はじめに
空き家特例(被相続人の居住用財産に係る3,000万円特別控除)は、相続した実家や空き家を売却する際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる重要な制度です。
しかし、実務では「家屋をいつ取り壊せばよいのか」「12月に売買契約を結んで翌年に引き渡す場合はどうなるのか」「売買契約後・引渡し前に被相続人が死亡した場合は空き家特例を使えるのか」「居住用建物と事業用建物が同じ敷地にある場合、土地をどのように区分するのか」など、判断に迷う場面が少なくありません。
特に令和5年改正により、買主が譲渡後に家屋を取り壊す場合でも、一定の要件を満たせば空き家特例の対象となるようになりました。そのため、売買契約書の記載内容、引渡日、取り壊し完了日、確定申告の年分を正しく確認することが重要です。
この記事では、空き家特例シリーズ第17回から第20回までの内容をまとめ、取り壊しのタイミング、年末契約、引渡し前の死亡、居住用・事業用建物が併存する土地の区分方法について、尼崎の税理士が実務目線でわかりやすく解説します。
第17回|空き家特例と家屋取り壊しのタイミング(令和5年改正対応)
👉 詳細記事はこちら:第17回 空き家特例と家屋取り壊しのタイミング
スタッフ: 先生、空き家特例を使うとき、家屋はいつ取り壊せばよいのですか?
先生: 取り壊しのタイミングによって要件が異なります。整理すると次の通りです。
| ケース | 取扱い |
|---|---|
| 売買契約前に相続人が取り壊した | 適用可 (従来から) |
| 売買契約後・引渡し前に相続人が取り壊した | 適用可(従来から) |
| 買主が引渡し後に取り壊した(改正前) | 適用不可 |
| 買主が翌年2月15日までに取り壊し・耐震改修(令和5年改正後) | 適用可(新設) |
スタッフ: 令和5年改正で、買主が解体する場合も使えるようになったんですね。
先生: そうです。ただし、売買契約の中に「買主が譲渡後に家屋を取り壊す」旨の特約を必ず入れること、そして翌年2月15日までに工事を完了することが条件です。
また、母屋だけ取り壊して駐車場や物置が残っていても、空き家特例でいう「居住用家屋」は母屋のみを指すため、問題ありません。
第18回|空き家特例は年末契約でも使える?(12月契約・翌年引渡しなど)
👉 詳細記事はこちら:第18回 空き家特例と年末契約の取扱い
スタッフ: 12月に売買契約を結んで、翌年1月に引き渡す場合はどうなりますか?
先生: 不動産の譲渡は引渡日基準を選ぶことが多いため、この場合は翌年(令和6年)分の譲渡所得として翌年の確定申告で申告します。そして、買主が引渡し後・翌年2月15日までに取り壊せば、空き家特例が適用できます。
スタッフ: では12月に契約・12月に引渡しを済ませたけど家屋が残っている場合は?
先生: これが令和5年改正で大きく変わったポイントです。改正前は「引渡し時点で家屋が残っている」ため特例は使えませんでした。しかし改正後は、買主が翌年2月15日までに取り壊せば特例が使えます。12月引渡しのケースでは特に重要な改正です。
2パターンの整理表
| ケース | 申告年分 | 特例適用 |
|---|---|---|
| 12月契約・翌年1月引渡し | 翌年分 | 翌年2月15日までに買主が取壊し → ○ |
| 12月契約・12月引渡し(家屋残存) | 当年分 | 翌年2月15日までに買主が取壊し → ○(改正後) |
第19回|売買契約後に家屋を取り壊し、引渡し前に被相続人が死亡した場合
👉 詳細記事はこちら:第19回 被相続人が売買契約後・引渡し前に死亡した場合の空き家特例
スタッフ: 被相続人が自分で売買契約を結び、家屋も取り壊したのに、引渡し前に亡くなってしまった場合はどうなりますか?
先生: これは非常に難しいケースで、「契約基準」か「引渡基準」かによって結論が変わります。
①契約基準で考えた場合
契約時点では家屋が存在しており、被相続人が居住していた事実もある。被相続人の意思を引き継いだ譲渡として捉えれば、3,000万円特別控除と軽減税率の適用が主張できる余地があります。
②引渡基準で考えた場合
相続開始時には家屋がすでに取り壊されているため、相続人は「土地のみ」を相続したことになります。空き家特例の前提要件(被相続人居住用家屋またはその敷地等を相続すること)を満たさないとして、特例適用は認められないという結論になります。
先生: 実務上は引渡基準が採用されるケースが多いですが、個別事情によっては契約基準での主張が認められる可能性もあります。このような複雑な事案は、必ず専門家に相談してください。
ただし、実際の適用可否は事実関係や申告方針によって慎重な判断が必要です。
第20回|居住用建物と事業用建物が併存する土地の区分方法
👉 詳細記事はこちら:第20回 居住用建物と事業用建物が併存する土地の区分方法
スタッフ: 同じ敷地に自宅と店舗が建っている場合、土地を居住用と事業用に分けるにはどうすればよいですか?床面積の割合で按分すればいいのでしょうか?
先生: よくある誤解ですが、床面積で按分してはいけません。正しい区分方法には優先順位があります。
区分の優先順位
- 柵・塀・生垣・通路などの物理的区分がある場合 → その区分に従う
- 物理的区分がない場合 → 地価税法基本通達6-3を準用し、建物の水平投影面積(建築面積)で按分する
スタッフ: 水平投影面積というのは?
先生: 建物を真上から見たときの面積、つまり建築面積のことです。各階の床面積を合計したものではありません。2階建てなら2階部分の面積は含まず、建物の「フットプリント」で判断します。
この区分を誤ると、小規模宅地等の特例の適用判断や相続税評価額に直接影響しますし、税務調査で指摘されやすいポイントでもあります。
第17回〜第20回のポイントまとめ
| 回 | テーマ | 主なポイント |
|---|---|---|
| 第17回 | 取り壊しのタイミング | 令和5年改正で買主が翌年2/15までに取壊せば特例適用可。母屋のみ取壊しでもOK |
| 第18回 | 年末契約の取扱い | 引渡日基準で申告年分が決まる。12月引渡し後に買主が翌年2/15までに取壊しても改正後は特例あり |
| 第19回 | 引渡し前の被相続人の死亡 | 契約基準か引渡基準かで結論が異なる難解ケース。実務上は引渡基準が多いが要専門家判断 |
| 第20回 | 居住用・事業用混在の土地区分 | 床面積ではなく水平投影面積で按分。物理的区分(塀等)があればそれに従う |
空き家特例シリーズ 記事一覧(バックナンバー)
- 第17回 空き家特例と家屋取り壊しのタイミング|令和5年改正後の注意点
- 第18回 空き家特例は年末契約でも使える?引渡し・取壊し要件を解説
- 第19回 売買契約後に家屋を取り壊し、引渡し前に死亡した場合の空き家特例
- 第20回 居住用建物と事業用建物が併存する土地の区分方法
空き家・相続でお悩みの方はご相談ください
空き家特例は、相続した実家を売却する際に大きな節税効果がある一方で、取り壊しのタイミング、売買契約書の内容、引渡日、家屋や土地の区分方法を誤ると、3,000万円控除が適用できなくなる可能性があります。
税理士法人松野茂税理士事務所では、尼崎を中心に、相続税申告や不動産売却に伴う譲渡所得のご相談を承っております。
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