所得税基本通達59-6と資産課税課情報第22号|尼崎の税理士が解説

所得税基本通達59-6と資産課税課情報第22号|尼崎の税理士が解説

令和2年9月30日付資産課税課情報第22号により、所得税基本通達59-6(株式等を贈与等した場合の「その時における価額」)の解釈が明確化されました。個人から法人への非上場株式移転におけるみなし譲渡課税の実務では、今や前提知識といってよい内容です。

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目次

1 所法59条と所基通59-6のフレーム

所得税法第59条第1項は、個人が法人に対して贈与または著しく低い価額の対価による譲渡(低額譲渡)をした場合に、「その時における価額」で譲渡があったものとみなして、みなし譲渡所得を課税する規定です。

この「その時における価額」の具体的算定方法を示したのが所得税基本通達59-6であり、そのベースとして所得税基本通達23〜35共-9および財産評価基本通達178〜189-7が準用されています。

2 議決権割合の判定時期|譲渡と贈与で異なる理由

資産課税課情報第22号が最初に明らかにした重要点は、少数株主判定の基礎となる議決権割合を「いつの時点」で見るかです。譲渡と贈与とでは、課税の本質が異なるため、判定時期も異なります。

譲渡(低額譲渡)の場合 → 譲渡直前

低額譲渡に対するみなし課税は、譲渡人が保有していた期間に蓄積されたキャピタルゲイン(含み益)を精算するための課税です。したがって、議決権割合の判定は譲渡直前の保有状況を基礎とします。

贈与(法人への)の場合 → 贈与後

法人への贈与に対するみなし課税は、法人が取得した株式のその時点における価値を捉えるための課税です。贈与によって株式が法人に移転した後の状態を基礎として議決権割合を判定することが、課税の本質に整合します。

この区別は、通達の文言「譲渡又は贈与直前」という表現からは読み取りにくく、課税の性質論から導かれる実務上の急所です。

判定の方向(譲渡人基準)

令和2年3月24日の最高裁判決(第三小法廷)は、少数株主に該当するかどうかは株式を譲渡した株主(譲渡人)について判断すべきであると明示し、国側の主張を認めました。

3 原則法と配当還元方式の適用分岐

59-6では、非上場株式の「その時における価額」は、原則として財産評価基本通達178以下の原則的評価方法(類似業種比準価額方式・純資産価額方式・併用方式)によります。

一方、譲渡人が少数株主に該当する場合には、例外的な評価方式である配当還元方式が適用されます(評基通188-2)。

資産課税課情報第22号により、この分岐の判定基準が通達レベルで明文化されました。

4 中心的同族株主と「小会社扱い」・L=0.5

所基通59-6⑵は、評価会社にとって譲渡人が「中心的な同族株主」(評基通188⑵)である場合の評価方法を定めています。

中心的同族株主の保有株式は、評価会社の規模にかかわらず「常に小会社に該当するものとして」評価通達179の例により評価します。

選択方式算式
純資産価額方式のみ純資産価額
小会社の併用方式純資産価額 × 0.5 + 類似業種比準価額 × 0.5(L=0.5)

「小会社扱い」はあくまで評価通達179の適用上の概念であり、会社そのものの規模区分を変更する趣旨ではありません。

5 類似業種比準価額の「しんしゃく割合」は下げない

類似業種比準価額のしんしゃく割合(大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5)は上場会社との規模格差等を反映するパラメータです(評基通180)。所基通59-6⑵の「小会社扱い」は評価方式の選択に関するものであり、しんしゃく割合自体を書き換える趣旨ではありません。

評価会社の実際の規模しんしゃく割合59-6⑵適用後の評価方式
大会社0.7(変更なし)L=0.5の小会社併用方式
中会社0.6(変更なし)L=0.5の小会社併用方式
小会社0.5L=0.5の小会社併用方式

6 子会社・孫会社株式評価への波及

評価会社が子会社株式を保有しており、その評価会社が子会社にとって中心的同族株主に該当する場合、子会社株式の評価にも59-6⑵の考え方が及びます。

  • 評価会社が子会社の中心的同族株主である場合 → 子会社も「小会社扱い・L=0.5」で評価
  • 孫会社についても、子会社が孫会社の中心的同族株主であれば → 同様に孫会社を小会社扱いとして評価

7 土地・有価証券は時価評価、法人税相当額控除なし

所法59条の趣旨(「その時における価額」でみなし譲渡所得を計算する)を踏まえ、以下の取扱いとなります。

土地・上場有価証券の評価

評基通185による純資産価額の計算上、譲渡等の時における時価で評価します。相続税評価のような安全率(公示価格の8割水準等)は適用不要です。

法人税額等相当額の控除

評基通186-2による含み益に対する法人税等相当額は控除しません。みなし譲渡課税の趣旨(値上がり益の精算)から整合的な取扱いです。この取扱いは子会社の純資産価額の計算においても同様です。

8 訴訟多発から実務安定化へ

令和2年3月24日の最高裁判決を踏まえた通達改正と資産課税課情報第22号は、以下の点を明文化し、訴訟リスクの高かった領域に一定のガイドラインを与えました。

  • 少数株主判定は譲渡人基準(譲渡は直前・贈与は贈与後)
  • 中心的同族株主の株式は小会社扱い・L=0.5
  • しんしゃく割合は会社規模に応じた0.7/0.6/0.5を維持
  • 土地・有価証券は時価評価(法人税相当額控除なし)

参考

資産課税課情報第22号(令和2年9月30日)国税庁資産課税課

所得税基本通達59-6(令和2年8月28日改正)

令和2年8月28日付通達改正(新旧対照表)

財産評価基本通達178〜179

財産評価基本通達185〜188

最後に

株式評価やみなし譲渡課税は、個別事情により結論が大きく変わります。

当事務所では、
・同族株主判定
・配当還元方式の適用可否
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について実務ベースで対応しています。

※単発相談はお受けしておりませんが、
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所属税理士:近畿税理士会 尼崎支部
法人登録番号:第6283号
法人番号:4140005027558
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