19回 小規模宅地特例における二世帯住宅の取扱い Q&A【基本編】尼崎の税理士法人が解説

税理士法人松野茂税理士事務所 19回 小規模宅地特例における二世帯住宅の取扱い Q&A【基本編】尼崎の税理士法人が解説

~被相続人の特定居住用宅地等の適用要件~

はじめに

前回の投稿では、平成26年1月1日以後の相続における二世帯住宅の小規模宅地特例について、区分登記の有無による取扱いの違いを条文から解説しました。

今回は、実務でよくあるケースをQ&A形式で整理し、具体的な適用判定について解説いたします。


目次

重要ポイント:区分登記の有無による違い

区分登記がある場合

  • 各区分所有部分を別個の建物として判定
  • 被相続人と親族が別々の建物に居住していると扱われる
  • 原則として「同居」とはならない

区分登記がない場合

  • 一棟の建物全体を一つの建物として判定
  • 被相続人と親族が同居しているものとみなされる(みなし同居)
  • 生計の一・別を問わず同居扱い

Q&A

Q1. 区分登記あり・配偶者が土地取得(生計一)

【設例】

  • 土地:被相続人甲が所有
  • 建物:1階を被相続人甲が区分所有、2階を生計一の長男Aが区分所有
  • 相続:配偶者が土地全体を取得

【回答】全部適用可能

配偶者が取得する場合は、以下の両方の要件を満たします:

  1. 被相続人の居住用部分(1階対応敷地)→ 配偶者取得により適用
  2. 生計一親族の居住用部分(2階対応敷地)→ 配偶者取得により適用

Q2. 区分登記あり・配偶者が土地取得(生計別)

【設例】

  • Q1と同じ建物構成
  • ただし、被相続人甲と長男Aは生計別
  • 相続:配偶者が土地全体を取得

【回答】 ⚠️ 一部適用可能

  • 1階部分(被相続人居住用)の対応敷地 → ✅適用可能
  • 2階部分(生計別親族居住用)の対応敷地 → ❌適用不可

Q3. 区分登記あり・生計別の長男が土地取得

【設例】

  • 被相続人甲と生計別の長男Aが居住(区分登記あり)
  • 相続:長男Aが土地全体を取得

【回答】適用不可

区分登記があるため同居とはみなされず、生計別の親族が取得する場合は要件を満たしません。


Q4. 区分登記あり・生計一の長男が土地取得

【設例】

  • 被相続人甲と生計一の長男Aが居住(区分登記あり)
  • 相続:長男Aが土地全体を取得

【回答】 ⚠️ 一部適用可能

2階部分(長男A居住用)の対応敷地のみ、生計一親族の居住用宅地として適用可能です。


Q5. 区分登記なし・生計別でも配偶者取得

【設例】

  • 土地:被相続人甲が所有
  • 建物:一棟の建物(区分登記なし)で1階に被相続人甲、2階に生計別の長男Aが居住
  • 相続:配偶者が土地を取得

【回答】全部適用可能

区分登記がない場合は「みなし同居」となるため、生計別であっても配偶者が取得すれば全体が適用可能です。

【補足】配偶者と長男が共有取得する場合 配偶者と長男が土地を共有で取得しても、みなし同居により全部適用可能です。


Q6. 相続後に区分登記した場合

【設例】

  • Q5と同じ状況
  • 申告期限までに建物を区分登記し、敷地権として1階は配偶者、2階は長男Aが取得

【回答】全部適用可能

みなし同居の判定は「相続開始直前」の状況で行うため、相続後の区分登記は影響しません。


Q7. 配偶者が先に死亡・区分登記あり

【設例】

  • 配偶者が先に死亡
  • 区分登記があり、被相続人と長男Aは生計別
  • 相続:長男Aが土地を取得

【回答】適用不可

配偶者がいない場合で、区分登記により同居とみなされないため、生計別の親族は要件を満たしません。


Q8. 配偶者が先に死亡・区分登記あり(特に注意)

【設例】

  • 配偶者が先に死亡
  • 建物:被相続人が1階を区分所有、長男Aが2階を区分所有
  • 相続:長男Aが土地を取得

【回答】適用不可

【解説】 この場合、「家なき子特例」(相続開始前3年以内に自己等の所有する家屋に居住していない親族)の検討が必要ですが、長男Aは自己所有の区分建物(2階)に居住しているため該当しません。

条文上「(被相続人と同居を除く)」となっていますが、区分登記された二世帯住宅では「みなし同居」にもならないため、適用不可となります。


まとめ

二世帯住宅における小規模宅地特例の適用は、区分登記の有無が決定的な判断要素となります。

✅ 適用を受けやすいケース

  1. 区分登記がない二世帯住宅
  2. 配偶者が土地を取得する場合
  3. 生計一親族が居住用部分の敷地を取得する場合

❌ 適用が困難なケース

  1. 区分登記があり、生計別の親族が取得
  2. 配偶者が先に死亡し、区分登記がある場合の親族取得

相続税対策として二世帯住宅を検討される場合は、将来の相続時における小規模宅地特例の適用可否も含めて、事前に税理士にご相談されることをお勧めいたします。


【注意事項】 本記事は令和6年現在の税法に基づいています。個別の事案については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

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