【まとめ】空き家特例シリーズ第25回〜第28回|賃貸併用住宅・生活の本拠・要介護認定を尼崎の税理士が解説

【まとめ】空き家特例シリーズ第25回〜第28回|賃貸併用住宅・生活の本拠・要介護認定を尼崎の税理士が解説

目次

はじめに

空き家特例(被相続人の居住用財産に係る3,000万円特別控除)は、相続した実家を売却する際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる重要な制度です。

しかし実務では、「空き家だから当然使える」と思っていたものの、賃貸部分に入居者がいた、親族が住み込みで介護していた、老人ホーム入所時に要介護認定を受けていなかったなどの理由で、要件を満たさないケースも少なくありません。

今回は、空き家特例シリーズ第25回から第28回までで取り上げた「賃貸併用住宅の取扱い」「空き家特例が使えないケース」「生活の本拠の判定方法」「要介護認定のタイミング」について、尼崎の税理士がQ&A形式で実務上のポイントを解説します。


第25回|賃貸併用住宅と空き家特例Q&A

👉 詳細記事はこちら:第25回 賃貸併用住宅と空き家特例について

スタッフ: 先生、相続した賃貸併用住宅を売却する予定のお客様がいます。空き家特例は使えますか?

先生: 賃貸部分に入居者がいる場合は、原則として空き家特例の適用は難しいです。空き家特例には「相続開始直前において被相続人以外に居住していた者がいなかったこと」という要件があるためです。

スタッフ: でも相続時点で賃貸部分がすべて空室だったケースはどうですか?

先生: それなら話は別です。すべての賃貸部分が空室であれば、特例の適用を受けられる可能性があります。ただし、建物全体が対象になるわけではなく、被相続人が実際に居住していた部分の床面積に対応する敷地のみが対象です。按分計算が必要になります。

計算例(建物200㎡・居住120㎡・賃貸80㎡・敷地300㎡の場合):

計算内容結果
特例対象の敷地300㎡ × 120㎡ ÷ 200㎡180㎡のみ対象

スタッフ: 契約終了後も入居者が居座っている場合は?

先生: 契約が終了していても、実際に人が住んでいれば税務上は「居住者あり」とみなされます。税務の判断は形式ではなく実質で行われるため、この場合は特例の適用は困難です。法的手続きで完全退去させた上で、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却することが先決です。


第26回|空き家特例が意外と使えないケースまとめ

👉 詳細記事はこちら:第26回 空き家特例、意外と使えないケース多いんです

空き家特例は「被相続人が一人で居住していた家屋」という要件が中心です。措置通達35-12では「被相続人以外に居住をしていた者」とは、家屋を生活の拠点として利用していた被相続人以外の者を指すと明記されており、有償・無償・介護目的を問わず、居住の事実があれば適用できません。

適用できない代表的なケース

ケース判定理由
賃貸併用住宅(入居者あり)✕ 不可同一建物内に他の居住者がいる
親戚に無償(使用貸借)で貸していた✕ 不可有償・無償を問わず他者の居住事実あり
介護のため家族が住み込み同居✕ 不可「一人で居住」の要件を満たさない
通いで介護(自宅が生活の拠点)○ 可生活の本拠は娘の自宅にある
配偶者と同時死亡(民法32条の2)✕ 不可配偶者と同居しており、同時死亡と推定される場合は、相続開始直前に被相続人以外の居住者がいたと判断されるため、空き家特例の適用は難しいと考えられます。

スタッフ: 住み込みでダメだった場合、3,000万円控除は完全に諦めるしかないですか?

先生: そうとは限りません。空き家特例(措法35条3項)が使えなくても、相続後に相続人がその家に住み続けて売却する場合は、相続人自身の居住用財産の3,000万円控除(措法35条1項)が使えるケースがあります。 空き家特例は「相続から3年以内」という期限がありますが、自己の居住用は「住まなくなってから3年以内」なので、住み続けている限り期限を気にしなくてよい点がメリットです。ただし相続税の取得費加算との併用は不可のため、有利判定が重要です。


第27回|空き家特例「生活の本拠」の判定方法

👉 詳細記事はこちら:第27回 空き家特例「生活の本拠」完全ガイド

空き家特例で実務上もっとも判断に迷いやすいのが「被相続人の生活の本拠がどこにあったか」です。住民票の所在地ではなく、客観的な居住の事実に基づいて判定します(最高裁昭和49年9月20日判決)。

生活の本拠の判定要素(総合考慮)

公共料金の使用状況、家財道具の所在、郵便物の送付先、滞在日数、住民票の所在地などを総合的に確認します。

入院・入所のケース別判定

状況判定ポイント
自宅療養・通院で死亡○ 適用可自宅が生活の本拠
短期入院(数日〜6ヶ月未満)○ 適用可一時的入院、退院意思あり
中期・長期入院(自宅維持)○ 原則適用可家財道具残存・公共料金継続・他の用途不使用が条件
老人ホーム入所(要介護認定あり)○ 条件付き適用可入所直前まで居住、入所後も自宅を他の用途に使用しないこと
老人ホーム入所(要介護認定なし)✕ 適用不可特定事由の要件を満たさない
完全に親族宅へ転居✕ 適用不可生活の本拠を移したと判断
二世帯住宅(完全分離型)○ 適用可(被相続人部分のみ)構造上独立した部分は別建物扱い
二世帯住宅(共用型)✕ 適用不可独立性なく同居に該当

重要:90%ルール(店舗併用住宅の場合)

自己の店舗など事業用部分があっても、居住用部分が建物全体のおおむね90%以上であれば、全体を居住用とみなして特例を全額適用できます(空き家特例にも適用)。90%未満の場合は床面積按分になります。なお、他人への賃貸部分がある場合は適用できません。


第28回|要介護認定のタイミングと空き家特例

👉 詳細記事はこちら:第28回 空き家特例における要介護認定のタイミングと手続き

被相続人が老人ホームへ入所していた場合、空き家特例の「特定事由」に該当するには要介護認定等が必要です。実務では認定のタイミングをめぐる判断に迷うケースがあります。

ケース別:認定タイミングと適用可否

ケース①:認定調査後・認定結果が出る前に施設入所した場合原則として問題ありません。 要介護認定の効力は申請日に遡及して発生するため、後日交付される介護保険被保険者証で認定日(申請日)が入所日より前であることを確認します。

ケース②:申請後すぐ(認定調査前)に施設入所した場合原則として問題ありません。 認定調査は施設でも実施できます。申請さえしていれば、認定日は申請日に遡及されます。

ケース③:基本チェックリストによる事業対象者認定の場合空き家特例の「特定事由」に該当します。 要介護認定・要支援認定だけでなく、介護保険法施行規則に基づく事業対象者認定(基本チェックリスト)でも特例の適用が可能です。

空き家特例「特定事由」に該当する認定の種類

  • 要介護認定(要介護1〜5)
  • 要支援認定(要支援1・2)
  • 基本チェックリストによる事業対象者認定

実務上の重要ポイント:早めの申請と書類保管

将来の空き家特例適用に備えるため、老人ホーム入所を検討し始めた段階で速やかに要介護認定の申請を行うことが大切です。緊急入所の場合でも申請さえしていれば遡及適用されます。介護保険被保険者証は相続後の申告時に必須書類となるため、必ず保管してください。


第25回〜第28回のポイントまとめ

テーマ主なポイント
第25回賃貸併用住宅と空き家特例相続時に空室なら特例の可能性あり。ただし居住用部分のみ按分。不法占有は実態で判断
第26回意外と使えないケース使用貸借・住み込み介護・同時死亡は不可。通い介護はOK。代替として措法35条1項も検討
第27回生活の本拠の判定住民票でなく客観的居住事実で判断。入院・老人ホーム入所のケース別判定と90%ルールに注意
第28回要介護認定のタイミング申請後の入所は遡及適用でOK。基本チェックリストの事業対象者認定でも特例に該当

空き家特例シリーズ 記事一覧(バックナンバー)


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空き家特例は、「空き家だから使える」「賃貸部分があるから絶対に使えない」と単純に判断できる制度ではありません。

実際には、相続開始直前に誰が住んでいたのか、賃貸部分に入居者がいたのか、老人ホーム入所前の生活の本拠はどこだったのか、要介護認定の時期はいつだったのかなど、事実関係を丁寧に確認する必要があります。

税理士法人松野茂税理士事務所では、相続税申告や相続した不動産の譲渡所得申告について、実務経験に基づいたサポートを行っております。阪神尼崎駅徒歩1分、尼崎で地域密着30年の税理士事務所として、相続・不動産売却に関するご相談を承っております。

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