会社を売ると税率30%?|2027年ミニマムタックスでM&Aの手取りが激減する理由

M&Aで会社を売るとき、税金はどう変わる? 2027年からの「富裕層税制」改正で注意すべきこと

「そろそろ会社を売ろうと思っているんですが、税金はどのくらいかかりますか?」

最近、こうしたご相談が増えています。

M&Aで会社の株式を売却する場合、譲渡益に対する税率は20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の申告分離課税が基本です。これ自体は以前から変わりません。

ところが、2027年(令和9年)分の所得から、高額の売却益が出た場合には大幅に税負担が増える制度改正が決まっています。「ミニマムタックス(富裕層税制)」の強化です。

2027年1月から課税強化されます。 
株式譲渡益10億円で30.05%+9,735万円 30億円で33.35%+2億4,975万円 大幅な増税です。 これは富裕層課税の始まりと言われ今後も強化されると予想されています。

今回は、M&Aをご検討中のオーナー経営者の方に向けて、この制度改正のポイントをわかりやすくお伝えします。

売却時期によっては、税負担が大きく変わる可能性があります。

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目次

「ミニマムタックス」とは何ですか?

正式名称は「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化に係る措置」といいます。

もともと日本の所得税は累進課税なので、所得が高くなるほど税率が上がります。ところが、株式の譲渡益や配当など「金融所得」は一律20%前後の分離課税です。そのため、年収1億円を超えるあたりから、所得が増えるほど実効税率が下がるという「1億円の壁」と呼ばれる逆転現象がありました。

これを是正するために2025年(令和7年)分から導入されたのがミニマムタックスです。

計算のしくみをひと言でいうと、「通常の計算による所得税額が一定の最低税率を下回る場合に、差額を追加で納税する」制度です。


現行(令和7年〜)と改正後(令和9年〜)の違い

制度は2段階で強化されます。

現行(令和7年=2025年分〜)改正後(令和9年=2027年分〜)
特別控除額3.3億円1.65億円(半減)
ミニマム税率22.5%30.0%(引き上げ)
申告・納税(令和7年=2025年分〜)(令和9年=2027年分〜)

控除額が半分になり、かつ税率が上がる——この二重の改正が同時に適用されます。


株式譲渡・不動産M&Aへの影響はどのくらい大きい?

株式の譲渡益は通常20.315%のフラット課税です。このフラット税率がミニマムタックスと最もかみ合わない構造になっています。

不動産M&A(株式譲渡)および分離長期譲渡所得は、どちらも同じ税率構造のため影響も同様です。

課税所得別に税額を試算すると、次のようになります。


税額比較表(不動産M&A・株式譲渡・分離長期譲渡所得)

※ 他の所得・各種控除は考慮しない簡略計算です。住民税(5%)を含みます。

※ 以下の税額・実効税率は、複数の専門家試算をベースにした概算モデルです。実際の税額は他の所得・控除・居住地等により変動します。個別の税務判断は必ず専門家にご確認ください。

課税所得通常税額(20.315%)現行合計税額
(令和7年〜)
改正後合計税額
(令和9年〜)
増加額
現行→改正後
5億円1億157万円
(実効20.315%)
1億157万円(20.315%・追加なし)1億2,550万円(25.10%)+2,393万円
10億円2億315万円
(実効20.315%)
2億315万円(20.315%・追加なし)3億50万円(30.05%)+9,735万円
20億円4億630万円
(実効20.315%)
4億7,575万円(23.79%)6億5,050万円(32.53%)+1億7,475万円
30億円6億945万円
(実効20.315%)
7億5,075万円(25.03%)10億50万円(33.35%)+2億4,975万円

課税所得が10億円の案件では、改正後は現行に比べて約1億円もの税負担増になります。30億円規模になると、その差は2億5,000万円に達します。

こうした大型案件では、M&A価格の交渉と同時に「いつ売るか」「税をどう設計するか」が手取り額を大きく左右します。

売却のタイミングやスキームを誤ると、
想定以上の税負担が発生する可能性があります。

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■ 現行制度(令和7・8年分)  改正後(令和9年分以降)

項目現行(R7・R8年分)改正後(R9年分〜)
特別控除額3億3,000万円1億6,500万円
適用税率22.5%30%
実質的な対象所得(金融所得のみの場合)約10億円超約3.4億円超
株式譲渡の最高税率(復興税・住民税込)約20.3%35.63%

2026年中の譲渡が重要なタイミングになる理由

改正の適用は令和9年(2027年)分の所得からです。

つまり、2026年(令和8年)中に株式譲渡を完了できれば、現行ルール(控除3.3億円・税率22.5%)が適用されます。20億円規模の案件では、2026年中と2027年以降では税負担の差が1億7,000万円超になることもあります。

M&Aは交渉・デューデリジェンス・契約・クロージングまで一定の時間がかかります。2027年以降への先送りにならないよう、早めに動くことが大切です。


役員退職金の設計が税負担を大きく左右します

M&Aにおいて、もう一つ重要なのが役員退職金の活用です。

ミニマムタックスの「基準所得金額」は、株式の譲渡益や不動産の譲渡益だけでなく、退職所得も形式上は含まれます。ところが、退職所得には退職所得控除(勤続年数に応じた大きな非課税枠)があり、さらにその残額を2分の1にしてから課税されます。

この二段階の圧縮により、同じ受取額であっても課税ベースが大きく減少し、実効税率がミニマムタックスの最低税率(改正後30%)を下回るケースが多いとされています。

そのため、ミニマムタックスの追加課税が実際に集中するのは、フラット税率が適用される株式譲渡・不動産M&A・分離長期譲渡所得であり、退職金は退職所得控除と1/2課税の効果によって追加課税の影響を受けにくい構造になっています。

こうした税率構造の違いを活かして、M&Aにおいて退職金をあらかじめ適切に設計しておくことが、オーナーの手取り額を最大化するうえで重要なポイントの一つです。

具体的なイメージで比べてみましょう

例えば、売却対価10億円をすべて株式譲渡益として受け取るケース(A)と、株式7億円+役員退職金3億円に分けるケース(B)を比べると、2027年以降のルールでは、後者の方が手取りで約3,000万円多くなる試算になります。

退職金は退職所得控除と1/2課税により、実効税率が株式譲渡より低く抑えられるためです。

パターン受取内訳税制の区分概算実効税率概算税額手取り額(概算)
A株式譲渡10億円のみ株式譲渡益<br>(ミニマムタックス適用後)約30%約3.0億円約7.0億円
B株式7億円<br>+退職金3億円株式7億:ミニマムタックス後<br>退職金3億:退職所得控除+1/2課税株式:約30%<br>退職金:約20%2.1億+0.6億<br>=約2.7億円約7.3億円

実際の金額は勤続年数や他の所得により変わりますが、「株式対価と退職金の配分設計」が手取り額を大きく左右することがお分かりいただけると思います。

ただし、税務上の「適正額」を超えると損金として認められなくなるリスクがあります。功績倍率などの算定基準を踏まえた慎重な設計が必要ですので、早い段階でのご相談をおすすめします。

なお、退職金についても将来の税制改正議論の対象となる可能性があるため、最新情報のフォローが欠かせません。


[脚注・前提条件] 本比較表は以下の条件による簡易試算です。個別の税額計算ではありません。

  • 株式譲渡益と退職金の合計受取額:10億円
  • 勤続年数:30年(退職所得控除=1,500万円と仮定)
  • 株式譲渡:ミニマムタックス強化後(令和9年分以降)で実効税率約30%とする簡易モデル
  • 退職金:退職所得控除+1/2課税により実効税率約20%とする簡易モデル(累進計算は省略)
  • 退職金額・勤続年数・他の所得・社会保険料などにより結果は大きく変わります。あくまで概算イメージとしてご参照ください。

まとめ

  • 2027年(令和9年)分から、ミニマムタックス(富裕層税制)が大幅に強化されます
  • 株式譲渡・不動産M&Aはフラット税率のため最も影響を受けやすい構造です
  • 課税所得10億円規模で約1億円、30億円規模で約2.5億円の税負担増が見込まれます
  • 2026年中の譲渡完了がタイムリミットの目安です
  • 役員退職金の設計も含め、総合的な税負担の最小化を早期に検討することが重要です

多くの解説でも、「役員退職金を活用したミニマムタックス対策」は有力な手段の一つとして挙げられています

会社売却における税務は、
タイミングとスキームによって大きな差が生じます。

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※ 本記事は2026年4月時点の税制に基づいています。税制改正大綱の内容は今後の国会審議等により変更となる場合があります。個別の税務判断については専門家にご相談ください。

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