空き家特例まとめ|相続した空き家の3,000万円控除・1億円判定を税理士が解説 第1回から第4回

空き家特例まとめ|相続した空き家の3,000万円控除・1億円判定を税理士が解説 第1回から第4回

共有相続・特定受遺者・二次相続まで|尼崎の税理士が実務ポイントを徹底解説

尼崎の税理士が解説|税理士法人松野茂税理士事務所

相続した実家や空き家を売却する場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる空き家特例を使える可能性があります。

しかし、空き家特例は要件が細かく、1億円判定・共有相続・特定受遺者・包括受遺者・二次相続・代襲相続など、実務で判断に迷うポイントが多い制度です。

特に、相続した空き家を兄弟姉妹で共有している場合、遺言で取得した場合、売却前に二次相続が発生した場合には、3,000万円控除が使えるかどうか慎重な確認が必要です。

この記事では、相続した空き家の売却・空き家特例の3,000万円控除・1億円判定の注意点について、相続税・譲渡所得に詳しい尼崎の税理士が、実務上のポイントをまとめて解説します。

【令和6年改正】控除額の上限変更に注意 令和6年1月1日以後の譲渡において、被相続人居住用家屋および敷地等を取得した相続人の数が3人以上の場合、特別控除額は1人あたり最高2,000万円(2人以下の場合は従来どおり最高3,000万円)となります。売却前に相続人の人数を必ず確認してください。
目次

シリーズ記事一覧

第1回|基本用語と1億円判定の基礎知識

第2回|共有相続・1億円判定の実務と譲渡時期の戦略

第3回|特定受遺者は対象外!遺言書の書き方に要注意

第4回|二次相続・代襲相続と空き家特例の関係

第1回 空き家特例の基本用語と1億円判定

スタッフ 先生、空き家特例ってよく聞くのですが、どんな制度なんですか?

先生 相続した実家や空き家を売却したとき、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。ただし、「相続した家を売れば無条件で使える」というわけではありません。まず用語をしっかり押さえてください。

押さえておきたい3つの基本用語

用語意味
被相続人居住用家屋被相続人が主として居住していた家屋。敷地内に母屋・離れ・蔵などがある場合、特例の対象は被相続人が実際に居住していた建築物のみ。
居住用家屋取得相続人相続等により被相続人の居住用家屋または敷地のいずれかを取得した相続人。この人が1億円判定の対象となる。
対象譲渡一体資産相続財産でなくても、被相続人の居住用家屋等と一体として利用されていた資産(例:同じ敷地の駐車場・畑など)。これらも1億円判定の計算に含まれる。

1億円判定とは

スタッフ 1億円判定って何ですか?

先生 一定期間内に相続した空き家等の譲渡対価の合計が1億円を超えると、空き家特例が使えなくなるというルールです。判定には3種類の譲渡を合算します。

✅ ポイント整理
① 適用前譲渡   ──本件譲渡前の一定期間内に行われた、特例不適用の譲渡 ② 本件譲渡    ──今回、特例を申請しようとしている譲渡 ③ 適用後譲渡   ──本件譲渡後の一定期間内に行われる(予定の)譲渡
⚠️ 注意ポイント
分割売却の場合:1回目5,000万円+2回目6,000万円=合計1億1,000万円 → 特例使用不可 共有持分の場合:持分ではなく「物件全体の対価」で判定する点に要注意 一定期間 = 相続開始日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(約3年10ヶ月)

第2回 共有相続・1億円判定の実務と時期調整

スタッフ 兄と共同で相続した場合でも、3,000万円控除は使えますか?

先生 要件を満たせば、共有相続人それぞれが3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。ただし1億円判定は「持分」ではなく「物件全体の譲渡対価」で判断するため、高額物件では注意が必要です。

適用期限と「一定期間」の2つの概念

期間の種類内容
空き家特例の適用期限相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(例:令和5年4月開始 → 令和8年12月31日まで)
適用後譲渡の一定期間本件譲渡の翌年1月1日から3年を経過する12月31日まで(この間の譲渡も1億円判定に加算)

物件評価額が1億円を超える場合の対策:譲渡時期をずらす

スタッフ 物件全体で1億2,000万円の場合、特例は諦めるしかないのですか?

先生 相続人間で譲渡時期をずらすことで、少なくとも先に譲渡した相続人は特例を使えます。ただし計画的な合意と専門家への相談が不可欠です。

✅ ポイント整理
A相続人:空き家特例の適用期限内に譲渡 → 3,000万円控除を適用 B相続人:A譲渡から3年経過後(適用後譲渡の一定期間終了後)に譲渡       → B相続人は特例不適用だが、A相続人の特例適用を妨げない ポイント:一人の譲渡が他の相続人の1億円判定期間を延長させる点に注意!

第3回 特定受遺者は対象外!遺言書の書き方に注意

スタッフ 世話になった姪に実家を遺言で遺したいのですが、空き家特例は使えますか?

先生 遺言の内容によっては使えません。空き家特例の対象は「相続人」と「包括受遺者」のみです。「特定受遺者(特定の財産を指定して受け取る人)」は対象外です。

包括遺贈と特定遺贈の違い

種類遺言例空き家特例
包括遺贈(○)「遺産の1/2を○○に遺贈する」「全財産を○○に」使える
特定遺贈(×)「○○の土地建物を△△に遺贈する」使えない

対策:養子縁組で「相続人」にしておく

スタッフ どうすれば特定受遺者でも特例を使えるようになりますか?

先生 対策の一つとして、生前に養子縁組を検討する方法があります。養子となれば「相続人」として財産を取得できるため、空き家特例の適用可能性が高まります。ただし養子縁組は相続税・遺留分・親族関係にも影響しますので、税理士・弁護士と相談しながら慎重に判断することが大切です。

✅ ポイント整理
養子縁組のメリット①:空き家特例(最大3,000万円控除)の適用可能性が高まる 養子縁組のメリット②:遺言書の記載解釈リスクを回避できる 養子縁組のメリット③:相続税の基礎控除額が1人増える(+600万円) ※養子縁組は相続税・遺留分・親族関係にも影響するため、税理士・弁護士と相談のうえ慎重に判断してください

第4回 二次相続・代襲相続と空き家特例

スタッフ 父が亡くなり兄と実家を相続しましたが、売却前に兄が亡くなりました。兄の子(甥)が引き継いだ場合、甥は特例を使えますか?

先生 残念ながら、このケースでは甥は空き家特例を使えません。「代襲相続」と「二次相続」は全く異なる扱いになります。

代襲相続と二次相続の決定的な違い

種類状況空き家特例
代襲相続被相続人の相続開始「前」にBが死亡 → CがBを代襲してAから直接相続Cも使える
二次相続(数次相続)被相続人の相続開始「後」にBが死亡 → CはBから相続(甲→B→Cの2段階)Cは使えない
⚠️ 注意ポイント
「相続開始前にBが死亡していたか、後か」が判断の分岐点 高齢の相続人がいる場合、登記・譲渡のタイミングが税負担に直結する 売却前に相続人の状況を確認し、早めの対策が重要

空き家特例 チェックリスト

取得者は相続人または包括受遺者か?(特定受遺者は対象外)
売却の相手方は「特別な関係がある者」ではないか?
一定期間内の譲渡対価の合計が1億円以下か?
空き家特例の適用期限(相続開始3年後の12月31日)内の譲渡か?
被相続人が主として居住していた家屋(母屋)の売却か?
共有相続の場合、他の相続人の譲渡時期との調整ができているか?
二次相続・代襲相続が絡んでいないか?
適用後譲渡の期間まで含めた1億円判定を確認しているか?

お問い合わせ・ご相談

空き家特例は要件が複雑で、ご状況によって判断が異なります。相続した不動産の売却を検討されている方は、お早めに専門家へご相談ください。

税理士法人松野茂税理士事務所
所在地:〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F(阪神尼崎駅徒歩1分) 電話:06-6419-5140 / FAX:06-6423-7500 営業時間:平日 9:00〜18:00 Webサイト:https://tax-ms.jp/
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