同じ敷地内の別棟は3,000万円控除の対象?一の家屋の判定を尼崎の税理士が解説

【税理士が解説】「一の家屋」の判定で迷いやすいケース - 居住用財産の特例適用Q&A
目次

はじめに

居住用財産の3,000万円特別控除では、売却する建物や敷地が「居住用財産」に該当するかどうかが重要です。

その中でも実務で判断に迷いやすいのが、「一の家屋」に該当するかどうかです。

たとえば、同じ敷地内に親世帯の自宅と子世帯の別棟がある場合、二世帯住宅で玄関や水回りが分かれている場合、敷地内に子どもの勉強部屋用プレハブや物置・車庫がある場合などは、3,000万円控除の対象範囲を慎重に判断する必要があります。

ポイントは、登記が同じか別かだけではありません。玄関・台所・浴室・トイレなどの生活設備が独立しているか、内部で行き来できる構造か、生計が一か別か、実際にどのように使われていたかを総合的に確認します。

この記事では、居住用財産の3,000万円特別控除で問題になりやすい「一の家屋」の判定について、別棟の二世帯住宅、敷地内同居、子どもの勉強部屋用プレハブなどの具体例をもとに、税理士実務の視点から解説します。

「一の家屋」は登記だけでなく生活実態で判断する

結論として、「一の家屋」に該当するかどうかは、登記の状況だけで判断するものではありません。

別棟で登記が分かれていても、生活設備が独立しておらず、母屋の付属的な用途として使われている場合には、一体の家屋として判断できる可能性があります。

一方で、同じ敷地内にある建物でも、玄関・台所・浴室・トイレなどが独立し、別世帯が独立した生活単位として使用している場合には、別個の家屋と判断される可能性があります。

そのため、居住用財産の3,000万円特別控除を検討する際は、建物の構造、生活設備、使用実態、生計関係を確認することが重要です。


スタッフからの質問

質問1:同じ敷地内に嫁夫婦が住んでいる場合

スタッフ:
「先生、相談なんですが、お客様の自宅と同じ敷地内に、息子さん夫婦が住む別棟があります。登記も別々です。この場合、自宅を売却するときの3,000万円控除は、両方の建物に適用できるんでしょうか?」

松野先生の回答:
「いい質問だね。これは適用できないケースが多いんだ。

ポイントは『一の家屋』の考え方。税法上、居住用財産の特例における『一の家屋』というのは、独立した生活単位として使用されているかどうかで判断するんだよ。

具体的には:

  • 別棟で登記も別々
  • 玄関、台所、浴室などの生活設備が独立している
  • 生計も別

という場合は、それぞれが別個の家屋と判定される。つまり、お父様の自宅を売却する場合、息子さん夫婦の建物は『一の家屋』に含まれないから、3,000万円控除の対象にはならないんだ。

ただし、もし二世帯住宅で内部で行き来ができる構造だったり、区分登記されていても玄関が共通だったりする場合は、全体で『一の家屋』と認められる可能性もある。構造と実態をよく確認する必要があるね。」

実務上の注意点:

  • 登記簿謄本で建物の独立性を確認
  • 現地の構造(玄関、設備の独立性)を確認
  • 生計が一か別かも重要な判断要素
  • 二世帯住宅の場合は、内部での行き来の可否がポイント

質問2:子供の勉強部屋を作った場合

スタッフ:
「先生、もう一つ質問です。自宅の敷地内に、子供の受験勉強用の小さなプレハブを建てたお客様がいるんです。これは『一の家屋』に含まれますか?」

松野先生の回答:
「これはね、含まれる可能性が高いケースだよ。

さっきの嫁夫婦のケースと何が違うか分かるかな?

ポイントは、その建物が独立した居住用の生活単位になっているかどうかなんだ。

子供の勉強部屋というのは:

  • 独立した生活設備(台所・浴室・トイレ)がない
  • 本宅で食事や入浴をしている
  • あくまで母屋の付属的な使用

という場合がほとんどだよね。

この場合、プレハブは『独立した家屋』ではなく、**母屋の一部(附属建物)**として扱われる。つまり、敷地も建物も含めて『一の家屋』として、3,000万円控除の対象になるんだ。

過去の裁判例でも、**物理的に別棟でも、生活の実態として一体であれば『一の家屋』**と判断されているケースがあるからね。」

実務上の注意点:

  • 生活設備の有無を確認
  • 実際の使用状況(食事・入浴の場所)を把握
  • 登記の有無だけでなく、実態を重視
  • 物置、車庫なども同様に付属建物として扱われることが多い

まとめ:「一の家屋」判定のチェックポイント

居住用財産の特例適用における「一の家屋」の判定では、以下の要素を総合的に考慮します。

別個の家屋と判定される要素

  • 独立した生活設備(玄関、台所、浴室、トイレ)がある
  • 生計が別である
  • 登記が別で物理的にも独立している
  • 独立した生活単位として使用されている

一の家屋(一体)と判定される要素

  • 生活設備が共通または一方にしかない
  • 生計が一である
  • 内部で行き来できる構造
  • 母屋の付属的・補助的な使用

おわりに

「一の家屋」の判定は、登記の状況だけでなく、実際の生活実態が重要です。

特に二世帯住宅や敷地内同居のケースでは、個別の事情により判断が分かれることもあります。居住用財産の譲渡を検討される際は、事前に専門家にご相談されることをお勧めします。


【参考】根拠条文・通達

租税特別措置法

  • 第35条第1項(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除)
    個人がその居住の用に供している家屋または敷地の譲渡について、譲渡所得から最高3,000万円を控除
  • 租税特別措置法施行令第20条の3第2項(居住用家屋の定義)
    居住用財産の範囲を規定

租税特別措置法通達

  • 措置法通達31の3-2(居住用家屋の範囲)
    「その居住の用に供している家屋」とは、生活の拠点として利用している家屋(一時的な利用を目的とする家屋を除く)をいい、その者及び配偶者等の日常生活の状況、入居目的、家屋の構造・設備の状況等を総合勘案して判定する
  • 措置法通達31の3-12(居住用家屋の敷地の判定)
    譲渡土地等が居住用家屋の「敷地」に該当するかは、社会通念に従い、当該土地等が当該家屋と一体として利用されていたかどうかにより判定する
  • 措置法通達35-5(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱いの準用)
    措置法第35条の判定については、通達31の3-2、31の3-12等に準じて取り扱う

参考リンク(国税庁)

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