社宅の税務|役員の借上げ社宅は家賃50%徴収で大丈夫?従業員社宅との違いを解説

役員の借上げ社宅は家賃の50%徴収で大丈夫?従業員社宅との違いを解説

会社が従業員や役員に社宅を貸与する場合、その課税関係は所得税法・所得税基本通達により詳細に規定されています。特に従業員と役員では取り扱いが全く異なり、また役員については面積によってさらに計算方法が変わります。多くのブログや解説記事で誤った情報が散見されますが、本稿は国税庁タックスアンサーNo.2597・No.2600(令和7年4月1日現在)の原文のみに基づいて解説します。

なお、本稿は主に所得税・源泉所得税上の給与課税を中心に説明し、役員社宅については法人税上の定期同額給与との関係にも触れています。社会保険上の取扱いや社宅規程の整備については、別途確認が必要です。

目次

1.基本的な考え方

会社が社宅を貸与する場合、賃貸料相当額実際に徴収する家賃の差額が経済的利益として給与課税の対象となります。ただし、一定の金額以上を徴収していれば課税されません。

課税されない条件
・従業員:賃貸料相当額の50%以上を徴収
・役 員:賃貸料相当額の全額を徴収

この「徴収基準」の違いが、従業員と役員の最大の差です。

2.従業員(使用人)社宅の課税関係

(根拠:国税庁タックスアンサー No.2597)

(1)賃貸料相当額の計算式

従業員の場合、原則として、面積の大小・自社所有・借上げを問わず、次の計算式により賃貸料相当額を算定します。

① 建物の固定資産税課税標準額 × 0.2%
② 12円 × (建物の総床面積㎡ ÷ 3.3㎡)
③ 敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%

賃貸料相当額 = ① + ② + ③
借上げ社宅の場合の注意点
会社が外部から借り上げた物件を従業員に貸与する場合でも、上記①~③の計算式を使います。会社が支払う実際の家賃(市場家賃)は計算に使いません。
借上げの場合も、貸主(物件オーナー)から固定資産税の課税標準額を確認することが必要です。

(2)課税されない条件

従業員から受け取っている家賃が賃貸料相当額の50%以上であれば、差額は給与として課税されません。

(3)給与として課税される場合の経済的利益の計算

経済的利益(給与課税額)= 賃貸料相当額 - 実際に徴収している家賃

ケース 条件 給与課税額
無償貸与 家賃ゼロ 賃貸料相当額の全額
50%未満の徴収 例:相当額10,000円に対し3,000円徴収 10,000円-3,000円=7,000円が課税
50%以上の徴収 例:相当額10,000円に対し6,000円徴収 課税なし
現金住宅手当 現金支給または入居者直接契約 支給額の全額が課税

(4)借上げ社宅の節税効果

固定資産税課税標準額ベースの賃貸料相当額は、市場家賃より大幅に低くなるのが通常です。

【例】実際の家賃80,000円の借上げ社宅
・会社支払家賃:80,000円
・賃貸料相当額(①+②+③):仮に10,000円
・従業員の最低負担額(50%):5,000円以上で課税なし
・会社負担額:75,000円(適正に社宅制度として運用されていれば、会社側では福利厚生費等として処理することが考えられます)
→ 従業員は5,000円の負担で、差額75,000円は給与課税されない

(5)例外:無償貸与でも課税されない場合

看護師や守衛など、仕事を行う上で勤務場所を離れて住むことが困難な従業員に対して、仕事に従事させる都合上社宅を貸与する場合は、無償でも給与として課税されない場合があります。

3.役員社宅の課税関係

(根拠:国税庁タックスアンサー No.2600)

役員社宅は面積によって3区分に分かれ、それぞれ賃貸料相当額の計算方法が異なります。また、従業員と異なり賃貸料相当額の全額を徴収しなければ差額が給与課税されます。

【区分の判定】まず小規模か否かを確認

建物の法定耐用年数 小規模な住宅の床面積
30年以下(木造等) 132㎡以下
30年超(RC・鉄骨等) 99㎡以下

※区分所有(マンション)の場合は、共用部分の床面積をあん分して専用部分の床面積に加えたところで判定します。

【区分①】小規模な住宅の場合

① 建物の固定資産税課税標準額 × 0.2%
② 12円 × (建物の総床面積㎡ ÷ 3.3㎡)
③ 敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%

賃貸料相当額 = ① + ② + ③

計算式は従業員と同じですが、全額徴収が必要です。自社所有・借上げを問わず同じ計算式を使います。

【区分②】小規模でない住宅 自社所有の場合

イ 建物の固定資産税課税標準額 × 12%
  (法定耐用年数30年超の建物は 10%
ロ 敷地の固定資産税課税標準額 × 6%

賃貸料相当額 = (イ + ロ) ÷ 12

【区分③】小規模でない住宅 借上げの場合 ← 最重要

多くのブログで誤解されている部分です
「借上げ社宅は実際家賃の50%を徴収すれば課税なし」という記述を見かけますが、これは正確ではありません。

正しくは次のとおりです。

A:会社が家主に支払う家賃 × 50%
B:(イ + ロ) ÷ 12 (自社所有の計算式による額)

賃貸料相当額 = Max(A、B) ← 多い方

この多い方の金額の全額を役員から徴収しなければ、差額が給与として課税されます。

具体例

項目 金額
会社支払家賃 200,000円
(イ+ロ)÷12による額 60,000円
実際家賃の50% 100,000円
賃貸料相当額(多い方) 100,000円

この場合、役員から毎月100,000円を徴収しなければ差額が給与課税されます。

ポイント整理
・実際家賃の50%だけを見て判断してはいけない
・必ず(イ+ロ)÷12も計算して、多い方を賃貸料相当額とする
・固定資産税課税標準額が高い物件ほど(イ+ロ)÷12が大きくなる可能性がある

【豪華社宅】の場合

次のいずれかに該当する場合は豪華社宅として、上記の算式は一切適用されません。

判定基準 内容
原則 床面積が240㎡超のもののうち、取得価額、支払賃貸料、内外装その他の状況等を総合勘案して判定
例外 床面積240㎡以下であっても、プール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するもの

豪華社宅の賃貸料相当額は通常支払うべき使用料に相当する額(時価)となります。そのため、通常の小規模社宅のように低い賃貸料相当額で済むことはなく、節税効果は限定的です。

4.従業員と役員の比較まとめ

項目 従業員 役員
面積による区分 なし あり(小規模・小規模以外・豪華社宅)
計算式 原則として①+②+③
(自社・借上げ問わず)
区分により異なる
借上げの特別計算 なし 小規模以外の場合:Max(実際家賃×50%、(イ+ロ)÷12)
課税なしの条件 計算額の50%以上を徴収 計算額の全額を徴収
豪華社宅 規定なし 時価が賃貸料相当額

5.実務上の重要ポイント

(1)節税効果が大きいのは小規模社宅

役員・従業員ともに、固定資産税課税標準額ベースの計算式(①+②+③)を使える小規模社宅が最も節税効果が高くなります。課税標準額は時価より大幅に低いため、徴収額を低く抑えられます。

(2)固定資産税課税標準額の確認が必須

自社所有・借上げを問わず、計算の基礎となる固定資産税課税標準額を毎年確認する必要があります。借上げ社宅の場合は物件オーナーに固定資産評価証明書の取得を依頼してください。新築等で課税標準額が定められていない場合は、類似する住宅等の課税標準額に比準して計算します。

(3)役員の定期同額給与との関係

役員が最低徴収額を下回る家賃しか支払わない場合、差額は役員給与(経済的利益)として課税されます。この経済的利益は、金銭給与とは独立して定期同額給与の判定が行われます。

具体的には、社宅の経済的利益(賃貸料相当額と徴収家賃の差額)が毎月おおむね一定であれば定期同額給与に該当し損金算入されますが、年途中に徴収家賃の変更等により経済的利益の額が変動した場合は、定期同額給与に該当しなくなる可能性があるため注意が必要です。金銭給与の額を変えていなくても、社宅の経済的利益が変動すれば、その部分が損金不算入となるリスクがあります。

(4)現金支給・直接契約は社宅の貸与に該当しない

現金で支給される住宅手当や、役員・従業員が直接契約している場合の家賃負担は、いずれも社宅の貸与とは認められず、支給額の全額が給与として課税されます。

【根拠法令等】
・従業員:所法9・36、所令21・84の2、所基通9-9・36-15・36-41・36-42・36-45・36-47
・役 員:所法36、所令84の2、所基通36-15・36-40〜41、平7課法8-1外
・法人税:国税庁タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」、No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
・国税庁タックスアンサー No.2597「使用人に社宅や寮などを貸したとき」(令和7年4月1日現在)
・国税庁タックスアンサー No.2600「役員に社宅などを貸したとき」(令和7年4月1日現在)
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