雑種地の賃借権の相続税評価|借り手・貸し手の控除割合と一体評価【スタッフ向け】

雑種地の相続税評価|賃借権と貸付地の控除割合・一体評価を解説【スタッフ向け】

資材置場や駐車場などに利用される雑種地を賃貸借している場合、相続税評価では、借り手の賃借権と貸し手の土地をそれぞれ評価する必要があります。

ここで注意したいのは、借り手の賃借権評価額と、貸し手が土地の評価額から控除できる金額は、必ずしも一致しないという点です。

また、宅地と雑種地を一体利用している場合、借り手と貸し手で土地の評価単位が異なることもあります。

今回は、財産評価基本通達86・87と国税庁の質疑応答事例を基に、法定地上権割合、貸し手の最低控除割合、土地の一体評価について解説します。

目次

1.雑種地の借り手と貸し手では評価方法が異なる

雑種地の賃貸借では、借り手と貸し手が評価する財産が異なります。

区分借り手貸し手
評価対象雑種地の賃借権貸し付けられている雑種地
適用通達財産評価基本通達87財産評価基本通達86
評価方法賃借権の価額を計算自用地価額から所定の金額を控除
特徴契約内容・利用状況等を勘案して評価するのが原則。一定の算式による評価も可能最低控除額の規定がある

特に重要なのは、財産評価基本通達86に規定されている最低控除額です。

この規定があるため、借り手が計上する賃借権評価額と、貸し手が土地から控除する金額が異なる場合があります。

2.借り手の賃借権評価|財産評価基本通達87

財産評価基本通達87では、雑種地の賃借権について、賃貸借契約の内容、利用状況等を勘案して評価することを原則としています。

ただし、次の方法によって評価することもできます。

① 地上権に準ずる賃借権

例えば、次のような賃借権です。

  • 賃借権の登記がされているもの
  • 設定の対価として権利金その他の一時金の授受があるもの
  • 堅固な構築物の所有を目的とするもの

評価方法は、

自用地価額 × 法定地上権割合と借地権割合のいずれか低い割合

です。

例えば、法定地上権割合が20%、借地権割合が60%であれば、低い方の20%を使用します。

② ①以外の通常の賃借権

地上権に準ずる賃借権に該当しないものについては、

自用地価額 × 法定地上権割合 × 1/2

で評価することができます。

資材置場などの土地賃貸借では、契約内容によってこちらの区分を検討することになります。

3.法定地上権割合とは|相続税法23条

雑種地の賃借権評価に使用する法定地上権割合は、相続税法23条に規定されています。

その割合は権利の残存期間によって異なります。

法定地上権割合一覧表

残存期間法定地上権割合通常の賃借権(1/2)
10年以下5%2.5%
10年超15年以下10%5%
15年超20年以下20%10%
20年超25年以下30%15%
25年超30年以下40%20%
30年超35年以下50%25%
35年超40年以下60%30%
40年超45年以下70%35%
45年超50年以下80%40%
50年超90%45%

※地上権で存続期間の定めがないものは40%とされています。ただし、期間の定めのない賃借権について当然に40%を適用するという意味ではありません。

ここで注意したいのは、**残存期間10年以下の賃借権について、法定地上権割合は一律5%**という点です。

例えば、残存期間3年の場合も8年の場合も、通常の賃借権を算式で評価すれば、自用地価額の2.5%となります。

しかし、貸し手側の最低控除割合は、5年以下と5年超10年以下で異なります。

この点が、借り手と貸し手の評価額に差が生じる原因です。

4.貸し手の最低控除額|財産評価基本通達86

貸し付けられている雑種地は、原則として次の算式で評価します。

貸付雑種地の評価額=自用地価額-賃借権評価額

ただし、財産評価基本通達86(1)では、賃借権評価額が一定額を下回る場合、その一定額を控除できる規定があります。

貸し手の最低控除割合

残存期間地上権に準ずる賃借権通常の賃借権
5年以下5%2.5%
5年超10年以下10%5%
10年超15年以下15%7.5%
15年超20%10%

この表は、貸し手の土地評価で使用する最低控除割合です。

借り手の賃借権価額に使用する割合ではありません。

借り手と貸し手の割合を比較

通常の賃借権について、両者を比較すると次のようになります。

残存期間借り手の賃借権割合貸し手の最低控除割合貸し手の実際の控除割合
5年以下2.5%2.5%2.5%
5年超10年以下2.5%5%5%
10年超15年以下5%7.5%7.5%
15年超20年以下10%10%10%
20年超25年以下15%10%15%
25年超30年以下20%10%20%
30年超35年以下25%10%25%
35年超40年以下30%10%30%
40年超45年以下35%10%35%
45年超50年以下40%10%40%
50年超45%10%45%

※通達87(2)の算式により賃借権を評価する場合の比較です。

貸し手の実際の控除割合は、通達87による賃借権割合と通達86の最低控除割合のうち、高い方になります。

したがって、残存期間が5年超15年以下の場合には、借り手の賃借権評価割合より貸し手の控除割合が大きくなります。

それ以外の期間では、上記の算式による場合、両者の割合は一致します。

地上権に準ずる賃借権の場合も差が生じる

地上権に準ずる賃借権でも、同じ期間帯で差が生じます。

残存期間借り手の賃借権割合貸し手の最低控除割合
5年以下5%5%
5年超10年以下5%10%
10年超15年以下10%15%

※借り手の割合は法定地上権割合です。借地権割合のほうが低い場合は、借地権割合となります。

5.具体例|借り手25万円、貸し手の控除額50万円

次の条件で計算してみます。

  • 雑種地の自用地価額:1,000万円
  • 賃借権の残存期間:8年
  • 地上権に準ずる賃借権には該当しない
  • 法定地上権割合:5%

借り手の評価

財産評価基本通達87(2)によって、

1,000万円 × 5% × 1/2 = 25万円

となります。

貸し手の評価

通達87による賃借権評価額は25万円ですが、残存期間8年の場合、通達86による最低控除割合は5%です。

したがって、

1,000万円 × 5% = 50万円

が控除額となります。

貸し手の土地評価額は、

1,000万円 − 50万円 = 950万円

となります。

区分評価額
借り手の賃借権25万円
貸し手の控除額50万円
貸し手の土地評価額950万円

借り手の賃借権は25万円であるにもかかわらず、貸し手は50万円を土地評価額から控除できます。

雑種地の賃借権評価では、借り手の評価額と貸し手の控除額を単純に対応させてはいけません。

6.宅地と雑種地を一体利用している場合の評価単位

次に、土地の評価単位を考えます。

財産評価基本通達7では、2以上の地目からなる一団の土地が一体として利用されている場合、原則として主たる地目からなる土地として評価する取扱いがあります。

国税庁の質疑応答事例に、スーパーマーケットと立体駐車場を一体利用している例があります。

事例① スーパーと立体駐車場

  • A土地:乙の所有する宅地
  • 甲はA土地に借地権を有し、スーパーマーケットを営業
  • B土地:丙の所有する雑種地
  • 甲はB土地の賃借権の登記を行い、2階建て立体駐車場を設置
  • B土地はスーパーの買物客の駐車場として利用

借り手・甲の評価

甲はA土地とB土地を一体利用しています。

この場合、甲の借地権と賃借権の評価では、A・B土地を一団の宅地として評価します。

その価額を各土地の地積割合で按分し、

  • A土地の按分価額に借地権割合を乗じる。
  • B土地の按分価額に賃借権割合を乗じる。

という方法で、それぞれの権利を評価します。

貸し手・乙と丙の評価

一方、貸し手の評価単位は異なります。

評価対象者評価単位
借り手・甲A宅地とB雑種地を一団の宅地として評価
A土地所有者・乙A土地のみを1画地の宅地として評価(貸宅地(底地)の評価)
B土地所有者・丙B土地のみを一団の雑種地として評価(貸し付けられている雑種地の評価)

借り手は一体評価しますが、貸し手はそれぞれ所有する土地を別々に評価します。

つまり、同じ土地でも、所有する権利の種類によって評価単位が異なるのです。

出典:国税庁「宅地の評価単位-地目の異なる土地が一体として利用されている場合(1)」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/02/07.htm

7.短期の賃借権は評価しない場合がある

国税庁のもう一つの質疑応答事例を確認します。

事例② 隣接する資材置場

  • A土地:甲の所有する宅地
  • B土地:乙の所有する雑種地
  • 甲はB土地を、資材置場として一時的に使用することを目的に賃借
  • 契約期間は1年間
  • 地代の授受はあるが、権利金その他の一時金の授受はない

この事例では、甲の所有するA土地のみを1画地の宅地として評価します(財産評価基本通達7-2)。

国税庁は、一時的・臨時的な賃借権については、経済的価値が極めて小さいことから、その価額を評価しないと説明しています。

なお、所有する土地と隣接する賃借土地を一体利用している場合は、原則として両土地を一団の土地として評価します。ただし、この事例のように一時的・臨時的な賃借権を評価しない場合には、所有する土地のみを評価します。

借り手・甲の評価

B土地の賃借権は評価しません。

そのため、甲のA宅地とB雑種地を一体評価することはなく、A土地のみを1画地の宅地として評価します。

貸し手・乙の評価

B土地の賃借権を評価しないため、乙のB雑種地についても、賃借権相当額は控除しません。

したがって、B土地を自用地価額で評価します。

区分評価方法
甲のA宅地A土地のみを評価
甲のB土地の賃借権評価しない
乙のB雑種地自用地価額で評価

これは、前述した通常の賃借権についての2.5%の計算とは異なります。

賃貸借契約が存在すれば、必ず2.5%以上の賃借権を評価するというわけではありません。

なお、契約期間が1年間であれば、すべて評価不要になるわけではありません。契約内容や継続的な利用実態等の確認が必要です。

出典:国税庁「宅地の評価単位-地目の異なる土地が一体として利用されている場合(2)」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/02/09.htm

8.一体評価する場合としない場合の比較

国税庁の2事例を比較すると、評価方法の違いが分かります。

項目立体駐車場の事例資材置場の事例
B土地の利用スーパーの駐車場資材置場
契約内容賃借権登記あり1年契約・一時使用・地代あり・権利金なし
賃借権の評価評価する評価しない
借り手の評価単位A・Bを一体評価Aのみを評価
貸し手の評価単位所有地ごとに評価Bのみを評価
B土地の地主側貸付雑種地として評価自用地価額で評価

土地を一体利用しているという事実だけで、直ちに一団の土地として評価するわけではありません。

賃借権の経済的価値や契約内容を確認して評価単位を判断する必要があります。

9.雑種地の自用地価額の算定にも注意

雑種地の賃借権を評価する前提として、まず雑種地の自用地価額を算定する必要があります。

特に市街化調整区域の雑種地では、付近の宅地や農地など、どの土地を基準として評価するかが問題となります。

例えば、資材置場として使用されていても、その周辺が農地であり、宅地への転用が制限されている場合には、宅地比準が適切かどうか慎重に判断する必要があります。この点は、国税庁の質疑応答事例「市街化調整区域内の雑種地の評価」も併せて確認してください。

また、賃借人が造成を行っている場合には、財産評価基本通達86の注書による取扱いにも注意が必要です。

権利の控除割合だけでなく、控除の基礎となる自用地価額の算定が重要です。

10.まとめ|雑種地は借り手と貸し手を別々に評価する

雑種地の相続税評価で重要なのは、次の5点です。

  1. 借り手の賃借権は、財産評価基本通達87により評価する。
  2. 貸し手の土地は、財産評価基本通達86により評価し、最低控除額の規定がある。
  3. 法定地上権割合は残存期間によって異なり、特に5年超15年以下の賃借権では、借り手と貸し手の評価割合に差が生じる。
  4. 宅地と雑種地を一体利用している場合でも、借り手と貸し手では評価単位が異なることがある。
  5. 一時的・臨時的な賃借権については、評価しない場合があり、その場合には土地の評価単位も変わる。

特に注意したいのは、借り手の賃借権価額と、貸し手の土地から控除する金額が一致するとは限らないという点です。

また、隣接する土地を一体利用している場合でも、賃借権の内容によって評価単位が異なることがあります。

雑種地の評価では、土地の利用状況だけでなく、賃貸借契約の内容、権利の残存期間、賃借権の経済的価値を確認したうえで、それぞれの財産を評価する必要があります。


参考法令・通達

  • 相続税法23条「地上権及び永小作権の評価」
  • 財産評価基本通達7「土地の評価上の区分」
  • 財産評価基本通達7-2「評価単位」
  • 財産評価基本通達82「雑種地の評価」
  • 財産評価基本通達86「貸し付けられている雑種地の評価」
  • 財産評価基本通達87「賃借権の評価」
  • 国税庁タックスアンサー No.4611「借地権の評価」
  • 国税庁「宅地の評価単位-地目の異なる土地が一体として利用されている場合(1)」
  • 国税庁「宅地の評価単位-地目の異なる土地が一体として利用されている場合(2)」

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