M&A における株式譲渡と退職金の
税負担最適化シミュレーション
中小企業オーナーが M&A(株式譲渡)で会社を売却する際、退職金の設定次第で数百万円単位の節税が可能です。株式譲渡益と退職所得はそれぞれ異なる課税方式が適用されるため、両者のバランスを最適化することで合計税負担を最小化できます。本記事では仕組みの解説とシミュレーターをご用意しました。
なぜ退職金を活用できるのか
M&A 時の対価は通常「株式譲渡対価」として一括計上されます。しかし、オーナー社長が退任を機に退職金を受け取れば、対価を「株式譲渡代金+退職金」に分けることができます。
ポイント① 株式譲渡益は「申告分離課税」で一律 20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
ポイント② 退職所得は「退職所得控除」を差し引いた残額の 1/2 のみに総合課税(累進税率)が適用される
ポイント③ 課税退職所得が低い範囲(税率23%以下)では、退職金の実効税率が株式譲渡税率 20.315% を下回る → 節税効果が生まれる
計算の仕組み
① 退職所得控除額
② 課税退職所得・退職金税額
③ 所得税率表(退職所得・総合課税)
| 課税退職所得 | 所得税率 | 退職金を増やした部分にかかる税率の目安※ |
|---|---|---|
| 195万円 以下 | 5% | 約 7.6% |
| 195万円 超 ~ 330万円 | 10% | 約 10.1% |
| 330万円 超 ~ 695万円 | 20% | 約 15.2% |
| 695万円 超 ~ 900万円 | 23% | 約 16.7% |
| 900万円 超 ~ 1,800万円 | 33% | 約 21.8% |
| 1,800万円 超 ~ 4,000万円 | 40% | 約 25.4% |
| 4,000万円 超 | 45% | 約 28.0% |
※ 退職金ベースの限界税率 = 所得税率 × 1.021(復興特別所得税) × 1/2 + 住民税10% × 1/2 ※住民税も課税退職所得(1/2後)にかかるため、退職金を増やした部分への税率は上記のとおり
したがって、課税退職所得 900万円以内に退職金を設定することが節税の基本原則です。
例)勤続19年の場合:退職所得控除760万円 + 900万円 × 2 = 2,560万円が最適退職金の目安
④ 株式譲渡税
シミュレーター
以下のシミュレーターで、ご自身の条件を入力してください。最適な退職金額と節税額を自動計算します。
| 退職金額 | 株式譲渡対価 | 課税譲渡所得 | 株式譲渡税① | 退職金税② | 合計税金①+② | 節税額 |
|---|
実務上の注意点
役員勤続年数が5年以下の場合の注意
役員等としての勤続年数が5年以下の場合には、その退職手当等は「特定役員退職手当等」として扱われ、退職所得の2分の1課税が適用されません(所得税法第30条第5項)。本シミュレーターは2分の1課税を前提として計算しているため、勤続年数が5年以下のケースには適用できません。該当する場合は別途ご相談ください。
退職金の適正額について
退職金は「不相当に高額な部分」は損金算入が否認される可能性があります。実務上は功績倍率法(最終月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率)や同業他社との比較によって適正額を算定します。税務調査では退職金の妥当性が争点になるケースもあるため、根拠を明確にしておくことが重要です。
買い手側の取り扱い
売り手オーナーへの退職金は、買収後の会社が支払うことになります。買い手側では退職給与引当金の取り崩しや損金算入の処理が必要となるため、M&A契約書に退職金支払いの条件・タイミングを明確に規定する必要があります。
役員退職金規程の整備
退職金を損金算入するためには、株主総会決議と役員退職金規程の整備が前提となります。M&A が決まってから急いで規程を作ると、税務上の否認リスクが高まります。事前の準備が欠かせません。
M&A の税負担最適化は、個々の状況(譲渡対価の規模、勤続年数、最終報酬額、株式取得費等)によって最適解が大きく異なります。シミュレーターはあくまで概算であり、実際の申告に際しては専門家にご相談ください。
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