置は税負担の増加・近隣への損害賠償・行政からの強制措置という3つのリスクを同時に抱える行為です。「何もしていないだけ」のつもりでも、法的・経済的に大きな問題に発展する可能性があります。今回は空き家放置の具体的なリスクと、今すぐ取れる選択肢について解説します。

空き家の放置や相続不動産の対応でお悩みの方は、
尼崎の税理士法人松野茂税理士事務所までご相談ください。


目次

空き家が増えている背景

過去最多を更新し続ける空き家数

総務省「住宅・土地統計調査」(令和5年)によると、全国の空き家数は約900万戸に達し、住宅全体に占める空き家率は約13.8%となっています。これは過去最高水準であり、今後も増加が続くと予測されています。

空き家が生まれる主な理由

空き家が増える背景には、次のような構造的な要因があります。

相続による発生が最も多く、親が亡くなった後に子世代が実家を引き継いでも、すでに別の住居を持っているため誰も住まない状態になります。遺産分割が決まらないまま「とりあえず保有」が続くケースも多く見られます。

転勤・転居による長期不在も一因です。売却・賃貸に出すかどうか決まらないうちに、そのまま年月が経過してしまうパターンです。

解体費用の問題も大きな障壁です。木造一戸建ての解体費用は一般的に100万〜300万円程度かかることが多く、「費用をかけてまで取り壊す決断ができない」という心理的ハードルが放置の一因になっています。

しかし、放置することで発生するコストとリスクは、この解体費用を大きく上回ることがあります。


空き家を放置すると何が起きるか

空き家を放置した場合に生じるリスクは、大きく「税金」「建物の劣化」「周辺への影響」「行政からの介入」の4つに整理できます。

税金が跳ね上がる(詳しくは後述)

住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が大幅に軽減されています。しかし空き家の状態によっては、この特例が外れ、税額が最大6倍になることがあります。

建物が急速に劣化する

人が住まなくなった建物は、換気・採光・掃除がなくなり急速に傷みます。特に木造建築は、数年で屋根・外壁の腐朽、雨漏り、シロアリ被害などが進行します。一度傷んだ建物の修繕費は高額になり、最終的に解体せざるを得ない状態になると、費用はさらに膨らみます。

周辺に迷惑をかけ、損害賠償リスクが生じる

放置された建物は、雑草の繁茂・害虫の発生・ゴミの不法投棄の場所になるだけでなく、外壁の剥落・屋根材の飛散・フェンスの倒壊などが起きれば、隣地や通行人への損害をもたらします。

行政から指導・勧告・命令・代執行という段階的な介入を受ける

空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)に基づき、市町村は空き家の所有者に対して指導・勧告・命令・代執行(行政が強制的に建物を撤去し、費用を所有者に請求)を行う権限を持っています。


管理不全空家・特定空家とは何か

空家法では、空き家をその状態によって段階的に区分し、それぞれに対して異なる措置が取られます。令和5年(2023年)の法改正により、新たに「管理不全空家」という区分が加わりました。

「管理不全空家」(令和5年改正で新設)

そのまま放置すれば特定空家になるおそれがあると市町村が認める状態の空き家です。具体的には、雑草・樹木が繁茂している、窓ガラスが割れている、ゴミが散乱している、外壁が傷んでいるなどの状態が該当します。

管理不全空家に認定されると、市町村から指導が行われます。指導に従わず改善されない場合は勧告に進み、勧告を受けた時点で住宅用地の特例が外れます(後述)。

「特定空家」

管理不全空家よりもさらに深刻な状態です。次のいずれかに該当すると認定されます。

  • 倒壊等の危険がある状態(著しく保安上危険)
  • 著しく衛生上有害となるおそれがある状態
  • 著しく景観を損なっている状態
  • 周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態

特定空家に認定されると、市町村は指導・勧告・命令・代執行という段階的な手続きを経て、最終的には所有者に代わって強制的に建物を撤去し、その費用を所有者に請求することができます。

「空き家」ではなくても対象になる

重要なのは、建物が「廃墟」のような状態でなくても、管理不全空家・特定空家として認定されるリスクがある点です。外観上は普通の家に見えていても、内部の劣化・雑草・悪臭・害虫などの問題があれば対象となり得ます。定期的な管理(草刈り・換気・清掃)が行われているかどうかが重要な判断基準となります。


住宅用地特例が外れると税金はどうなるか

住宅用地特例の軽減効果

第1回の記事でも触れましたが、住宅が建っている土地(住宅用地)には、固定資産税の課税標準を大幅に軽減する特例が適用されています。

区分課税標準額
小規模住宅用地(200㎡以下の部分)評価額 × 1/6
一般住宅用地(200㎡超の部分)評価額 × 1/3

この特例があるからこそ、多くの住宅地では固定資産税が比較的低く抑えられています。

特例が外れる2つのケース

住宅用地特例が外れるケースは、大きく2つあります。

ケース①:建物を取り壊して更地にした場合 住宅が建っていない土地(更地)には住宅用地特例は適用されません。建物を解体すると翌年度から課税標準が評価額そのものになります。

ケース②:管理不全空家・特定空家として勧告を受けた場合 令和5年の空家法改正により、管理不全空家の所有者が市町村から勧告を受けた場合、その土地についても住宅用地特例の適用が除外されます。建物が建っていても、勧告を受けた翌年度から課税標準が更地と同水準になります。

具体的にどれくらい税額が増えるか

たとえば、土地の固定資産税評価額が1,500万円、面積が200㎡以下の小規模住宅用地の場合を例に見てみましょう。

特例適用中(通常の住宅用地) 課税標準額:1,500万円 × 1/6 = 250万円 固定資産税:250万円 × 1.4% = 3万5,000円

特例が外れた後(更地扱い) 課税標準額:1,500万円 固定資産税:1,500万円 × 1.4% = 21万円

税額の差は年間17万5,000円。これが毎年続きます。10年で175万円の差です。解体を躊躇していた費用を、税金の増加分だけで上回る可能性があります。

なお、都市計画税(市街化区域内の場合)も同様に特例が外れるため、実際の負担増はさらに大きくなります。

空き家の放置は、想定以上の税負担やトラブルにつながる可能性があります。

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近隣トラブルと損害賠償リスク

空き家の放置は、所有者が知らないうちに周辺住民との深刻なトラブルに発展することがあります。

よくある近隣トラブルの例

建物・工作物の倒壊・落下:老朽化した外壁・瓦・フェンス・ブロック塀などが台風や地震をきっかけに崩壊し、隣地の建物や通行人に損害を与えるケース。

樹木の越境・落ち葉:庭木が手入れされないまま成長し、枝が隣地に越境したり、大量の落ち葉が隣家の雨樋を詰まらせるケース。

害虫・害獣の発生:換気されない建物内にネズミ・ゴキブリ・ハチなどが巣を作り、隣家にも被害が及ぶケース。

雑草・悪臭:敷地内の雑草が繁茂し、種が飛散して隣地の庭を荒らしたり、腐敗物の臭いが漂うケース。

不審者の侵入・犯罪の温床化:無施錠の空き家に不審者が侵入し、隣家の住民が不安を感じるケース。放火・盗難の被害が隣接住民に及ぶことも。

損害賠償責任が生じる根拠

民法上、土地の工作物(建物・フェンス・擁壁など)の設置または保存の欠陥によって他人に損害が生じた場合、占有者(一次的責任)または所有者(二次的責任)が損害賠償責任を負います(民法717条)。

特に所有者は、占有者が免責された場合に無過失責任(注意を尽くしていたかどうかにかかわらず責任を負う)を問われます。「住んでいなかったから管理できなかった」という言い訳は通じません。

建物の外壁が剥落して通行人が怪我をした、台風で屋根材が飛んで隣の車に当たったなど、空き家絡みの損害賠償事案は実際に発生しています。

火災保険の注意点

一般の住宅向け火災保険の中には、長期間居住していない空き家は補償対象外となるものがあります。空き家になった時点で保険会社に状況を報告し、補償が継続されているかを確認することも重要な管理の一つです。


行政からの指導・勧告の流れ

空家法に基づく行政の介入は、段階を踏んで進みます。ある日突然「取り壊してください」となるわけではありませんが、各段階での対応が遅れると状況が深刻になります。

第1段階:情報収集・調査

市町村が空き家の存在を把握し、立入調査(所有者の同意または一定の手続きのもとで実施可能)を行います。固定資産税の課税情報や登記情報も活用されます。

第2段階:管理不全空家または特定空家への認定

調査の結果、一定の基準に該当すると判断された場合、管理不全空家または特定空家として認定されます。

第3段階:指導

認定を受けると、市町村から所有者に対して改善を求める指導(書面)が行われます。ここで対応すれば、以降の手続きには進みません。

第4段階:勧告

指導を受けても改善がない場合、勧告に移行します。管理不全空家の場合、この勧告を受けた時点で住宅用地特例が外れます。特定空家の場合も同様です。

第5段階:命令(特定空家のみ)

特定空家について勧告後も改善がない場合、市町村は修繕・除却(解体)等の命令を発することができます。命令に従わない場合は50万円以下の過料が科される可能性があります。

第6段階:代執行・略式代執行

命令にも従わない場合、市町村が所有者に代わって強制的に建物を除却し、その費用を所有者に請求します(代執行)。また、所有者が不明な場合は略式代執行として所有者の同意なく撤去が行われます。

代執行費用は数百万円に上ることもあり、市町村はこれを税金と同様の手続きで強制徴収することができます。


空き家を放置しないための選択肢

空き家の活用・処分方法は複数あります。それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、専門家と相談しながら最適な方法を選ぶことが重要です。

選択肢① 売却する

最もシンプルな解決策です。不動産会社に依頼し、売却することで維持管理の負担から解放されます。ただし、老朽化が進んでいる場合や立地条件によっては売却が難しいケースもあります。

空き家の3,000万円特別控除(空き家特例):相続した実家を一定の要件のもとで売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります(令和9年12月31日まで)。この特例の適用要件は細かく、耐震改修または取り壊しが必要なケースもあるため、売却前に税理士への相談が不可欠です。

選択肢② 賃貸に出す

リフォームを行い、賃貸物件として活用する方法です。家賃収入を得ながら建物を維持でき、住宅用地特例も継続して適用されます。ただし、リフォーム費用・入居者募集・管理の手間が発生します。

選択肢③ 空き家バンクに登録する

市区町村が運営する「空き家バンク」に登録し、移住希望者や利活用希望者に情報を提供する制度です。売却・賃貸の両方に対応しており、地方の空き家では有効な選択肢です。

選択肢④ 解体して土地を活用する(または売却する)

老朽化が進み、リフォームや売却が難しい場合は、解体して更地にしたうえで土地を売却・活用する方法があります。ただし、先述のとおり更地にすると住宅用地特例が外れ、固定資産税が増加します。解体のタイミングと税負担の関係は事前に確認が必要です。

自治体によっては、老朽建物の解体に対して解体費用の補助金を交付している場合があります。各市区町村のホームページで確認してみましょう。

選択肢⑤ 管理委託する(当面保有する場合)

すぐに売却・賃貸の判断ができない場合は、不動産管理会社や空き家管理サービスに委託し、定期的な見回り・清掃・換気を行ってもらうことが最低限の対策です。管理不全空家への認定を回避するためには、建物が「管理されている」状態を維持することが不可欠です。


まとめ

空き家の放置は「何もしていないだけ」ではなく、固定資産税の大幅増加・近隣への損害賠償・行政からの強制措置という具体的なリスクを積み重ねる行為です。

特に、令和5年の空家法改正により「管理不全空家」という新たな区分が設けられ、勧告を受けた段階で住宅用地特例が外れる仕組みが整備されました。かつてに比べ、放置に対する行政の対処が格段に早く・強くなっています。

相続した空き家をどうするか迷っている方、すでに近隣からクレームを受けている方、固定資産税の通知書に見覚えのない物件が含まれている方は、早めに専門家への相談をお勧めします。売却・賃貸・解体・管理委託のいずれが最善かは、建物の状態・立地・税務上の取り扱いを総合的に判断する必要があります。

弊事務所では、空き家に関する税務(譲渡所得・相続税・固定資産税)のご相談を承っています。提携する不動産会社・司法書士との連携対応も可能ですので、まずはお気軽にご連絡ください。

尼崎市で空き家対策・相続不動産の整理をご検討の方は、
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本記事は、空家等対策の推進に関する特別措置法(令和5年改正)、地方税法および各市町村の公表情報をもとに解説しています。個別のご相談は税理士・司法書士等の専門家にお問い合わせください。

第1回(通知チェック)

第2回(登記義務化)

第3回(空き家)

第4回(共有)

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