配当還元法とは?計算式・通達188-2・適用要件まで税理士がわかりやすく解説

配当還元法とは?計算式・通達188-2・適用要件まで税理士がわかりやすく解説

配当還元法とは、少数株主の株式を配当ベースで評価する方法で、
通達188-2に基づき計算されます。

目次

根拠通達と計算式

財産評価基本通達179(同族株主以外の株主等が取得した株式の評価)
同族株主以外の株主等が取得した株式については、特例的評価方式として配当還元方式により評価する。

計算式(通達188-2)

配当還元価額の計算式
配当還元価額(年配当金額 ÷ 10%)×(1株の資本金等の額 ÷ 50円)
用語内容
年配当金額直前期末以前2年間の配当金額の平均額を発行済株式数で除した金額
下限年配当金額が2円50銭未満または無配の場合は2円50銭を使用
1株の資本金等の額法人税法第2条第16号に定める資本金等の額(法人税申告書別表5(1)の金額)を発行済株式数で除した金額。BSの資本金や資本剰余金の合計とは必ずしも一致しない

配当還元法とは

配当還元法は、非上場会社の株式を相続・贈与する際に、その評価額を計算する方法のひとつです。

非上場会社の株式は証券取引所に上場していないため市場価格がありません。そのため国税庁が定めた財産評価基本通達のルールにしたがって評価額を計算します。

誰に適用される方法か

配当還元法はすべての株主に使える方法ではありません。会社の経営にほとんど影響力を持たない少数株主だけに認められた特例的な評価方法です(通達179・188)。

具体的には、同族会社(オーナー一族が支配する会社)の株式を少しだけ持っているケースが典型です。このような少数株主は次のような立場にあります。

  • 会社の経営方針に口を出せない
  • 株式を自由に売ることができない
  • 会社から受け取れるのは配当だけ

少数株主にとって株式とは「毎年配当をもらう権利」にすぎません。
だから「配当をもとに価値を計算しよう」というのが配当還元法の考え方です。

配当還元法の適用要件 5%未満  15%未満

配当還元法は、次の要件をすべて満たす株主が取得した株式に適用されます(財産評価基本通達179・188)。

要件① 評価する会社が非上場会社であること

配当還元法は非上場会社の株式評価に用いる方法です。上場株式は市場価格で評価するため適用されません。

要件② 取得者が「同族株主以外の株主等」又は【その他の株主】に該当すること

同族株主のいる会社 原則法 配当還元法 フローチャート
同族株主のいない会社 原則法 配当還元法 フローチャート

配当還元法は、会社の経営に関与できない少数株主だけに認められた特例的な評価方法です。取得者の立場によって次のとおり判定します。

会社の区分配当還元法が適用される株主根拠
同族株主がいる会社同族株主以外の株主通達188①
同族株主がいる会社
(同族株主であっても)
議決権割合5%未満かつ会社に中心的同族株主がいて、評価対象者が中心的同族株主にあたらない・役員及び役員見込み者でない場合は 【その他の株主】に該当→支配権がないので配当還元法となります。通達188②
同族株主がいない会社
議決権割合が15%未満の株主グループ)
評価対象者の属する株主グループの議決権割合が15%未満の株主通達188③
同族株主がいない会社(議決権割合が15%以上30%未満の株主グループ)議決権割合が5%未満 かつ会社に中心的株主がいて 評価対象者が役員及び役員見込み者でない場合は 【その他の株主】に該当→支配権がないので配当還元法となります。通達
188④

判定は取得後の議決権割合で行います。相続・贈与による株式の異動後の割合で確認してください。

財産基本通達188(1)〜(4)の要旨

188(1):同族株主のいる会社

同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主が取得した株式。

ここでの「同族株主」は、「株主1人+その同族関係者」の議決権合計が30%以上(多い場合50%超)のグループを指します。

188(2):中心的な同族株主のいる会社

中心的な同族株主のいる会社の株主のうち、その中心的同族株主以外の同族株主で、その者の取得後議決権が5%未満である株主の株式。

「中心的な同族株主」は、役員等で議決権25%以上を有する者などと定義されています。

188(3):同族株主のいない会社の少数株主

同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において「株主1人+その同族関係者」の議決権合計が議決権総数の15%未満である株主の取得した株式。

188(4):中心的株主がいるが同族株主はいない会社

中心的株主が存在し、かつ同族株主がいない会社の株主のうち、

「株主1人+その同族関係者」の議決権合計が15%以上であり、 その者の取得後議決権数が5%未満である株主の株式(ただし、役員等は除外)

要件③ 配当還元価額が原則的評価額を超えないこと

要件①②を満たす場合でも、計算した配当還元価額が原則的評価額(類似業種比準価額または純資産価額)を上回るときは、原則的評価額によります(通達188-2)。なお、純資産価額の内容は通達185によります。

適用される評価額
配当還元価額 ≦ 原則的評価額配当還元価額を採用
配当還元価額 > 原則的評価額原則的評価額によります

適用要件のまとめ

①非上場会社の株式である ②取得者が少数株主(同族株主以外)に該当する ③配当還元価額が原則的評価額を超えない
この3つをすべて満たすとき、配当還元法が適用されます。

要件②の判定(同族株主かどうか)は、株主構成・議決権割合・同族関係者の範囲によって大きく変わります。判定に迷う場合はお気軽にご相談ください。

計算式のしくみ

計算式は前半と後半の2つのパーツに分けると理解しやすくなります。

パーツ計算式意味
前半年配当金額 ÷ 10%毎年もらえる配当から株の価値を逆算する
後半1株資本金等の額 ÷ 50円50円基準と実際の株のサイズのズレを補正する

前半「÷10%」の意味

たとえば利回りが年10%だとすると、毎年1万円もらえる権利の価値は10万円です(10万円を10%で運用すれば毎年1万円もらえるため)。

このように「毎年もらえる金額」から「元本の価値」を逆算するのが前半部分の考え方です。配当を10%で割ることで、その配当を生み出す株式の価値を求めています。

後半「÷50円」の意味

財産評価基本通達は、かつての商法で定められていた1株50円の額面を基準に設計されています。しかし現在は会社によって1株が100円、500円、10,000円とさまざまです。

そのため「実際の1株資本金等の額が50円の何倍か」を計算して評価額を補正しています。

1株資本金等の額補正倍率(÷50円)
50円×1(補正なし)
100円×2
10,000円×200

「資本金」と「資本金等の額」の違い

計算式に出てくる「資本金等の額」は、一般的に使われる「資本金」とは異なる税務上の概念です。

用語内容
資本金(会計上)会社設立・増資のときに株主が払い込んだお金のうち、登記された金額
資本金等の額(税務上)法人税法第2条第16号に定める「法人が株主等から出資を受けた金額として政令で定める金額」

「資本金等の額」は貸借対照表(BS)の資本金や資本剰余金の合計とは必ずしも一致しません。法人税法施行令第8条に定める加算・減算項目を資本金の額に加減算して計算する、税務固有の概念です。

たとえば、利益準備金を資本に組み入れる無償増資を行った場合、BSの資本金は増加しますが、株主からの新たな拠出ではないため税務上の資本金等の額は増加しません。

配当還元法の計算に使う「1株当たりの資本金等の額」は、BSの科目から拾うのではなく、法人税申告書の別表5(1)に記載された資本金等の額を発行済株式数で除して求めます。

通達の設計思想 ― 50円・5円・10%

財産評価基本通達は次の標準モデルを基準に設計されています。

1株50円(標準額面)× 10%(標準利回り)= 5円(標準配当)

この「50円・5円・10%」の関係を押さえておくと、計算式全体の意味が一気に理解できます。

無配当の会社は評価額が半額になる

配当を出していない会社(無配当)の場合、年配当金額をゼロとして計算するわけではありません。通達188-2の規定により、最低2円50銭とみなして計算します。

この2円50銭は通達の標準モデルから導かれます。

標準配当 50円 × 10% = 5円
下限配当 50円 × 5% = 2円50銭(標準の半分)

標準配当5円に対して下限はちょうど半分の2円50銭です。したがって無配当の会社の評価額は標準配当の場合の半額になります。

具体的な計算例

1株の資本金等の額が10,000円の会社で比較します。

配当の状況年配当金額計算式配当還元価額
標準配当(利回り10%)5円(5÷10%)×(10,000÷50)10,000円
無配当2円50銭(下限)(2.5÷10%)×(10,000÷50)5,000円(半額)

1株の資本金等の額を確認するだけで、配当還元価額のおおよその上限と下限が瞬時にわかります。

配当の状況配当還元価額のめやす
標準配当(利回り10%)1株資本金等の額と同額
無配当1株資本金等の額の半額

配当が高い場合の上限(通達179・188-2)

配当が年10%を超えている会社では、計算上の配当還元価額が資本金等の額を上回ることがあります。通達188-2のただし書きにより、配当還元価額が原則的評価額(類似業種比準価額または純資産価額)を超える場合は、原則的評価額で評価します。なお、純資産価額の定義については通達185が定めています。

評価額のめやす
下限(無配当)1株資本金等の額の半額
上限(高配当)原則的評価額(類似業種比準価額・純資産価額)が天井

よくあるご質問(Q&A)

Q1.配当還元法はどんな株主に適用されますか?

同族株主以外の株主、または議決権割合が一定水準以下の少数株主に適用されます。具体的には、同族会社においてオーナー一族以外の立場で株式を少しだけ保有しているようなケースです。経営に関与できず、配当しか受け取れない株主の立場を考慮した特例的な評価方法です(財産評価基本通達179・188)。

Q2.「同族株主」かどうかはどうやって判定しますか?

課税時期(相続・贈与の日)において、株主1人とその同族関係者の議決権割合の合計によって判定します(通達188)。原則として30%以上のグループに属する株主が同族株主ですが、筆頭株主グループの議決権割合が50%超の場合は、その50%超のグループに属する株主が同族株主となります。この2段階の構造を確認したうえで判定することが重要です。なお判定は取得後の議決権割合で行うため、相続・贈与による株式の異動後の割合で確認します。

Q3.同族株主であっても配当還元法が使えるケースはありますか?

あります。同族株主であっても、次のいずれかに該当する場合は配当還元法で評価します(通達188)。

  • その株主の議決権割合が5%未満で、かつ役員でも中心的な同族株主でもない場合
  • 中心的な同族株主がいない会社で、議決権割合が5%未満の場合

また、同族株主がいない会社では、評価対象者の属する株主グループの議決権割合が15%未満であれば、通達188③により配当還元方式となる場合があります。5%と15%という2つの基準が通達上並立しており、会社の株主構成によって適用される基準が異なります。いずれにしても、議決権割合の水準が実務上の重要な判定ポイントとなります。

Q4.配当還元法の計算に使う「配当金額」はどこから取りますか?

直前期末以前2年間の配当金額の合計額の平均を、直前期末の発行済株式数で除した金額を使います。ただし、特別配当・記念配当など臨時・非経常的な配当は除いて計算します(通達188-2)。また計算結果が2円50銭未満または無配当の場合は、2円50銭とみなします。

Q5.会社が無配当の場合、評価額はゼロになりますか?

なりません。無配当の場合でも年配当金額は最低2円50銭とみなして計算します(通達188-2)。これは1株50円の標準額面に対する5%利回り相当額です。結果として、無配当の場合の配当還元価額は標準配当(5円)の場合の半額になります。

Q6.「1株当たりの資本金等の額」はどこで確認できますか?

法人税申告書の別表5(1)に記載された資本金等の額を発行済株式数(自己株式を除く)で除して求めます。貸借対照表(BS)の資本金や資本剰余金の合計とは必ずしも一致しないため、必ず申告書から確認してください。たとえば利益を資本に組み入れる無償増資を行った場合、BSの資本金は増加しますが、株主からの新たな拠出ではないため税務上の資本金等の額は増加しません。

Q7.配当還元価額が原則的評価額より高くなる場合はどうなりますか?

配当還元価額が原則的評価額(類似業種比準価額または純資産価額)を超える場合は、原則的評価額によります(通達188-2)。なお、純資産価額の内容自体は通達185によります。高配当の会社ほど原則的評価額も高い傾向がありますので、実務上は配当還元価額が上限にかかるケースは多くありませんが、配当還元価額が原則的評価額を超えるときは原則的評価額で評価することになります。

Q8.相続と贈与で判定方法は変わりますか?

基本的な判定の考え方は同じです。いずれも取得した後の議決権割合で同族株主かどうかを判定します。贈与の場合は贈与を受けた後、相続の場合は相続による取得後の割合で判断します。取得前の割合で判定するわけではない点に注意が必要です。

Q9.株式を分散させると配当還元法が使えるようになりますか?

議決権割合の水準によっては使えるようになります。たとえばオーナーが保有する株式の一部を、議決権割合が5%未満になるよう親族以外の従業員や役員に分散すると、その取得者については配当還元法が適用される場合があります。ただし同族関係者の範囲に注意が必要です。配偶者・直系血族・兄弟姉妹などは議決権割合の合算対象になります。事前に専門家へご相談ください。

Q10.事業承継で配当還元法を活用する方法はありますか?

少数株主への株式贈与・譲渡のスキームとして活用されます。後継者以外の親族や従業員など、経営に関与しない少数株主へ株式を移転する場合、配当還元法で評価されるため贈与税・相続税の負担が大幅に軽減されることがあります。ただし租税回避と判断されないよう、株式移転の目的・実態・スキームの合理性が重要です。必ず専門家と連携した上で進めてください。

Q11.配当還元法は株式の売買価格にも使えますか?

税務上の株式売買においては、売買当事者それぞれの立場に応じた評価方式の検討が必要です。売り手・買い手のいずれが少数株主に該当するか、同族株主に該当するかによって適用される評価方法が異なるため、当事者双方の立場で評価方法を確認することが重要です。少数株主が売買当事者となる場合、配当還元価額を下回る価額での取引はみなし贈与の問題が生じるリスクがあります。また、売買の相手方が同族株主に該当する場合は原則的評価額が適用されます。

Q12.自社株評価を依頼したい場合、何を準備すればよいですか?

主に以下の資料をご準備いただくとスムーズです。

  • 直近3期分の法人税申告書一式(別表5(1)含む)
  • 直近3期分の決算書(貸借対照表・損益計算書)
  • 株主名簿(議決権割合がわかるもの)
  • 定款
  • 直近2期分の配当の状況(配当金額・株式数)

資料が揃っていない場合でも、まずはご相談ください。

Q13.配当還元法と類似業種比準価額・純資産価額はどう違いますか?

評価方法対象株主評価の基準
配当還元法少数株主(特例的評価)配当金額をもとに計算
類似業種比準価額同族株主(原則的評価)上場類似会社の株価と比準
純資産価額同族株主(原則的評価)会社の純資産を時価で評価

一般的に配当還元法による評価額が最も低くなります。同じ会社の株式でも、誰が取得するかによって評価方法が異なり、税負担に大きな差が生じます。

Q14.会社が赤字で配当を出せない状態が続いています。評価額への影響は?

配当を出せない状態(無配当)が続いていても、配当還元法では年配当金額を最低2円50銭とみなすため、評価額がゼロにはなりません。ただし無配当の場合は標準配当時の半額で評価されますので、相続税・贈与税の負担という観点では有利な状況です。なお、会社の業績悪化により純資産が大幅に毀損している場合でも、少数株主であれば配当還元法が適用されるため、純資産価額よりも低く評価されることがあります。

Q15.相続が発生してから評価方法を選べますか?

評価方法は取得した株主の立場によって通達で定まるものであり、任意に選択できるものではありません。ただし、相続前の生前対策として株式を分散させておくことで、取得者が少数株主に該当するよう設計することは可能です。相続発生後に評価方法を変えることはできませんので、事前の対策が非常に重要です。

Q16.配当還元法の適用判定で間違いやすいポイントは何ですか?

実務上、特に注意が必要なポイントは次のとおりです。

  • 同族関係者の範囲の見落とし:配偶者・直系血族・兄弟姉妹・これらの者が支配する法人なども議決権割合の合算対象です
  • 取得前・取得後の混同:判定は取得後の議決権割合で行います
  • BSの資本金と資本金等の額の混同:計算には別表5(1)の税務上の資本金等の額を使います
  • 臨時配当の取り扱い:特別配当・記念配当は年配当金額から除外します

これらの誤りは相続税申告の過誤につながるため、専門家による確認が不可欠です。

まとめ

配当還元法は、経営に関与できない少数株主の立場を考慮し、毎年受け取る配当をもとに株式の価値を計算する特例的な評価方法です。通達は「1株50円・配当5円・利回り10%」を標準モデルとして設計されており、無配当の場合は評価額が半額になります。

非上場株式の相続・贈与では、誰が株式を取得するかによって適用される評価方法がまったく異なります。配当還元法が適用できるかどうかの判定は専門的な知識が必要ですので、お気軽にご相談ください。


税理士法人松野茂税理士事務所
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