法人税・法人地方税とは?法人住民税・事業税の計算の仕組みを初心者向けに解説

法人税・法人地方税とは?法人住民税・事業税の計算の仕組みを初心者向けに解説

<!– meta description(120字以内) –> <!– 法人税(国税)から法人地方税(法人住民税・事業税)まで、計算の仕組みを初心者向けにわかりやすく解説。税率・軽減税率・均等割・外形標準課税・分割基準まで図解で説明します。 –>


目次

はじめに

「法人を設立したら、国に法人税を払えばいいだけ?」

実は、そうではありません。法人は国税の法人税に加えて、都道府県や市区町村にも税金を納める義務があります。これを総称して「法人地方税」といいます。

法人税・法人地方税は種類が多く、計算の仕組みも複雑に見えますが、構造を理解すると意外とシンプルです。この記事では、初めて法人税務に触れる方に向けて、法人税(国税)の基本から法人地方税の計算方法まで、わかりやすく解説します。


法人が納める税金の全体像

まず、法人が納める税金の種類・課税標準・税率を一覧で整理します。ここを押さえると、後の解説がぐっと理解しやすくなります。

税目・課税標準・税率の一覧

区分税目課税標準税率(中小法人の目安)納付先
国税法人税課税所得15%(800万円以下)/23.2%(超過分)税務署
国税地方法人税法人税額10.3%税務署
地方税法人都道府県民税(均等割)資本金等・従業者数年2万円〜(定額)都道府県
地方税法人都道府県民税(法人税割)法人税額1.0%都道府県
地方税法人市町村民税(均等割)資本金等・従業者数年5万円〜(定額)市区町村
地方税法人市町村民税(法人税割)法人税額6.0%市区町村
地方税事業税(所得割)課税所得3.5%〜(都道府県による)都道府県
地方税特別法人事業税事業税所得割額37.0%(中小法人)都道府県

※税率は標準税率。自治体によって超過税率が適用される場合があります。

課税標準とは?

課税標準」とは、税額を計算する際の**計算のベース(元となる数値)**のことです。

課税標準使われる税目意味
課税所得法人税・事業税利益を税務ルールで調整した金額
法人税額地方法人税・法人税割計算済みの法人税そのもの
資本金等・従業者数均等割規模の指標(赤字でも課税)
事業税所得割額特別法人事業税事業税の計算結果を再度ベースにする

ポイント:法人税割と特別法人事業税は「税金にかかる税金」です。 法人税割は法人税額、特別法人事業税は事業税額をそれぞれ課税標準とするため、 最初に計算した税額が次の税額の計算に連鎖していきます。

税率の連鎖イメージ

法人の納税負担を全体で見ると、次のような連鎖構造になっています。

課税所得
  ↓ × 税率
法人税(15% or 23.2%)
  ↓ × 10.3%          → 地方法人税(国税)
  ↓ × 1.0%           → 都道府県民税・法人税割(地方税)
  ↓ × 6.0%           → 市町村民税・法人税割(地方税)

課税所得
  ↓ × 税率
事業税(所得割)
  ↓ × 37.0%          → 特別法人事業税(実質国税)

法人地方税は大きく分けると以下の3種類です。

  1. 法人都道府県民税(都道府県民税)
  2. 法人市町村民税(市町村民税)
  3. 事業税・特別法人事業税

それぞれについて、以降で詳しく解説します。


法人税(国税)の仕組みと計算方法

法人地方税は「法人税額」をベースに計算するものが多いため、まず法人税そのものの仕組みを理解することが重要です。

法人税とは

法人税は、法人(会社)の所得(利益)に対してかかる国税です。個人の「所得税」に相当するもので、毎事業年度終了後に申告・納付します。

法人税 = 課税所得金額 × 税率

課税所得の計算

法人税の課税対象となる「課税所得」は、会計上の利益(当期純利益)をそのまま使うのではなく、税務上のルールに従って調整します。

課税所得 = 会計上の利益
      + 損金不算入額(会計上は費用だが税務上は認められないもの)
      - 益金不算入額(会計上は収益だが税務上は除くもの)
      - 損金算入額(税務上のみ認められる費用)

損金不算入の代表例

項目内容
交際費(一定額超)中小法人は年800万円まで全額損金、超過分は損金不算入
役員給与(不相当に高額な部分)税務上認められる限度を超えた役員報酬
法人税・住民税本税税金そのものは費用として認められない
罰金・科料法令違反に対するペナルティ

益金不算入の代表例

項目内容
受取配当金(一定部分)二重課税防止のため、一定割合を益金から除外

法人税の税率

普通法人(一般の会社)の税率

区分税率
資本金1億円超の大法人23.2%
資本金1億円以下の中小法人(所得800万円以下の部分)15%(軽減税率)
資本金1億円以下の中小法人(所得800万円超の部分)23.2%

中小法人の軽減税率は重要です。 年間の所得が800万円以下の部分には15%の軽減税率が適用されます。

※令和7年度の税制改正により、所得金額が年10億円を超える事業年度については、800万円以下の部分の税率が17%となります。所得が10億円を超えるような法人については、顧問税理士にご確認ください。

計算例(資本金1,000万円・所得1,000万円の中小法人)

所得800万円以下の部分 :800万円 × 15%   = 120万円
所得800万円超の部分  :200万円 × 23.2% =  46.4万円
────────────────────────────────
法人税合計                  166.4万円

地方法人税(国税)

法人税を納める際、地方法人税も一緒に申告・納付します。地方法人税は名称に「地方」がついていますが、国税です(地方交付税の財源として国が徴収)。

地方法人税 = 法人税額 × 10.3%

法人税の申告書に一体で記載し、税務署に納付します。


法人税の申告・納付期限

区分期限
確定申告事業年度終了の日から2か月以内
中間申告(6か月経過後)事業年度開始から6か月経過後2か月以内

会計監査等の事情がある場合、申請により1か月の延長が認められます(確定申告)。

中間申告とは?

事業年度が6か月を超える法人は、期中に一度「中間申告」を行い、前年度の法人税額の約半分を前払いします。

中間納付額 = 前事業年度の法人税額 × 6/前事業年度の月数

前年度の法人税額が20万円以下の場合は、中間申告が不要です。


① 法人都道府県民税・法人市町村民税(住民税)【地方税】

法人都道府県民税と法人市町村民税は、まとめて「法人住民税」と呼ばれることもあります。どちらも同じ構造で、「均等割」と「法人税割」の2本立てになっています。

均等割(きんとうわり)

均等割は、赤字でも必ず払わなければならない定額の税金です。会員制度の「年会費」のようなイメージです。

金額は資本金等の額従業者数によって決まります。

▼ 法人都道府県民税 均等割(標準税率)

資本金等の額年税額
1,000万円以下2万円
1億円以下5万円
10億円以下13万円
50億円以下54万円
50億円超80万円

▼ 法人市町村民税 均等割(標準税率・従業者50人超の場合)

資本金等の額年税額
1,000万円以下12万円
1億円以下15万円
10億円以下40万円
50億円超300万円

※ 従業者数50人以下の場合は税額が異なります(より少額)。

ポイント:均等割は赤字でも発生します。 たとえ会社が赤字で法人税がゼロでも、均等割だけは払わなければなりません。


法人税割(ほうじんぜいわり)

法人税割は、法人税の額に税率をかけて計算する税金です。法人税が増えれば連動して増えます。

法人税割 = 課税標準(法人税額)× 税率

税率の目安(標準税率)

税目標準税率
法人都道府県民税(法人税割)1.0%
法人市町村民税(法人税割)6.0%

※自治体によって「超過税率」を適用している場合があります(大阪市など)。

計算例

法人税額が 100万円 の場合

税目計算税額
都道府県民税(法人税割)100万円 × 1.0%1万円
市町村民税(法人税割)100万円 × 6.0%6万円

これに均等割を足した合計が、法人住民税の納付額になります。


② 事業税(じぎょうぜい)【地方税】

事業税は、法人が行う事業そのものに対してかかる税金です。

事業税には「所得割課税」と「外形標準課税」の2つがあり、会社の規模によって適用が変わります。

所得割(中小法人が対象)

資本金1億円以下の一般的な中小法人は、所得(利益)に対して税率をかけます。

事業税(所得割)= 所得金額 × 税率

標準税率は所得の規模によって段階があります(都道府県によって異なる)。

外形標準課税(資本金1億円超の大法人が対象)

資本金が1億円を超える法人には、**赤字でも一部の税金が発生する「外形標準課税」**が適用されます。

課税の種類内容
付加価値割報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料+単年度損益
資本割資本金等の額に対して課税
所得割所得金額に対して課税

ポイント:外形標準課税は赤字でも「付加価値割」「資本割」が発生します。 大企業に適用されるため、中小法人の多くは所得割のみとなります。

※令和7年4月1日以後開始事業年度からは、減資によって資本金を1億円以下にした法人でも、資本金と資本剰余金の合計額など一定の要件を満たす場合には外形標準課税の対象となることがあります。また、令和8年4月1日以後開始事業年度からは、一定の100%子法人等についても対象範囲が拡大されます。減資や組織再編を検討している場合は、専門家にご相談ください。


③ 特別法人事業税(とくべつほうじんじぎょうぜい)【実質は国税】

特別法人事業税は、事業税とセットで納める国税です。名前は「地方税」のようですが、実際には国税で、都道府県が国に代わって徴収します。

特別法人事業税 = 事業税(所得割額)× 税率

事業税の申告書に一緒に記載し、都道府県に納付します。


法人税から地方税まで 計算の全体フロー

法人税・法人地方税の全体の流れを整理すると、次のようになります。

【STEP1】決算 → 課税所得を計算する
     会計上の利益 ± 税務調整 = 課税所得

【STEP2】法人税(国税)を計算する
     課税所得 × 税率(軽減税率15%/一般税率23.2%)
     + 地方法人税(法人税額 × 10.3%)

【STEP3】法人税額を使って法人住民税(地方税)を計算する
     法人都道府県民税 = 均等割 + 法人税割
     法人市町村民税  = 均等割 + 法人税割

【STEP4】課税所得を使って事業税・特別法人事業税(地方税)を計算する
     事業税(所得割) = 所得金額 × 税率
     特別法人事業税  = 事業税所得割額 × 税率

【STEP5】複数自治体がある場合 → 分割基準で按分する

【STEP6】各自治体・税務署に申告書を提出し納付する

申告・納付先のまとめ

税目申告・納付先期限
法人税・地方法人税税務署(国)決算から2か月以内
法人都道府県民税・事業税・特別法人事業税都道府県税事務所決算から2か月以内
法人市町村民税市区町村役場決算から2か月以内

すべての申告が同じ期限です。決算が終わったら2か月以内に3か所に申告書を提出します。


複数の自治体に申告が必要なケース(分割基準)

本社と支店・工場が異なる都道府県・市区町村にある法人は、それぞれの自治体に申告する必要があります。このとき、どの自治体にいくら納めるかを決めるルールを「分割基準」といいます。

分割基準は税目によって異なる

分割基準は、税目ごとに異なる点が重要なポイントです。

税目主な分割基準
法人都道府県民税・法人市町村民税の法人税割従業者数
法人事業税業種に応じた分割基準(下記参照)

法人住民税(法人税割)はシンプルに従業者数で按分しますが、法人事業税は業種によって基準が異なります。

法人税割(住民税)の分割:従業者数で按分

法人都道府県民税・法人市町村民税の法人税割は、従業者数の割合で各自治体に按分します。

各自治体の課税標準 = 法人税額 × 各自治体の従業者数 ÷ 全自治体の従業者数合計

計算例

事業所従業者数
本社(大阪)6人
支店(東京)4人
合計10人

法人税額が100万円の場合

自治体計算納付額
大阪府・大阪市(法人税割)100万円 × 6/1060万円
東京都(法人税割)100万円 × 4/1040万円

法人事業税の分割:業種別の分割基準(5タイプ)

法人事業税の分割基準は業種によって異なります。

タイプ対象業種分割基準
①製造業等製造業・建設業・鉱業など従業者数(※資本金1億円以上の法人は工場従業者を1.5倍換算
②一般事業卸売業・小売業・サービス業など事務所等の数 1/2 + 従業者数 1/2
③特殊業種電気・ガス・鉄道など固定資産の価額・延長キロ数など
④複数業種の併営複数業種を同時に営む法人事業ごとに上記①〜③を適用し合算
⑤年度中に開設・廃止あり事業所の新設・廃止があった場合存在した月数で按分

▼ タイプ① 製造業:従業者数で按分

製造業では、原則として従業者数を基準に分割します。

なお、資本金1億円以上の法人については、工場の従業者数を1.5倍して計算する特例があります。これは、工場のある地域への経済的貢献度が高いことを反映したルールです。

【資本金1億円以上の法人の場合】
工場従業者4人 → 4人 × 1.5 = 6人として計算

▼ タイプ② 卸売・小売・サービス業:事務所数+従業者数の組み合わせ

一般の事業(法人事業税)は「事務所の存在」と「人員の多さ」の両面から配分します。

課税標準の 1/2 → 事業所・事務所の数で按分
課税標準の 1/2 → 従業者数で按分
    両方を合計 → 各自治体への納付額(事業税分)

注意:この「事務所数+従業者数」の組み合わせ基準は法人事業税の分割基準です。 法人住民税(法人税割)の分割は業種にかかわらず従業者数のみで按分します。


分割基準における「従業者数」の数え方

従業者数の数え方にはルールがあり、間違えやすいポイントです。

項目取扱い
集計方法事業年度中の各月末の人数を合計する
パート・アルバイト(週30時間未満)1/2人として換算
役員(取締役など)原則として含まない
出向社員実際に勤務している事業所側でカウント

よくある間違いチェックリスト

□ 均等割は赤字でも発生することを忘れていた
□ パート・アルバイトを1人として計算していた(週30時間未満は1/2換算)
□ 役員を従業者数に含めて計算していた
□ 年度中に廃止した事業所の申告を忘れた
□ 工場従業者の1.5倍換算を忘れた(製造業・資本金1億円以上の法人)
□ 事業所のある全自治体に申告書を提出した


まとめ

法人税・法人地方税の計算の仕組みをまとめると、次のようになります。

法人税(国税) → 課税所得 × 税率(中小法人:800万円以下15%、超過分23.2%)

地方法人税(国税) → 法人税額 × 10.3%(税務署に一緒に申告)

法人住民税(都道府県民税・市町村民税)【地方税】 →「均等割(定額・赤字でも発生)」+「法人税割(法人税額×税率)」

事業税【地方税】 → 中小法人は「所得割」のみ、資本金1億円超は「外形標準課税」も

特別法人事業税【実質は国税】 → 事業税の所得割額 × 税率(都道府県に事業税と一緒に納付)

複数自治体がある場合 →「分割基準(従業者数・事務所数など)」で按分して各自治体に申告

法人税・法人地方税は種類が多く、計算も複雑です。特に複数の都道府県・市区町村にまたがる場合の分割基準は、業種や状況によって異なるため、正確な申告のためには専門家への相談をおすすめします。


当事務所へのご相談

税理士法人松野茂税理士事務所では、法人の税務申告(法人税・法人地方税)に関するご相談を承っております。

「分割基準の計算が合っているか確認したい」「複数拠点の申告を任せたい」といったご要望も、お気軽にお問い合わせください。

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