加算税・延滞税とは?修正申告・期限後申告・重加算税まで税理士が解説【令和6年以後対応】

加算税・延滞税とは?修正申告・期限後申告・重加算税まで税理士が解説

加算税・延滞税は、修正申告や期限後申告をしたときに本税とは別に発生する税務上のペナルティです。

ただし、現在の制度では、単に「申告が遅れた」「税額が少なかった」というだけでは税率を判断できません。
調査通知前か、調査通知後か、更正や決定を予知した後か、高額な無申告か、過去に無申告加算税や重加算税があるかによって、税率が大きく変わります。

令和5年度改正により、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、無申告加算税を中心に加重措置が強化されています。
特に、高額無申告、繰り返し無申告、帳簿不提示・記載不十分がある場合には、重加算税に至らない場合であっても、重い加算税負担となる可能性があります。

従来、単なる無申告だけでは重加算税を課すには仮装・隠蔽の立証が必要でした。
しかし改正後は、重加算税に該当しない場合でも、無申告加算税そのものが重くなる場面があります。

もっとも、改正後の具体的な適用事例はまだ十分に蓄積されておらず、実務上の線引きは今後の税務調査、研修、裁決・裁判例等を踏まえて確認していく必要があります。

本記事では、加算税・延滞税・重加算税・地方税の加算金・印紙税の過怠税まで、実務で確認すべきポイントを税理士が整理します。

帳簿や資料がない場合、「税務署も分からないから大丈夫」と考える方がいます。しかし、税務上は逆です。帳簿や資料がないことは納税者に有利に働くのではなく、推計課税や加算税の加重、青色申告の取消しなど、不利な結果につながる可能性があります。

税理士としても、資料がない状態で根拠のない申告を行うことはできません。申告書は最終的に数字を合わせればよいものではなく、その数字を説明できる帳簿・資料・取引実態が必要です。


目次

第1章 加算税とは何か ~ペナルティの全体像~

【スタッフ】 そもそも加算税とはどういうものですか?

【松野先生】 加算税は、税法上の義務を正しく果たさなかった場合に課される、一種のペナルティです。本来納めるべき税額に一定の割合を乗じて計算します。大切なのは、延滞税とはまったく別の制度だということです。加算税は「申告の義務違反」に対するペナルティ、延滞税は「納付の遅れ」に対する利息的な性格と理解してください。

国税における加算税の種類

種類税率発生要件改正コメント
過少申告加算税10%(増差が期限内申告額または50万円超の部分は15%)修正申告・更正令和5年度改正により、帳簿の提示がない場合や売上記載が著しく不十分な場合には加重措置の対象となることがあります。
無申告加算税15%(50万円超は20%、300万円超は30%)期限後申告・決定
令和5年度改正で重要な見直しあり。①300万円超部分は30%に引上げ、②前年・前々年に調査による無申告加算税等があると+10%、③帳簿不提示等でも加重あり。
不納付加算税10%源泉所得税の納付遅延平成28年改正の短期累犯加重の対象外です。無申告加算税や重加算税とは取扱いが異なります。
重加算税(過少)35%仮装・隠蔽あり平成28年改正により、前5年以内に同一税目で無申告加算税または重加算税を課された場合は**+10%加重**されます。
重加算税(無申告)40%仮装・隠蔽あり(無申告ベース)平成28年改正により、前5年以内に同一税目で無申告加算税または重加算税を課された場合は**+10%加重**されます。
短期累犯加重(平成28年改正)無申告加算税・重加算税に+10%期限後申告等があった日前5年以内に、同じ税目で無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合
令和5年度改正による加重措置内容により加重高額無申告、繰り返し無申告、帳簿不提示・記載不十分等がある場合

※上記は原則的な税率です。実際の加算税は、調査通知前か、調査通知後か、更正・決定を予知した後かによって税率が変わります。特に無申告加算税は、令和5年度改正により、300万円超部分の税率が引き上げられ、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用されています。

【重要】短期累犯加重(平成28年改正)の対象に注意 過少申告加算税および源泉所得税に係る不納付加算税については、この短期累犯加重の適用はありません。適用があるのは無申告加算税・重加算税のみです。

※ 平成28年改正の短期累犯加重は、無申告加算税・重加算税が中心で、過少申告加算税および源泉所得税に係る不納付加算税には適用がありません。


※ 令和5年度改正では、無申告加算税を中心に、高額無申告・繰り返し無申告・帳簿不提示等への加重措置が強化されました。

地方税の場合は「加算金」と呼ぶ

【スタッフ】 地方税にも同じ制度があるのですか?

【松野先生】 あります。ただし、地方税では「加算税」ではなく「加算金」という名称になります。根拠法も国税通則法ではなく地方税法第20条の4の2です。税率の体系は国税とほぼ同じです。令和5年度改正による無申告・不納付の繰り返し加重も、地方税の加算金に同様に導入されています。

項目国税(加算税)地方税(加算金)
根拠法国税通則法地方税法第20条の4の2
名称~加算税~加算金
過少申告10%・15%10%・15%(同率)
無申告15%・20%・30%15%・20%・30%(同率)
重加算税・重加算金35%(無申告は40%)35%(無申告は40%)
短期累犯加重(無申告加算税・重加算税)あり(前5年以内・過少申告と不納付は対象外)同様(要税目確認)
令和5年度改正の加重措置あり(令和6年1月1日以後)同様に改正
最低額(通常)5,000円2,000円
重加算の最低額10,000円5,000円

第2章 申告納税方式と賦課課税方式の違い

【スタッフ】 加算税・加算金がかかる税とかからない税があると聞きました。どう違うのですか?

【松野先生】 それは課税方式の違いによるものです。税には大きく分けて「申告納税方式」と「賦課課税方式」の2種類があります。加算税(加算金)が課されるのは、原則として申告納税方式の税だけです。

課税方式しくみ加算税・加算金主な税目
申告納税方式納税者が自ら税額を計算・申告・納付課される所得税・法人税・消費税・法人住民税・法人事業税
賦課課税方式行政(国・地方)が税額を決定・通知課されない個人住民税・固定資産税・自動車税・国民健康保険料

個人の場合

税目課税方式加算税の有無
所得税申告納税方式あり(過少申告・無申告・重加算税)
消費税(個人事業主)申告納税方式あり
個人住民税(所得割)賦課課税方式(申告内容に基づき市が決定)なし(住民税独自の加算金なし)
個人住民税(均等割)賦課課税方式なし
固定資産税賦課課税方式なし
国民健康保険料賦課課税方式なし

法人の場合

税目課税方式加算税・加算金
法人税申告納税方式あり
消費税申告納税方式あり
法人住民税(法人税割)申告納税方式あり(加算金)
法人住民税(均等割)申告納税方式あり(不申告加算金)
法人事業税申告納税方式あり(加算金)
特別法人事業税申告納税方式あり(加算金)
固定資産税賦課課税方式なし

【重要ポイント】個人住民税に加算税がない理由 個人住民税は、納税者が直接申告するのではなく、所得税の確定申告の内容を市区町村が参照して税額を計算・通知する「賦課課税方式」をとっています。そのため、申告義務違反という概念が生じにくく、加算金は課されません。ただし、所得税で重加算税が課された場合は、住民税にも影響が及ぶことがあります。


第3章 延滞税のしくみ ~利息的性格と特例税率の理由~

【スタッフ】 延滞税はどのような場合に発生しますか?

【松野先生】 延滞税は、税金を納期限までに納付しなかった場合に、本税に対して日割りで発生する利息的な附帯税です。加算税のような「申告義務違反に対するペナルティ」とは性格が異なります。修正申告をした場合でも、当初の法定納期限から延滞税が起算される点が実務上の重要なポイントです。

延滞税の計算式

延滞税 = 本税額(1万円未満切捨て) × 延滞税率 × 延滞日数 ÷ 365

  • 納期限翌日から2ヶ月以内 → 年2.4%(令和7年)・年2.8%(令和8年)
  • 納期限翌日から2ヶ月超 → 年8.7%(令和7年)・年9.1%(令和8年)
  • 端数処理:延滞税額は100円未満切捨て、1,000円未満は課税なし

※ 延滞税率は年によって変わります。最新の税率は国税庁ホームページでご確認ください。

なぜ計算式の分母は「365」なのか

【スタッフ】 延滞税の計算式で「÷365」としているのはなぜですか?うるう年でも365で計算するのですか?

【松野先生】 良い質問です。延滞税は「年率」で規定されていますが、実際には日割り計算をします。その際の分母は、うるう年(366日)の年であっても常に「365」を使います。これは国税通則法の計算ルールによるもので、暦日の実態よりも計算の統一性を優先しているからです。

原則税率と特例税率 ~なぜ2種類あるのか~

【スタッフ】 延滞税には「原則税率」と「特例税率」があると聞きました。なぜ2種類あるのですか?

【松野先生】 もともと延滞税の税率は国税通則法に定められた固定の税率(原則税率)だけでした。2ヶ月以内は年7.3%、2ヶ月超は年14.6%というものです。しかし、バブル崩壊後の低金利時代には、銀行の貸出金利が2〜3%台まで下がったのに、延滞税だけ年7.3%〜14.6%のままというのは高すぎるという批判が出てきました。そこで租税特別措置法第94条により「特例税率」が設けられ、実勢金利に連動した低い税率が適用されるようになりました。

種類2ヶ月以内2ヶ月超根拠
原則税率(国税通則法第60条)年7.3%年14.6%固定税率
特例税率(措法第94条)特例基準割合+1%特例基準割合+7.3%毎年変動
令和7年の特例税率年2.4%年8.7%特例基準割合1.4%
令和8年の特例税率年2.8%年9.1%特例基準割合1.8%

特例基準割合とは 特例基準割合 = 国内銀行の新規短期貸出約定平均金利の平均(前々年9月〜前年8月)+ 0.5% 毎年12月中旬ごろ官報告示、翌年1月1日から適用。

なぜ2ヶ月を境に税率が上がるのか

【スタッフ】 2ヶ月以内と2ヶ月超で税率が大きく違うのはなぜですか?

【松野先生】 2ヶ月以内の低い税率は、申告はしたが納付が少し遅れてしまったケースへの配慮ともいえます。一方、2ヶ月を超えると税率が大きく上がります。長期間放置するほどコストが増えるため、早期納付を促すインセンティブを設けているわけです。

延滞税の計算期間の特例(国税通則法第61条)

【スタッフ】 延滞税は納期限の翌日から納付日まで計算すると聞きましたが、計算期間に特例はありますか?

【松野先生】 あります。国税通則法第61条に「延滞税の計算期間の特例」が定められています。この特例の趣旨は、税務調査の連絡が早く来た人と遅く来た人との不公平感をなくすためです。調査の連絡が早い人は早く修正申告・更正が終わるので延滞税も少なくて済みます。一方、同じ内容の誤りでも調査が遅い人は延滞税が何年分も積み重なってしまう。その不公平をなくすために、申告期限から1年を超えた部分については延滞税の計算期間から除外するという特例が設けられています。

① 期限内申告後の修正申告・更正の場合(第61条第1項第1号)

期限内申告書が提出されている場合に修正申告・更正があったとき、「法定申告期限の翌日から1年を経過した日の翌日」から「修正申告書提出日(または更正通知書送達日)の前日」までの期間は、延滞税の計算期間から除外されます。

② 期限後申告・決定後の修正申告・更正の場合(第61条第1項第2号)

期限後申告書の提出または決定があった後、さらに修正申告・更正があったとき、「期限後申告書提出日等の翌日から1年を経過した日の翌日」から「次の修正申告書提出日等の前日」までの期間は除外されます。

③ 更正の請求に基づく減額更正の場合(第61条第2項)

更正の請求をした場合において、その請求に基づき減額更正があったとき、「更正の請求をした日の翌日」から「更正の請求日の翌日から3か月を経過する日」または「減額更正があった日」のいずれか早い日までの期間は除外されます。

④ 重加算税が課される場合は特例不適用

【スタッフ】 隠蔽・仮装があって重加算税が課される場合も、1年経過後の期間は延滞税が免除されますか?

【松野先生】 いいえ。国税通則法第61条第1項ただし書きにより、重加算税が課される部分については計算期間の特例は適用されません。仮装・隠蔽という悪質な行為があった場合は、申告期限から何年経過していても延滞税が全期間にわたって課されます。

ケース1年経過後の延滞税除外根拠
期限内申告後の修正申告・更正(通常)除外される(課されない)第61条第1項第1号
期限後申告・決定後の修正申告・更正除外される(課されない)第61条第1項第2号
更正の請求に基づく減額更正3か月または更正日まで除外第61条第2項
重加算税が課される場合除外されない(全期間課税)第61条第1項ただし書き

【具体的な計算例】3月決算法人(申告期限:5月31日)

  • 令和4年5月31日 申告期限(期限内申告あり)
  • 令和7年8月20日 修正申告書提出・納付

延滞税の計算期間:令和4年6月1日〜令和7年8月20日

特例の適用:令和4年5月31日から1年経過日の翌日(令和5年6月1日)〜修正申告前日(令和7年8月19日)は除外

実際に延滞税が課される期間:令和4年6月1日〜令和5年5月31日(1年間のみ) → 1年を超えた令和5年6月1日以降の延滞税はゼロ


第4章 地方税の延滞金 ~名称と端数処理の違いに注意~

【スタッフ】 地方税にも延滞税がかかるのですか?

【松野先生】 地方税では「延滞税」ではなく「延滞金」という名称になります。根拠法は地方税法第20条の2です。税率は国税の延滞税とまったく同じですが、本税の端数切捨てが「1,000円未満」である点が国税(1万円未満)と異なります。

比較項目国税(延滞税)地方税(延滞金)
根拠法国税通則法第60条地方税法第20条の2
名称延滞税延滞金
2ヶ月以内の税率年2.4%(令和7年)年2.8%(令和8年)年2.4%(令和7年)年2.8%(令和8年)
2ヶ月超の税率年8.7%(令和7年)年9.1%(令和8年)年8.7%(令和7年)年9.1%(令和8年)
本税の端数切捨て1万円未満切捨て1,000円未満切捨て
延滞額の端数100円未満切捨て100円未満切捨て
最低額1,000円未満は不課税1,000円未満は不課税

【実務上の注意】法人の修正申告では延滞税・延滞金が複数税目で発生する ① 法人税(国税)→ 延滞税 ② 法人住民税(都道府県)→ 延滞金 ③ 法人住民税(市町村)→ 延滞金 ④ 法人事業税 → 延滞金 ⑤ 特別法人事業税 → 延滞金 それぞれ別々に計算・別々に納付が必要です。クライアントへはトータルの延滞コストを試算して説明しましょう。


第5章 重加算税が課される場合 ~隠蔽・仮装とは何か~

【スタッフ】 重加算税はどのような場合に課されるのですか?

【松野先生】 重加算税が課されるのは、単なる申告漏れや計算ミスではなく、「隠蔽」または「仮装」という積極的な不正行為があった場合に限られます。税率は過少申告ベースで35%、無申告ベースで40%と非常に高く設定されています。

隠蔽の例(事実を隠す行為)

行為具体例
売上除外現金売上を意図的に帳簿に記載しない
二重帳簿正規帳簿と調査対策用の帳簿を別々に作成
書類廃棄領収書・請求書・通帳を意図的に破棄
別口座への入金売上代金を会社口座ではなく代表者個人口座に入金
財産の隠匿相続財産を申告せず名義変更・海外移転

仮装の例(事実を偽る行為)

行為具体例
架空経費実在しない取引の領収書・請求書を作成・計上
架空人件費実際には働いていない家族への給与を計上
契約書の改ざん取引金額・日付・当事者名を書き換える
名義偽装他人名義で預金口座・不動産・株式を保有
架空仕入実在しない仕入を計上して利益を圧縮

重加算税が課されない場合

ケース重加算税適用される加算税
単純な計算ミス課されない過少申告加算税(10%)
税法の解釈の誤り課されない過少申告加算税(10%)
うっかりの申告漏れ課されない過少申告・無申告加算税
売上の意図的除外課される重加算税(35%または40%)
架空経費の計上課される重加算税(35%)

【相続税における特殊論点】 最高裁平成18年4月20日判決により、被相続人が生前に行った隠蔽・仮装について、相続人がそれを知らなかった場合でも相続人に重加算税が課されることが認められています。相続税申告の際は、被相続人の生前の取引内容・帳簿・申告状況を十分に確認することが不可欠です。


第6章 加算税の加重措置 ~短期累犯加重と令和5年度改正~

【スタッフ】 第1章の表に「短期累犯加重」と「令和5年度改正の加重措置」という項目がありましたが、それぞれ何が違うのですか?

【松野先生】 大切な区別です。加算税の加重措置には、平成28年改正で設けられた「短期累犯加重」と、令和5年度改正で強化された「加重措置」の2本柱があります。混同しやすいので整理しましょう。

平成28年改正:短期累犯加重

【スタッフ】 短期累犯加重とはどういうものですか?

【松野先生】 期限後申告等があった日前5年以内に、同じ税目について無申告加算税または重加算税が課されたことがある場合、加算税割合が10%加重されます。繰り返し無申告・仮装を行う悪質な納税者への抑止が目的です。

重要なのは対象の限定です。 国税庁資料によると、過少申告加算税および源泉所得税に係る不納付加算税については、この短期累犯加重の適用はありません。 適用対象は無申告加算税と重加算税に限られます。

加算税の種類短期累犯加重の適用
過少申告加算税適用なし
無申告加算税適用あり(前5年以内に同税目の無申告加算税または重加算税あり→+10%)
不納付加算税(源泉所得税)適用なし
重加算税適用あり(前5年以内に同税目の無申告加算税または重加算税あり→+10%)

令和5年度改正:高額無申告・繰り返し・帳簿不提示への加重強化

【スタッフ】 令和5年度改正では何が変わったのですか?

【松野先生】 令和5年度改正(令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものに適用)では、主に次の3点の加重措置が強化されました。

① 高額な無申告への新税率(300万円超)

税額規模改正前改正後
50万円以下15%15%(変更なし)
50万円超20%20%(変更なし)
300万円超20%30%(新設)

② 繰り返し無申告等がある場合の10%加重

前年または前々年に無申告加算税等(調査によるもの)が課されたことがある場合に、無申告加算税にさらに10%が加算されます。

③ 帳簿の不提示・記載不十分の場合の加重

税務調査において帳簿を提示しない、または売上金額の記載が著しく不十分な場合に、無申告加算税・過少申告加算税に一定割合が加算されます(10%または5%)。

【実務上のポイント】 令和5年度改正前から「調査通知前に自主的に期限後申告をした場合は5%」という扱いがあります。高額な無申告や繰り返し無申告が絡む場合は、この自主申告による軽減と改正後の加重措置を組み合わせて整理することが重要です。クライアントの過去の申告・納付状況と帳簿整備状況を早めに確認しましょう。


第7章 修正申告を自主的にした場合 ~タイミングで加算税が変わる~

【スタッフ】 申告書を出したあとで誤りに気づいた場合、修正申告を自分から出せば加算税は安くなりますか?

【松野先生】はい。修正申告は「いつ・どのような経緯で」提出するかによって、過少申告加算税の税率が変わります。調査通知前に自主的に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりません。一方、調査通知後であっても、更正を予知する前であれば5%・一部10%に軽減されます。

タイミング税率ポイント
① 調査通知前の自主的な修正0%(全額免除)最も有利。隠蔽・仮装がないことが条件
② 調査通知後・更正予知前の修正申告5%(50万円超部分は10%)通知後でも自ら気づいた場合は軽減
③更正を予知した後の修正申告10%(50万円超は15%)指摘後の先手申告は通常税率と同じ
④ 更正(税務署による強制是正)10%(50万円超は15%)③と同率

【要件】調査通知前の自主修正申告で過少申告加算税が免除される条件

  • 税務調査の事前通知(日程連絡)を受ける前に提出すること
  • 修正申告書を自発的に提出すること
  • 仮装・隠蔽の事実がないこと(重加算税非該当)

→ 加算税:0%(免除) 延滞税:当初法定納期限の翌日から発生(免除されない)

【実務上の注意点】「調査通知」の範囲 「資料せん」や「お尋ね文書」の送付は、調査通知に該当しない場合が多く、この段階での修正申告は自主修正として扱われることが多いです。「調査の通知」とは、調査日時・調査担当者・調査対象税目等を告知する正式な事前通知(国税通則法第74条の9)を指します。


第8章 期限後申告を自主的にした場合 ~無申告加算税の軽減~

【スタッフ】 そもそも申告書を出していなかった場合、自分から期限後申告をすれば加算税は安くなりますか?

【松野先生】 はい。期限後申告も、いつ・どのような状況で提出するかで無申告加算税の税率が大きく変わります。調査通知前に自主的に期限後申告をした場合は無申告加算税が原則5%です。令和5年度改正では高額な無申告・繰り返し・帳簿不提示への加重措置が強化されましたので、誤りに気づいたら一刻も早く自主的に申告することが重要です。

タイミング税率備考
① 法定申告期限から1か月以内の一定の期限後申告0%(完全免除)4要件をすべて満たす場合
② 調査通知前の自主的期限後申告5%(原則)高額・繰り返し・帳簿不提示等は加重あり
③ 通知後・決定予知前10%・15%・25%(段階)決定予知後より税率は低い(一定の軽減)25%は令和5年度改正による300万円超部分
④ 決定予知後または決定15%・20%・30%(段階)最も重い税率 30%は令和5年度改正による300万円超部分

【令和5年度改正による加重規定】
令和5年度改正では、無申告加算税について、高額な無申告、繰り返し無申告、帳簿不提示・記載不十分の場合の加重措置が強化されています。

高額な無申告については、300万円超部分について、調査通知後・更正又は決定予知前は25%、更正又は決定予知後または決定の場合は30%となります。

また、前年・前々年に調査による無申告加算税等がある場合には、一定の場合に通常の無申告加算税に10%が加重されます。

さらに、帳簿の不提示や売上金額の記載が著しく不十分な場合には、別途5%または10%の加重措置が設けられています。たとえば、無申告加算税15%の部分に5%加重が加わると、20%となる場合があります。

期限後1ヶ月以内の自主申告 → 免除の4要件

  • 要件1 申告期限から1ヶ月以内に期限後申告書を提出すること
  • 要件2 申告書の提出が自主的であること(調査通知前)
  • 要件3 期限内申告をする意思があったと認められること(申告期限までに税額相当額を全額納付していること等)
  • 要件4 過去5年以内に無申告加算税・重加算税を課されたことがないこと

→ 4要件をすべて満たす場合 → 無申告加算税ゼロ → 延滞税は法定納期限の翌日から発生(免除されない)

調査通知前の自主申告は原則5% 令和5年度改正の加重措置にも注意

【スタッフ】 申告期限から1ヶ月を超えてしまった場合でも、自主的に申告すれば5%になりますか?

【松野先生】 調査の事前通知前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は原則として5%です。ただし、令和5年度改正(令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの)では次の場合に加重されます。

状況税率
調査通知前・自主申告(通常)原則5%。連年無申告加重は対象外
調査通知後・更正又は決定予知前10%・15%・25%。25%は300万円超部分
更正又は決定予知後、または決定15%・20%・30%。30%は300万円超部分
調査通知後・更正又は決定予知前で、前年・前々年に調査による無申告加算税等がある場合上記に+10%
更正又は決定予知後、または決定で、前年・前々年に調査による無申告加算税等がある場合
上記に+10%
※「上記に+10%」とは、直前の通常税率に10%を加算するという意味です。

令和5年度改正のポイント 改正の中心は、高額な無申告(300万円超部分を30%に引き上げ)、繰り返し無申告等(前年・前々年の調査による無申告加算税等がある場合に10%加重)、帳簿不提示・記載不十分の場合の加重です。「調査通知前の自主申告が5%」というルール自体は改正前から存在していますが、高額・繰り返し・帳簿不備が絡む場合は加重後の税率に注意が必要です。

※令和5年度改正により、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税については、無申告加算税の300万円超部分が強化されています。調査通知後・更正又は決定予知前は300万円超部分が25%、更正又は決定予知後または決定の場合は300万円超部分が30%となる点が重要です。

なお、帳簿の不提示や売上金額の記載が著しく不十分な場合には、別途5%または10%の加重措置が設けられています。たとえば、無申告加算税15%の部分に5%加重が加わると、20%となる場合があります。

なお、帳簿不提示・記載不十分による5%または10%の加重措置は、過少申告加算税・無申告加算税を対象とするものであり、重加算税には上乗せされません。一方で、過去の無申告加算税・重加算税の有無による短期累犯加重や、令和5年度改正による連年無申告加重により、重加算税自体が10%加重される場合があります。

なお、5期連続無申告について、一度の税務調査で5期分をまとめて期限後申告する場合でも、前年分・前々年分について無申告加算税等を課すべきと認められるときは、3期目以降の無申告加算税等について10%加重の対象となる可能性があります。「過去にすでに課されたことがある場合」だけでなく、「今回の調査で賦課決定すべきと認められる場合」も含まれる点に注意が必要です。

相続税の無申告への注意

【松野先生】 相続税は金額が大きくなりがちなので、無申告加算税だけで多額になるケースがあります。調査通知前の自主申告なら一律5%の軽減税率が適用されますが、調査後の申告では15%・20%・30%の通常税率になります。

令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものでは、300万円超部分に注意が必要です。

案1:無申告相続税300万円までの場合】

【相続税の無申告 具体例】相続税額300万円の無申告
自主申告(調査通知前・1ヶ月超)の場合 → 300万円 × 5% = 15万円
調査後の申告の場合 → 50万円×15% + 250万円×20% = 57.5万円
差額 → 42.5万円

案2:相続税無申告3,000万円の場合 改正後税率で計算

自主申告(調査通知前・1ヶ月超)の場合
300万円 × 5% + 2,700万円 × 10% = 285万円

調査後の申告の場合
50万円×15% + 250万円×20% + 2,700万円×30% = 867.5万円

差額 → 約582万円


第9章 印紙税の過怠税 ~3倍と1.1倍の違い~

【スタッフ】 印紙税も加算税と似たようなペナルティがあるのですか?

【松野先生】 印紙税のペナルティは「加算税」ではなく「過怠税」といいます。調査で不貼付が発覚した場合は本来の印紙税額の3倍とされています。ただし、印紙税不納付事実申出書を提出し、その申出が過怠税の決定を予知してされたものではないと認められる場合には1.1倍に軽減されます。実務上、貼り忘れ事案では1.1倍で処理されることも多いですが、必ず1.1倍になるとまでは言い切れません。

主な課税文書と印紙税額

文書の種類主な例税額
第1号文書不動産売買契約書・土地賃貸借契約書200円〜60万円(金額による)
第2号文書建設工事請負契約書・製造請負契約書200円〜60万円(金額による)
第1号文書(消費貸借)金銭消費貸借契約書200円〜36万円(金額による)
第5号文書合併契約書・吸収分割契約書40,000円
第6号文書定款40,000円
第7号文書継続的取引の基本契約書(売買基本契約等)4,000円(一律)
第17号文書領収書(金銭の受取書)200円(5万円以上)

電子契約は印紙税ゼロ 電磁的記録(電子契約)は「文書」の作成に該当しないため印紙税は課されません。DX推進の経済的メリットの一つです。

過怠税の規定

なお、印紙税の過怠税は法人税の損金や所得税の必要経費には算入できません。単なる印紙代の追納ではなく、税務上もコストになる点に注意が必要です。

条項内容過怠税
印紙税法第20条第1項調査で不貼付が発覚した場合本来の印紙税額の3倍
印紙税法第20条第2項自主的に申し出た場合本来の印紙税額の1.1倍
印紙税法第20条第3項消印漏れの場合消印しなかった印紙と同額(1倍)

M&A・組織再編での印紙税の注意点

【松野先生】 M&Aや組織再編では高額の契約書が多く作成されますので、印紙税の要否の確認が重要です。株式譲渡契約書は通常は印紙税の課税文書に該当しませんが、譲渡代金の受領事実を証明する記載がある場合など、第17号文書(金銭の受取書)に該当する内容を含むときは印紙税が必要になることがあります。電子契約に切り替えることで印紙税をゼロにできる場合もありますので、事前に確認することが重要です。

契約書の種類印紙税額備考
合併契約書40,000円第5号文書・一律
吸収分割契約書40,000円第5号文書・一律
株式譲渡契約書原則として課税文書に非該当代金受領事実の記載がある場合は第17号文書に該当する可能性あり
事業譲渡契約書記載金額による第1号文書(不動産含む場合)
定款40,000円第6号文書・一律(電子定款はゼロ)

第10章 まとめ ~実務での確認ポイント~

  • 加算税(国税)と加算金(地方税)は名称が異なる
  • 申告納税方式の税には加算税・加算金が課され、賦課課税方式には課されない
  • 個人住民税(均等割・所得割)は賦課課税方式のため加算金なし
  • 法人住民税(均等割も含む)・法人事業税は申告納税方式のため加算金あり
  • 延滞税は国税、延滞金は地方税。税率は同率(令和7年:2.4%・8.7%、令和8年:2.8%・9.1%)
  • 延滞税の本税端数:国税は1万円未満切捨て、地方税は1,000円未満切捨て
  • 特例税率は低金利時代に原則税率(7.3%・14.6%)が高すぎるため措法で措置
  • 計算式の分母は365(うるう年でも同じ)
  • 2ヶ月を超えると高率(令和7年:8.7%、令和8年:9.1%)→ 早期納付がコスト削減につながる
  • 重加算税の要件は「仮装・隠蔽の事実行為」であり、単純ミスは対象外
  • 短期累犯加重(平成28年改正):期限後申告等の前5年以内に同税目で無申告加算税または重加算税あり→+10%。過少申告加算税・不納付加算税への適用はない
  • 令和5年度改正(令和6年1月1日以後):高額無申告(300万円超→30%)・繰り返し無申告(前年前々年に調査による無申告加算税等あり→+10%)・帳簿不提示等への加重強化
  • 修正申告は調査通知前の自主申告なら過少申告加算税ゼロ
  • 期限後申告は1ヶ月以内・4要件を満たせば無申告加算税ゼロ
  • 調査通知前の自主的期限後申告は原則5%(令和5年度改正前から)。高額・繰り返し・帳簿不提示等は令和5年度改正の加重措置に注意
  • 相続税の無申告は自主申告と調査後で加算税額が数百万円異なることがある
  • 相続税では被相続人の生前の不正行為が相続人の重加算税につながる場合がある
  • 印紙税のペナルティは「過怠税」(加算税ではない)
  • 印紙税不納付事実申出書を提出し、過怠税の決定を予知してされたものでないと認められる場合は1.1倍に軽減
  • 電子契約は印紙税ゼロ・DX推進の経済的メリットの一つ

【スタッフ】 平成28年改正の短期累犯加重は無申告加算税・重加算税のみで、過少申告加算税と不納付加算税には適用がないこと、そして令和5年度改正では高額・繰り返し・帳簿不提示への加重措置が強化されたことがよくわかりました。

【松野先生】 その通りです。税務上のペナルティは、正しい知識と早期対応でコストを大幅に抑えることができます。修正申告・期限後申告は調査通知前の自主申告が鉄則です。令和5年度改正で高額な無申告や繰り返し無申告への加重が強化されています。クライアントから相談を受けたら、本税・加算税・延滞税のトータルコストを試算して具体的な金額でご説明することをお勧めします。

なお、通常の税理士関与先で、期限内申告を行い、帳簿や資料を保存している場合には、今回の加重措置が大きな問題になるケースは多くないと考えられます。今回の改正は、むしろ高額な無申告、繰り返し無申告、帳簿不提示・記載不十分など、「無申告の方が得」と考えるような悪質・放置型の納税者への対応を強化したものといえます。


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