令和8年度創設「大胆な投資促進税制」とは?5億円以上の大型設備投資で即時償却・税額控除が可能に

令和8年度創設「大胆な投資促進税制」とは?5億円以上の大型設備投資で即時償却・税額控除が可能に

令和8年度税制改正において、これまでにない規模の設備投資優遇策が創設されました。その名も「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)」です。100億円の投資に対して約19億円の税制効果が見込まれるという、極めてインパクトの大きい制度です。今回はその概要と実務上のポイントをわかりやすく解説します。

1この税制が生まれた背景

――先生、「大胆な投資促進税制」という制度ができたと聞きましたが、どういう目的で創設されたのですか?

日本の潜在成長率は、米国・ドイツ・英国などと比較して低い水準にとどまっており、その主因の一つが資本投入量の不足にあるとされています。政府と経団連は2030年度に135兆円、2040年度に200兆円という官民投資目標を設定し、その実現を後押しするために令和8年度税制改正において大規模な設備投資優遇措置が創設されました。

🏛 高市内閣の「危機管理投資」とは
経済安全保障・食料安全保障・エネルギー安全保障・国土強靱化・サイバーセキュリティなどの分野への戦略的投資を、官民が連携して先手を打って行うもの。その税制面での核心が、この「大胆な投資促進税制」です。
2030年度の官民投資目標
135兆円
2040年度の官民投資目標
200兆円
2制度の概要(対象者・対象資産)

――どのような企業が対象で、どのような設備が対象になるのですか?

青色申告書を提出する法人で、一定の生産等設備に係る投資計画について経済産業大臣の確認を受けた場合に対象となります。業種は原則として全業種が対象ですが、対象はあくまで「生産等設備」を構成する以下の資産に限られます。

  • 機械装置
  • 工具及び器具備品
  • 建物
  • 建物附属設備・構築物
  • ソフトウェア
⚠️ 対象外となる資産に注意
事務用器具備品、本店建物、寄宿舎、福利厚生施設等は「生産等設備」に該当しないため、対象外となります。
3適用要件(投資下限額・投資利益率)

――適用を受けるためにはどんな条件がありますか?

本税制の適用を受けるためには、投資計画が以下の5要件をすべて満たし、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受ける必要があります。

  • 投資下限額を満たすこと(大企業:35億円以上、中小企業者等:5億円以上)
  • 年平均の投資利益率が15%以上と見込まれること
  • 投資計画に資金調達手段が記載されていること
  • 取締役会等の適切な機関の意思決定に基づくこと
  • 設備投資の増加につながるものであること等
📐 投資利益率の計算式
(営業利益 + 減価償却費) ÷ 設備投資額 ≧ 15%
※設備投資額は設備を取得する年度の取得価額の合計額
※詳細な計算方法は今後の政省令・通達等で確認が必要です
4税制インセンティブの内容

――どんな税制メリットが受けられるのですか?

対象設備の種類ごとに、即時償却または税額控除のいずれかを選択できます。税額控除の上限は法人税額の20%です。

対象資産取得価額要件税額控除率
機械装置1台160万円以上7% または即時償却
工具及び器具備品1台120万円以上、または40万円以上かつ一事業年度合計120万円以上7% または即時償却
ソフトウェア70万円以上7% または即時償却
建物1,000万円以上4% または即時償却
建物附属設備・構築物120万円以上等4% または即時償却

近畿経済産業局が公表した具体的な試算例(100億円投資の場合)は以下のとおりです。

建物(50億円)… 即時償却選択約15億円のキャッシュフロー改善
機械装置(30億円)… 税額控除7%約2.1億円の減税
ソフトウェア(20億円)… 税額控除7%約1.4億円の減税
合計インセンティブ効果約19億円
⚠️ 税額控除の上限に注意
税額控除については法人税額の20%が上限となるため、実際の減税効果は各社の所得・法人税額により異なります。上記の試算はあくまで参考値としてご参照ください。
5措置期間と申請タイミング

――いつまでに手続きをすればよいのですか?

本税制は二段階の期限管理が必要です。

① 確認申請の期限
令和11年
3月31日まで
② 設備取得・事業供用の期限
確認日から
5年以内

大型設備投資で建設工事が長期化する場合でも、確認日から5年以内であれば対象となるため、長期計画の案件にも適用しやすい仕組みになっています。

6「ムチ税制」(適用制限)に注意

――何か注意すべき点はありますか?

中小企業者等以外の法人については、前期比で所得が増加する一定の事業年度において、次の要件を満たさない場合、本制度(繰越税額控除を除く)が適用できなくなります

⚠️ ムチ税制(適用不可となる条件)
  1. 継続雇用者の給与等支給額の対前年度増加率が1%未満(従業員数2,000人超等の場合は2%未満)
  2. 国内設備投資額が当期償却費総額の30%以下(従業員数2,000人超等の場合は40%以下)
賃上げ・継続的な国内投資を行っていることが、税制メリットを受けるための前提条件となっています。
7繰越控除と他の税制との関係

本税制の投資計画確認を受けた期間中は、以下の類似する設備投資税制は適用制限されます。

🚫 適用制限される税制(投資計画期間中)
  • 地域未来投資促進税制
  • 中小企業経営強化税制(繰越税額控除を除く)
  • カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

一方、繰越税額控除(最大3年間)については、産業競争力強化法の改正法の認定を受けた法人が、予見し難い国際経済事情の急激な変化に対応するための計画について経済産業大臣の確認を受けた場合に限り、適用できます。

8まとめ

大胆な投資促進税制 ポイント整理

  • 対象:青色申告法人(全業種)/投資下限額あり(大企業35億円・中小5億円)
  • 要件:年平均投資利益率15%以上、経済産業大臣の確認が必要
  • 優遇:即時償却 or 税額控除(機械・ソフト7%、建物4%)/控除上限は法人税額の20%
  • 期限:令和11年3月31日までに確認申請 → 確認日から5年以内に事業供用
  • 注意:ムチ税制あり(賃上げ・国内投資要件を満たさない場合は適用不可)
  • 他制度との重複適用は制限(中小企業経営強化税制等)

大型設備投資を検討されている企業様は、早めに投資計画の策定と申請準備に取り組まれることをお勧めします。具体的な適用要件の確認や投資利益率の計算については、お気軽に当事務所へご相談ください。

💡 どのような企業向けの制度か
本制度は大規模投資を対象とするため、通常の中小企業が日常的に活用する設備投資税制とは異なります。工場の新設・大規模設備の更新・物流拠点の整備・大型システム投資などを検討している企業が主な対象といえます。「うちでも使えるか?」を判断する際のご参考にしてください。
税理士法人松野茂税理士事務所
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